🌸 Sora先生 & ニックニ先生の「2025年 大阪医科薬科大学・生物」総評
皆さんこんにちは!TMPS医学館の理系担当Sora先生と指導統括のニックニ先生です。
2025年度の大阪医科薬科大学(前期)生物は、「基礎知識の正確さ」+「その場で実験・グラフを読み解く論理的記述力」がバランスよく問われる良問揃いでした!特に
大問Iの酸素解離曲線の読み取り計算、大問IIのストリゴラクトン(SL)合成経路と接木実験の考察、大問IVの現存量あたりの純生産量の考察は、医学部合格を左右する最重要ポイントです。途中式も思考ステップも1ミリも省略せずに解説していくので、一緒に完璧にマスターしましょう!
⚡ 解答一覧(スピードチェック)
まずは自分の答えと照らし合わせよう!大問 I(細胞の構造と進化・酸素解離曲線)
- 問1:(あ) DNA(デオキシリボ核酸) / (い) ATP(アデノシン三リン酸) / (う) アミノ酸 / (え) 核膜孔
- 問2:スプライシング(または 5'末端へのキャップ構造の付加、3'末端へのポリA鎖の付加 など)
- 問3 1):①独自の環状DNAを持つこと、②独自のリボソーム(原核生物型)を持ちタンパク質合成を行うこと、③分裂によって増殖すること(このうち2つ)
- 問3 2):C(葉緑体)
- 問3 3):オートファジー(自食作用)
- 問4 1):肺:95% / 組織:30%
- 問4 2):68%
- 問4 3):酸素との親和性が非常に高く、通常の組織の $\text{O}_2$ 濃度(30)でも88%以上が $\text{O}_2$ と結合したままであり、激しい運動によって筋細胞内の $\text{O}_2$ 濃度が極端に低下(20以下など)したときに初めて急激に $\text{O}_2$ を解離する性質。
- 問4 4):ミオグロビンは1本のポリペプチドからなる単量体(三次構造)であるのに対し、ヘモグロビンは4本のポリペプチド($\alpha$鎖2本と$\beta$鎖2本)が会合した四量体(四次構造)である点。
大問 II(頂芽優勢・ストリゴラクトンと菌根菌)
- 問1:(あ) 頂芽優勢 / (い) オーキシン
- 問2:シュートの枝分かれ(側芽の伸長)を抑制する影響を与える。
- 問3:A、B
- 問4:
【実験1】変異体Bの根では正常な酵素1によって化合物③が作られ、それが地上部へ移動し、変異体Aの地上部が持つ正常な酵素2によって化合物④を経てSLが合成されるため。
【実験2】変異体Aの根は酵素1を欠くため化合物③を作れず、また地上部から根へは化合物が移動できないため、変異体Bの地上部(酵素2を欠く)では化合物④およびSLを合成できないため。 - 問5 1):ア、ウ、オ
- 問5 2):(a) 光合成によって合成した有機物(炭水化物)を供給する。
(b) 土壌中から吸収した水や無機塩類(特にリン酸など)を供給する。
大問 III(眼の発生・視覚・明暗調節と遠近調節)
- 問1:(1) 原口背唇部(脊索中胚葉) / (2) 神経管 / (3) 角膜 / (4) 誘導(または連鎖誘導) / (5) 視覚野(大脳皮質視覚野)
- 問2 (1):360 nm
- 問2 (2):雌雄の判別。理由:モンシロチョウは雌の翅だけが紫外線を反射し、雄は反射しないため、紫外線の反射の有無によって雌雄を見分けているから。
- 問3:相似器官
- 問4:明るいときは瞳孔括約筋が収縮して瞳孔が小さくなり瞳孔が縮小し眼に入る光量を減らし、暗いときは虹彩が縮んで(瞳孔散大筋が収縮して)瞳孔が拡大し眼に入る光量を増やす。
- 問5 (1):ア:弛緩 / イ:引かれる / ウ:薄く
- 問5 (2):近くを見るときは毛様筋が収縮してチン小帯が緩むが、水晶体の弾力が失われているため水晶体が十分に厚くならず、網膜上に焦点を合わせられなくなるから。
大問 IV(生態系・生物濃縮・物質循環と生産量)
- 問1:生態系の多様性、種の多様性、遺伝的多様性(遺伝子の多様性)
- 問2:環境形成作用(反作用)
- 問3:A:食物連鎖 / B:生物濃縮 / C:水
- 問4 1):ウ(植物プランクトン)
- 問4 2):理由:水深が深くなるほど光の強さが弱まり総生産量(光合成量)が減少して呼吸量との差が小さくなり、やがて総生産量と呼吸量が等しくなるため。 / 水深の名称:補償深度
- 問5 1):熱エネルギー
- 問5 2):炭素は光合成と呼吸によって大気中の $\text{CO}_2$ と生物群集との間で直接かつ活発に出入りするが、窒素は大気中の $\text{N}_2$ を利用できる生物がごく一部の窒素固定生物に限られ、多くの生物は生態系内の土壌や水中の無機窒素化合物を循環させて利用しているということ。
- 問6 1):オ、エ、ウ、イ、ア
- 問6 2):陸上の植物(特に森林の樹木)は植物体を支える幹や根などの非同化器官の割合が大きいのに対し、海洋の植物プランクトンは体のほぼ全体が光合成を行う同化器官からなり、さらに世代交代(増殖)が速いため。
大問 I:細胞の構造・細胞内共生説・酸素解離曲線
配点比重:高 / 目標時間:18分
大問Iの前半(問1〜問3)は絶対に落とせない基礎知識問題です!特に問3 1)では問題文に「ミトコンドリアの膜の性質以外で2つあげよ」という条件がついているので、「二重膜である(外膜が真核細胞由来、内膜が好気性細菌由来)」を答えてしまうと0点になります!問題文の条件チェックは鉄則ですよ。
そして合否を分けるのが後半の問4(酸素解離曲線)!問4 2)の「肺での酸素ヘモグロビンのうちの何%か」は、単純な引き算ではなく「(再び結合した割合)÷(肺での酸素ヘモグロビン割合)×100」を聞いています。グラフの目盛りを1ミリもズレずに読み取る方法を一緒に確認しましょう!
