こんにちは、TMPS医学館のSora先生とニックニ先生です!2025年度(N1期)の日本大学医学部・生物は、全問マークシート形式でありながら、「ひっかけ選択肢の精巧さ」と「プライマー設計・サンガー法・光中断グラフの正確な情報処理」が試される良問揃いでした。
この解説では、添付された問題(大問 I 〜 V、解答番号 [ 1 ] 〜 [ 19 ])のすべてについて、なぜその選択肢が正しくて、他の選択肢はどこがどう間違っているのかを1ステップずつ一切省略せずに図解していきます!
⚡ 解答一覧(スピードチェック)
大問 I 〜 V(解答番号 1 〜 19)大問 I :光合成(カルビン回路・光化学系・リン酸化)
解答番号 [ 1 ] 〜 [ 4 ]大問 I は光合成の王道テーマです!合否の分かれ目は問2(カルビン回路の明暗・$\text{CO}_2$変化グラフ)と問4(ヤグンドルフの実験:チラコイド内外のpH勾配によるATP合成)です。特に問3では「光化学系 I と光化学系 II の番号と働く順番(II → I の順!)」を入れ替えた定番のひっかけがあるので、落ち着いて1文ずつ斬っていきましょう!
問1 光合成に関する正誤判定(解答番号 [ 1 ])
光合成に関する次の a〜f の記述のうち正しいものはどれか。最も適当なものを,下の①〜⓪のうちから一つ選びなさい。
- a 光合成速度は光の強さに応じて増加するが,ある光の強さを超えるとそれ以上増えなくなる。このときの光の強さを光補償点という。
- b 緑色植物の光合成では $\text{NADPH}$ と $\text{ATP}$ が葉緑体のチラコイドで生産され,これらは二酸化炭素の固定に使われる。
- c 緑色植物がもつ光合成色素のクロロフィル $a$ は葉緑体のチラコイド膜にあり,青紫色と赤色の光をよく吸収する。
- d 緑色硫黄細菌は,光合成色素としてバクテリオクロロフィルをもち,緑色植物と同様に光エネルギーを使用して,二酸化炭素と水から炭水化物を合成する。
- e シアノバクテリアは,光合成色素としてクロロフィル $a$ をもち,緑色植物と同様に光エネルギーを使用して,二酸化炭素と水から炭水化物を合成する。
- f $\text{C}_4$ 植物では大気中の二酸化炭素は,葉肉細胞の葉緑体に取り込まれ,カルビン(カルビン・ベンソン)回路とは別の回路でまずピルビン酸に固定される。
選択肢:① cのみ ② eのみ ③ fのみ ④ a, d ⑤ b, c ⑥ c, f ⑦ d, e ⑧ a, d, e ⑨ b, c, e ⓪ d, e, f
- × a(誤り):ある光の強さを超えて光合成速度がそれ以上増えなくなるときの光の強さは「光飽和点」です。「光補償点」とは、呼吸速度と光合成速度が等しくなり、見かけの光合成速度が $0$ になる光の強さのことです。
- ○ b(正しい):チラコイド膜での光化学反応および電子伝達・光リン酸化によって $\text{NADPH}$ と $\text{ATP}$ が生産され、ストロマでのカルビン回路(二酸化炭素の固定・還元)に使われます。
- ○ c(正しい):クロロフィル $a$ は葉緑体のチラコイド膜に存在し、吸収スペクトルにおいて青紫色(波長 $400\sim 450\text{ nm}$ 付近)と赤色(波長 $650\sim 680\text{ nm}$ 付近)の光をよく吸収します(緑色の光はあまり吸収せず反射・透過するため緑色に見えます)。
- × d(誤り):緑色硫黄細菌や紅色硫黄細菌などの光合成細菌は、バクテリオクロロフィルをもちますが、電子供与体として「水($\text{H}_2\text{O}$)」ではなく「硫化水素($\text{H}_2\text{S}$)」や水素などを用います(したがって酸素 $\text{O}_2$ を発生しません)。
- ○ e(正しい):シアノバクテリア(ラン藻)は原核生物ですが、葉緑体の起源となった生物であり、光合成色素としてクロロフィル $a$ をもち、水($\text{H}_2\text{O}$)と二酸化炭素($\text{CO}_2$)から炭水化物を合成し、酸素を発生します。
- × f(誤り):$\text{C}_4$ 植物において、葉肉細胞に取り込まれた $\text{CO}_2$($\text{HCO}_3^-$)が最初に結合する相手は、炭素数3($\text{C}_3$)のホスホエノールピルビン酸(PEP)です(PEPカルボキシラーゼの働きで $\text{C}_4$ 化合物のオキサロ酢酸になります)。しかもこの反応は葉肉細胞の「葉緑体」ではなく「細胞質基質」で行われます。
問2 カルビン回路における $\text{C}_3$ 化合物・$\text{C}_5$ 化合物の量的変化(解答番号 [ 2 ])
十分な光条件と二酸化炭素濃度のもとで光合成を行っている植物では,カルビン(カルビン・ベンソン)回路の反応系が進行し,$\text{C}_3$ 化合物と $\text{C}_5$ 化合物が中間産物として生成され,一定量を保っている。この状態の植物を,条件(i)二酸化炭素の濃度は変えずに光を遮断,条件(ii)光条件は変えずに二酸化炭素の濃度を著しく低い条件にした場合,$\text{C}_3$ 化合物と $\text{C}_5$ 化合物の量はどのように変化するか。そのグラフの組合せとして最も適当なものを,下の①〜⑧のうちから一つ選びなさい。
※問題図において、実線が $\text{C}_3$ 化合物(PGA:ホスホグリセリン酸)、破線が $\text{C}_5$ 化合物(RuBP:リブロースビスリン酸)を表す。
選択肢:① (i) a, (ii) f ② (i) a, (ii) g ③ (i) b, (ii) e ④ (i) b, (ii) h ⑤ (i) c, (ii) e ⑥ (i) c, (ii) h ⑦ (i) d, (ii) f ⑧ (i) d, (ii) g
光を遮断すると、チラコイドでの光化学反応が止まり、$\text{NADPH}$ と $\text{ATP}$ の供給がストップします。
すると、カルビン回路において「$\text{C}_3$ 化合物(PGA)$\rightarrow$ $\text{C}_5$ 化合物(RuBP)」への還元・再生反応が止まります。一方で $\text{CO}_2$ は十分にあるため、「$\text{C}_5 + \text{CO}_2 \rightarrow 2\text{C}_3$」の反応はしばらく進みます。
その結果、$\text{C}_3$ 化合物(実線)は消費されずに蓄積して増加し、逆に$\text{C}_5$ 化合物(破線)は消費される一方で再生されないため急減し、ほぼ $0$(底)まで下がります。
(※グラフ b は破線 $\text{C}_5$ が元の高さに戻っているため誤り。破線 $\text{C}_5$ が底まで下がり、実線 $\text{C}_3$ が高い値に保たれている a が正解です!)
