🩺 2025年度 慈恵医大・生物 全体概観と攻略ガイド
東京慈恵会医科大学の生物は、基礎知識の正確さをベースにしつつ、実験データの読み取り・グラフの理論的解釈・医学的/進化的な考察力を深く問う良問揃いです。2025年度も「1. 糖代謝と糖尿病・腎臓の再吸収」「2. 光合成色素の進化とルビスコの酵素反応速度論」「3. 線虫(C. elegans)の連合学習実験」「4. 行動生態学と個体群生態学」の4大問構成でした。
本ページでは、Sora先生とニックニ先生が、途中式や思考のステップを1ミリも省略せず、中学生や生物が苦手な人でも100%納得できるように徹底図解します!
試験時間: 2科目 120分(目安60分)
大問数: 大問4題
目標得点率: 65%〜70%以上
勝負所: 大問1の計算・考察、大問2のルビスコ競合阻害、大問3の対照実験考察
⚡ 解答一覧(スピードチェック)
大問 1(糖代謝・腎臓・血糖調節) 解説へ ↓
- 問1: ア:すい液(膵液) / イ:マルターゼ / ウ:濃度勾配 / エ:解糖系 / オ:グリコーゲン
- 問2: 肝細胞(肝臓の細胞)、筋細胞(骨格筋の細胞)
- 問3 1): ④($350\text{〜}400\text{ mg/分}$)
- 問3 2): 受動輸送では原尿中のグルコース濃度が血しょう中以下になると再吸収できなくなるが、能動輸送では濃度勾配に逆らって原尿中のグルコースをほぼすべて(100%)回収し、貴重なエネルギー源の体外への喪失を防げるという利点。
- 問4 1): 過去の検査とくらべて、今回の検査では絶食時(0分)を含むすべての時間帯で血糖値が高く、最大値に達する時間も遅くなり(30分→60分)、3時間経過後も元の値に戻りにくくなっている。
- 問4 2): 血中インスリン値は過去と同等以上に高く持続的に分泌されているにもかかわらず血糖値が下がりにくくなっているため、標的細胞のインスリン感受性が低下(インスリン抵抗性が増大)し、グルコースの取り込みやグリコーゲン合成が十分に促進されなくなったため。(2型糖尿病の病態)
大問 2(光合成色素の進化・ルビスコ) 解説へ ↓
- 問1: 水を電子供与体とする光合成により酸素($\text{O}_2$)が放出され、大気中にオゾン層が形成されて有害な紫外線が遮断されたことで、生物の生息域が水中から陸上へと拡大した(また好気呼吸を行う生物が繁栄した)。
- 問2 1): 緑藻類:う / 褐藻類:あ / 紅藻類:い
- 問2 2): i:① / ii:図2のすべての植物・藻類が共通して葉緑体(およびシアノバクテリア由来のクロロフィルa)をもっており、共生が進化の過程で1回だけ共通祖先の段階で生じたと考えられるため。
- 問3 1): ア
- 問3 2): 水深が深くなるにつれて赤色光や青色光は吸収され、緑色光(波長500〜600 nm付近)のみが深くまで届く。浅い所に生息する緑藻はクロロフィル等で赤色光や青色光を吸収し、深い所に生息する紅藻はフィコビリン(フィコエリトリン等)をもつことで緑色光を効率よく吸収して光合成を行うため。
- 問4: ア:1 / イ:2
- 問5: 番号:④ / しくみ:$\text{O}_2$は$\text{CO}_2$とルビスコの同じ活性部位をめぐって競争的阻害(拮抗阻害)を行うため、$\text{O}_2$濃度が高くなると低$\text{CO}_2$濃度下での反応速度は低下するが、$\text{CO}_2$濃度を十分に高くすると$\text{O}_2$の影響が打ち消され、最大反応速度は変化しないため。
大問 3(動物の行動・線虫の学習実験) 解説へ ↓
- 問1: ア:生得 / イ:鍵(リリース) / ウ:パターン(中枢パターン)
- 問2: 160 匹
- 問3 1): エ:塩酸(塩酸希釈液) / オ:プロパノール / カ:オペラント
- 問3 2): もしプロパノールに対する「慣れ」によって生じたのであれば、1%プロパノール水溶液単独(トレーニング溶液②)で処理したときにも走化性指標が低下するはずであるが、溶液②では対照実験(無や①)と変わらず高い正の走化性を示しているから。
- 問4: 番号:2(考察2)
理由:転写や翻訳を阻害しても同様の学習が成立したことから、新たなタンパク質の合成を伴う細胞分裂(考察1)は否定され、既存のタンパク質のリン酸化などによるシナプス伝達効率の変化(考察2)が妥当である。また、もし塩酸が受容体を変性させたのであれば、塩酸希釈液単独(溶液③)でもプロパノールを受容できず走化性指標が低下するはずだが、溶液③では低下していないため考察3も誤りである。
大問 4(個体群・群れと縄張り・種間関係) 解説へ ↓
- 問1 1): 「最適な群れの大きさ」の横軸位置で極大(山の頂点)となる上に凸の曲線を描く。(※詳細は解説の図を参照)
- 問1 2): b(大きくなる)
- 問2 1): b
- 問2 2): 個体群密度が増加すると侵入者が増えて縄張りの防衛コストが増大するため、「維持に要する労力」の曲線が全体的に上(左)へシフトし、傾きが急になる。(※詳細は解説の図を参照)
- 問3: ア:増加 / イ:減少 / ウ:減少 / エ:増加
- 問4 1): 環境収容力
- 問4 2): 個体数の増加に伴い食物や生息空間をめぐる種内競争が激しくなり、また排出物の蓄積などにより生活環境が悪化したことで、出生率の低下と死亡率の上昇が生じて両者がつり合ったため。
- 問4 3): 個体数が減少すると近親交配の頻度が高まり、有害な潜性(劣性)遺伝子のホモ接合体が生じやすくなって適応度が低下する(近交弱勢)とともに、遺伝的多様性が低下して環境変化や新たな病原体への対応力が失われるため。
- 問5: ア:相利共生 / イ:寄生(片利共生・寄生関係)
大問 1 糖代謝・腎臓におけるグルコース再吸収・血糖量調節
配点目安:約25点大問1は慈恵医大らしい「生理学×臨床医学(糖尿病・尿糖)」の王道テーマです!問1・問2は絶対に落とせない基礎知識。勝負は問3の「腎臓のグルコース再吸収速度の最大値(輸送極量)」の計算と、問4の「経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)グラフ」から2型糖尿病(インスリン抵抗性)を読み解く論述です。ニックニ先生と一緒に、表の数字から「原尿中にろ過された量」と「尿中に捨てられた量」の引き算を1ステップずつ確認していきましょう!