【問題文 I】
全ての生物に共通する特徴として、遺伝物質として( あ )を有すること、エネルギーの受け渡しの仲立ちをする物質として( い )を持つこと、タンパク質の基本単位である( う )が共通していること、細胞を持つことなどがあげられる。生物を構成する細胞は形や大きさなどに多様性が見られるが、基本的な構造は共通している。細胞には、1真核細胞と原核細胞がある。真核細胞の内部には、核や 2ミトコンドリアなどの細胞小器官が見られる。核内外の物質のやりとりは( え )を通して行われる。
およそ20億年前までの地球には原核生物しか存在していなかったと考えられている。その後、出現した真核生物は、その多くが大形で複雑な構造をしている。真核細胞ではミトコンドリアが発達し、その 3呼吸によって多くの( い )が得られる、効率の良い代謝を行っている。
■ 問1:( あ )〜( え )の空欄に適切な語句を入れよ。
STEP 1すべての生物に共通する物質の確認
- ( あ )遺伝物質:地球上のすべての細胞性生物(原核生物・真核生物)は、遺伝物質としてDNA(デオキシリボ核酸)を持っています。(※RNAをゲノムとして持つのは一部のウイルスのみであり、ウイルスは細胞を持たないため生物の共通特徴からは除外されます)。
- ( い )エネルギーの受け渡しの仲立ちをする物質:呼吸や光合成で合成され、生命活動のあらゆるエネルギー通貨として働くのはATP(アデノシン三リン酸)です。第2段落の「呼吸によって多くの( い )が得られる」とも完全に一致します。
- ( う )タンパク質の基本単位:タンパク質は20種類のアミノ酸がペプチド結合で多数つながったポリペプチドからできています。
- ( え )核内外の物質のやりとりを行う構造:真核細胞の核は二重膜である「核膜」に包まれており、その核膜には核膜孔(かくまくこう)と呼ばれる穴が開いています。核内で転写・加工されたmRNAが細胞質基質へ出たり、細胞質基質で合成されたタンパク質が核内へ入ったりするのは、この核膜孔を通して行われます。
【問1 解答】
(あ)DNA(デオキシリボ核酸) / (い)ATP(アデノシン三リン酸) / (う)アミノ酸 / (え)核膜孔
■ 問2:下線部1について、mRNAがつくられるときに真核細胞のみで行われる過程を1つ答えよ。
STEP 1原核細胞と真核細胞の転写〜翻訳の違いを整理する
原核細胞には核膜がなく、DNAから転写されたmRNAにはイントロン(アミノ酸を指定しない領域)が含まれないため、転写されたそのままのRNAが直ちにリボソームと結合して翻訳されます。
一方、真核細胞では、DNAから転写されてできた「mRNA前駆体」に対して、核内で以下のような加工(RNAプロセシング)が行われてから成熟mRNAとなります。
📌 真核細胞のみで行われるmRNA形成過程(どれか1つを書けば正解!)
- スプライシング(mRNA前駆体からイントロンが切り除かれ、エキソン同士がつなぎ合わされる過程)※最も代表的!
- 5'末端へのキャップ構造の付加(mRNAの分解を防ぎ、リボソームへの結合を助ける)
- 3'末端へのポリA鎖(ポリアデニル酸)の付加
【問2 解答】
スプライシング
■ 問3:下線部2(ミトコンドリア)について
2) 次のA〜Fのうち、ミトコンドリアと同様に、共生により生じたと考えられる細胞小器官はどれか、当てはまるものを全て選び、記号で答えよ。
A:中心体 B:リボソーム C:葉緑体 D:ゴルジ体 E:リソソーム F:小胞体
3) 不要になったミトコンドリアは、ある過程によって分解される。この過程を何と呼ぶか。
1) の解説細胞内共生説の根拠(膜の性質以外!)