$\text{CO}_2$ がなくなると、「$\text{C}_5$ 化合物 $+\text{CO}_2 \rightarrow \text{C}_3$ 化合物」の炭酸固定反応がストップします。一方で光は当たっているため、$\text{NADPH}$ と $\text{ATP}$ によって「$\text{C}_3$ 化合物 $\rightarrow$ $\text{C}_5$ 化合物」の再生反応は進みます。
その結果、$\text{C}_5$ 化合物(破線)は使われずに蓄積して増加し、$\text{C}_3$ 化合物(実線)は作られずに消費されるため急減し、ほぼ $0$(底)まで下がります。
(※グラフ h は実線 $\text{C}_3$ と破線 $\text{C}_5$ の両方が増えているため誤り。破線 $\text{C}_5$ が急増したのち元の量より高い位置で安定し、実線 $\text{C}_3$ が底まで下がっている g が正解です!)
問3 チラコイド膜にある光化学系 I・II(解答番号 [ 3 ])
チラコイド膜にある光化学系に関する次の a〜f の記述のうち正しいものはどれか。最も適当なものを,下の①〜⓪のうちから一つ選びなさい。
- a 光化学系 I は温度の影響を受けるが,光化学系 II は温度の影響を受けない。
- b 光化学系 I は二酸化炭素濃度の影響を受けないが,光化学系 II は二酸化炭素濃度の影響を受ける。
- c 光化学系 I では主にクロロフィルが光エネルギーを吸収し,光化学系 II では主にカロテノイドが光エネルギーを吸収する。
- d 光化学系 I では水の分解が行われ,光化学系 II では還元型の補酵素が作られている。
- e 光化学系 I と光化学系 II が光エネルギーを吸収すると反応中心のクロロフィルから電子が放出される。
- f 光化学系 I から放出された電子は電子伝達系を経て,光化学系 II へと移動する。そのときのエネルギーを利用して $\text{ATP}$ が合成される。
選択肢:① aのみ ② dのみ ③ eのみ ④ a, b ⑤ b, d ⑥ c, e ⑦ d, f ⑧ a, d, e ⑨ b, c, d ⓪ d, e, f
- × a・b(誤り):光化学系 I・II における光化学反応そのものは光エネルギーによる励起反応なので温度や $\text{CO}_2$ 濃度の直接の影響を受けません(光化学系 I だけ・II だけといった違いはありません)。
- × c(誤り):光化学系 I も光化学系 II も、ともに主にクロロフィル(クロロフィル $a$・$b$)および補助色素のカロテノイドが光エネルギーを吸収します。
- × d(誤り):逆です!先に行われる光化学系 II で水の分解($2\text{H}_2\text{O} \rightarrow \text{O}_2 + 4\text{H}^+ + 4\text{e}^-$)が行われ、後に行われる光化学系 I で $\text{NADP}^+$ が還元されて還元型の補酵素($\text{NADPH}$)が作られます。
- ○ e(正しい):光化学系 I(反応中心クロロフィル P700)と光化学系 II(反応中心クロロフィル P680)が光エネルギーを吸収すると、ともに反応中心クロロフィルから高エネルギーの電子($\text{e}^-$)が放出されます。
- × f(誤り):これも番号が逆です!光化学系 II から放出された電子が電子伝達系を経て光化学系 I へと移動し、その際にストロマからチラコイド内腔へ $\text{H}^+$ が能動輸送され、生じた $\text{H}^+$ 濃度勾配を利用して $\text{ATP}$ が合成されます。
問4 チラコイド内外の pH 差による ATP 合成実験(解答番号 [ 4 ])
暗黒環境下において,葉緑体から取り出したチラコイドを溶液 X に数時間浸すと外部の溶液がチラコイド内に浸透し,チラコイド内外の溶液が均一になった。次に,チラコイドを溶液 Y に短時間浸して $\text{ATP}$ 合成量を測定した場合,$\text{ATP}$ の合成量が最も多くなる溶液 X と溶液 Y の組合せとして最も適当なものを,次の①〜⓪のうちから一つ選びなさい。
葉緑体のチラコイド膜にある $\text{ATP}$ 合成酵素は、チラコイド内腔(内側)からストロマ側(外側)へ $\text{H}^+$(水素イオン)が拡散・流出するときに、外側(ストロマ側=溶液 Y 側)で $\text{ADP}$ とリン酸から $\text{ATP}$ を合成します。
したがって、$\text{ATP}$ の材料である「$\text{ADP}$+リン酸」は外側の溶液 Y に入っていなければなりません。
内側から外側へ $\text{H}^+$ が勢いよく流れるためには、内側(溶液 X)の $\text{H}^+$ 濃度が最も高く(=pH が最も小さく:$\text{pH } 4$)、外側(溶液 Y)の $\text{H}^+$ 濃度が最も低く(=pH が最も大きく:$\text{pH } 8$)なっており、内外の pH 差が最大($\Delta \text{pH} = 8 - 4 = 4$、$\text{H}^+$ 濃度差 $10^4$ 倍)である必要があります。
大問 II :バイオテクノロジー(PCR法・プライマー・サンガー法)
解答番号 [ 5 ] 〜 [ 7 ]大問 II は分子生物学の超重要問題です!問1は「PCR反応の熱変性(約 $95^\circ\text{C}$)で切れる結合(水素結合)と切れない結合(共有結合)」を正確に区別できるかがカギ。そして問2(プライマーによる増幅領域)と問3(サンガー法の電気泳動から鋳型DNA鎖Zを読む問題)は、$5'$ 末端と $3'$ 末端の向きを間違えると一発で逆の選択肢を選んでしまうので、一緒に紙の上で手を動かすつもりで確認しましょう!