1. 糖代謝に関する各問いに答えよ。
食事により摂取されたデンプンは、唾液や ア に含まれるアミラーゼや、小腸の消化酵素である イ の働きによりグルコースに分解され、小腸で能動輸送により吸収される。吸収されたグルコースは、血流を介して全身の組織に送られる。組織に運ばれたグルコースは、細胞膜にあるグルコース輸送体により、 ウ に従って細胞内に受動輸送される。細胞内に取り込まれたグルコースは、まず細胞質基質の酵素が働く反応過程である エ によって段階的に分解され、ATP産生のためのエネルギー源として使用される。食事により血糖値が上昇すると、すい臓のランゲルハンス島のB細胞よりインスリンが分泌される。インスリンは、細胞膜のグルコース輸送体の数を増やすことで細胞内へのグルコースの取り込みを促進させるとともに、エネルギー源としてすぐに利用されなかった余剰なグルコースを、(a)特定の細胞内に オ として蓄える反応を促進する。さらに余剰なグルコースは脂肪に変換され、脂肪細胞に蓄えられる。
グルコースは分子量が小さいため、血液中のグルコースは腎臓の糸球体でろ過される。そのため、原尿のグルコース濃度は血しょう中のグルコース濃度と同じであるが、(b)その後、グルコースは、細尿管では能動輸送により再吸収される。
問1・問2:糖の消化・吸収・代謝とグリコーゲン貯蔵
問1. ア〜オの空欄に入る適切な語句を答えよ。
問2. 下線部(a)の特定の細胞をふたつあげよ。
STEP 1消化酵素の働きを整理しよう(空欄ア・イ)
デンプン(多糖)は、まず唾液やすい液(膵液)(ア)に含まれる消化酵素アミラーゼによって、二糖類であるマルトース(麦芽糖)などに分解されます。その後、小腸の上皮細胞(微絨毛の膜)に存在する消化酵素マルターゼ(イ)によって、単糖であるグルコース(ブドウ糖)へと最終分解されます。
STEP 2膜輸送と細胞内代謝を整理しよう(空欄ウ・エ)
小腸上皮細胞から吸収されるときや腎臓の細尿管で再吸収されるときは「能動輸送(ナトリウムポンプが作る$\text{Na}^+$の濃度勾配を利用した共輸送)」ですが、全身の一般の組織細胞に取り込まれるときは、グルコース輸送体(GLUT)という輸送タンパク質(担体)を介して、濃度勾配(ウ)に従って高濃度側(血液)から低濃度側(細胞内)へと受動輸送(促進拡散)されます。
細胞内に入ったグルコースは、まず細胞質基質にある酵素群によってピルビン酸へと分解されます。この過程を解糖系(エ)と呼びます。
STEP 3インスリンの働きと貯蔵場所(空欄オ・問2)
インスリンは余剰なグルコースを多糖であるグリコーゲン(オ)に合成して蓄える反応を促進します。生体内でグリコーゲンを主に蓄える特定の細胞は、肝細胞(肝臓の細胞)と筋細胞(骨格筋の細胞)の2つです!
最終解答
問1 ア:すい液(膵液) イ:マルターゼ ウ:濃度勾配 エ:解糖系 オ:グリコーゲン
問2 肝細胞(肝臓の細胞)、筋細胞(骨格筋の細胞)
問3:細尿管におけるグルコース再吸収速度の計算と能動輸送の利点
問3. 下線部(b)について、以下の問いに答えよ。
1) グルコースを点滴で血管内に投与することで血しょう中のグルコース濃度を変化させた。表1は、血しょう中のグルコース濃度と尿中へのグルコース排出量(1分間の排出量として算出)の関係を調べた結果である。ただし、糸球体でろ過される血しょうの量は $125\text{ mL/分}$ で一定とする。
| 血しょう中のグルコース濃度 ($\text{mg/100 mL}$) |
尿中へのグルコース排出量 ($\text{mg/分}$) |
|---|---|
| 100 | 0 |
| 200 | 0 |
| 300 | 5 |
| 400 | 128 |
| 500 | 251 |
| 600 | 375 |
| 700 | 503 |
表1
この結果から、細尿管でのグルコース再吸収速度の最大値として適切なものを①〜⑤のなかより選び、番号で答えよ。
① $200\text{–}250\text{ mg/分}$ ② $250\text{–}300\text{ mg/分}$ ③ $300\text{–}350\text{ mg/分}$ ④ $350\text{–}400\text{ mg/分}$ ⑤ $400\text{–}450\text{ mg/分}$
2) 細尿管では、グルコースを能動輸送で再吸収する。これに関して、受動輸送ではなく、能動輸送である利点を述べよ。
STEP 1腎臓における物質収支の基本公式を立てよう!
糸球体でろ過された液体が「原尿」です。原尿中のグルコースは細尿管で「再吸収」され、再吸収しきれずに残った分が「尿」として排出されます。したがって、1分間あたりのグルコースの量($\text{mg/分}$)には次の絶対的な関係式が成り立ちます。
STEP 2単位に注意して「1分間あたりのろ過量」を計算しよう!
リード文に「原尿のグルコース濃度は血しょう中のグルコース濃度と同じ」とあり、問題文に「糸球体でろ過される血しょうの量(=原尿生成量)は $125\text{ mL/分}$ で一定」とあります。
ここで最大の注意点は、表1の濃度の単位が $\text{mg/100 mL}$($100\text{ mL}$ あたりの $\text{mg}$ 数)になっていることです!
1分間にろ過される原尿は $125\text{ mL}$ ですから、$100\text{ mL}$ の $\dfrac{125}{100} = 1.25$ 倍です。つまり、血しょう中のグルコース濃度を $C\text{ (mg/100 mL)}$ とすると、1分間あたりのグルコースろ過量 $F\text{ (mg/分)}$ は次の式で求まります。
$$F = C \times \frac{125\text{ mL/分}}{100\text{ mL}} = 1.25 C \text{ (mg/分)}$$
STEP 3表1のすべての行について、ろ過量と再吸収量を計算して一覧表にしよう!
| 血しょう濃度 $C$ ($\text{mg/100 mL}$) |
① ろ過量 $F = 1.25C$ ($\text{mg/分}$) |
② 尿中排出量 $E$ ($\text{mg/分}$) |
①-② 再吸収速度 $R$ ($\text{mg/分}$) |
|---|---|---|---|
| 100 | $100 \times 1.25 = 125$ | 0 | $125 - 0 = 125$ |
| 200 | $200 \times 1.25 = 250$ | 0 | $250 - 0 = 250$ |
| 300 | $300 \times 1.25 = 375$ | 5 | $375 - 5 = 370$ |
| 400 | $400 \times 1.25 = 500$ | 128 | $500 - 128 = 372$ |
| 500 | $500 \times 1.25 = 625$ | 251 | $625 - 251 = 374$ |
| 600 | $600 \times 1.25 = 750$ | 375 | $750 - 375 = 375$ |
| 700 | $700 \times 1.25 = 875$ | 503 | $875 - 503 = 372$ |
一番右の列(再吸収速度 $R$)を見てください!血しょう中のグルコース濃度が $300\text{ mg/100 mL}$ 以上になると、細尿管にある輸送体タンパク質がすべてフル稼働(飽和)するため、再吸収速度は 約 $370\text{〜}375\text{ mg/分}$ で頭打ち(最大値)になっていますね。したがって、$350\text{–}400\text{ mg/分}$ の範囲である ④ が正解です!