マーギュリスらが提唱した「細胞内共生説」の根拠は主に4つあります。そのうち「二重膜を持ち、内膜の性質が原核生物の細胞膜に似ており、外膜が真核細胞の細胞膜に似ている」という膜の性質は問題文で除外されています。したがって、残りの以下の3つのうち2つを答えれば満点です。
- 核のDNAとは異なる独自の(環状)DNAを持つこと。
- 細胞質基質のものとは異なる独自の(原核生物型の)リボソームを持ち、独自にタンパク質合成を行うこと。
- 細胞分裂とは独立して、分裂(二分裂)によって増殖すること。
2) の解説共生起源の細胞小器官をすべて選ぶ
細胞内共生によって生じた細胞小器官は、好気性細菌($\alpha$プロテオバクテリア類)が共生したミトコンドリアと、光合成を行うシアノバクテリアが共生した「C:葉緑体」の2つだけです。
(※A:中心体とB:リボソームは膜を持たない構造、D:ゴルジ体、E:リソソーム、F:小胞体は一重膜の細胞小器官であり、細胞膜の陥入などによって生じたと考えられています)。
3) の解説不要になった細胞小器官の分解過程
細胞が自身の古くなった・不要になったミトコンドリアなどの細胞小器官やタンパク質を膜(オートファゴソーム)で包み込み、リソソームと融合させて消化・分解し、アミノ酸などを再利用する仕組みをオートファジー(自食作用)と呼びます(大隅良典博士のノーベル生理学・医学賞受賞テーマとしても超頻出です!)。特にミトコンドリアの選択的オートファジーは「マイトファジー」とも呼ばれますが、高校生物の標準用語としてはオートファジー(または自食作用)と答えるのが最も確実です。
【問3 解答】
1) 独自の(環状)DNAを持つこと。独自のリボソームを持ちタンパク質合成を行うこと。(または「分裂によって増殖すること。」)
2) C
3) オートファジー(自食作用)
■ 問4:下線部3(呼吸と酸素運搬)について
1) 肺と組織それぞれの酸素ヘモグロビンの割合は何%か。
2) 血中のヘモグロビンが組織から肺に戻った際に、再度、酸素ヘモグロビンになるのは肺での酸素ヘモグロビンのうちの何%か。
3) ミオグロビンは、激しく運動をしたときにのみ$\text{O}_2$を筋細胞に供給する。これはミオグロビンのどのような性質によるものか、図の曲線を参照し、説明せよ。
4) ミオグロビンとヘモグロビンの立体構造の違いを答えよ。
【図解】問題のグラフの正確な目盛り読み取り(1目盛り=横軸10、縦軸10)
1) の解説肺と組織それぞれの酸素ヘモグロビンの割合
- 肺での酸素ヘモグロビンの割合:肺は曲線A、$\text{O}_2$濃度は100です。グラフの横軸 $100$ のときの曲線Aの縦軸の値を読み取ると、$90$ と $100$ のちょうど真ん中に位置しているので 95% です。
- 組織での酸素ヘモグロビンの割合:組織は曲線B、$\text{O}_2$濃度は30($20$ と $40$ の間の縦線)です。横軸 $30$ の縦線と曲線Bの交点を読み取ると、ちょうど $20$ と $40$ の間の横線(30%)の格子点上にあります!したがって 30% です。
2) の解説組織から肺に戻った際に、再度、酸素ヘモグロビンになる割合
ここが最大の計算ポイントです!言葉の意味を1ステップずつ分解しましょう。
🔍 思考プロセス(なぜ $95 - 30 = 65\%$ ではないのか?)
- 組織($\text{O}_2$濃度30、曲線B)では、全ヘモグロビンのうち 30% が酸素ヘモグロビンのまま残っており、残りの $70\%$ は酸素を離したヘモグロビン(脱酸素ヘモグロビン)になっています。
- この血液が組織から肺($\text{O}_2$濃度100、曲線A)に戻ると、全ヘモグロビンのうち 95% が酸素ヘモグロビンになります。
- つまり、全ヘモグロビンを $100$ としたとき、肺に戻った際に「再度(新たに)酸素ヘモグロビンになった量」は、 $$95 - 30 = 65$$ です(これは組織で酸素を解離した量と同じです)。
- 問題文は「肺での酸素ヘモグロビン(95)のうちの何%か」を聞いています!したがって、分母は $100$ ではなく $95$ になります! $$\text{求める割合 (\%)} = \frac{95 - 30}{95} \times 100 = \frac{65}{95} \times 100 = \frac{13}{19} \times 100 \fallingdotseq 68.42\dots\%$$
- 有効数字2桁で四捨五入すると、68% となります!
3) の解説ミオグロビン(曲線M)の性質とグラフの読み取り
図の曲線M(ミオグロビン)を見ると、$\text{O}_2$濃度が低い領域でも急激に立ち上がる双曲線(直角双曲線)を描いています。
- 通常の組織の$\text{O}_2$濃度(30)でも、曲線Mは約90%近くという非常に高い割合で$\text{O}_2$と結合したままであり、ほとんど$\text{O}_2$を放出しません(酸素を貯蔵している状態)。
- しかし、激しい運動によって筋細胞で大量に$\text{O}_2$が消費され、組織の$\text{O}_2$濃度が極端に低下(グラフの横軸で20以下、特に10以下)すると、曲線Mの傾きが急になり、結合割合が急激に下がって大量の$\text{O}_2$を解離(供給)します。
4) の解説ミオグロビンとヘモグロビンの立体構造の違い
タンパク質の高次構造(一次〜四次構造)の代表例として教科書に必ず載っている対比です!
- ミオグロビン:1本のポリペプチド(と1個のヘム)からなる単量体(モノマー)であり、立体構造としては三次構造までしか持ちません。
- ヘモグロビン:4本のポリペプチド($\alpha$鎖2本と$\beta$鎖2本の計4つのサブユニット、それぞれにヘムを1個ずつ含む)が立体的に会合した四量体(テトラマー)であり、四次構造を持っています(※この四量体構造によるアロステリック効果・協同性があるため、ヘモグロビンの酸素解離曲線はS字状になります)。
【問4 解答】
1) 肺:95% / 組織:30%
2) 68%
3) ミオグロビンは$\text{O}_2$との親和性が非常に高く、通常の組織の$\text{O}_2$濃度(30)でも約90%が$\text{O}_2$と結合したままであるが、激しい運動により筋細胞内の$\text{O}_2$濃度が極端に低下(20以下)したときに初めて急激に$\text{O}_2$と結合している割合が低下し、$\text{O}_2$を解離する性質。
4) ミオグロビンは1本のポリペプチドからなる単量体(三次構造)であるのに対し、ヘモグロビンは4本のポリペプチドが会合した四量体(四次構造)であるという違い。
大問 II:頂芽優勢・ストリゴラクトン(SL)の合成と接木実験
配点比重:高 / 目標時間:20分
大問IIは植物ホルモンのストリゴラクトン(SL)に関する超頻出の実験考察問題です!