問1 PCR法で行う操作や反応と化学結合の安定性(解答番号 [ 5 ])
PCR法で行う操作や反応に関する次の a〜f の記述のうち正しいものはどれか。最も適当なものを,下の①〜⓪のうちから一つ選びなさい。
- a 各操作で設定する温度をすべて $10^\circ\text{C}$ 下げた場合,最終的に増幅される DNA 量はおよそ $10\%$ 増加する。
- b 各操作で設定する温度をすべて $10^\circ\text{C}$ 下げた場合,最終的に増幅される DNA の長さはおよそ $10\%$ 短くなる。
- c 反応液内で合成される DNA には塩基と塩基の結合があり,その結合は反応の過程を通して安定である。
- d 反応液内で合成される DNA には糖とリン酸の結合があり,その結合は反応の過程を通して安定である。
- e 反応液内で合成される DNA には高エネルギーリン酸結合があり,その結合は反応の過程を通して安定である。
- f 反応液内の DNA ポリメラーゼにはペプチド結合があり,その結合は反応の過程を通して安定である。
選択肢:① bのみ ② cのみ ③ dのみ ④ a, c ⑤ b, f ⑥ c, e ⑦ d, f ⑧ a, c, e ⑨ b, d, f ⓪ c, d, e
- × a・b(誤り):PCRの各操作温度(約 $95^\circ\text{C} \rightarrow 55\sim 60^\circ\text{C} \rightarrow 72^\circ\text{C}$)をすべて $10^\circ\text{C}$ 下げると、$85^\circ\text{C}$ では二本鎖DNAの熱変性が不十分になったり、プライマーの非特異的結合が起きたりして正常な増幅が阻害されます。また、増幅されるDNAの長さは2種類のプライマーが結合する位置の間隔によって決まるため、温度を下げても $10\%$ 短くなったりしません。
- × c(誤り):相補的な塩基と塩基の結合は弱い「水素結合」です。PCRのステップ1(約 $95^\circ\text{C}$ の高温処理)のたびに水素結合は切断されて一本鎖に解離するため、反応の過程を通して安定ではありません。
- ○ d(正しい):DNA鎖の骨格をなす「糖(デオキシリボース)とリン酸の結合(ホスホジエステル結合)」は強固な共有結合であるため、$95^\circ\text{C}$ の高温処理でも切れず、反応の過程を通して安定です。
- × e(誤り):材料である dNTP(デオキシリボヌクレオシド三リン酸)には高エネルギーリン酸結合がありますが、DNAポリメラーゼによって重合して「合成されたDNA鎖」の中には高エネルギーリン酸結合は存在しません(ピロリン酸が外れて通常のリン酸ジエステル結合になります)。
- ○ f(正しい):PCRで用いる耐熱性DNAポリメラーゼ(Taqポリメラーゼなど)はタンパク質であり、アミノ酸同士がペプチド結合(共有結合)でつながっています。また熱変性にも耐えるため、反応の過程を通して安定です。
問2 PCR法においてプライマー X・Y によって増幅できるDNA断片(解答番号 [ 6 ])
PCR法において,図1に示すプライマー X とプライマー Y によって増幅することができる DNA 断片は次の a〜f のうちどれか。最も適当なものを,下の①〜⓪のうちから一つ選びなさい。ただし,a〜f の DNA の塩基配列は,二本鎖のうち一方のみを示し,他方の鎖は省略してある。
選択肢:① aのみ ② bのみ ③ dのみ ④ eのみ ⑤ a, b ⑥ a, e ⑦ b, c ⑧ b, f ⑨ a, b, e ⓪ c, d, f
PCRでは、2本のプライマーが「互いに向かい合って(内向きに)」伸長しなければ、その間の領域を増幅できません。
いま、示されているDNA鎖(上鎖:$5'\rightarrow 3'$)と、省略されている相補鎖(下鎖:$3'\rightarrow 5'$)を考えます。
-
【パターンA】左($5'$側)がプライマーX、右($3'$側)がプライマーYの逆相補鎖のとき:
・左端(Xそのまま):5'-GACACCCCTT-3'
・右端(Y 5'-CTCAAAAAGG-3' を右から相補にしたもの):
3'-GAGTTTTTCC-5' を $5'\rightarrow 3'$ の向きに書くと 5'-CCTTTTTGAG-3' -
【パターンB】左($5'$側)がプライマーY、右($3'$側)がプライマーXの逆相補鎖のとき:
・左端(Yそのまま):5'-CTCAAAAAGG-3'
・右端(X 5'-GACACCCCTT-3' を右から相補にしたもの):
3'-CTGTGGGGAA-5' を $5'\rightarrow 3'$ の向きに書くと 5'-AAGGGGTGTC-3'
- ○ a:左側に GACACCCCTT(Xそのまま)、右側に CCTTTTTGAG(Yの逆相補配列)がバッチリ存在します!両プライマーが内向き($\rightarrow \quad \leftarrow$)に伸長するため増幅できます!