STEP 4問3 2) なぜ細尿管では「受動輸送」ではなく「能動輸送」で再吸収するのか?
糸球体でろ過されたばかりの原尿は、血しょうと同じグルコース濃度です。もし細尿管での再吸収が「受動輸送(濃度勾配に従う輸送)」だったとしたらどうなるでしょうか?
原尿中のグルコース濃度が周囲の毛細血管(血しょう)のグルコース濃度と等しいか、それより低くなった時点で、グルコースの移動が止まってしまいます(つまり半分程度しか回収できず、残りのグルコースが尿中に捨てられてしまいます)。
これに対し、ATPのエネルギー($\text{Na}^+$の濃度勾配)を使った能動輸送を行うことで、原尿中のグルコース濃度が血しょう中よりも低くなっても(濃度勾配に逆らって)、原尿中のグルコースをほぼすべて(100%)血液中に回収し、貴重なエネルギー源を尿として体外へ失うのを防ぐことができるのです!
最終解答
問3 1) ④
問3 2) 受動輸送では原尿と血しょうのグルコース濃度が等しくなるとそれ以上再吸収できず尿中に排出されてしまうが、能動輸送では濃度勾配に逆らって原尿中のグルコースをほぼすべて(100%)血液中へ回収でき、貴重なエネルギー源を体外へ失わずに済むという利点。
問4:グルコース負荷試験(図1・図2)のグラフ比較と2型糖尿病の考察
問4. Aさんは会社の健康診断で尿中にグルコースが排出されていることがみつかり、病院を受診した。Aさんの糖代謝を調べるため、前日夜より絶食した状態で起床後にグルコース溶液を飲んでもらい、血糖値と血中インスリン値を、時間を追って測定した。測定は、飲む直前と、飲んだ後30分毎に3時間まで行った。その結果について図1に血糖値、図2にインスリン値を実線で示す。Aさんは同様の検査を過去に受けたことがある。その時の検査結果を破線で示す。
1) 図1から、今回の検査では過去に行った検査とくらべて、血糖値の値と時間変化にどのような違いがあるか述べよ。
2) 図2をふまえ、Aさんの血糖値が、過去とくらべて今回、図1のように変化した理由を考察せよ。
【図1:血糖値の時間変化】
【図2:インスリン値の時間変化】
STEP 1問4 1) グラフを比較するときは「①全体の高低(初期値・最大値)」「②ピークのタイミング」「③その後の戻り方」の3点セットで書く!
- 血糖値の値の違い: 飲む直前(絶食時・0分)の血糖値が過去(約 $95\text{ mg/100 mL}$)より今回(約 $150\text{ mg/100 mL}$)の方が高く、測定した3時間すべての時点で過去より高い値(ピーク時は過去の約 $170\text{ mg/100 mL}$ に対し今回は約 $300\text{ mg/100 mL}$)をとっている。
- 時間変化の違い: 過去は摂取後 30分 で最大値に達し 90分後には元の値に戻っている のに対し、今回は最大値に達するのが 60分後と遅く なり、その後の低下も緩やかで 180分(3時間)経過しても上昇前の値に戻っていない。
STEP 2問4 2) 図2のインスリン値をふまえて、なぜ血糖値が下がらないのかを考察しよう!
糖尿病には大きく分けて「インスリン自体の分泌が不足するタイプ(1型など)」と「インスリンは分泌されているのに細胞が反応しないタイプ(2型・インスリン抵抗性)」があります。
図2を見ると、今回の検査(実線)では、インスリン値は0分から180分まで過去と同等以上に高く、特に60分以降も大量のインスリンが持続的に分泌され続けています。
つまり、すい臓のB細胞からのインスリン分泌能力が失われたわけではなく、インスリンを受け取る標的細胞(肝細胞や筋細胞など)のインスリンに対する反応性(感受性)が低下している(インスリン抵抗性が生じている)ことがわかります!
その結果、インスリンが分泌されても、リード文にあった「細胞膜のグルコース輸送体の数を増やしてグルコースの取り込みを促進する作用」や「グリコーゲンとして蓄える作用」が十分に働かず、血液中にグルコースが残り続けて血糖値が高く維持されてしまったのです。(ちなみに今回のピーク時の血糖値は約 $300\text{ mg/100 mL}$ に達しているため、問3の表1で見た通り再吸収しきれずに尿糖が出たわけですね!)
最終解答
問4 1) 過去の検査とくらべて、今回の検査では飲む直前(0分)から180分後までのすべての時間帯で血糖値が高く、最大値も大きく上昇している。また、血糖値が最大値に達する時間が30分後から60分後へと遅くなり、その後の低下も緩やかで180分後でも元の水準まで下がりきっていない。
問4 2) 今回の検査では血中インスリン値が過去と同等以上に高く持続的に分泌されているにもかかわらず血糖値が下がりにくくなっていることから、標的細胞のインスリンに対する感受性が低下(インスリン抵抗性が増大)し、インスリンによる細胞内へのグルコースの取り込みやグリコーゲン合成の促進が十分に働かなくなったため。
大問 2 光合成色素の進化・藻類の系統と水深適応・ルビスコの反応速度論
配点目安:約25点大問2は2部構成です!パートIは「光合成生物の進化・一次共生と二次共生・水深による光環境と色素の適応(補色適応)」。表1の葉緑体包膜の数(2枚=一次共生、3〜4枚=二次共生)と光合成色素の組み合わせから、系統樹を一瞬で特定できます。パートIIは超頻出の「ルビスコ(RuBisCO)のカルボキシラーゼ活性とオキシゲナーゼ活性の競合(競争的阻害)」!酵素反応速度論のグラフ($V_{\max}$ が変わらず $K_m$ が大きくなる形)をバッチリ選びましょう!