解くときの最大のコツは、まず「変異体A・B・Cのどこが壊れているか」を図2の代謝経路に直接書き込むこと!そして問4の接木(つぎき)実験では、問題文の最後にある「図2の化合物は根から地上部には移動できるが、地上部から根には移動できない」という一方通行ルール(導管を通じた上昇移動)を使えば、パズルのように100%スッキリ解けますよ!指定語句(根・地上部・酵素・化合物)の入れ忘れにも注意しましょう!
【問題文 II】
種子植物のシュート(茎と葉で構成される地上部分)の枝分かれは、まず側芽がつくられ、それが伸長して形成される。一般に、頂芽が成長しているときには側芽の成長は抑えられており、この現象は( あ )と呼ばれる。このとき、茎の上部でつくられた( い )という植物ホルモンが下方に移動して側芽の成長を抑制する。
一方、1シュートの枝分かれが過剰に形成される3種類のシロイヌナズナ変異体A, B, C(図1)などの解析から、ストリゴラクトン(SL)という物質が地上部で働き、側芽伸長に関与することも分かっている。SLは $\beta$-カロテンから複数の化合物を経て合成される(図2)。変異体Aでは図2の酵素1を、変異体Bでは図2の酵素2を、変異体CではSL受容後の情報伝達経路で働くタンパク質を、それぞれ指定する遺伝子に変異がある。
2菌根菌と共生する植物がつくるSLは、菌根菌の菌糸の分枝を誘導する役割を持つことも知られる。
【図解】図2:ストリゴラクトン(SL)合成経路と変異体A・B・Cの欠損部位
■ 問1・問2:頂芽優勢とストリゴラクトン(SL)の働き
問2 下線部1のうち、変異体A, BではいずれもSLが合成されていなかった。SLはシュートの枝分かれに対してどのような影響を与えると考えられるか。
問1 の解説頂芽優勢とオーキシン
植物の茎頂(頂芽)が存在するとき、わき芽(側芽)の成長が抑制される現象を(あ)頂芽優勢と呼びます。このとき、茎頂(茎の上部)で合成された植物ホルモンである(い)オーキシンが極性移動によって下方へ移動し、側芽の成長を促進するサイトカイニンの合成を抑えるとともに、側芽の伸長を抑制するストリゴラクトン(SL)の合成を促進します。
問2 の解説SLがシュートの枝分かれに与える影響
実験事実から因果関係を逆算しましょう!
・「変異体A, BではSLが合成されていない」
・その結果、下線部1にあるように「シュートの枝分かれが過剰に形成される(側芽がどんどん伸びてしまう)」
ということは、正常な植物においてSLはシュートの枝分かれ(側芽の伸長)を抑制する働き(影響)を持っています!
【問1・問2 解答】
問1:(あ)頂芽優勢 / (い)オーキシン
問2:シュートの枝分かれ(側芽の伸長)を抑制する影響を与える。
■ 問3:化合物④の投与実験
STEP 1化合物④から先の経路が正常かどうかをA, B, Cそれぞれで判定する
上の図解(図2)を見てください。化合物④は、酵素1および酵素2が働くよりも「下流(あと)」の物質(SLの直前の前駆体)です!
- 変異体A(酵素1を欠損):自分で化合物②→③を作ることはできませんが、外から化合物④を与えられれば、そこから先の反応や受容体はすべて正常なので、SLを合成でき、過剰な枝分かれが起こらなくなります(野生型に回復する)!→ 〇
- 変異体B(酵素2を欠損):自分で化合物③→④を作ることはできませんが、すでに作られた化合物④を外から与えられれば、そこからSLを合成でき、受容後の情報伝達も正常なので、過剰な枝分かれが起こらなくなります(野生型に回復する)!→ 〇
- 変異体C(SL受容後の情報伝達タンパク質を欠損):外から化合物④を与えてSLが合成されたとしても、SLを受け取ったあとの情報伝達経路が壊れているため、側芽伸長を抑制できず、過剰な枝分かれのままです。→ ×
【問3 解答】
A、B
■ 問4:接木(つぎき)実験の考察記述
実験1. 変異体Bの根に、変異体Aの地上部を接木した。シュートは枝分かれしなかった。
実験2. 変異体Aの根に、変異体Bの地上部を接木した。シュートの枝分かれが過剰に形成された。
実験1および実験2の結果が得られた理由をそれぞれ説明せよ。その際、SLの合成に着目し、「根」「地上部」「酵素」「化合物」という語句を必ず用いること。なお、図2の化合物は根から地上部には移動できるが、地上部から根には移動できない。
【図解】実験1と実験2の接木(つぎき)と化合物の移動(根 → 地上部のみ移動可能!)
STEP 1実験1の理由(なぜ枝分かれしなかった=SLが合成されたのか?)
- 根(変異体B)は酵素2を欠くものの、正常な酵素1を持っているため、化合物②から化合物③を合成できます。
- この化合物③が根から地上部へ移動します。
- 地上部(変異体A)は酵素1を欠くものの、正常な酵素2を持っているため、根から移動してきた化合物③を化合物④へと変換し、最終的にSLが合成されます。その結果、地上部でSLが働いてシュートの枝分かれが抑制されました。
STEP 2実験2の理由(なぜ過剰に枝分かれした=SLが合成されなかったのか?)
