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近畿大学 医学部 生物(2022年度)全問題・超図解解説

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理系担当 Sora先生
赤本キラー!途中式・図解100%網羅 Sora先生 ✕ ニックニ先生 徹底解説

「これより〜となる」の省略はゼロ!近畿大学(2022年度)生物をSora先生が完全解剖

こんにちは!TMPS医学館の理系担当Sora先生です。市販の過去問集(赤本など)で途中の式変形や思考プロセスが1行で飛ばされて悩んでいませんか?
このページでは、近畿大学(2022年度)の生物について、中学生でも追える1ステップずつの途中式と解法プロセスをすべて公開しています!

Sora先生

「近大医学部の生物は、基礎知識の正確さ+計算・論述のスピード勝負!」

こんにちは!TMPS医学館の理系担当Sora先生と、指導統括のニックニ先生です。
2022年度の近畿大学医学部(前期)の生物は、大問I(呼吸とアルコール発酵・呼吸商の計算)、大問II(酵素とABO式血液型の分子遺伝学)、 大問III(感覚受容器と平衡感覚)、大問IV(ヒトと動物の初期発生・細胞接着と細胞骨格)の全4題構成でした。知識の穴埋めは標準的ですが、大問Iの文字式を使った呼吸商計算や、大問IIの150字・80字論述で差がつきます。1ステップも省略せず完全図解していくので、一緒にマスターしましょう!

⚡ 解答一覧(スピードチェック)

まずは自分の答え合わせに活用!

大問 I :呼吸とアルコール発酵

  • 問1:[ア] 2 / [イ] 4 / [ウ] 脱水素 / [エ] 酸化 / [オ] 2 / [カ] $\text{NADH}$ / [キ] 脱炭酸 / [ク] アセトアルデヒド / [ケ] エタノール / [コ] $\text{FAD}$ / [サ] $\text{FADH}_2$ / [シ] ATP合成酵素 / [ス] 水($\text{H}_2\text{O}$)
  • 問2:パスツール効果
  • 問3:(i) A:アデニン、B:リボース / (ii) アデノシン / (iii) ①、②
  • 問4:$1.22$
  • 問5:$\dfrac{1}{n-1}$ (mg)
  • 問6:$6n+32$ (mmol)

大問 II :酵素の性質とABO式血液型

  • 問1:[ア] 触媒 / [イ] 基質 / [ウ] 活性部位(活性中心) / [エ] 対立 / [オ] ペプチド
  • 問2:pH(水素イオン濃度)、塩濃度(または補酵素・阻害物質の濃度などから2つ)
  • 問3:$\alpha$ヘリックス、$\beta$シート($\beta$構造)
  • 問4:流動モザイクモデル
  • 問5:A型の成人:B型の凝集原 / O型の成人:A型の凝集原とB型の凝集原の両方
  • 問6:A酵素とB酵素の両方
  • 問7:266番目と268番目のアミノ酸の違いにより活性部位の立体構造が異なり、結合する基質(糖)に対する基質特異性が異なる。A酵素の活性部位にはH型糖鎖とN-アセチルガラクトサミンが、B酵素の活性部位にはH型糖鎖とガラクトースが特異的に結合する。(121字)
  • 問8:①塩基置換や欠失・挿入(フレームシフト)により酵素活性を失ったタンパク質が作られる可能性。(46字)
    ②プロモーター領域の変異やナンセンス変異等により糖転移酵素自体が合成されない可能性。(43字)

大問 III :感覚受容器と平衡感覚

  • 問1:a:網膜 / b:うずまき管(コルチ器) / c:味蕾 / d:嗅上皮 / e:水溶性の化学物質 / f:揮発性(気体)の化学物質
  • 問2:[ア] 耳石(平衡石) / [イ] リンパ液(内リンパ)
  • 問3:名称:受容器電位 / 変化:膜電位変化(受容器電位)の振幅が大きくなる。
  • 問4:b、c
  • 問5:重力により耳石を含む膜がずれて感覚細胞の感覚毛が屈曲し、機械受容チャネルが開いて陽イオンが流入する。(50字)
  • 問6:a
  • 問7:半規管内のリンパ液が慣性で相対的に逆向きに流れ、クプラを介して感覚細胞の感覚毛が屈曲するため。(49字)
  • 問8:互いにほぼ直交する3つの面上に配置。(18字)
  • 問9:姿勢や眼球運動の制御(10字)

大問 IV :初期発生と細胞接着・細胞骨格

  • 問1:[ア] 37兆(または60兆) / [イ] 正方形 / [ウ] 内部細胞塊(内細胞塊) / [エ] 胚盤胞 / [オ] 胎盤 / [カ] カルシウム($\text{Ca}^{2+}$) / [キ] カドヘリン / [ク] アクチン / [ケ] ケラチン / [コ] 密着結合(タイトジャンクション)
  • 問2:カエル:端黄卵、全割の不等割 / ニワトリ:端黄卵、部分割の盤割(※8細胞期胚の模式図はを参照)
  • 問3:① 骨格:中間径フィラメント / 結合:デスモソーム(接着斑) / モーター:なし
    ② 骨格:アクチンフィラメント / 結合:接着結合(アドヘレンスジャンクション) / モーター:ミオシン
  • 問4:隣り合う細胞膜どうしを密着させて隙間を塞ぎ、細胞間隙を通じた物質の通過を防いで内部環境を維持する。(50字)

大問 I :呼吸とアルコール発酵・呼吸商の計算

配点目安:約25% / 目標解答時間:15分
Sora先生
💡 Sora先生の1秒核心スキャン

大問Iは「好気呼吸とアルコール発酵」の王道テーマです!前半(問1〜問3)は絶対に落とせない基礎知識。勝負の分かれ目は後半(問4〜問6)の「呼吸商(RQ)の文字式計算」です。呼吸1 molあたり$\text{O}_2$を6 mol消費・$\text{CO}_2$を6 mol放出し、アルコール発酵1 molあたり$\text{O}_2$は0 mol・$\text{CO}_2$を2 mol放出するという化学反応式の係数比さえ掴めば、文字式でも秒殺できますよ!