2. 光合成に関する各問いに答えよ。
I. 原始の地球では、高温、高圧、放電などによりつくられた有機物がもとになり生物が誕生したとされる。最初に現れた生物は海のなかの有機物を消費して生きていたが、やがて一部の細菌に光合成色素ができ、独自に有機物をつくるようになった。これらの光合成細菌の光合成色素はバクテリオクロロフィルであった。その後、バクテリオクロロフィルとは構造の異なるクロロフィルをもつ光合成生物が現れ、その後の生物の生息域の変化・拡大をもたらした。
また、植物や藻類の光合成の場となる葉緑体はシアノバクテリアが初期の真核生物に共生したことを起源とし、その共生は生物進化の過程で1回だけ生じたと考えられている。
表1は代表的な光合成生物について、葉緑体の膜(葉緑体包膜)の数と葉緑体に含まれる光合成色素の種類をまとめたものであり、図1は光合成色素の吸収スペクトルを示す。
| 生物群 | 光合成細菌 | シアノバクテリア | 紅藻類 | ケイ藻類 | ミドリムシ | 褐藻類 | 緑藻類 | 種子植物 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 葉緑体包膜の数 | - | - | 2 | 4 | 3 | 4 | 2 | 2 | |
| クロロフィル | a | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
| b | ○ | ○ | ○ | ||||||
| c | ○ | ○ | |||||||
| バクテリオクロロフィル | ○ | ||||||||
| カロテノイド | $\beta$–カロテン | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| フィコビリン | フィコシアニン | ○ | ○ | ||||||
| フィコエリトリン | ○ | ○ | |||||||
問1・問2:酸素発生型光合成による生息域拡大と藻類の系統樹
問1. 下線部について、クロロフィルをもつ光合成生物がどのように生物の生息域の変化・拡大をもたらしたか、説明せよ。
問2. 陸上植物と代表的な藻類の系統を表した図2について、以下の問いに答えよ。
1) 緑藻類、褐藻類、紅藻類は空欄あ〜うのどこに入るか、表1から考え、記号で答えよ。
2) シアノバクテリアが初期の真核生物に共生し、葉緑体となった時期を図2の①〜⑨から選び、解答欄 i に番号で答え、その理由を解答欄 ii に答えよ。
STEP 1問1:バクテリオクロロフィルとクロロフィルの決定的な違いは「$\text{H}_2\text{O}$を分解して$\text{O}_2$を出すか」!
光合成細菌(バクテリオクロロフィルをもつ)は硫化水素($\text{H}_2\text{S}$)などを還元剤として用いるため酸素を発生しません。しかし、クロロフィルaをもつ光合成生物(シアノバクテリア)が出現すると、水($\text{H}_2\text{O}$)を電子供与体として分解し、酸素($\text{O}_2$)を放出する光合成を行うようになりました。
その結果、海中や大気中の酸素濃度が上昇し、大気上層にオゾン層($\text{O}_3$)が形成されました。オゾン層が太陽からの有害な紫外線を吸収・遮断したことにより、それまで水中に限られていた生物の生息域が陸上へと拡大したのです!(※あわせて「好気呼吸を行う生物が出現・繁栄した」ことも付記すると完璧です。)
STEP 2問2 1):表1の「包膜の数」と「クロロフィルb・c」から系統樹(あ〜う)を特定しよう!
図2の系統樹は大きく左側の枝(ケイ藻類と「あ」)と、右側の枝(「い」、そして「う」と陸上植物のペア)に分かれていますね。表1と見比べてみましょう!
- 陸上植物(種子植物)と最も近縁な「う」: 表1で種子植物と全く同じ特徴(包膜2枚、クロロフィルa・bをもつ)をもつのは緑藻類です。よって、緑藻類 = う。
- ケイ藻類とペアになっている「あ」: 表1でケイ藻類と全く同じ特徴(包膜4枚=二次共生、クロロフィルa・cをもつ)をもつのは褐藻類です。よって、褐藻類 = あ。
- 残った「い」: 包膜2枚でクロロフィルaとフィコビリンをもつ紅藻類が い に入ります。(ちなみにケイ藻類や褐藻類は、かつて紅藻類が別の真核生物に二次共生して誕生したグループです!)
STEP 3問2 2):シアノバクテリアの共生(一次共生)はいつ起きたか?
リード文に「植物や藻類の光合成の場となる葉緑体はシアノバクテリアが初期の真核生物に共生したことを起源とし、その共生は生物進化の過程で1回だけ生じたと考えられている」と明確に書かれています!
そして図2に登場するすべての生物群(ケイ藻類、褐藻類、紅藻類、緑藻類、陸上植物)が葉緑体(およびシアノバクテリアと同じクロロフィルa、$\beta$–カロテン)をもっています。1回だけ起きた共生によって全グループが葉緑体を受け継いだということは、これらすべての生物群が分岐する前の共通祖先の段階である ① の時期に共生が起きたことになります!(なお、その後②の枝の系統で、一度葉緑体をもった紅藻が二次共生して包膜が4枚になった、という進化の流れです。)
最終解答
問1 水を分解して酸素($\text{O}_2$)を発生する光合成を行ったことで大気中に酸素が蓄積し、上空にオゾン層が形成されて太陽からの有害な紫外線が遮断されたため、生物の生息域が水中から陸上へと大きく拡大した。
問2 1) 緑藻類:う 褐藻類:あ 紅藻類:い
問2 2) i:① ii:図2のすべての藻類と陸上植物が共通して葉緑体(およびクロロフィルaと$\beta$–カロテン)をもっており、シアノバクテリアの共生は進化の過程で1回だけ、これらすべての共通祖先の段階(分岐前)で生じたと考えられるため。
問3:緑藻と紅藻の吸収・作用スペクトル(図3)と水深による光環境(図4)
問3. ある緑藻と紅藻の作用スペクトルと吸収スペクトルを図3に、水深と光強度の関係を図4に示した。以下の問いに答えよ。
1) 図3のアとイはそれぞれ緑藻と紅藻のいずれかを示している。紅藻を示しているのはどちらか、記号で答えよ。
2) 陸上植物と異なり、藻類は種によって含まれる光合成色素に多様性がある。藻類がこのような多様性をもつ理由について、図表を参考にして考えを述べよ。用語として緑藻と紅藻を用いること。
STEP 1問3 1) 緑色光(波長 $500\text{〜}600\text{ nm}$)を吸収して光合成できるのはどっち?
