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慶應義塾大学 医学部 化学(2025年度)全問題・超図解解説

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「これより〜となる」の省略はゼロ!慶應義塾大学(2025年度)化学をSora先生が完全解剖

こんにちは!TMPS医学館の理系コーチSora(ソラ)です。市販の過去問集(赤本など)で計算の途中式が1行で飛ばされて悩んでいませんか?
このページでは、慶應義塾大学(2025年度)の化学について、中学生でも追える1ステップずつの途中式と思考プロセスをすべて公開しています!

📌 試験冒頭で与えられる定数・原子量

物理定数:
・ファラデー定数 $F = 9.65 \times 10^4\text{ C/mol}$
・気体定数 $R = 8.31 \times 10^3\text{ Pa}\cdot\text{L/(K}\cdot\text{mol)}$
原子量:
$\text{H} = 1.00,\ \text{C} = 12.0,\ \text{N} = 14.0,\ \text{O} = 16.0,\ \text{Na} = 23.0,$
$\text{S} = 32.1,\ \text{Cl} = 35.5,\ \text{K} = 39.1,\ \text{Fe} = 55.9,\ \text{Cu} = 63.6$
⚡

解答一覧(スピードチェック)

【大問 I】芳香族化合物の構造決定・分離・反応

1. (1) $n = 42 - 4m$
1. (2) $n = 2m - 6$
1. (3) $\text{C}_8\text{H}_{10}$
1. (4) 可能な構造式:$p$-キシレン、$m$-キシレン(うち⑤より〇で囲むのは $m$-キシレン)※構造図は本編参照
2. (1) サリチル酸 $+$ 無水酢酸 $\longrightarrow$ アセチルサリチル酸 $+$ 酢酸(※構造式は本編参照)
2. (2) 触媒(酸触媒)
2. (3) (i) G:〇, H:×, I:〇 / (ii) G:〇, H:〇, I:×
3. Bの式: 組成式:$\text{C}_8\text{H}_6\text{O}_2$ / 分子式:$\text{C}_{16}\text{H}_{12}\text{O}_4$ / 構造式:フタル酸ビス($o$-ヒドロキシフェニル)等(※本編にて詳解)
4. (1)(i) アニリン塩酸塩 $+ \text{NaNO}_2 + \text{HCl} \longrightarrow$ 塩化ベンゼンジアゾニウム $+ \text{NaCl} + 2\text{H}_2\text{O}$
4. (1)(ii) 温度が高い(室温以上)と、生成した塩化ベンゼンジアゾニウムが水と反応してフェノールと窒素と塩化水素に分解してしまうため。(反応式は本編参照)
4. (2) ナトリウム$o$-クレゾラート $+$ 塩化ベンゼンジアゾニウム $\longrightarrow$ 4-フェニルアゾ-$o$-クレゾール $+ \text{NaCl}$
5. (1)(i) 化合物A($m$-キシレン)および ジエチルエーテル
5. (1)(ii) 操作法:蒸留(分留) / 原理:成分間の沸点の差を利用して、沸点の低いジエチルエーテルを先に蒸発・冷却して分離する。
5. (2) 酸の強さが「フタル酸(D) > 炭酸 > $o$-クレゾール(F)」であるため、水層1に$\text{CO}_2$を吹き込むと弱酸の遊離によりFのみが遊離して有機層2に移り、Dはナトリウム塩のまま水層2に残るから。

【大問 II】塩化ナトリウム水溶液の電気分解・水素とアンモニア

1. (1) A極:$2\text{Cl}^- \longrightarrow \text{Cl}_2 + 2\text{e}^-$(気体:塩素)
B極:$2\text{H}_2\text{O} + 2\text{e}^- \longrightarrow \text{H}_2 + 2\text{OH}^-$(気体:水素)
1. (2) $2\text{KBr} + \text{Cl}_2 \longrightarrow 2\text{KCl} + \text{Br}_2$
1. (3) ${}_{1}^{1}\text{H},\ {}_{1}^{2}\text{H}$
1. (4) ①, ②
1. (5) 記号:① / 理由:陽イオン交換膜として$\text{Na}^+$を通し$\text{OH}^-$の移動を防ぐ必要があり、①は$\text{p}K_{\text{a}}$が最も小さく強酸性であるため、広い$\text{pH}$範囲で電離して負電荷($-\text{SO}_3^-$)を保ち、効率よく陽イオンのみを透過させるから。
2. $0.168\text{ m}^3$
3. ① アンモニアは分子間に水素結合を形成するため。
② アンモニアは極性分子であり、かつ水素より分子量が大きいためファンデルワールス力も大きいから。
4. 操作:高温・低圧にする(および生成した水素を分離・除去する)。 / 理由:分解反応(左向き)は吸熱反応かつ気体分子数が増加する反応であるため、ルシャトリエの原理より高温・低圧にすると分解方向へ平衡が移動するから。