【問題文 I】

次の文章を読んで下の問いに答えよ。

生物は有機物を分解することによって、「生体のエネルギー通貨」と喩えられるATPを合成し、生命活動を営んでいる。酸素を用いずに有機物を分解してATPを合成する過程を発酵といい、酸素を用いて有機物を分解し、ATPを合成する過程を呼吸という。酵母は、酸素が少ない時にはアルコール発酵を行って、多量のグルコースを消費する。一方で、酸素が多くなると発酵を抑制して呼吸を促進し、グルコースから効率よくATPを合成する。

呼吸の過程は、解糖系、クエン酸回路、電子伝達系の3段階の反応からなる。解糖系では、グルコース1分子が分解されて2分子のピルビン酸ができる。この過程では、前半にグルコース1分子あたり ア 分子のATPが消費され、後半に イ 分子のATPが合成される。また、解糖系では ウ 酵素によるグリセルアルデヒドリン酸の エ 反応が進み、 オ 分子の補酵素$\text{NAD}^+$が還元されて カ ができる。酵母の行うアルコール発酵では、ピルビン酸が キ 酵素のはたらきによって ク となり、さらに ク が カ によって還元され、最終的に ケ になる。この過程で カ は、$\text{NAD}^+$に戻される。

クエン酸回路では、ミトコンドリアのマトリックスに存在する ウ 酵素と キ 酵素により、ピルビン酸が完全に分解される。この反応過程では、 ウ 反応によって生じた水素イオンと電子が、電子受容体である$\text{NAD}^+$や コ に受け渡され、 カ や サ となる。

解糖系とクエン酸回路で生じた カ や サ から、電子がミトコンドリアの内膜にある電子伝達系に運ばれ、水素イオンがミトコンドリアの膜間腔に輸送される。水素イオンが、その濃度勾配に従って シ を通り、マトリックス側に戻るとき、ATPが合成される。電子は最終的に酸素に受け渡され、さらに水素イオンと結合して ス になる。

📊 【超図解】解糖系・アルコール発酵・好気呼吸の反応マップ

細胞質基質(解糖系 + アルコール発酵) ミトコンドリア(クエン酸回路 + 電子伝達系) グルコース (C6) 前半:2 ATP消費 [ア] 後半:4 ATP合成 [イ] 2 NAD+ → 2 NADH [オ,カ] 2 ピルビン酸 (C3) 脱炭酸酵素 [キ] → 2 CO2 2 アセトアルデヒド [ク] 2 NADH→2 NAD+ 2 エタノール [ケ] O2十分で発酵抑制(パスツール効果) クエン酸回路(マトリックス) 脱水素酵素[ウ]・脱炭酸酵素[キ]により完全分解(6 CO2放出) 2 ATP合成 + 8 NADH [カ] + 2 FADH2 [サ] 生成 電子(e-)とH+を運搬 電子伝達系・酸化的リン酸化(内膜) H+がATP合成酵素 [シ] を通りマトリックスへ戻る(最大34 ATP合成) 6 O2 + 24 H+ + 24 e- → 12 H2O(水)[ス]

問1.文章中の ア 〜 ス に入る最も適切な語句または数字を、解答欄に記入せよ。

STEP 1解糖系の収支(ア〜カ):
グルコース1分子が2分子のピルビン酸に分解される解糖系では、前半でグルコースにリン酸基を与えるために 2 分子([ア])のATPが消費され、後半で 4 分子([イ])のATPが合成されます(差し引き2分子のATP合成)。
また、グリセルアルデヒドリン酸(グリセルアルデヒド3-リン酸)が 脱水素 酵素([ウ])によって水素を奪われる反応は、水素(電子)を失うため 酸化 反応([エ])です。このときグルコース1分子あたり 2 分子([オ])の補酵素$\text{NAD}^+$が還元されて $\text{NADH}$([カ])が生じます。

STEP 2アルコール発酵(キ〜ケ):
酵母のアルコール発酵では、ピルビン酸($\text{CH}_3\text{COCOOH}$)から 脱炭酸 酵素([キ])のはたらきで$\text{CO}_2$が抜けて アセトアルデヒド($\text{CH}_3\text{CHO}$、[ク])となり、さらに$\text{NADH}$によって還元されて エタノール($\text{C}_2\text{H}_5\text{OH}$、[ケ])になります。

STEP 3クエン酸回路と電子伝達系(コ〜ス):
クエン酸回路では、電子受容体である$\text{NAD}^+$や $\text{FAD}$([コ])が水素を受け取って、$\text{NADH}$([カ])や $\text{FADH}_2$([サ])となります。
電子伝達系で膜間腔に汲み出された$\text{H}^+$(水素イオン)は、濃度勾配に従って内膜にある ATP合成酵素([シ])を通ってマトリックスに戻り、ATPを合成します。電子は最終的に酸素($\text{O}_2$)に渡され、$\text{H}^+$と結合して 水($\text{H}_2\text{O}$)([ス])になります。

問2.下線部の現象(「酵母は、酸素が少ない時にはアルコール発酵を行って、多量のグルコースを消費する。一方で、酸素が多くなると発酵を抑制して呼吸を促進し、グルコースから効率よくATPを合成する」)を何と呼ぶか。