図3を見ると、イは波長 $400\text{〜}500\text{ nm}$(青色光)と $650\text{〜}700\text{ nm}$(赤色光)にピークがあり、真ん中の $500\text{〜}600\text{ nm}$(緑色光)で吸収率も光合成速度も大きく落ち込んでいます。これはクロロフィルa・bを主とする緑藻のスペクトルです。
一方、アは $500\text{〜}600\text{ nm}$(緑色光)の波長域でも高い吸収率と高い光合成速度(作用スペクトル)を維持しています!図1で見た通り、波長 $500\text{〜}600\text{ nm}$ 付近の光を吸収するのはフィコエリトリンやフィコシアニン(フィコビリン)であり、表1よりこれをもつのは紅藻類です。よって、紅藻を示しているのは ア です!
STEP 2問3 2) 図4(水深と光強度の関係)と結びつけて理由を論述しよう!
図4を見ると、水面(水深 $0\text{ m}$)ではすべての波長の光がありますが、水深が深くなる($5\text{ m}$、$10\text{ m}$)につれて、波長 $400\text{ nm}$ 付近の青紫色の光や $600\text{〜}700\text{ nm}$ の赤色光は水に吸収されて届かなくなり、波長 $500\text{〜}600\text{ nm}$ 付近の緑色光だけが深いところまで届いていることが読み取れます。
したがって、海中では生息する水深によって利用できる光の波長が異なります。浅い場所に生息する緑藻は、十分に届く青色光や赤色光をクロロフィルa・bなどで吸収して光合成を行い、深い場所に生息する紅藻は、深部まで届く緑色光をフィコビリン(フィコエリトリンなど)で効率よく吸収して光合成を行うように、それぞれの生息環境の光条件に適応して光合成色素が多様化したと考えられます!
最終解答
問3 1) ア
問3 2) 水中では水深によって届く光の波長が異なり、深くなるほど青色光や赤色光は減衰して波長500〜600 nm付近の緑色光のみが届くようになる。そのため、浅い所に生息する緑藻はクロロフィルa・bなどにより主に青色光や赤色光を吸収し、深い所に生息する紅藻はフィコビリン(フィコエリトリン等)をもつことで深部まで届く緑色光を効率よく吸収して光合成を行うなど、生息する水深の光環境に適応するため。
問4・問5:カルビン回路のルビスコと$\text{CO}_2$・$\text{O}_2$の競争的阻害(拮抗阻害)
II. 光合成のカルビン回路で働く酵素のルビスコは、1分子の二酸化炭素($\text{CO}_2$)と ア 分子の$\text{C}_5$化合物のリブロース1,5–ビスリン酸(RuBP)から、 イ 分子の$\text{C}_3$化合物のホスホグリセリン酸(PGA)を合成する反応を触媒する。同時にルビスコは、酸素($\text{O}_2$)とRuBPからPGAとホスホグリコール酸を合成する反応も触媒する。このように、ルビスコは$\text{CO}_2$を基質に用いて炭素を固定するカルボキシラーゼと、$\text{O}_2$を基質に用いて酸化を行うオキシゲナーゼの2種類の酵素活性をもつ。$\text{CO}_2$と$\text{O}_2$は拮抗しながらルビスコの活性部位に入るため、どちらの反応が行われるかは、ルビスコ周辺の$\text{CO}_2$濃度と$\text{O}_2$濃度に依存する。
問4. アとイの空欄に入る数字を答えよ。
問5. 下のグラフの実線(反応曲線)は、ある$\text{O}_2$濃度下での$\text{CO}_2$濃度に対するルビスコのカルボキシラーゼ活性の理論的な反応速度を示している。$\text{O}_2$濃度をもとの濃度よりも高い特定の濃度にしたときに、この反応曲線はどのように変化するか、最も適切な変化後の反応曲線(破線)が描かれているグラフを下の①〜⑥より選び、番号で答えよ。また、そのように変化するしくみを説明せよ。それぞれのグラフの横軸は$\text{CO}_2$濃度の相対値、縦軸はカルボキシラーゼ活性の反応速度の相対値を示す。
STEP 1問4:炭素原子($\text{C}$)の数合わせで一瞬!
1分子の $\text{CO}_2$(炭素数1)+ 1分子(ア)の RuBP(炭素数5)= 炭素数合計 $1 + 5 = 6$ 個。
これから $\text{C}_3$化合物である PGA(炭素数3)がつくられるので、$6 \div 3 =$ 2分子(イ)の PGA が合成されます!(※よくカルビン回路全体で「$6\text{CO}_2 + 6\text{RuBP} \rightarrow 12\text{PGA}$」と覚えている人も、「1分子の$\text{CO}_2$と」という問題文の条件に合わせて1と2にしましょう!)
STEP 2問5:なぜグラフ④になるのか?(酵素の競争的阻害)
リード文に「$\text{CO}_2$と$\text{O}_2$は拮抗しながらルビスコの活性部位に入る」とある通り、カルボキシラーゼ反応(基質=$\text{CO}_2$)にとって、$\text{O}_2$は同じ活性部位を奪い合う競争的阻害剤(拮抗阻害物質)として働きます。
・$\text{CO}_2$濃度が低いとき(グラフの左側): $\text{O}_2$濃度を高くすると、ルビスコの活性部位に$\text{O}_2$が結合する割合が増え、$\text{CO}_2$との結合が阻害されるため、カルボキシラーゼ活性の反応速度は低下します。
・$\text{CO}_2$濃度が十分に高いとき(グラフの右側): 基質である$\text{CO}_2$が圧倒的多数になるため、活性部位はほぼすべて$\text{CO}_2$に占められて$\text{O}_2$による阻害の影響は無視できるようになり、最大反応速度($V_{\max}$)はもとの$\text{O}_2$濃度のときと変わらない値に収束します。これを表しているのは ④ です!
最終解答
問4 ア:1 イ:2
問5 番号:④
しくみ:$\text{O}_2$は$\text{CO}_2$とルビスコの同じ活性部位をめぐって拮抗(競争的阻害)するため、$\text{O}_2$濃度が高くなると、$\text{CO}_2$濃度が低い領域では$\text{O}_2$が活性部位に結合する割合が増えてカルボキシラーゼ活性の反応速度が低下するが、$\text{CO}_2$濃度を十分に高くすると活性部位のほとんどに$\text{CO}_2$が結合するため阻害の影響が打ち消され、最大反応速度はもとの値と変わらなくなるため。
大問 3 動物の行動・線虫(C. elegans)の走化性と連合学習のしくみ
配点目安:約25点
大問3は線虫の「連合学習(古典的条件付け)」に関する実験考察問題です!最初は実験手順が長く見えるかもしれませんが、落ち着いて整理すれば超シンプルです。
・プロパノール = 本来は大好き(正の走化性:近づく)
・塩酸($\text{pH 4}$) = 本来は大嫌い(負の走化性:逃げる)
この2つを混ぜた溶液④でトレーニングすると、プロパノールに対しても近づかなくなる(連合学習成立)!対照実験である「溶液②(プロパノールのみ)」や「溶液③(塩酸のみ)」の結果を根拠にして、「慣れ(馴化)」や「受容体の変性」を論破する問3・問4の論述は、医学部の実験考察問題のお手本のような良問です!