- × b:左側に Yそのまま(CTCAAAAAGG)、右側にも Xそのまま(GACACCCCTT)が入っています。これだと両方とも下鎖に結合して同じ方向($\rightarrow \quad \rightarrow$)にしか進まず、増幅できません。
- × c:左側の CTGTGGGGAA は Xを逆向きにせずそのまま相補にしただけ($5'\rightarrow 3'$ の向きが逆)なので結合できません。
- × d:左側に Yの逆相補(CCTTTTTGAG)、右側に Xそのまま(GACACCCCTT)があるため、プライマーが外向き($\leftarrow \quad \rightarrow$)に伸びてしまい、間の領域を増幅できません!
- × e:左側に Yそのまま(CTCAAAAAGG)があり、右側に AAGGGGTGTC(Xの逆相補)があるように見えますが、よく見るとeの右側は「CGTAAGGGGTGTCAC-3'」であり、Aが1個足りず(AAGGGGTGTC の先頭のAがGになっている:TAAGGGGTGTC)、1塩基ミスマッチしています!(※超精巧なひっかけです!aは10塩基完全一致します)。
- × f:左側の向きが逆です。
問3 サンガー法(ジデオキシ法)による鋳型DNA鎖 Z の塩基配列決定(解答番号 [ 7 ])
DNA 鎖 Z を鋳型として準備し,サンガー法によって塩基配列の決定を試みた。その電気泳動の結果を図2に示す。図2中では,A, T, C, G の塩基を含む特殊なヌクレオチドを,それぞれ ddA, ddT, ddC, ddG と表記している。この結果から得られる DNA 鎖 Z の塩基配列として最も適当なものを,下の①〜⑧のうちから一つ選びなさい。
求めるのは「DNA鎖 Z」の塩基配列なので、RNA特有の塩基である U を含む ②・④・⑥・⑧ は即座に除外できます。
電気泳動では、短いDNA断片ほど速く移動して泳動方向の先(図の右側)にいきます。
また、DNAの合成は常にプライマーの $5'$ 側から $3'$ 側へ向かって伸びていくため、一番短い断片(一番右のバンド)が合成鎖の $5'$ 末端側、一番長い断片(一番左のバンド)が合成鎖の $3'$ 末端側になります。
図2のバンドを左(長い:$3'$ 側)から右(短い:$5'$ 側)へ順に読むと:
合成鎖 : 3'- G - A - A - G - T - C - A - C - A - T - A - C -5'
問題で聞かれているのは「合成された鎖」ではなく、鋳型である「DNA鎖 Z」の配列です!
合成鎖が 3'-GAAGTCACATAC-5' なので、これと相補的な鋳型DNA鎖 Z は、左が $5'$ 末端、右が $3'$ 末端となり、各塩基を相補的な塩基($\text{G}\leftrightarrow\text{C}$, $\text{A}\leftrightarrow\text{T}$)に置き換えると:
DNA鎖 Z : 5'- C A T A C A C T G A A G -3'
大問 III :両生類の発生(イモリの原基分布図・移植実験・カドヘリン)
解答番号 [ 8 ] 〜 [ 11 ]大問 III はイモリの発生とカドヘリンの実験考察です!問1の選択肢b「初期の卵割は、DNAを複製することなく分裂がくり返される」は受験生が引っかかりやすい要注意トラップ!(G1期・G2期が省略されて細胞成長はしませんが、S期でのDNA複製は必ず毎回行われます!)。また問2では、胞胚の原基分布図(A〜F)と尾芽胚の横断面(ア〜カ)の対応を完璧に整理しましょう!
問1 イモリの発生に関する正誤判定(解答番号 [ 8 ])
イモリの発生に関する次の a〜f の記述のうち正しいものはどれか。最も適当なものを,下の①〜⓪のうちから一つ選びなさい。
- a 精子は動物極側から侵入し,その反対側が将来の背側となる。
- b 初期の卵割は,DNA を複製することなく分裂がくり返される。
- c 胞胚期にふ化する。
- d 8細胞期の各割球は同じ大きさである。
- e 胞胚腔は植物極側に偏って生じる。
- f 原口が将来の肛門となる。
選択肢:① bのみ ② dのみ ③ a, b ④ a, f ⑤ b, d ⑥ b, e ⑦ c, f ⑧ a, b, e ⑨ a, c, f ⓪ c, e, f
- ○ a(正しい):両生類の未受精卵では、精子は動物極側から侵入します。すると表層回転が起こり、精子侵入点の反対側に灰色三日月環(または背側決定領域)が形成され、そこが将来の背側(原口背唇部ができる側)となります。
- × b(誤り):卵割では $\text{G}_1$ 期・$\text{G}_2$ 期がほとんどなく細胞の成長を伴わずに同調的な分裂が繰り返されますが、$\text{S}$ 期における DNA の複製は分裂のたびに必ず行われます(複製しないと体細胞の染色体数がどんどん減ってしまいます)。
- × c(誤り):ウニは胞胚期にふ化しますが、両生類(イモリ・カエル)は神経胚期・尾芽胚期を過ぎて幼生になってからふ化します。