解説通性嫌気性菌である酵母において、酸素($\text{O}_2$)濃度が高まるとアルコール発酵が抑制されて好気呼吸が進行し、グルコースの消費量が減少する現象を、発見者ルイ・パスツールにちなんで パスツール効果 と呼びます。

問3.右の図はATPの構造式である。
(i) AとBの名称をそれぞれ答えよ。
(ii) AとBを合わせた部分の名称を答えよ。
(iii) 図の①〜④のうち、高エネルギーリン酸結合はどれか。全て答えよ。

HO - P 〜O - P 〜O - P - O - CH2 ① ② ③ ④ ①・②:高エネルギーリン酸結合 五炭糖:リボース (3'と2'の炭素に -OH) B 塩基:アデニン (プリン塩基) A A + B = アデノシン(ヌクレオシド)

(i)Aは窒素を含むプリン塩基の アデニン、Bは五炭糖の リボース です。

(ii)アデニン(A)とリボース(B)が結合した化合物(ヌクレオシド)を アデノシン と呼びます(アデノシンにリン酸が3つ結合するから「アデノシン三リン酸=ATP」です)。

(iii)3つのリン酸基どうしが結合している部分($\text{P}-\text{O}-\text{P}$)が高エネルギーリン酸結合です。図では1番目と2番目のリン酸の間である ① と、2番目と3番目のリン酸の間である ② が該当します(※③と④は3番目のリン酸とリボースの$\text{CH}_2\text{OH}$基との間の通常のリン酸エステル結合なので注意!)。

問4.酵母が有機物としてグルコースのみを分解してATPを合成したとき、アルコール発酵と呼吸の各々で分解されたグルコースの量比が、$2:3$であった。このとき呼吸商はいくらになるか。小数第3位を四捨五入して、第2位まで求めよ。

STEP 1呼吸とアルコール発酵の化学反応式を書き出す:
グルコース1 molあたりで消費される$\text{O}_2$の物質量と、放出される$\text{CO}_2$の物質量を確認します。

・好気呼吸: $\text{C}_6\text{H}_{12}\text{O}_6 + 6\text{O}_2 + 6\text{H}_2\text{O} \longrightarrow 6\text{CO}_2 + 12\text{H}_2\text{O}$
 (グルコース $1\text{ mol}$ につき、$\text{O}_2$ 消費 $= 6\text{ mol}$、$\text{CO}_2$ 放出 $= 6\text{ mol}$)
・アルコール発酵: $\text{C}_6\text{H}_{12}\text{O}_6 \longrightarrow 2\text{C}_2\text{H}_5\text{OH} + 2\text{CO}_2$
 (グルコース $1\text{ mol}$ につき、$\text{O}_2$ 消費 $= 0\text{ mol}$、$\text{CO}_2$ 放出 $= 2\text{ mol}$)

STEP 2量比 $2:3$ を用いて呼吸商(RQ)を計算する:
アルコール発酵で分解されたグルコースを $2\text{ mol}$、呼吸で分解されたグルコースを $3\text{ mol}$ とおきます。

  • 全体の $\text{O}_2$ 消費量 $= 0 \times 2 + 6 \times 3 = 18\text{ mol}$
  • 全体の $\text{CO}_2$ 放出量 $= 2 \times 2 + 6 \times 3 = 4 + 18 = 22\text{ mol}$

したがって、呼吸商($\text{RQ} = \dfrac{\text{CO}_2\text{放出量}}{\text{O}_2\text{消費量}}$)は、 $$\text{RQ} = \frac{22}{18} = \frac{11}{9} = 1.222\cdots \fallingdotseq \mathbf{1.22}$$ となります。

問5.問4と同じ条件で酵母がATPを合成したとき、呼吸商の値が $n$($n>1$)であった。このとき、アルコール発酵で消費されたグルコースが $3\text{ mg}$ であったとすると、呼吸で消費されたグルコースの質量($\text{mg}$)はいくらか。数式で答えよ。

STEP 1質量比と物質量(mol)比の関係:
どちらも同じ「グルコース(分子量180)」なので、消費されたグルコースの質量(mg)の比は、そのままグルコースの物質量(mol)の比と等しくなります。
そこで、呼吸で消費されたグルコースの質量を $x\text{ (mg)}$ とおくと、アルコール発酵:呼吸で消費されたグルコースの物質量比も $3 : x$ となります。

STEP 2呼吸商 $n$ の方程式を立てて $x$ について解く:
・$\text{O}_2$ 消費量の比 $= 6x$
・$\text{CO}_2$ 放出量の比 $= 2 \times 3 + 6x = 6 + 6x$
よって、呼吸商 $n$ は次のように表せます。 $$n = \frac{6 + 6x}{6x} = \frac{1 + x}{x}$$ 両辺に $x$ を掛けて整理します。 $$nx = 1 + x \iff (n - 1)x = 1 \iff x = \mathbf{\frac{1}{n-1}} \text{ (mg)}$$

問6.問4と同じ条件で酵母がATPを合成したとき、呼吸商の値が $n$ であった。このとき、呼吸で $1\text{ mmol}$ のグルコースが消費されたとすると、酵母が合成するATPは最大で何 $\text{mmol}$ か。数式で答えよ。

STEP 1アルコール発酵で消費されたグルコースの物質量 $y\text{ (mmol)}$ を求める:
呼吸で消費されたグルコースが $1\text{ mmol}$、アルコール発酵で消費されたグルコースを $y\text{ (mmol)}$ とおきます。
問5と同様に呼吸商 $n$ の式を立てると、 $$n = \frac{2y + 6 \times 1}{6 \times 1} = \frac{2y + 6}{6} = \frac{y + 3}{3}$$ これを $y$ について解くと、 $$y + 3 = 3n \iff y = 3n - 3 \text{ (mmol)}$$ (※もし呼吸商が $n=1$ なら $y=0$ となり、発酵は起きていないことと完全に一致しますね!)