3. 動物の行動に関する各問いに答えよ。
動物は、環境からの刺激に対してさまざまな行動を示す。これら動物の行動は、 ア 的行動と習得的行動に分けることができる。
ア 的行動は、遺伝的に決められた固定的な神経回路によって生じる。 ア 的行動を引きおこすきっかけになる外界からの刺激を イ 刺激という。引きおこされる行動のパターンのうち、リズミカルな運動パターンを生じさせる神経回路は ウ 発生器と呼ばれており、歩行運動などの際に働いている。
これに対して、習得的行動では、受容した刺激に応じて行動をつかさどる神経回路が可塑的に変化し、結果的に刺激に対する行動が変化する。この変化を学習という。また、2種類の刺激を結びつける学習は連合学習という。
線虫は線形動物の一種であり、体長 $1\text{ mm}$ ほどの細長い糸状の形状をしている。線虫はさまざまな分子に対する走性(走化性)を示すことが知られている。たとえば、アルコールの一種であるプロパノールには近づいていく走化性(正の走化性)を示し、塩酸希釈液には逆の負の走化性を示す。
【実験手順と条件の整理】
・手順1: 200匹の線虫を網コップに移し、蒸留水で水洗いする。
・手順2(トレーニング): 表1の4種類の溶液のいずれかに1秒間浸し、すぐ蒸留水で水洗いする操作を10回連続で繰り返す。
溶液①: 蒸留水($\text{pH 7}$)
溶液②: $1\%$プロパノール水溶液($\text{pH 7}$)
溶液③: 塩酸希釈液($\text{pH 4}$)
溶液④: $1\%$プロパノールを含む塩酸希釈液($\text{pH 4}$)
・手順3(走化性測定): 10分間休ませた後、走化性測定用培地の中央にすべて置く。点ア(領域1側)には$1\%$プロパノール水溶液を、点イ(領域2側)には蒸留水を一滴ずつ滴下。10分後、線虫はすべて領域1か領域2のどちらかに移動した。次の式で走化性指標を計算した。
$$\text{走化性指標} = \frac{(\text{領域1に移動した線虫の数}) - (\text{領域2に移動した線虫の数})}{(\text{線虫の総数})}$$
・図3のグラフ結果: トレーニング溶液「無」「①」「②」「③」ではすべて走化性指標が約 $0.6$(特に溶液②ではちょうど $0.6$)であったのに対し、溶液④のみ走化性指標が約 $0.0$(わずかにマイナス、ほぼ $0$)に激減した。
問1・問2:動物の行動の基礎用語と走化性指標からの個体数計算
問1. ア〜ウの空欄に入る適切な語句を答えよ。
問2. トレーニング溶液②でトレーニングした後、手順3において何匹の線虫が領域1に移動したか答えよ。
STEP 1問1:行動学の重要キーワードを確認しよう!
- ア:生得(遺伝的に決められた生まれつきの行動は生得的行動)
- イ:鍵(またはリリース)(生得的行動を引き起こす特有のきっかけとなる外界からの刺激は鍵刺激(リリース刺激))
- ウ:パターン(または中枢パターン)(歩行や遊泳、呼吸などリズミカルな運動パターンを自動的に生み出す神経回路はパターン発生器(中枢パターン発生器:CPG)と呼ばれます)
STEP 2問2:連立方程式を立てて領域1に移動した線虫の数 $x$ を求めよう!
手順1より、実験に用いた線虫の総数は $200$ 匹です。また手順3より「線虫はすべて領域1か2のどちらかに移動した」とあります。
そこで、領域1に移動した線虫の数を $x$ 匹、領域2に移動した線虫の数を $y$ 匹とおくと、総数が $200$ 匹なので次の①式が成り立ちます。
$$x + y = 200 \quad \Longleftrightarrow \quad y = 200 - x \quad \cdots \text{①}$$
次に、図3のグラフから、トレーニング溶液②における走化性指標を読み取ると $0.6$ です。走化性指標の定義式に代入すると、次の②式が成り立ちます。
$$\text{走化性指標} = \frac{x - y}{200} = 0.6 \quad \cdots \text{②}$$
②式の両辺に $200$ を掛けて、①式の $y = 200 - x$ を代入しましょう!
$$x - y = 200 \times 0.6 = 120$$
$$x - (200 - x) = 120$$
$$2x - 200 = 120 \quad \Longrightarrow \quad 2x = 320 \quad \Longrightarrow \quad x = 160\text{ 匹}$$
(検算:$x = 160$ 匹、$y = 40$ 匹のとき、$\dfrac{160 - 40}{200} = \dfrac{120}{200} = 0.6$ でピッタリ一致します!)
最終解答
問1 ア:生得 イ:鍵(リリース) ウ:パターン(中枢パターン)
問2 160 匹
問3:連合学習(古典的条件付け)の解釈と「慣れ」の否定
問3. 図3をみると、走化性指標はトレーニング溶液④を用いたトレーニングを行ったときのみ著しい違いがみられた。この結果から、2種類の物質が混ざっているトレーニング溶液④でトレーニングを行ったことにより連合学習が成立したと考えた。すなわち、「本来なら エ の刺激の受容によって生じる走化性を、 オ の刺激を受容したときにも示すような個体が現れた」と実験結果を解釈した。なお、今回の学習は、線虫の自発的行動に関わる学習ではないため、 カ 条件付けではない。
1) 実験結果について、上の文章のエ〜カの空欄に入る語句を答えよ。
2) 下線部の結果は、トレーニング溶液④に含まれるプロパノールに対する「慣れ」の学習で生じたのではないと考えられる。実験結果にもとづいてその理由を述べよ。
STEP 1問3 1) 何と何が結びついたのか?(エ〜カの穴埋め)
手順3のテストでは、点アに「プロパノール」を置いています。通常(無、①、②、③)ならプロパノールに正の走化性を示して領域1に集まる(走化性指標 $\fallingdotseq 0.6$)のに、溶液④(プロパノール+塩酸)でトレーニングした線虫だけは、プロパノールに集まらなくなり(または避けるようになり)、走化性指標が約 $0$(わずかに負)になりました。
これは、トレーニング中にプロパノールと塩酸を同時に受容したことで、「プロパノール=嫌な塩酸が来るぞ!」と結びつき、本来なら「塩酸(塩酸希釈液)」(エ)の刺激の受容によって生じる負の走化性(忌避行動)を、「プロパノール」(オ)の刺激を受容したときにも示すような個体が現れたと解釈できます。
また、連合学習には「古典的条件付け(パブロフ型条件付け:2つの刺激の連合)」と、動物の自発的行動に対して報酬や罰を与える「オペラント条件付け」(カ)があります。今回は自発的行動に関わる学習ではないため、オペラント条件付けではありません。
STEP 2問3 2) なぜプロパノールに対する「慣れ(馴化)」ではないと言えるのか?