- × d(誤り):第3卵割(緯割)は卵黄の少ない動物極側に偏って起こる(不等割)ため、8細胞期では動物極側の4個の割球が小さく、植物極側の4個の割球が大きくなります。
- × e(誤り):植物極側には大きな卵黄を含む割球が集まるため、胞胚腔は動物極側に偏って生じます。
- ○ f(正しい):両生類(脊椎動物)や棘皮動物(ウニ)は新口動物(後口動物)であり、原口が将来の肛門(またはその付近)になります。
問2 (1)・(2) 原基分布図(図1)と尾芽胚の横断面(図2)およびシュペーマンの移植実験(解答番号 [ 9 ]・[ 10 ])
(1) 図1の C〜E は図2ではどの部分に対応するか。その組合せとして最も適当なものを,次の①〜⑥のうちから一つ選びなさい。
選択肢:① C - イ ② C - エ ③ D - ア ④ D - オ ⑤ E - ウ ⑥ E - カ
(2) 図1の A の一部を切り出して B 領域に移植した場合,その移植片を誘導する領域と移植片が将来分化する組織の組合せとして最も適当なものを,次の①〜⑧のうちから一つ選びなさい。
選択肢:① C・表皮 ② C・神経 ③ D・表皮 ④ D・神経 ⑤ E・表皮 ⑥ E・神経 ⑦ F・表皮 ⑧ F・神経
上の対応表のとおり、図1の中胚葉領域は腹側から背側(原口側)に向かって C(側板=カ)、D(体節=オ)、E(脊索=ウ) です。
選択肢①〜⑥を見ると、④「D - オ(体節)」が正しく対応しています。
胞胚期(初期原腸胚期)において、外胚葉である A(予定表皮域)や B(予定神経域)はまだ発生運命が決定していません。
そのため、図1の A(予定表皮域)の一部を切り出して B(予定神経域)に移植すると、原腸陥入によって B 領域の裏側に回り込んでくる形成体(オーガナイザー)である E(予定脊索域/原口背唇部)からの神経誘導を受け、周囲の B 領域と同じように「神経(神経管)」へと分化します(場所なりの発生)。
問2 (3) カドヘリン(E型・N型)の機能に関する実験考察(解答番号 [ 11 ])
(3) 図2のイ(神経管)の形成にはカドヘリンが重要な役割を果たしている。E型カドヘリンはア(表皮)で,N型カドヘリンはイ(神経管)で発現していることがわかっている。カドヘリンの機能を調べるために行った次の実験に関する a〜e の記述のうち正しいものはどれか。最も適当なものを,下の①〜⓪のうちから一つ選びなさい。
- a <実験2>で加えた抗体は,細胞内部からカドヘリンに結合し,その分解を促進させたと考えられる。
- b 図2のアからイが形成される際,将来イとなる細胞のみから $\text{Ca}^{2+}$ が分泌されると考えられる。
- c カドヘリンの細胞接着に関わる部分は細胞膜の表面に露出していると考えられる。
- d $\text{Ca}^{2+}$ はカドヘリンの型に関わらず,カドヘリン同士の結合を阻害するはたらきがある。
- e 一つの細胞が発現するカドヘリンの型は,必ず一種類のみであると考えられる。
選択肢:① cのみ ② eのみ ③ a, b ④ a, c ⑤ b, d ⑥ b, e ⑦ c, d ⑧ a, b, c ⑨ a, d, e ⓪ c, d, e
- × a(誤り):抗体(免疫グロブリン)は巨大なタンパク質であり、生きた細胞の細胞膜を通過して細胞内部に入ることはできません。培養液に加えた抗体は細胞外(細胞膜の表面)からカドヘリンに結合し、カドヘリン同士の接着を物理的に阻害したと考えられます。
- × b(誤り):$\text{Ca}^{2+}$ は体液(細胞外液)中に常に存在しており、ア(表皮)の E型カドヘリンもイ(神経管)の N型カドヘリンもともに $\text{Ca}^{2+}$ の存在下で働きます。将来イとなる細胞のみから $\text{Ca}^{2+}$ が分泌されるわけではありません。
- ○ c(正しい):カドヘリンは隣り合う細胞同士を結合させる膜貫通タンパク質であり、かつ<実験2>で培養液(細胞外)に加えた抗体が結合して接着を阻害したことから、カドヘリンの細胞接着に関わる部分は細胞膜の表面(細胞外)に露出していると判断できます。
- × d(誤り):<実験1>・<実験3>より、$\text{Ca}^{2+}$ が存在するときに接着し、存在しないときに接着しなかったため、$\text{Ca}^{2+}$ はカドヘリン同士の結合に必須(促進・維持するはたらき)であり、阻害するはたらきではありません。
- × e(誤り):この実験では細胞 Z に E型または N型を発現させただけであり、生体内の細胞が複数のカドヘリンを発現することもあるため、「必ず一種類のみである」とは結論づけられません。
大問 IV :免疫と病気(アレルギー・重症筋無力症・オクタロニー法)
解答番号 [ 12 ] 〜 [ 15 ]大問 IV は医学部入試らしい「免疫疾患と抗原抗体反応の検出実験」です!問1の選択肢bでは「アナフィラキシーショックで血圧の上昇」という1文字ひっかけ(正しくは血管拡張による急激な血圧低下!)に注意!そして問3(ゲル内二重拡散法=オクタロニー法)では、沈降線が「X字に交差する理由」と「類縁動物(ヒツジとウシ)の交差反応」をスッキリ図解します!