- 根(変異体A)は酵素1を欠いているため、化合物②までしか合成できず(化合物③以降を作れず)、仮に化合物②が地上部へ移動しても、地上部(変異体B)は酵素2を欠いているため、化合物③から化合物④(およびSL)を合成できません。
- また、地上部(変異体B)が持つ正常な酵素1によって地上部で化合物③が作られても、化合物③は地上部から根(正常な酵素2を持つ変異体A)へは移動できないため、どちらにおいてもSLが合成されず、シュートの枝分かれが過剰に形成されました。
【問4 解答】
【実験1】変異体Bの根では正常な酵素1により化合物③が合成されて地上部へ移動し、変異体Aの地上部が持つ正常な酵素2により化合物③から化合物④を経てSLが合成され、枝分かれが抑制されたため。 【実験2】変異体Aの根は酵素1を欠くため化合物②までしか合成できず、変異体Bの地上部は酵素1により化合物③を合成できても酵素2を欠き、さらに化合物③は地上部から根へ移動できないためSLが合成されないから。
■ 問5:下線部2(菌根菌と植物の相利共生)について
ア:酵母(酵母菌) イ:乳酸菌 ウ:マツタケ エ:根粒菌 オ:コウジカビ カ:アゾトバクター
2) 菌根菌が共生している植物と菌根菌は、双方の種が利益を得る関係である。(a) 植物が菌根菌に与える主な利益、(b) 菌根菌が植物に与える主な利益は何か、簡潔に答えよ。
1) の解説「名前に菌がつく原核生物(細菌)」と「真核生物である菌類」を見分ける!
🍄 菌類(真核生物)→ 選ぶもの!
- ア:酵母(酵母菌)(単細胞の菌類・子嚢菌類など)
- ウ:マツタケ(キノコ類・担子菌類、外生菌根菌の代表!)
- オ:コウジカビ(カビ類・子嚢菌類)
🦠 細菌類(原核生物)→ 選ばない!
- イ:乳酸菌(真正細菌)
- エ:根粒菌(マメ科植物に共生して窒素固定を行う細菌)
- カ:アゾトバクター(単独で窒素固定を行う細菌)
2) の解説植物と菌根菌の相利共生(ギブ・アンド・テイク)
- (a) 植物が菌根菌に与える利益:菌根菌は葉緑体を持たない従属栄養生物です。そのため、独立栄養生物である植物から光合成によって作られた有機物(炭水化物・糖)を受け取ります。
- (b) 菌根菌が植物に与える利益:菌根菌は細く広範囲に張り巡らされた菌糸によって、土壌中から効率よく水や無機塩類(特に植物の根だけでは吸収しにくいリン酸など)を吸収し、植物に供給します。
【問5 解答】
1) ア、ウ、オ
2) (a) 光合成によって合成した有機物(炭水化物)を与える。
(b) 土壌中から吸収した水や無機塩類(特にリン酸など)を与える。
大問 III:眼の発生(連鎖誘導)・昆虫の紫外線受容・眼の調節機構
配点比重:中 / 目標時間:15分
大問IIIは「動物の発生(眼の形成)」と「感覚器(ヒトの眼と昆虫の視覚)」の融合問題です!
うっかりミスが一番多いのが問5 (1)・(2)の遠近調節と老眼のしくみです。「毛様筋が弛緩するとチン小帯が引かれる(ピンと張る)」という筋肉と繊維の逆転関係を頭の中だけで処理しようとすると混乱しがちです。輪ゴムのようなリング状の筋肉(毛様筋)をイメージして、遠くを見るとき・近くを見るとき・老眼のときを一気に図解で整理しましょう!
【問題文 III】
眼の発生は、脊椎動物ではカエルやイモリ等を用いて研究が進んでいる。イモリの眼が形成されるとき、まず( 1 )という中胚葉の一部が形成体となり、誘導物質が分泌された結果、外胚葉から神経板が誘導され、それがやがて( 2 )となる。( 2 )は脳に分化し、脳の一部が左右にふくらんで1対の眼胞を生じる。次に、眼胞は形成体となって表皮から水晶体を誘導するとともに網膜に分化する。さらに水晶体は、表皮から( 3 )を誘導する。このような一連の作用は( 4 )と呼ばれる。
ヒトの網膜には、視細胞という 1光を受容する細胞があり、その細胞からの情報は視神経を介して後頭葉の( 5 )に送られる。ヒトの眼は 2カメラ眼と呼ばれ、3明暗の調節機構および 4遠近の調節機構を備えている。
■ 問1:( 1 )〜( 5 )の空欄に適切な語句を入れよ。
STEP 1イモリの眼の形成過程(連鎖誘導)と視覚の伝導路
- ( 1 )原口背唇部(または脊索中胚葉):両生類の原腸胚において最初に形成体(オーガナイザー)として働き、予定外胚葉域から神経板を誘導する中胚葉領域は原口背唇部です。
- ( 2 )神経管:神経板の両端が盛り上がって神経溝となり、さらに閉じて管状の神経管になります。神経管の前方がふくらんで脳に分化し、間脳の左右が突出して眼胞となります。
- ( 3 )角膜:眼胞(→眼杯)が表皮に働きかけて水晶体を誘導し、さらに水晶体が形成体となって外側の表皮から透明な角膜を誘導します。
- ( 4 )誘導(または連鎖誘導):形成体が周囲の未分化な細胞に働きかけて分化を引き起こす現象を誘導といい、特に「原口背唇部→神経管(眼胞)→水晶体→角膜」のように誘導されて生じた組織が次の形成体となって次々と誘導を引き起こす一連の作用を連鎖誘導(二次・三次誘導を含む誘導の連鎖)と呼びます。
- ( 5 )視覚野(大脳皮質視覚野):網膜の視細胞で受容された光情報は、視神経を通って大脳皮質の後頭葉にある視覚野へ送られ、視覚が生じます。
【問1 解答】
(1)原口背唇部 / (2)神経管 / (3)角膜 / (4)誘導(連鎖誘導) / (5)視覚野
■ 問2・問3:モンシロチョウの紫外線受容と相似器官
(1) モンシロチョウは紫外線を受容するために、どのような波長の光を吸収する視物質を持つと考えられるか。以下から選んで答えよ。
$360\text{ nm}$ $450\text{ nm}$ $560\text{ nm}$ $650\text{ nm}$ $790\text{ nm}$
(2) モンシロチョウは紫外線を受容することで何を判別していると考えられるか、理由とともに答えよ。
問3 下線部2について、イカの眼もカメラ眼であるが、外胚葉(表皮)が陥没してできる。このような、起源は異なるが同じような形態や働きを持つ器官を何と言うか。
問2 (1) の解説紫外線(UV)の波長領域を選ぶ
問題文に「ヒトの可視光線はおよそ $380\sim 760\text{ nm}$」と与えられています。
・紫外線(紫より外側の光)は、紫色の光(約 $380\text{ nm}$)よりも波長が短い光です!したがって選択肢の中で $380\text{ nm}$ より短い $360\text{ nm}$ が正解です。(※ちなみに $760\text{ nm}$ より波長が長い $790\text{ nm}$ は赤外線です)。
問2 (2) の解説モンシロチョウが紫外線で判別しているもの
ヒトの目にはモンシロチョウの雄も雌も同じ「白いチョウ」に見えますが、問題文に「モンシロチョウは、雌だけが紫外線を反射する」という大ヒントが書かれています!