「慣れ(馴化)」とは、同じ刺激を繰り返し受容することで、その刺激に対する反応性が低下する学習(非連合学習)です。
もし「溶液④でプロパノールに10回浸したから、プロパノールの匂いに慣れて反応しなくなっただけだ!」という仮説が正しいとしたら、$1\%$プロパノール水溶液単独である「トレーニング溶液②」で全く同じように10回浸したときにも、プロパノールに対する慣れが生じて走化性指標が大きく低下するはずです。
しかし図3を見ると、トレーニング溶液②で処理した線虫の走化性指標は約 $0.6$ であり、トレーニングを行わない対照群(無)や蒸留水(①)と全く変わらず強い正の走化性を示しています。だから単なる「慣れ」ではないと証明できるのです!
最終解答
問3 1) エ:塩酸(塩酸希釈液) オ:プロパノール カ:オペラント
問3 2) もしプロパノールに対する「慣れ」によって走化性指標が低下したのであれば、1%プロパノール水溶液単独(トレーニング溶液②)で繰り返し処理したときにも同様に走化性指標が低下するはずであるが、図3において溶液②では対照実験(無や溶液①)と変わらず高い走化性指標(0.6)を示しているため。
問4:転写・翻訳阻害実験からの学習メカニズムの検証
問4. 実験の手順1を行う前から薬剤が入った培地上で線虫を飼育し、線虫の細胞での転写や翻訳を阻害した後に実験を行った。その結果、図3と同様の結果を得た。このことをふまえて、トレーニング溶液④でのトレーニングによりどのようなしくみで学習が生じたと考えられるか。次の考察1〜3のなかから実験結果が説明できる可能性がもっとも高いと考えられるものをひとつ選び、番号で答えよ。また、それを選んだ理由と他を選ばなかった理由を述べよ。
考察1: 走化性を決定する神経組織のなかから、細胞が分裂して新たな神経細胞が生じたので神経回路が変化して学習が生じた。
考察2: 走化性を決定する神経組織のシナプスで、リン酸化などによる既存のタンパク質の活性が調節されて伝達効率が変化したので神経回路が変化して学習が生じた。
考察3: 塩酸にはプロパノールの刺激を受容する受容体タンパク質を変性させる作用があり、塩酸を含む溶液④によるトレーニングの結果、既存の受容体がプロパノールの刺激を受容できなくなり、結果として異なる走化性を示す学習が生じた。
STEP 1各考察の真偽を1つずつ実験データと照らし合わせて判定しよう!
- 考察1の判定(× 誤り): 細胞が分裂して新たな神経細胞が生じるためには、遺伝子発現(転写や翻訳による新たなタンパク質の合成)が必須です(また10回×1秒の浸漬+10分休憩という短時間での分裂も困難ですが、何より問題文の実験条件が決定打です)。今回の実験では「転写や翻訳を阻害した」にもかかわらず図3と全く同じように学習が成立したため、新たなタンパク質合成を必要とする考察1は否定されます。
- 考察2の判定(○ 正しい): 転写や翻訳を阻害しても学習が成立したということは、新たにタンパク質を合成しなくても、すでに細胞内に存在している(既存の)タンパク質をリン酸化などで修飾して活性を調節し、シナプスの伝達効率を変化させるしくみによって短期的な連合学習が成立したと考えられます。これが実験結果と完全に合致します!
- 考察3の判定(× 誤り): もし「塩酸($\text{pH 4}$)がプロパノールの受容体タンパク質を変性させて壊してしまったからプロパノールを感じなくなった」のだとしたら、塩酸希釈液単独である「トレーニング溶液③」で処理したときにもプロパノール受容体が変性し、手順3でプロパノールを受容できなくなって走化性指標が $0$ 付近へ低下するはずです。しかし図3を見ると、溶液③で処理した線虫は走化性指標が約 $0.6$ と高く、正常にプロパノールを受容して正の走化性を示しています。よって考察3も明確に誤りです!
最終解答
問4 番号:2
理由:転写や翻訳を阻害して新たなタンパク質合成ができない状態でも同様の学習が成立したことから、新たなタンパク質合成を伴う細胞分裂によって神経細胞が生じるという考察1は否定され、既存のタンパク質のリン酸化などによる活性調節でシナプスの伝達効率が変化したとする考察2が最も妥当である。また、もし塩酸によってプロパノールの受容体タンパク質が変性して受容できなくなるのであれば、塩酸希釈液単独(トレーニング溶液③)で処理したときにも走化性指標が低下するはずであるが、溶液③では高い正の走化性を示しているため考察3も誤りである。
大問 4 個体群生態学・群れと縄張りの経済性・捕食-被食関係・絶滅の渦
配点目安:約25点
いよいよ最後の大問4!生態学(行動生態学・個体群・群集)の総合問題です。グラフの読み取りと描図が2問ありますが、原理がわかればとっても楽しいですよ!
・群れの大きさ(図1):1日の総時間から「警戒時間+争う時間」を引いた残りが「採食時間」。だから「警戒+争い」が最小になる交点の位置で、「採食時間」は最大(山の頂点)になります!
・縄張りの大きさ(図2):最適な縄張りサイズは「利益=労力」の交点cではなく、「純利益(利益-労力)が最大になる b」!ここ、ひっかかりやすい超重要ポイントです!最後まで一気に駆け抜けましょう!
