【第3回 現役医師セミナー全記録】生死の最前線で戦う救急専門医が語る「覚悟・観察力・遠回りの価値」── 挫折と泥臭い臨床から掴んだ、医学部合格とその先の医師像
序文:生と死の境界線に立ち続ける医師が、受験生に伝えたかったこと
TMPS医学館にて開催された「現役医師セミナー」の第3回目。登壇されたのは、昭和大学医学部を卒業後、救急専門医・外科専門医・集中治療専門医の3つの専門医資格(トリプルボード)を取得し、現在は誠創会あさがおクリニックの院長として在宅医療・地域医療の最前線に立つ山本 大輔(やまもと だいすけ)医師です。
司会を務めるTMPS代表・長澤先生との白熱した対話、そして数学科主任・ニックニ先生との「数学の解法戦略 ✕ 医療現場の観察力」の奇跡的なシンクロセッションまで、セミナーの熱気を余すところなくお届けします。
1. 生と死の狭間で下す決断 ── 救急・外傷外科の壮絶な現場
最大限の高度医療や高額医療を投入することは技術的には可能ですが、医療財政の観点や、患者さん・ご家族の苦しみを考えたとき、どこかで治療の手を引かなければならない瞬間が訪れます。解剖学的・生理学的に本当に救命できないのか。その狭間で葛藤し続けることが、日々最も辛い部分でした。」
山本医師が外傷外科の道へ進む決定打となったのは、医師4年目の苦い経験でした。高速道路の多重事故で搬送されてきた重症患者に対し、当時の大学病院の体制では即座の手術に踏み切れず、CT検査中に心停止を起こして救えなかったという挫折。「あの時、自分がもっと強く外科医を動かせていれば救えたのではないか」。その力不足を痛感した山本医師は、外傷外科のメッカである埼玉の病院へ移籍し、自らメスを握る修練を開始しました。
2. 挫折から這い上がった研修医時代 ── 「日本一の下手さ」からの脱却
でも、それは事実でした。そこで『たまたま失敗しただけだ』と自分を誤魔化すのは簡単ですが、客観的にできないと評価されている以上、何とかしなければならない。引き下がってはダメだという反骨心で、徹底的に練習と準備を重ねました。」
3. 【特別対談:山本医師 ✕ ニックニ先生】数学の戦略と臨床の観察力は完全に一致する
セミナー中盤、会場にいたTMPS数学科主任のニックニ先生がマイクを握り、医療のトリアージと数学の解法プロトコルの驚くべき共通点についてのセッションが展開されました。
数学の入試問題も時間との勝負です。解く必要のない捨て問は見極め、取るべき問題で確実に差をつける。例えば、普通の受験生が1〜2分かけて解く漸化式を、私たちのメソッドなら10秒〜30秒の秒速で処理して見直しの時間を生み出します。大きな視点(戦略)と、1問を瞬殺する技術(戦術)の両輪が不可欠です。」
かつての私は数学を単なる暗記だと思い込み、力任せに解いて計算ミスで散っていましたが、本当に試されているのは『観察力』です。隠された基礎を1枚ずつめくって必勝パターンに落とし込む観察力は、在宅医療で患者さんの家に入った瞬間の空気感や顔色から病状の変化を見抜く臨床の観察力と全く同じです。」
4. ノンテクニカルスキルと「遠回り」の価値 ── 浪人・挫折経験こそが名医を作る
救急や在宅医療に運ばれてくる患者さんは、日頃から健康に気をつけているエリートばかりではありません。生活習慣が乱れ、人生の苦境の中で倒れたご高齢の方や社会的弱者の方々も多くいらっしゃいます。高学歴で挫折を知らない綺麗な医師よりも、人生の遠回りや泥臭い苦労を経験してきた医師の方が、そうした患者さんの痛みに本当の意味で寄り添うことができます。
私は学生時代、予備校のチューターではなく、深夜の飲食店やバーテンダーのアルバイトをしていました。朝まで泥臭く働く店長たちの健康相談に乗り、教科書通りの生活習慣病を目の当たりにした経験が、今の私の臨床の血肉になっています。人生に無駄な遠回りなど一つもありません。」
5. 受験生からの生質問セッション:決断力とスランプ脱出の極意
Q. 一刻を争う現場で、瞬時に正しい判断を下す秘訣は?(沖縄・生徒)
山本医師:「救急医療は『ABC(A=Airway気道, B=Breathing呼吸, C=Circulation循環)』という極めてシンプルな基本に集約されます。パニックになりそうな時ほど、複雑な思考を捨てて『Aは大丈夫か、Bは大丈夫か』と基本に立ち返る。自分の中に明確な引き出し(手順)をあらかじめ準備しておくことが、本番で迷わない唯一の手段です。」
Q. 考えすぎて決断ができない時の割り切り方は?(会場・生徒)
山本医師:「決断できない原因の8割は『情報不足』か『経験不足』です。情報が足りないなら集める。経験がないなら、すでに経験している先生や先輩に即座に聞く。それでも決められない時は、何のために待つのかという戦略を持って『あえて待つ』のも立派な決断です。」
Q. モチベーションを維持するきっかけは?(会場・生徒)
山本医師:「外科専門医と集中治療専門医のダブル受験の時、3人目の子どもが生まれ、夜10時から朝4時までの勉強を8ヶ月間続けました。原動力は『同じ年に受ける生意気な後輩に絶対負けたくない』という泥臭い反骨心です(笑)。動機は何だっていい。心に火を灯し続けられるものがあれば、それを最後まで燃やし尽くしてください。」
結び:9月からの受験生へ ── 「克己心」で自分史上最高の秋を創れ
山本医師が語られた「昨日よりも少し進んだ自分に勝つ」という克己心の積み重ね。そして、長澤代表が語られた「謙虚に自分の弱さを認め、情熱を燃やし続ける姿勢」。
8月が終わり、いよいよ勝負の秋(9月)が始まります。模試の結果に一喜一憂せず、目の前にある基本の引き出しを丁寧に磨き上げてください。TMPS医学館は、熱い講師陣とAI CEOチームが一丸となり、皆さんの覚醒の瞬間を全力で支え続けます。