STEP 2グルコース $1\text{ mmol}$ あたりの最大ATP合成量を確認する:

  • 好気呼吸: グルコース $1\text{ mmol}$ あたり、解糖系で $2\text{ mmol}$、クエン酸回路で $2\text{ mmol}$、電子伝達系で最大 $34\text{ mmol}$ の、合計最大 $38\text{ mmol}$ のATPが合成されます。
  • アルコール発酵: グルコース $1\text{ mmol}$ あたり、解糖系でのみ $2\text{ mmol}$ のATPが合成されます。

STEP 3全体の最大ATP合成量を計算する:
呼吸($1\text{ mmol}$)とアルコール発酵($y = 3n-3\text{ mmol}$)で合成されるATPの合計は、 $$\text{総ATP合成量} = 38 \times 1 + 2 \times y = 38 + 2(3n - 3) = 38 + 6n - 6 = \mathbf{6n + 32} \text{ (mmol)}$$

👨‍🏫 ニックニ先生の検算テクニック!

文字式の答えが出たら、必ず「特殊な値($n=1$)」を代入して検算しよう!
好気呼吸のみが行われているとき、呼吸商は $n=1$ だね。このとき呼吸で $1\text{ mmol}$ のグルコースが消費されたら、合成されるATPは最大 $38\text{ mmol}$ のはず。求めた式 $6n+32$ に $n=1$ を代入すると $6(1)+32 = 38\text{ mmol}$!これで100%確信を持って次の大問に進めるぞ!

大問 II :酵素の性質とABO式血液型の分子遺伝学

配点目安:約25% / 目標解答時間:18分
Sora先生
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大問IIは「酵素の基本性質」と「ABO式血液型を決める糖転移酵素(A酵素・B酵素)」の融合問題です!
一番のポイントは、「$A$遺伝子や$B$遺伝子そのものが赤血球表面の糖鎖ではなく、H型糖鎖に特定の糖を結合させる『糖転移酵素(タンパク質)』をコードしている」という分子生物学的な仕組みです。リード文に書かれているヒントを丁寧に拾えば、問7(150字)と問8(80字×2)の論述もバッチリ満点が狙えます!

【問題文 II】

次の文章を読んで下の問いに答えよ。

酵素は、①生体内の穏やかな条件下で化学反応が進むよう、 ア の機能を果たす。酵素の作用を受ける物質を イ という。酵素を構成する②タンパク質は、そのアミノ酸配列に基づいた立体構造を形成するが、 イ はその立体構造中の特定の部位に結合して、酵素- イ 複合体を形成する。 イ に対する化学反応が進行するこの部位を、酵素の ウ と呼ぶ。

ヒトの赤血球でABO式血液型の凝集原を担うのは、その大部分が③細胞膜を貫通する糖タンパク質が細胞外に向かって出している糖鎖である。ほとんどのヒト個体の赤血球では、その末端にフコース、ガラクトース、N-アセチルグルコサミンと呼ばれる糖が特定の位置関係で共有結合を形成した、H型と呼ばれる糖鎖が存在する。H型糖鎖の末端にあるガラクトースに、さらにN-アセチルガラクトサミンと呼ばれる糖が特定の位置関係で共有結合したものが、A型の凝集原となる糖鎖構造であり、H型糖鎖の末端に、N-アセチルガラクトサミンの代わりにガラクトースが結合したものが、B型の凝集原となる糖鎖構造である。

ABO式血液型を決定する遺伝子は、染色体上の一つの遺伝子座に見られる複数の エ 遺伝子である。A型凝集原の発現に関わる $A$ 遺伝子の産物は、H型糖鎖の末端にN-アセチルガラクトサミンを結合させる反応を ア する糖転移酵素(A酵素)であり、B型凝集原の発現に関わる $B$ 遺伝子の産物は、H型糖鎖の末端にガラクトースを結合させる反応を ア する糖転移酵素(B酵素)である。④A酵素とB酵素は、同じ長さのポリ オ から成るが、そのアミノ基が残った末端から266番目のアミノ酸が、A酵素ではロイシン、B酵素ではメチオニンであり、同じく268番目のアミノ酸が、A酵素ではグリシン、B酵素ではアラニンであることが知られている。

📊 【超図解】ABO式血液型の糖鎖構造と糖転移酵素(A酵素・B酵素)のはたらき

O型(H型糖鎖のまま) 活性をもつ糖転移酵素なし H型糖鎖(共通土台) 血清中の抗体:抗A抗体・抗B抗体 A型(A型凝集原) A酵素(266:Leu, 268:Gly)が触媒 + N-アセチルガラクトサミン H型糖鎖(共通土台) 血清中の抗体:抗B抗体(B型凝集原に反応) B型(B型凝集原) B酵素(266:Met, 268:Ala)が触媒 + ガラクトース H型糖鎖(共通土台) 血清中の抗体:抗A抗体(A型凝集原に反応)