4. 個体群に関する各問いに答えよ。
ある地域に生息する同じ種の個体のまとまりを個体群という。個体群における個体間にはさまざまな関係性がみられる。多数の個体が統一的な行動をとる動物の個体群を群れという。①群れのなかで各個体が捕食者などを警戒する時間と個体間で争う時間は、群れの大きさにより変化し、最適な群れの大きさはそれらのバランスで決まってくる。また、特定の生物種は、個体や群れによる空間の占有を行い、その空間に同種の他個体が侵入すると排除する行動を行う。この防衛される空間を縄張りという。②縄張りの大きさは、個体が縄張りから得られる利益と維持に要する労力から決まってくる。
異なる種の個体群間でもさまざまな関係性が存在し、食物や生活空間などの共通する資源をめぐる種間競争がおこる場合がある。また、食う食われるという捕食-被食の相互関係もある。この関係においては被食者の個体数が一方的に減少するのではなく、③捕食者と被食者の個体数が相互に関係しながら周期的に変化する。そのほかにも、④異種個体群間にはさまざまな相互作用が形成される。
問1:最適な群れの大きさと採食時間・捕食者増加時の変化
問1. 下線部①に関して、群れの大きさと各個体が警戒する時間と個体間で争う時間は図1のように表され、ふたつの曲線の交点が最適な群れの大きさになる。ここで、群れが大きくなるときは、個体数、占有面積は増加し、個体群密度も高くなるとする。
1) 図1のグラフに「各個体が採食に費やせる時間」を表す曲線を追加するとどのようになるか。解答欄のグラフに記入せよ。
2) ある群れにおいて、その生物の捕食者の数が増加したとき、最適な群れの大きさはもとの最適な群れの大きさとくらべてどのようになるか。a〜dから適切なものを選び、記号で答えよ。
a. 小さくなる b. 大きくなる c. 変わらない d. 小さくなる場合と大きくなる場合がある
STEP 1問1 1) なぜ「最適な群れの大きさ」の真上で山(上に凸)になるの?
動物が活動できる1日の時間のうち、「捕食者を警戒する時間」と「仲間と争う時間」を除いた残りの時間を「採食(エサを食べること)に費やせる時間」に充てることができます。
・群れが小さすぎるとき(左側): 1匹あたりが捕食者を警戒しなければならない時間が非常に長いため、採食時間は短くなります。
・群れが大きすぎるとき(右側): 仲間同士でエサや場所をめぐって争う時間が非常に長くなるため、やはり採食時間は短くなります。
・最適な群れの大きさ(中央の点線の位置): 「警戒する時間+争う時間」の合計が最小になるため、「採食に費やせる時間」が最大(極大)になります!したがって、「最適な群れの大きさ」の破線上で頂点(ピーク)となる上に凸の山形曲線を描けば大正解です!
STEP 2問1 2) 捕食者の数が増加したら、最適な群れの大きさはどう変わる?
捕食者の数が増加すると、同じ群れの大きさであっても、各個体が捕食者を「警戒する時間」がこれまでより増加します(つまり図1の「警戒する時間」の曲線が全体的に上(右)へシフトします)。
すると、右下がりの「警戒する時間」の曲線が上に持ち上がるため、右上がりの「個体間で争う時間」の曲線との交点は右側(群れの大きさが大きくなる方向)へと移動します!(直感的にも、外敵が増えたときは、より大きな群れを作った方が1匹あたりの警戒負担を減らせて有利になりますね。)よって b(大きくなる) が正解です!
最終解答
問1 1) 上図の赤線のように、「最適な群れの大きさ」を示す縦の破線上で最大(頂点)となり、その左右(群れが小さい領域および大きい領域)では低くなる「上に凸(山形)の曲線」を記入する。
問1 2) b
問2:縄張りの経済性モデル(図2)と個体群密度増加時のグラフ変化
問2. 下線部②に関して、縄張りの大きさと縄張りから得られる利益、および維持に要する労力の関係は図2で表される。
1) 最適な縄張りの大きさはグラフのa〜dのどの位置になるか。記号で答えよ。
2) 生物種Aはつがいで縄張りを作る性質をもつ。ある空間において、この生物種Aの縄張りに関して図2の関係性が成り立っている。この空間で生物種Aの個体群密度が増加した場合、図2のグラフはどのように変化するか。解答欄のグラフに何がどのように変化するか分かるように記入せよ。変化について説明文を書き込んでもよい。
STEP 1問2 1) 最適な縄張りの大きさは「純利益=利益-労力」が最大になる位置!
縄張りをもつ動物にとって最も有利(最適)なのは、「縄張りから得られる利益(破線)」から「維持に要する労力(実線)」を差し引いた差(=純利益)が最も大きくなる大きさです。
・a〜cの間: 利益(破線)が労力(実線)を上回っており、縄張りを作るメリットがあります。特に b の位置で、破線と実線の縦方向の幅($(\text{利益}) - (\text{労力})$)が最大になっています!
・cの位置: 利益と労力が等しくなり、差し引きゼロ(メリットなし)になります(aとcは縄張りが成立する最小値と最大値)。
・dの位置: 労力が利益を上回り、赤字になります。
したがって、最適な縄張りの大きさは b です!
STEP 2問2 2) 個体群密度が増加すると、なぜ「維持に要する労力」の曲線が上がるのか?
同じ空間内で生物種Aの個体群密度が増加すると、縄張りをもたない周囲の同種他個体が縄張りに侵入してくる頻度が高まります。そのため、同じ大きさの縄張りを維持・防衛するために侵入者を排除する時間やエネルギー(=維持に要する労力)が増大します。
したがって、図2において「縄張りから得られる利益(破線)」は変化せず、「維持に要する労力(実線)」の曲線が全体的に上側(左側)へ移動し、縄張りの大きさに対する傾きがより急になるように描き込めばOKです!(※その結果、最適な縄張りの大きさはbより左側の小さい方へ移動します。)
最終解答
問2 1) b
問2 2) 上図の赤線のように、「維持に要する労力」を表す実線の曲線を、もとの実線よりも上側(左側)へシフトさせ、傾きが急になるように記入する。(説明文記入例:個体群密度が増加すると同種他個体の侵入頻度が高まり防衛コストが増える ため、「維持に要する労力」の曲線が上方に移動する。)
🎯 2025年度 慈恵医大・生物 攻略のポイント総括
- 実験データ・グラフの論理的読解(第1問・第2問): 見慣れない実験系や複数のグラフが与えられても、対照実験との比較や「どの変数が変化したか」を丁寧に追えば、標準的な基礎知識(免疫・光合成・遺伝子発現)に帰着できます。
- 進化・系統と発生・形態形成の計算(第3問): 系統樹の推定(最大節約法など)や塩基置換速度の計算は慈恵医大の頻出テーマです。共通祖先の分岐年代と配列間の差異数を正確に結びつけましょう。
- 生態学モデルのグラフ描画(第4問): 「最適な群れの大きさ」や「縄張りの経済性(コストとベネフィット)」は、曲線の意味(利益$-$労力=純利益の最大化)を本質的に理解していれば、条件変化時のシフトも迷わず作図できます。
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【出典・引用に関する表記】本ページで扱う入試問題の出典は各大学(東京慈恵会医科大学 2025年度 入試問題)に帰属します。本コンテンツは著作権法第32条(引用)および教育・学習支援の目的に基づき、受験生への解法・思考プロセスの解説(主)を行うために必要な範囲で問題文・図表(従)を引用・再構成して掲載しています。解答・解説および図解の著作権はTMPS医学館に帰属します。