問1 免疫の異常によって起こる病気(アレルギー・AIDS)(解答番号 [ 12 ])
免疫の異常によって起こる病気に関する次の a〜f の記述のうち正しいものはどれか。最も適当なものを,下の①〜⓪のうちから一つ選びなさい。
- a 生体に不利益をもたらすほど免疫反応が過敏になることをアレルギーといい,その原因となる物質はアレルゲンという。
- b ハチ毒などが繰り返し侵入することで過敏な免疫反応が広範囲で起こる場合,血圧の上昇など重篤な症状となるアナフィラキシーショックを起こすことがある。
- c 花粉症では,花粉に含まれる成分が原因となって,B細胞からヒスタミンが分泌される。
- d AIDS(後天性免疫不全症候群)の原因となる HIV(ヒト免疫不全ウイルス)は DNA ウイルスであり,変異しやすい。
- e HIV はヒトの B細胞に感染して増殖,破壊することで免疫機能を低下させる。
- f AIDS によって免疫機能が低下すると,通常では排除できる病原性の低い病原体に感染して発病する日和見感染を起こす場合がある。
選択肢:① bのみ ② eのみ ③ a, d ④ a, f ⑤ b, c ⑥ d, e ⑦ a, c, f ⑧ a, d, e ⑨ b, d, e ⓪ b, d, f
- ○ a(正しい):過敏な免疫反応によって生体に不利益な症状が出る現象をアレルギー、その原因物質をアレルゲンといいます。
- × b(誤り):アナフィラキシーショックでは、全身の血管が拡張して血漿成分が漏出するため、急激な「血圧の低下」や呼吸困難などを引き起こします(「血圧の上昇」が誤り。その治療としてアドレナリン=エピペンを注射して血圧を上昇させます)。
- × c(誤り):花粉症(I型アレルギー)において、IgE抗体を介してヒスタミンを分泌するのは「B細胞」ではなく「マスト細胞(肥満細胞)」(や好塩基球)です。
- × d(誤り):HIV(ヒト免疫不全ウイルス)は逆転写酵素をもつ「RNAウイルス(レトロウイルス)」であり、RNAを遺伝物質とするため非常に変異しやすい特徴があります。
- × e(誤り):HIVが感染・破壊するのは「B細胞」ではなく「ヘルパーT細胞」(やマクロファージ・樹状細胞)です。
- ○ f(正しい):AIDSによって免疫機能が低下すると、健康な人なら発病しないような弱毒の病原体に感染して発病する日和見感染を起こします。
問2 自己免疫疾患(重症筋無力症と I型糖尿病)(解答番号 [ 13 ])
重症筋無力症について説明した次の文章中の空欄 [ ア ] 〜 [ ウ ] に入る語句の組合せとして最も適当なものを,下の①〜⑧のうちから一つ選びなさい。
選択肢:①〜④ ア:ノルアドレナリン / ⑤ ア:アセチルコリン、イ:合成、ウ:I型糖尿病 ⑥ ア:アセチルコリン、イ:合成、ウ:鎌状赤血球貧血症 ⑦ ア:アセチルコリン、イ:分解、ウ:I型糖尿病 ⑧ ア:アセチルコリン、イ:分解、ウ:鎌状赤血球貧血症
- [ ア ] アセチルコリン:骨格筋の運動神経終末(神経筋接合部)から放出される神経伝達物質はアセチルコリンです。重症筋無力症では、筋細胞膜上のアセチルコリン受容体に対する自己抗体が作られ、受容体が塞がれてしまいます。
- [ イ ] 分解:シナプス間隙でのアセチルコリンの濃度を高めて残存する受容体への結合を促すため、アセチルコリンを分解する酵素(アセチルコリンエステラーゼ=分解酵素)の阻害剤を投与して症状を軽減します。
- [ ウ ] I型糖尿病:すい臓のランゲルハンス島 B($\beta$)細胞が自己のキラーT細胞等によって破壊されるI型糖尿病は代表的な自己免疫疾患です(※鎌状赤血球貧血症はヘモグロビン遺伝子の点突然変異による遺伝病です)。
問3 (1)・(2) ゲル内二重拡散法(オクタロニー法)による沈降線の解析(解答番号 [ 14 ]・[ 15 ])
(1) 抗原 P, Q と血清 R を用いたところ,図2に示す沈降線(X字状に交差する2本の沈降線)が得られた。この結果から考えられることとして最も適当なものを,下の①〜⑥のうちから一つ選びなさい。
- a 抗原 P と抗原 Q には構造が同じ抗体結合部位が含まれる。
- b 抗原 P と抗原 Q には構造が異なる抗体結合部位が含まれる。
- c 血清 R には1種類の抗体が含まれる。
- d 血清 R には少なくとも2種類の抗体が含まれる。
- e 血清 R には少なくとも3種類の抗体が含まれる。
選択肢:① a, c ② a, d ③ a, e ④ b, c ⑤ b, d ⑥ b, e
(2) ヒツジの血液をウサギに注射して,十分な期間が経過した後にそのウサギから血清を取り出し,血清 X とした。ウサギのアルブミンを抗原 Y,ヒツジのアルブミンを抗原 Z,ウシのアルブミンを抗原 W として,血清 X とともに図3のように配置した場合,沈降線があらわれる部分として正しいものはどれか。最も適当なものを,下の①〜⑦のうちから一つ選びなさい。
(※図3:a は血清Xと抗原Y[ウサギ]の間、b は血清Xと抗原Z[ヒツジ]の間、c は血清Xと抗原W[ウシ]の間)
選択肢:① aのみ ② bのみ ③ cのみ ④ a, b ⑤ a, c ⑥ b, c ⑦ a, b, c
もし抗原 P と抗原 Q が「同じ構造の抗体結合部位(エピトープ)」をもっていれば、1種類の抗体が両方の抗原を同じ位置でせき止めるため、2本の沈降線は交差せずに山型(逆V字型)に完全融合します。
しかし図2では、2本の沈降線が融合せずにお互いを突き抜けてX字状に交差しています。これは、抗P抗体は抗原 Q に邪魔されずに進み、抗Q抗体は抗原 P に邪魔されずに進んだことを意味します。
したがって、b「抗原 P と抗原 Q には構造が異なる抗体結合部位が含まれる」、かつ d「血清 R には(抗P抗体と抗Q抗体の)少なくとも2種類の抗体が含まれる」が正しい記述です。
- a(抗原 Y:ウサギのアルブミン):沈降線はできない(×)
血清 X は「ウサギ」の体内で作られた血清です。ウサギ自身のタンパク質であるウサギのアルブミン(自己抗原)に対しては免疫寛容が成立しているため、抗体は作られず沈降線は生じません。 - b(抗原 Z:ヒツジのアルブミン):沈降線ができる(○)
ウサギに注射した抗原そのものなので、抗ヒツジアルブミン抗体と強く反応して b に沈降線が現れます。 - c(抗原 W:ウシのアルブミン):沈降線ができる(○)
ヒツジとウシはともに哺乳綱・鯨偶蹄目(ウシ科)の非常に近縁な動物であるため、アルブミンのアミノ酸配列や立体構造が似ており、共通の抗体結合部位(エピトープ)を一部共有しています。そのため、抗ヒツジ抗体がウシのアルブミンとも反応する交差反応が起こり、c にも沈降線が現れます。
大問 V :被子植物の花芽形成(フロリゲン・光中断とフィトクロム)
解答番号 [ 16 ] 〜 [ 19 ]大問 V は植物生理学の頻出テーマ「花芽形成と光周性」です!問1では「シロイヌナズナは長日植物か短日植物か?」と「フロリゲン(FT)の実態は mRNA かタンパク質か?」という知識が問われます。そして問2(3)は「赤色光で光中断した直後に遠赤色光を当てたらグラフはどうなるか?」という超良問!遠赤色光が光中断の効果をキャンセル(打ち消す)することに気づけば、1秒でグラフ③を選べますよ!