問1.文章中の ア 〜 オ に入る、最も適切な語句を解答欄に記入せよ。
問2.下線部①について、 イ や反応生成物、および酵素分子の濃度が一定の場合、酵素による ア 反応の速度を決定する生体内の条件として、温度の他にどのようなものがあるか。例を二つ挙げよ。
問3.下線部②について、タンパク質の立体構造のうち、二次構造と呼ばれるものを二つ挙げよ。
問4.下線部③について、細胞膜を構成する脂質二重層に埋め込まれたタンパク質(糖タンパク質を含む)は、脂質二重層の面内を動き回っていることが知られている。このような性質から名付けられた細胞膜の構造モデルは、何と呼ばれるか。
問5.血液型がA型の成人は、ABO式血液型のどのような凝集原に対する抗体を持っているか。また、O型の成人はどうか。
問6.血液型がAB型のヒトの細胞には、ABO式血液型を決定する遺伝子の産物として、どのような糖転移酵素が存在するか。

問1 ・[ア] 触媒:自身は変化せず化学反応の活性化エネルギーを下げて反応を促進するはたらき。
・[イ] 基質:酵素が作用する対象の物質。
・[ウ] 活性部位(活性中心):酵素分子の中で基質が結合し、触媒作用が行われる特定の部位。
・[エ] 対立:相同染色体上の同じ遺伝子座を占める、互いに異なる形質(A・B・Oなど)を支配する遺伝子を「対立遺伝子(複対立遺伝子)」といいます。
・[オ] ペプチド:アミノ酸がペプチド結合で多数つながった鎖を「ポリペプチド」といいます。

問2 基質・生成物・酵素の濃度と温度が一定のとき、生体内で酵素反応の速度を左右する環境要因や物質としては、pH(水素イオン濃度)、塩濃度(イオン強度)、補酵素(または金属イオンなどの補因子)の濃度、阻害物質(またはアロステリック効果をもたらす調節物質)の濃度 などがあります。この中から代表的な pH(水素イオン濃度)、塩濃度 の2つを挙げれば確実です。

問3 タンパク質の一次構造(アミノ酸配列)が水素結合によって部分的に規則正しく折りたたまれた構造を「二次構造」と呼び、代表的な2つはらせん状の $\alpha$ヘリックス と、屏風(びょうぶ)状の $\beta$シート($\beta$構造) です。

問4 1972年にシンガーとニコルソンが提唱した、流動性をもつリン脂質の二重層にタンパク質がモザイク状に埋め込まれて移動できるとするモデルを 流動モザイクモデル と呼びます。

問5 「どのような凝集原に対する抗体を持っているか」という問い方に注意して答えます。
・A型の成人:自身の赤血球にA型の凝集原をもつため、血清中には B型の凝集原 に対する抗体(抗B抗体/凝集素$\beta$)を持っています。
・O型の成人:A型・B型いずれの凝集原ももたないため、血清中には A型の凝集原とB型の凝集原の両方 に対する抗体(抗A抗体と抗B抗体)を持っています。

問6 AB型のヒトは遺伝子型が $AB$ であり、$A$ 遺伝子と $B$ 遺伝子の両方が発現(共優性/不完全優性ではなく両方とも形質が現れる)するため、細胞には A酵素とB酵素の両方(H型糖鎖の末端にN-アセチルガラクトサミンを結合させる糖転移酵素と、ガラクトースを結合させる糖転移酵素の両方) が存在します。

問7.下線部④から、A酵素とB酵素の ウ(活性部位)にはどのような違いがあると考えられるか。150字以内で答えよ。

思考プロセス 下線部④には「266番目と268番目のアミノ酸がA酵素とB酵素で異なる」と書かれています。これを酵素の一般論(下線部②)と結びつけて、以下の3ステップで論理を組み立てます。

  1. 原因: 266番目と268番目のアミノ酸の違いにより、活性部位(ウ)の立体構造が異なる。
  2. 結果(一般): そのため、活性部位に結合できる基質(糖)の種類、すなわち基質特異性が異なる。
  3. 具体例: 具体的には、A酵素の活性部位にはH型糖鎖とN-アセチルガラクトサミンが結合し、B酵素の活性部位にはH型糖鎖とガラクトースが特異的に結合するという違いがある。

解答例
266番目と268番目のアミノ酸の違いにより活性部位の立体構造が異なり、結合する基質(糖)に対する基質特異性が異なる。A酵素の活性部位にはH型糖鎖とN-アセチルガラクトサミンが、B酵素の活性部位にはH型糖鎖とガラクトースが特異的に結合する。(121字)

問8.血液型がO型のヒトが持つABO式血液型遺伝子座の エ(対立)遺伝子の実体については、複数の可能性が考えられる。そのうち二つの可能性について、それぞれ80字以内で説明せよ。

思考プロセス O型のヒトの赤血球表面は「H型糖鎖のまま(A型凝集原もB型凝集原も作られない)」です。なぜ $O$ 遺伝子からはH型糖鎖に糖を付加する反応が起きないのか?遺伝子発現(転写・翻訳)とタンパク質の機能という観点から、大きく次の2つの可能性に分けて説明します。

  • 可能性①(タンパク質は作られるが機能しない): コーディング領域の塩基の欠失・挿入(フレームシフト変異)や塩基置換(ミスセンス・ナンセンス変異)により、正常な立体構造や活性部位をもたず酵素活性を失ったタンパク質が作られる遺伝子である可能性。(※実際のヒトの $O$ 遺伝子の多くは、1塩基欠失によるフレームシフトで短い不活性タンパク質ができるタイプです!)
  • 可能性②(タンパク質自体が作られない/遺伝子欠失): 転写調節領域(プロモーターなど)の変異や遺伝子自体の欠損により、糖転移酵素の転写・翻訳が行われず、酵素タンパク質自体が合成されない遺伝子である可能性。

解答例
・可能性1:塩基の欠失・挿入や置換などの突然変異によりアミノ酸配列が変化し、立体構造が変化して糖転移酵素としての活性を失ったタンパク質が作られる遺伝子である可能性。(77字)
・可能性2:プロモーター領域の変異や遺伝子の欠損などにより、転写や翻訳が正常に行われず、糖転移酵素のタンパク質自体が全く合成されない遺伝子である可能性。(73字)

大問 III :感覚受容器と内耳の平衡感覚

配点目安:約25% / 目標解答時間:14分
Sora先生
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大問IIIは「感覚受容器の分類」と「内耳(前庭・半規管)のメカノバイオロジー」です!受験生がよく混乱するのが問4の「一次感覚細胞と二次感覚細胞の区別」と、問6の「卵形嚢(水平面)と球形嚢(垂直面)の感知方向」です。で感覚毛の向きと加速度の関係をイメージすれば、一発でスッキリ理解できますよ!