つまり、雄の翅は紫外線を吸収し、雌の翅は紫外線を反射するため、モンシロチョウは紫外線を受容することで「雌雄(雄か雌か)」を判別しています(特に雄が交尾相手である雌を見分けるために利用しています)。
問3 の解説相同器官と相似器官の区別
・相同器官:発生上の起源は同じであるが、形態や働きが異なる器官(例:クジラの胸びれとコウモリの翼)。
・相似器官:脊椎動物のカメラ眼(脳=神経管由来)とイカ・タコなど頭足類のカメラ眼(表皮由来)、あるいは昆虫の翅と鳥の翼のように、発生上の起源は異なるが、同じような環境に適応した結果(収束進化)、同じような形態や働きを持つようになった器官を相似器官と呼びます。
【問2・問3 解答】
問2 (1):360 nm
問2 (2):雌雄の判別。理由:モンシロチョウは雌だけが紫外線を反射し雄は反射しないため、紫外線の反射の有無によって雄と雌を見分けているから。
問3:相似器官
■ 問4・問5:明暗調節と遠近調節(老眼のしくみ)
問5 下線部4について、眼に入った光は、水晶体で屈折されて網膜上に像を結ぶ。水晶体の焦点が一定であるとすると、遠くのものと近くのもので、鮮明な像のできる位置が異なる。そのため脊椎動物では水晶体と網膜の距離は変えずに遠近調節を行っている。
(1) ヒトの眼の遠近調節機構に関する次の文章中のア〜ウのカッコ内について適切な語句を囲み、文を完成させよ。
ヒトの眼では、見ている対象までの距離が遠いとき、毛様筋が(ア: 弛緩 収縮 )し、そこに結合しているチン小帯が(イ: 引かれる 緩む )ので、その結果、水晶体が(ウ: 厚く 薄く )なり、網膜上に像が結ばれる。
(2) 一般にヒトは40歳を過ぎると水晶体の弾力が失われ、近くの対象に焦点を合わせるのが難しくなる。これは老眼と呼ばれる。老眼が起こるしくみを眼の遠近調節に着目し、「毛様筋」「チン小帯」という語句を用いて説明せよ。
【図解】一目でわかる「遠くを見るとき」「近くを見るとき」「老眼」の比較
問4 の解説明暗調節(虹彩と瞳孔の働き)
カメラの「絞り」にあたるのが虹彩(こうさい)、その中央の光の通り道(穴)が瞳孔(どうこう)です。
・明るいとき:瞳孔括約筋が収縮して瞳孔が小さくなり瞳孔が縮小し、眼に入る光量を減らします。
・暗いとき:虹彩が縮んで(瞳孔散大筋が収縮して)瞳孔が拡大し、眼に入る光量を増やします。
問5 (1)・(2) の解説遠近調節と老眼のメカニズム
- 遠くを見るとき(問5 (1)):輪状の筋肉である毛様筋が(ア:弛緩)すると、輪が広がって外側に引っ張られるため、チン小帯が(イ:引かれる)状態になります。すると水晶体が上下左右に引っ張られて(ウ:薄く)なり、光の屈折率が小さくなって遠くの対象からの光が網膜上に結像します。
- 近くを見るとき&老眼のしくみ(問5 (2)):本来、近くを見るときは毛様筋が収縮して輪が狭まり、チン小帯が緩むことで、水晶体自身の弾力性(丸まろうとする性質)によって水晶体が厚くなり、光を大きく屈折させて網膜上に像を結びます。
しかし老眼では、近くを見るときに毛様筋が収縮してチン小帯が緩んでも、水晶体の弾力が失われているため水晶体が十分に厚くならず(屈折率が大きくならず)、網膜より後ろに焦点が合ってしまい、網膜上に鮮明な像を結べなくなります。
【問4・問5 解答】
問4:明るいときは虹彩が伸びて瞳孔が縮小し眼に入る光量を減らし、暗いときは虹彩が縮んで瞳孔が拡大し眼に入る光量を増やす。 問5 (1):ア:弛緩 / イ:引かれる / ウ:薄く 問5 (2):近くを見るときは毛様筋が収縮してチン小帯が緩むが、水晶体の弾力が失われているため水晶体が十分に厚くならず、光を十分に屈折できなくなって網膜上に焦点を合わせられなくなるから。
大問 IV:生態系・生物濃縮・物質循環と純生産量の比較
配点比重:高 / 目標時間:17分
いよいよ最後の大問IV(生態系)です!