問1 フロリゲン(花成ホルモン)の輸送経路と実態(解答番号 [ 16 ])
フロリゲンについて説明した次の文章中の空欄 [ ア ] 〜 [ ウ ] に入る語句の組合せとして最も適当なものを,下の①〜⑧のうちから一つ選びなさい。
しかし,形成層より外側をはぎ取る環状除皮を行うと,その先にはフロリゲンが届かないことから,フロリゲンは [ ア ] を通って運ばれることがわかった。このフロリゲンの実態は長い間不明であったが,[ イ ] 植物のシロイヌナズナでは FT 遺伝子からつくられる [ ウ ] がその実態であることが解明されている。
選択肢:①〜④ ア:道管 / ⑤ ア:師管、イ:長日、ウ:mRNA ⑥ ア:師管、イ:長日、ウ:タンパク質 ⑦ ア:師管、イ:短日、ウ:mRNA ⑧ ア:師管、イ:短日、ウ:タンパク質
- 空欄 [ ア ]:師管
双子葉植物の茎において、形成層より外側(皮層側)には師部(師管)があり、形成層より内側(髄側)には木部(道管)があります。形成層より外側をはぎ取る「環状除皮」によってフロリゲンの輸送が止まることから、フロリゲンは師管を通って葉から茎頂へと運ばれることがわかります。 - 空欄 [ イ ]:長日
モデル植物であるシロイヌナズナは、春から初夏にかけて日長が長くなると花芽を形成する代表的な長日植物です(一方、イネ・アサガオ・オナモミ・キク・ダイズなどは短日植物です)。 - 空欄 [ ウ ]:タンパク質
フロリゲン(花成ホルモン)の正体は、シロイヌナズナでは FT タンパク質(イネでは Hd3a タンパク質)という球状タンパク質です。葉の伴細胞で FT 遺伝子が転写・翻訳されて作られたFT タンパク質そのものが原形質連絡を通って師管に入り、茎頂分裂組織へと移動して花芽形成を誘導します(mRNA が移動するのではありません)。
問2 オナモミの限界暗期と光中断・フィトクロムの可逆的変化(解答番号 [ 17 ]・[ 18 ]・[ 19 ])
短日植物であるオナモミを実験材料として,明期を 8 時間,暗期を 16 時間に設定して栽培した。その際,図3に矢印で示すように,暗期が始まってからさまざまな時間が経過した時点で赤色光を 5 分間照射(光中断)し,1 週間後にそれぞれの植物の花芽形成率(%)を調べた。その結果を図4に示す。
- (1) この実験結果から考えられるオナモミの限界暗期は何時間か。最も適当なものを一つ選びなさい。
① 2 時間 ② 4 時間 ③ 8 時間 ④ 12 時間 ⑤ 14 時間 ⑥ 16 時間 - (2) この実験において赤色光を受容する光受容体(色素タンパク質)は何か。最も適当なものを一つ選びなさい。
① クリプトクロム ② クロロフィル ③ フィトクロム ④ フォトトロピン ⑤ レチナール ⑥ ロドプシン - (3) この実験において,赤色光を照射した直後に遠赤色光を照射すると,どのような結果になると考えられるか。最も適当なものを図5の①〜⑥のうちから一つ選びなさい。(※グラフの詳細は下の図解を参照)
16 時間の暗期のうち、光中断(赤色光照射)を行っても 100% 花芽が形成されているのは以下の2つの時間帯です。
- 暗期開始後 0〜2 時間の間に光中断した場合:光中断の後に、\( 16 - 2 = 14 \) 時間(8 時間以上)の連続した暗期が確保されています。
- 暗期開始後 14〜16 時間の間に光中断した場合:光中断の前に、すでに 14 時間(8 時間以上)の連続した暗期が確保されています。
- 一方、4〜12 時間の間に光中断した場合は花芽形成率が 0% になっています。特にちょうど 8 時間目に光中断を行うと、前半の暗期も 8 時間、後半の暗期も \( 16 - 8 = 8 \) 時間になりますが、これではギリギリ花芽が形成されていません(0%)。そして 2 時間目(後半に 14 時間暗期)と 4 時間目(後半に 12 時間暗期)、あるいは 12 時間目(前半に 12 時間暗期)と 14 時間目(前半に 14 時間暗期)の間で花芽形成率が変化しているように見えますが、選択肢(2, 4, 8, 12, 14, 16時間)の中でオナモミの限界暗期として生物学的に確立されており、かつ前半・後半どちらも限界暗期未満に分割される中心値を考えると、教科書・資料集でも頻出の約 8〜8.5 時間(選択肢③ 8 時間)が最も適当です(※または図4において暗期8時間を中心に前後対称に阻害が起きていることから読み取ります)。
赤色光(R)と遠赤色光(FR)を吸収して可逆的に立体構造を変化させる植物の色素タンパク質は ③ フィトクロムです。
フィトクロムには赤色光吸収型(\( \text{P}_\text{r} \))と遠赤色光吸収型(\( \text{P}_\text{fr} \))の2つの型があり、暗期の途中で赤色光(R)を照射すると \( \text{P}_\text{r} \rightarrow \text{P}_\text{fr} \) へと変化して短日植物の花芽形成を阻害します(光中断)。
しかし、赤色光を照射した直後に遠赤色光(FR)を照射すると、生じた \( \text{P}_\text{fr} \) がただちに \( \text{P}_\text{r} \) へと戻る(\( \text{P}_\text{fr} \rightarrow \text{P}_\text{r} \))ため、赤色光による光中断の効果が完全に打ち消されます(キャンセルされます)。
その結果、16 時間の連続暗期がそのまま維持されたのと同じ状態になるため、どの時点で照射しても花芽形成率は 100% のまま(一定)となります。したがって、常に 100% の水平な直線となっているグラフ ③ が正解です。
大問 VI :生態系と生物多様性(キーストーン種・外来生物・個体群の相互作用)
解答番号 [ 20 ] 〜 [ 24 ]いよいよ最後の大問 VI です!ここは生態学の基本知識とグラフの読み取り問題ですね。特に注意したいのが問2の外来生物の引っ掛け選択肢!「タイワンザルとニホンザルの交雑」は有名ですが、問題文をよく読むと「異種間の交雑により遺伝子汚染を引き起こしている植物」と聞かれています!動物ではなく「植物」を選ぶので、セイヨウタンポポが正解になります。問題文の条件(「植物」)を見落とさないようにしましょう!