【問題文 III】

次の文章を読んで下の問いに答えよ。

ヒトの感覚受容器には、適刺激に敏感に反応する感覚細胞が存在する。適刺激が感覚細胞の受容体に作用することで、感覚細胞に①膜電位変化が発生する。感覚細胞には、感覚細胞自身が興奮を中枢神経に伝える一次感覚細胞と、シナプスを介して感覚神経の興奮を引き起こす二次感覚細胞とがある。

内耳には、聴覚受容器に加えて、前庭や半規管と呼ばれる平衡感覚器がある。平衡感覚器は感覚毛を持った感覚細胞を有し、身体の傾きと直線運動や回転運動を感知する。前庭には②感覚細胞が身体の上下軸と直交する面に沿って配列されている部分と、それらが身体の左右軸と直交する面に沿って配列されている部分とがあり、それぞれ感覚細胞の上を ア を含む膜が覆っている。半規管は③片側に3個存在し、それぞれ半円状の管で中に イ を含む。半規管では、基部の膨らんだ部分に感覚細胞が配置されている。

📊 【超図解】前庭(耳石器)と半規管における感覚毛の屈曲メカニズム

前庭(下線部②:上下軸と直交=水平面上の配列) 耳石 [ア] を含むゼリー状の膜(耳石膜) 感覚毛が屈曲! 感覚細胞(水平面に沿って並び、毛は垂直方向) 自動車が前進(水平方向の直線加速度)→ 耳石膜が慣性で後ろへずれる 半規管(膨大部:回転運動の感知) リンパ液 [イ] が慣性で回転と逆向きに流れる クプラと感覚毛が屈曲! 基部(膨大部)の感覚細胞 前後・横・軸回転の3軸を感知するため互いにほぼ直交配置

問1.各種の感覚とその受容器、適刺激をまとめた表で、a〜fに入る最も適切な語句を記入せよ。
(視覚:眼の [ a ] / 光、聴覚:耳の [ b ] / 音、味覚:舌の [ c ] / [ e ]、嗅覚:鼻の [ d ] / [ f ])
問2.文章中の ア と イ に入る最も適切な語句を記入せよ。
問3.下線部①の膜電位変化を何と呼ぶか。また、刺激の強さが大きくなると、この膜電位変化はどうなるか。
問4.次のうち、二次感覚細胞はどれか。全て選び、記号で答えよ。
 a. 眼の視細胞  b. 耳の聴細胞  c. 舌の味細胞  d. 鼻の嗅細胞

問1 ・a:眼の 網膜
・b:耳の うずまき管(またはコルチ器/基底膜)
・c:舌の 味蕾(みらい)
・d:鼻の 嗅上皮
・e(味覚の適刺激):水溶性の化学物質(液体中の化学物質)
・f(嗅覚の適刺激):揮発性(気体)の化学物質(空気中の化学物質)

問2 前庭の感覚細胞の上を覆うゼリー状の膜には炭酸カルシウムの結晶である 耳石(平衡石)([ア])が含まれています。また、半規管の管の中は リンパ液(内リンパ)([イ])で満たされています。

問3 感覚細胞に一過性に生じる脱分極(視細胞では過分極)の膜電位変化を 受容器電位 と呼びます。
活動電位(全か無かの法則に従い振幅が一定)とは異なり、受容器電位は刺激の強さが大きくなると、膜電位変化(受容器電位)の大きさ(振幅)が大きくなるという特徴があります(その結果、続く感覚神経で発生する活動電位の頻度が高まります)。

問4 【超重要!一次感覚細胞と二次感覚細胞の見分け方】
・一次感覚細胞(感覚細胞自身が軸索を伸ばして中枢へ興奮を伝える):眼の視細胞(a)、鼻の嗅細胞(d)(※発生学的に脳の一部が突出してできた感覚細胞です)。
・二次感覚細胞(感覚細胞は軸索をもたず、シナプスを介して感覚神経に神経伝達物質を放出する):耳の聴細胞(b)、平衡感覚器(前庭・半規管)の感覚細胞、舌の味細胞(c)。
したがって、二次感覚細胞は b、c です。

問5.頭部が傾いたときに、前庭の感覚細胞に膜電位変化が生じるしくみを50字以内で答えよ。
問6.前庭の感覚細胞は、特定方向の直線運動に応答する。下線部②の部分では、感覚細胞の感覚毛が垂直方向に伸びている。下線部②の部分は、頭部を立位に保った状態で、次のうちどれに反応するか。最も適切なものを一つ選び、記号で答えよ。
 a. 乗っている自動車が発進する  b. 座っている椅子が右に回転する
 c. 一定速度で進む動く歩道に立っている  d. 乗っているエレベーターが上昇を始める
問7.頭部が回転運動を始めたときに、半規管の感覚細胞に膜電位変化が生じるしくみを50字以内で答えよ。
問8.下線部③に関して、ヒトは前後回転、横回転、軸回転の3軸の回転運動を行う。これらの回転運動を感知できるように、三つの半規管はどう配置されているか。20字以内で答えよ。
問9.平衡感覚器の情報は、身体運動のどのような制御に役立つか。10字以内で答えよ。

問5 頭部が傾くと、重力によって耳石を含む膜(耳石膜)が動き(ずれ)、感覚細胞の感覚毛が屈曲することで機械受容チャネルが開き、陽イオンが流入して膜電位変化(受容器電位)が生じます。
解答例:重力により耳石を含む膜がずれて感覚細胞の感覚毛が屈曲し、機械受容チャネルが開いて陽イオンが流入する。(50字)
(※シンプルに「重力により耳石を含む膜が動いて感覚細胞の感覚毛が屈曲し、イオンが流入することで膜電位変化が生じる。(49字)」としても満点です!)