ここで一番気をつけたいひっかけが問3の空欄C!問題文をよく読むと「(C:水 脂肪)に溶けにくく」と書かれています。生物濃縮される物質(DDTやPCBなど)は「脂肪に溶けやすく(脂溶性)、水に溶けにくい(疎水性)」ため、尿などとして体外に排出されにくいんでしたね!「溶けにくく」という言葉を見落とさないようにしましょう。
そして問6の表の計算と考察は、森林(樹木)と海洋(植物プランクトン)の決定的な違いである「同化器官と非同化器官の割合」を論理的に記述できるかが勝負です!最後まで駆け抜けましょう!
【問題文 IV】
地球上には森林や草原、湖沼、河川などの様々な環境があり、それぞれの環境に対応した生態系が存在する。生態系は生物群集と非生物的環境で構成される。1生物群集は非生物的環境に影響を及ぼし、2非生物的環境は生物群集に影響を及ぼす。また、生物群集は 3生産者と消費者に大きく分けられ、それぞれの生物の間には捕食・被食の関係が見られる。このような関係を通じて、4生態系内では常に物質やエネルギーの移動が起こっている。
■ 問1・問2・問3:生物多様性の3階層・環境形成作用・生物濃縮
問2 下線部1について、生物群集が非生物的環境に影響を及ぼすことを何というか。
問3 下線部2に関する次の文章を読み、空欄A, Bに適切な語句を入れよ。またCは、適切な方を囲め。
特定の物質が生体内に取り込まれて蓄積し、捕食・被食の関係が次々と繋がっていく( A )の過程を通して濃縮を重ねていく現象を( B )という。蓄積される物質は、( C:水 脂肪 )に溶けにくく、体外に排出されにくいという特徴を持つ。
問1 の解説生物多様性の3つの階層
生物多様性条約などでも定義されている基本の3階層は、マクロな視点からミクロな視点へ順に:
① 生態系の多様性(森林・草原・サンゴ礁・干潟など多様な生態系が存在すること)
② 種の多様性(さまざまな種の生物が存在すること)
③ 遺伝的多様性(遺伝子の多様性)(同じ種の中でも個体ごとに遺伝子の違いがあること)
の3つです。
問2 の解説作用と環境形成作用(反作用)の区別
・非生物的環境 → 生物群集への影響(下線部2):作用
・生物群集 → 非生物的環境への影響(下線部1):環境形成作用(または反作用)(例:森林の樹木が光を遮って林床を暗くし湿度を保つ、ミミズが土壌を耕すなど)。
問3 の解説食物連鎖と生物濃縮
・捕食・被食の関係が鎖のように繋がっていく関係を(A)食物連鎖といいます。
・食物連鎖を通じて栄養段階が高次の生物ほど体内の特定物質の濃度が高くなる現象を(B)生物濃縮といいます。
・生物濃縮されやすい物質(DDTやPCBなど)は、(C:水)に溶けにくく(脂肪に溶けやすく)、また生体内で分解されにくいため、尿などとして体外に排出されずに脂肪組織などに蓄積していきます。
【問1・問2・問3 解答】
問1:生態系の多様性、種の多様性、遺伝的多様性(遺伝子の多様性)
問2:環境形成作用(反作用)
問3:A:食物連鎖 / B:生物濃縮 / C:水
■ 問4・問5:海洋の生産者と補償深度・エネルギーの流れと物質循環
1) 次のア〜エのうち、海洋での生産者として適切なものを全て選び、記号で答えよ。
ア:魚類 イ:甲殻類 ウ:植物プランクトン エ:動物プランクトン
2) 海洋において、水深が深くなるほど生産者の純生産量が減少し、やがて0になるのはどうしてか、「呼吸量」という語句を用いて説明せよ。また、純生産量が0になるときの水深を何というか。
問5 下線部4について、
1) 吸収した太陽からの光エネルギーの一部はある形で生態系外に放出される。それはどのような形か。
2) 生態系において、炭素は開放的な循環、窒素は閉鎖的な循環をしている。これはどういうことか、生物と大気とのやりとりに着目してそれぞれの循環を簡潔に説明せよ。
問4 1)・2) の解説海洋の生産者と補償深度
- 1) 海洋の生産者:光合成によって無機物から有機物を合成する独立栄養生物(生産者)は、選択肢の中ではウ:植物プランクトン(ケイ藻や渦鞭毛藻、シアノバクテリアなど)のみです(※魚類・甲殻類・動物プランクトンはすべて消費者です)。
- 2) 水深と純生産量の関係:生産者の純生産量は次の式で表されます。 $$\text{純生産量} = \text{総生産量(光合成量)} - \text{呼吸量}$$ 水深が深くなるほど海水によって光が吸収・散乱されて光の強さが弱まるため、総生産量(光合成量)が減少し、呼吸量との差(純生産量)が小さくなります。そしてある水深に達すると、総生産量と呼吸量が等しくなり、純生産量が0になります。このときの水深(光の強さが補償点となるときの水深)を補償深度と呼びます。
問5 1)・2) の解説熱エネルギーの放出と炭素・窒素循環の対比
- 1) 生態系外へ放出されるエネルギーの形:生産者が光合成で取り込んだ光エネルギーは化学エネルギー(有機物)に変換されて食物連鎖を移動しますが、各栄養段階の生物の呼吸や生命活動に伴って、最終的に熱エネルギーとなって生態系外(大気や宇宙空間)へ放出されます(エネルギーは循環せず一方向に流れます)。
- 2) 炭素の開放的な循環と窒素の閉鎖的な循環:「生物と大気とのやりとりに着目して」という条件に沿って対比させましょう!