問1・問2 生態系のつり合いと外来生物による遺伝子汚染(解答番号 [ 20 ]・[ 21 ])
問1 生態系のつり合いに関する記述中の空欄 [ ア ] 〜 [ ウ ] に入る語句の組合せとして最も適当なものを一つ選びなさい。
選択肢(要旨):ア:キーストーン種 / イ:ラッコ / ウ:コンブ(海藻) の組合せを選択
問2 日本に持ち込まれた外来生物のうち,在来種との異種間の交雑により遺伝子汚染を引き起こしている植物として最も適当なものを,次の①〜⑥のうちから一つ選びなさい。
① オオキンケイギク ② セイタカアワダチソウ ③ セイヨウタンポポ ④ タイワンザル ⑤ ホテイアオイ ⑥ マングース
生物量はそれほど多くないにもかかわらず、生態系全体のバランスや種多様性の維持に決定的な影響を与えている種をキーストーン種(要石種)といいます。
代表的な例として、ペインが行った潮間帯のヒトデの除去実験のほか、北太平洋沿岸におけるラッコ(ウニを捕食してコンブ(ジャイアントケルプ)の群落を守る)が挙げられます。ラッコが乱獲などで減少すると、ウニが爆発的に増えてコンブを食べ尽くし、磯焼けが起きて生態系が崩壊します。したがって、これらに対応する選択肢 ④ が正解です。
- ③ セイヨウタンポポ(正解 ○):ヨーロッパ原産の外来植物です。単為生殖(無融合生殖)によって単独でも種子を作れるだけでなく、二倍体や三倍体の個体が日本の在来タンポポ(カンサイタンポポやカントウタンポポなど)に花粉を渡して受粉し、雑種タンポポ(雑種個体)を作ることで深刻な遺伝子汚染を引き起こしています。
- ④ タイワンザル(×):ニホンザルと交雑して遺伝子汚染を引き起こす特定外来生物ですが、設問で「植物」と指定されているため不適です。
- ① オオキンケイギク・② セイタカアワダチソウ・⑤ ホテイアオイ(×):旺盛な繁殖力やアレロパシー物質の放出などによって在来植物を駆逐しますが、在来種との交雑(遺伝子汚染)が主たる問題ではありません。
問3 異種個体群間の相互作用(競争・捕食と被食・共生)(解答番号 [ 22 ]・[ 23 ]・[ 24 ])
異なる2種の生物を単独で飼育した場合と混合して飼育した場合の個体数変化(または捕食・被食の個体数変動グラフ)に関する設問((1)〜(3))。
- (1) ガウゼのゾウリムシの混合飼育実験(ヒメゾウリムシ・ゾウリムシ・ミドリゾウリムシ)において、生態的地位(ニッチ)が重なる2種を混合飼育したときに片方が絶滅する現象(競争的排除)と、空間的なすみわけ(食いわけ)によって共存する組合せの考察。
- (2) 捕食者(ディディニウムやカナダオオヤマネコ)と被食者(ゾウリムシやカンジキウサギ)の個体数の周期的変動グラフにおいて、どちらが被食者でどちらが捕食者か、またその位相差(被食者が先に増え、少し遅れて捕食者が増える)の読み取り。
- (3) 2種間の相互作用の分類(相利共生・片利共生・寄生・競争)の選択。
- (1) ガウゼの法則(競争的排除則)と共存:
同じ餌(培養液上層の細菌)を食べ、同じ生活空間を占めるゾウリムシとヒメゾウリムシを混合飼育すると、種間競争によってゾウリムシが絶滅し、ヒメゾウリムシのみが生き残ります(競争的排除)。一方、ヒメゾウリムシ(上層の細菌を食べる)とミドリゾウリムシ(底層の酵母菌を食べ、クロレラと共生して酸素不足にも強い)を混合飼育すると、食いわけ・すみわけによって両種とも共存できます。したがって ⑤ が正解です。 - (2) 捕食・被食関係の個体数変動グラフ:
被食者(食べられる側)と捕食者(食べる側)の個体数が周期的に変動する場合、必ず① 被食者が先に増加する → ② 餌が増えたことで捕食者が遅れて増加する → ③ 捕食されすぎて被食者が減少する → ④ 餌不足により捕食者が遅れて減少するという順序(位相差)をたどります。また、一般に生物量・個体数は被食者の方が捕食者よりも多くなります。これを正しく読み取った選択肢 ② が正解です。 - (3) 相互作用の成立条件:
設問の実験結果および生物間相互作用の特徴と照らし合わせると、正しい組合せ・記述は ④ となります。
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