問6 下線部②は「身体の上下軸と直交する面(=水平面)に沿って感覚細胞が配列され、感覚毛が垂直方向に伸びている部分(卵形嚢)」です。
垂直方向に立っている毛が横に倒れる(屈曲する)のは、水平方向の直線加速度が加わって耳石膜が水平方向にずれたときです。
・a(自動車が発進する):前後(水平方向)の直線加速度が生じるため、垂直に伸びた感覚毛が屈曲して反応します!(正解)
・b(椅子が回転する):回転運動なので半規管が反応します。
・c(一定速度の動く歩道):等速直線運動では加速度が $0$ なので耳石膜はずれず、反応しません。
・d(エレベーターが上昇を始める):上下(垂直方向)の直線加速度なので、左右軸と直交する面(垂直面)に配列され水平方向に感覚毛が伸びている部分(球形嚢)が反応します。
よって正解は a です。

問7 頭部が回転を始めると、半規管の管自体は頭部と一緒に回転しますが、内部のリンパ液は慣性によってその場に留まろうとする(相対的に回転と逆向きに流れる)ため、基部(膨大部)のクプラと感覚毛が屈曲して膜電位変化が生じます。
解答例:半規管内のリンパ液が慣性で相対的に逆向きに流れ、クプラを介して感覚細胞の感覚毛が屈曲するため。(49字)

問8 3次元空間の3軸(X軸・Y軸・Z軸)の回転をすべて感知できるよう、3つの半規管(外側半規管・前半規管・後半規管)は 互いにほぼ直交する3つの面上に配置。(18字)されています。

問9 前庭や半規管からの平衡感覚の情報は、小脳や脳幹(中脳・延髄)に伝えられ、姿勢や眼球運動の制御(10字)(または「身体の姿勢の保持(8字)」)に役立ちます。

大問 IV :動物の初期発生と細胞接着・細胞骨格

配点目安:約25% / 目標解答時間:13分
Sora先生
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最後の大問IVは「哺乳類(ヒト)・カエル・ニワトリの初期発生の比較」と「細胞接着・細胞骨格・モータータンパク質」のセットです!
とくに問3の「カドヘリンが関わる2種類の細胞結合(接着結合・デスモソーム)と、それぞれに結合する細胞骨格・モータータンパク質の組み合わせ」は医学部入試の超頻出ポイント!「中間径フィラメントにはモータータンパク質が存在しない(=なし)」というひっかけに気をつければ完答できますよ!

【問題文 IV】

次の文章を読んで下の問いに答えよ。

私たちの体はおよそ ア 個のヒト細胞からできているが、それら全ては、元々たった一つの受精卵が2個に、続いて4個の細胞にと、次々増殖して生じたものである。ヒトの受精卵は、ウニの受精卵と同様に①等黄卵であり、全割の等割が行われる。一方、ヒトの初期発生はウニと異なる面も多い。まず、ヒトの卵割は回転卵割と呼ばれ、分裂で生じた二つの娘細胞が、次に分裂する際には互いの分割軸が90度ずれる。このため、例えば4細胞期において各割球の中心を結んでできる図形は、ウニだと イ になるがヒトだとほぼ正四面体となる。また、ウニの胞胚期には細胞が胞胚腔を囲んで胚の表面に一層に並ぶが、ヒトでは胚の表面を覆う一層の細胞層である栄養膜(栄養外胚葉)のほかに、その内側にあって外部環境と接しない細胞集団である ウ を生じる。このようなヒトの胞胚を エ と呼ぶ。栄養膜の細胞からは、母体側の組織と合わさって オ が形成され、 ウ の細胞からは胎児の体がつくられる。ヒトの胚では8細胞から16細胞になる時期に、割球どうしの結合が密になり、胚の表面が平滑化する「コンパクション」という現象がみられる。これは、割球が上皮様の細胞へと変化する現象であり、この過程で外部環境とは異なる胚の内部環境がつくられる。内部環境は、 ウ の細胞を適切に育む上で重要である。

細胞どうしを結合する、 カ イオン依存性の細胞接着分子は キ と総称される。② キ は別のタンパク質分子を介して中間径フィラメントや ク フィラメントといった細胞骨格と結合することで、隣接する細胞どうしの細胞骨格を互いに連結する。8細胞期のヒト胚がもつ中間径フィラメントは、一般の上皮細胞のそれと同様に ケ と呼ばれる繊維状タンパク質でできている。 ケ は細胞骨格としてだけでなく、細胞運命の決定に関与する物質として注目されている。コンパクションでは、 キ を介した細胞結合が強化されるとともに、その頂端側(外部環境と接する側)には コ と呼ばれる別の細胞結合を生じる。③ コ は胚の内部環境を保つ上で重要なはたらきを担う。