・炭素(開放的な循環):生産者による光合成(大気中の$\text{CO}_2$の吸収)と、すべての生物による呼吸(大気中への$\text{CO}_2$の放出)によって、生物と大気との間で直接かつ大量に出入りしている(やりとりが活発である)。
・窒素(閉鎖的な循環):大気中の$\text{N}_2$を直接取り込める(窒素固定できる)生物や、大気中へ$\text{N}_2$を戻す(脱窒を行う)生物はごく一部の細菌類に限られており、大気との出入りは少なく、多くの生物は生態系内(土壌や水中)の無機窒素化合物(アンモニウムイオンや硝酸イオン)を繰り返し循環させて利用している。
【問4・問5 解答】
問4 1):ウ 問4 2):理由:水深が深くなるほど光の強さが弱まり生産者の総生産量(光合成量)が減少して呼吸量との差が小さくなり、やがて総生産量と呼吸量が等しくなるため。 / 水深の名称:補償深度 問5 1):熱エネルギー 問5 2):炭素は光合成と呼吸によって生物と大気($\text{CO}_2$)との間で直接かつ活発に出入りしているのに対し、窒素は大気($\text{N}_2$)と直接やりとりできる生物が一部の細菌に限られて大気との出入りが少なく、主に生態系内で無機窒素化合物として循環しているということ。
■ 問6:生態系ごとの現存量と純生産量の比較・考察
1) ア〜オの生態系について、現存量 $1\text{ kg}$ あたりの年間の純生産量の大きいものから順に左から並べ、記号で答えよ。
2) 現存量 $1\text{ kg}$ あたりの年間の純生産量に差が出る理由を「同化器官」という語句を用いて考察せよ。
| 生態系 | 面積 ($10^6\text{ km}^2$) |
現存量 $B$ ($10^{12}\text{ kg}$) |
純生産量 $P_n$ ($10^{12}\text{ kg/年}$) |
現存量 $1\text{ kg}$ あたりの年間純生産量 $P_n \div B$($\text{kg/年}$) |
大きい順 |
|---|---|---|---|---|---|
| ア:森林 | 41.6 | 1191.1 | 72.4 | $72.4 \div 1191.1 \fallingdotseq 0.061$ | 5位 |
| イ:草原 | 45.4 | 226.7 | 48.7 | $48.7 \div 226.7 \fallingdotseq 0.215$ | 4位 |
| ウ:荒原 | 33.3 | 26.7 | 8.9 | $8.9 \div 26.7 = \frac{1}{3} \fallingdotseq 0.333$ | 3位 |
| エ:農耕地 | 13.5 | 8.9 | 9.1 | $9.1 \div 8.9 \fallingdotseq 1.02$ | 2位 |
| オ:海洋 | 360.7 | 2.2 | 100.0 | $100.0 \div 2.2 \fallingdotseq 45.5$ | 1位 |
1) の解説現存量 $1\text{ kg}$ あたりの年間の純生産量(= 純生産量 $\div$ 現存量)の比較
現存量と純生産量の単位はどちらも $10^{12}\text{ kg}$ で揃っているため、単純に各行の「純生産量 $\div$ 現存量」を計算すれば比較できます!しかも細かく割り算しなくても概数で一瞬で順位がわかります:
・オ(海洋):$100.0 \div 2.2 \fallingdotseq 45.5$(現存量の45倍以上!圧倒的1位)
・エ(農耕地):$9.1 \div 8.9 > 1$(分子の方が大きいので1より大きい!2位)
・ウ(荒原):$8.9 \div 26.7 = \frac{1}{3} \fallingdotseq 0.33$(ちょうど $\frac{1}{3}$!3位)
・イ(草原):$48.7 \div 226.7 \fallingdotseq \frac{49}{227} \fallingdotseq 0.22$($\frac{1}{4}\sim\frac{1}{5}$ 程度!4位)
・ア(森林):$72.4 \div 1191.1 \fallingdotseq 0.06$($\frac{1}{16}$ 程度!5位)
よって大きい順に並べると、オ、エ、ウ、イ、ア となります。
2) の解説なぜ海洋(植物プランクトン)と森林(樹木)でこれほど差が出るのか?
指定語句「同化器官」(光合成を行う葉や葉緑体を持つ部分)を使って、以下の2つの視点から論理的に説明しましょう!
📌 記述に盛り込むべき黄金の対比ポイント
- 陸上の生態系(特に森林の樹木):重力に抗して植物体を支えたり水分を運んだりするための幹・枝・根などの「非同化器官」(呼吸のみを行い光合成を行わない器官)の占める割合が非常に大きく、光合成を行う「同化器官」(葉)の割合が小さいため、現存量あたりの純生産量が小さくなる。(草原や農耕地の草本植物は樹木より非同化器官が少なく同化器官の割合が大きいため、森林より値が高くなる)。
- 海洋の生態系(植物プランクトン):生産者の主体である植物プランクトンは単細胞生物や微小な藻類であり、体を支える非同化器官をほとんど持たず、個体(体)のほぼ全体が光合成を行う「同化器官」として働く(さらに分裂・世代交代による回転率が非常に速い)ため、現存量 $1\text{ kg}$ あたりの年間の純生産量が極めて大きくなる。
【問6 解答】
1):オ、エ、ウ、イ、ア 2):森林の樹木などの陸上植物は植物体を支える幹や根など光合成を行わない非同化器官の割合が大きく、葉などの同化器官の割合が小さいのに対し、草本やさらに海洋の植物プランクトンになるほど体に占める同化器官の割合が大きく(植物プランクトンはほぼ全体が同化器官であり世代交代も速く)、効率よく光合成を行えるため。
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