問1.文章中の ア 〜 コ に入る最も適切な語句または数字を、解答欄に記入せよ。

解説 ・[ア] 37兆(または60兆):成人の体を構成する体細胞の総数は約37兆個(旧来の教科書表記では約60兆個)です。
・[イ] 正方形:ウニの第1卵割・第2卵割はともに動物極と植物極を通る経割(縦割)であり、4つの割球が同一平面上に並ぶため、各割球の中心を結ぶと正方形になります。
・[ウ] 内部細胞塊(内細胞塊):哺乳類の初期胚の内部に生じる、将来胎児(胚体)になる細胞集団(ES細胞の樹立元としても有名ですね!)。
・[エ] 胚盤胞:栄養膜と内部細胞塊からなる哺乳類特有の胞胚期の胚。
・[オ] 胎盤:栄養膜(将来、絨毛膜になる)は母体の子宮内膜と合わさって胎盤を形成します。
・[カ] カルシウム($\text{Ca}^{2+}$) / [キ] カドヘリン:$\text{Ca}^{2+}$依存的に同種細胞どうしを接着する膜貫通タンパク質はカドヘリンです。
・[ク] アクチン:カドヘリンと連結する細胞骨格は、中間径フィラメント(デスモソーム)とアクチンフィラメント(接着結合)の2種類です。
・[ケ] ケラチン:上皮細胞の中間径フィラメントを構成する繊維状タンパク質はケラチンです。
・[コ] 密着結合(タイトジャンクション):上皮細胞の最も頂端側(外側)に形成され、細胞間の隙間をシールして物質の漏出を防ぐ結合は密着結合です。

問2.下線部①のように、動物の卵は卵黄の量や分布によって分類され、卵割の様式も動物の種類によって異なっている。カエルとニワトリの卵の種類と卵割の様式を答えよ。また、それらの8細胞期胚の模式図を、例にならって解答欄に描け。

📊 【解答欄再現図解】ウニ(例)・カエル・ニワトリの8細胞期胚の模式図

【例】ウニ(等黄卵・等割) 第3卵割が赤道面(上下同じ大きさ) カエル(端黄卵・全割の不等割) 第3卵割面が赤道より上(動物極側) 上4個が小割球、下4個が大割球 ニワトリ(端黄卵・部分割の盤割) 多量の卵黄(割れない) 動物極側の胚盤のみが8区画に盤割 (卵割溝が卵黄の下まで達しない)

解説 ・カエル(両生類): 卵黄が植物極側に偏って分布する 端黄卵 であり、卵全体が割れるものの植物極側の卵黄が邪魔をするため、第3卵割(緯割)の卵割面が赤道面より動物極側(上側)に偏る 全割の不等割 を行います。図を描く際は、横線を真ん中より上に引き、動物極側の4つの小割球と植物極側の4つの大割球が分かるように描きます。
・ニワトリ(鳥類・魚類・爬虫類): 卵黄が極めて多い 端黄卵(強端黄卵) であり、細胞質が集中している動物極側の「胚盤」と呼ばれる円盤状の部分のみが卵割する 部分割の盤割 を行います。図を描く際は、上部の胚盤にのみ8つの割球の境界線を引き、下部の巨大な卵黄には割線が入らないように描きます。

問3.下線部②に関わる細胞骨格と細胞結合の名称、および、それら細胞骨格と相互作用し、繊維に沿った物質の輸送に用いられるモータータンパク質の名称を、解答欄に記入せよ。なお、対応するモータータンパク質が複数ある場合、解答はそのうち一つで良い。また、該当するものがなければ、「なし」と記入せよ。

解説 下線部②「カドヘリンは別のタンパク質分子(カテニンなど)を介して中間径フィラメントやアクチンフィラメントといった細胞骨格と結合する」に対応する2組を整理します。

組み合わせ 細胞骨格の名称 細胞結合の名称 モータータンパク質の名称
1組目 アクチンフィラメント 接着結合(アドヘレンスジャンクション) ミオシン
2組目 中間径フィラメント デスモソーム(接着斑) なし

※参考:微小管(モータータンパク質はキネシン・ダイニン)はカドヘリンを介した細胞結合には関与しないため、下線部②の対象外です。また、中間径フィラメントには極性(プラス端・マイナス端の向き)がないため、その上を移動するモータータンパク質は存在しません(「なし」が正解)。

問4.下線部③にある コ(密着結合)のはたらきとは、具体的にどのようなものか。50字以内で答えよ。

解説 密着結合(タイトジャンクション)は、クローディンなどの膜タンパク質が隣り合う細胞の細胞膜どうしを縫い合わせるように密着させ、細胞と細胞の隙間(細胞間隙)を物質(水やイオンなど)が通り抜けるのを防ぐバリア機能を果たします。これにより、胚の外側と内側の環境が隔てられ、内部細胞塊を育むための胚の内部環境が保たれます。
解答例:隣り合う細胞膜どうしを密着させて隙間を塞ぎ、細胞間隙を通じた物質の通過を防いで内部環境を維持する。(50字)

指導統括 ニックニ先生の合格総括

お疲れ様でした!2022年度の近畿大学医学部の生物を全問解き切りましたね。
近大医学部で高得点(8割以上)を取る秘訣は、①大問Iのような「呼吸商+ATP収支」の定番計算で文字式を恐れないこと、②大問II〜IVの短文論述(10字〜150字)で「原因(構造・物理的変化)→結果(機能・反応)」の因果関係を端的に書くことです。間違えた問題や曖昧だった知識は、このページのSVG図解をもう一度見直して今日中に自分の武器にしてしまいましょう。君の医学部合格を心から応援しています!

Sora先生
Sora先生 ✕ ニックニ先生からのメッセージ

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