【大問 III】メーオーの実験(気体反応・酸化還元・状態方程式)

1. ア:$\text{NO}$ / イ:$\text{O}_2$ / ウ:$\text{NO}_2$ / エ:$\text{HNO}_3$ / オ:②
2. (1) $3\text{Fe} + 8\text{HNO}_3 \longrightarrow 3\text{Fe(NO}_3)_2 + 4\text{H}_2\text{O} + 2\text{NO}$
2. (2) ⑤(銅と希硝酸)
3. 発生した$\text{NO}$が空気中の約$1/5$の体積を占める$\text{O}_2$と反応して$\text{NO}_2$となり、それがすべて水に吸収され(この過程で再生する$\text{NO}$も同様にすべて反応・吸収され)、結果として最初に存在した$\text{O}_2$の体積(空気の約$1/5$)の分だけ気体が減少したから。
4. 1回目の操作でB内の$\text{O}_2$はすべて消費されているため$\text{NO}$は$\text{NO}_2$へ酸化されないが、内側の水面が外側より低いため水圧差によって気体の圧力が高くなっており、$\text{NO}$がわずかに水に溶解することで水面が少し上昇するから。
5. $1.0\text{ g}$
大問 I

芳香族化合物の構造決定・抽出分離・反応

Sora先生
💡 Sora先生の1秒核心スキャン

慶應医学部のトップバッターは王道の「芳香族化合物の系統図・構造決定」だよ!
設問1・2・4・5は教科書の知識を正確に使えるかを問う確実な得点源!唯一、設問3の「化合物Bの決定」だけは、加水分解で「フタル酸(D)」と「サリチル酸の前駆体=$o$-クレゾール(F)」に分かれることから逆算するパズルになっているよ。まずは実験⑧〜⑩から「D・F・G・H・I」を一気に確定させるのがスピード攻略のカギだね!

【問題文 I】化合物A〜Kについて記載した以下の文を読み、設問に答えよ。

  • ① A, Bは芳香族化合物である。
  • ② Aは炭化水素で、$1\text{ mol}$のAを完全燃焼するのに、酸素$10.5\text{ mol}$を必要とした。
  • ③ Aはベンゼン環を1個有するが、それ以外の環構造や多重結合を持たない。
  • ④ Aを混酸でニトロ化したところ、トリニトロ体は生成しなかった。
  • ⑤ Aに過マンガン酸カリウムを加えて加熱するとCが生成した。Cの異性体Dを加熱すると、水1分子が取れてEが生成した。
  • ⑥ Bに金属ナトリウムを加えても水素は発生しなかった。
  • ⑦ Bは炭素、水素、酸素のみからなる化合物で、$17.3\text{ mg}$のBを完全に燃焼させると$48.4\text{ mg}$の二酸化炭素と$8.10\text{ mg}$の水が得られた。
  • ⑧ A, Bの混合物に水酸化ナトリウム水溶液を加えて加熱後、冷却してジエチルエーテルを加え、分液漏斗に入れて振り混ぜて有機層1と水層1に分離した。(a) 水層1に二酸化炭素を十分に吹き込み、ジエチルエーテルを加え、分液漏斗に入れて振り混ぜて有機層2と水層2に分離した。有機層2、水層2から得られたものはそれぞれF, Dであった。
  • ⑨ Fを酸化するとGが得られた。
  • ⑩ (b) Gに無水酢酸と少量の濃硫酸を作用させると酢酸エステルHが得られ、Gにメタノールと(c) 少量の濃硫酸を作用させるとエステル化が起こり、Iが得られた。Iはサリチル酸メチルであった。
  • ⑪ (d) アニリンの希塩酸溶液を氷冷しながら、亜硝酸ナトリウム水溶液を加えるとJが得られた。 (e) Fを水酸化ナトリウム水溶液に溶かしてJと反応させると、Kが得られた。

🗺️ 化合物A〜K 全体反応マップ(最初に全体像を掴もう!)

【実験②〜⑤】炭化水素Aの酸化と脱水 A: m-キシレン C8H10 KMnO4酸化 C: イソフタル酸 m-ジカルボン酸 異性体 D: フタル酸 o-ジカルボン酸 加熱 (-H2O) E: 無水フタル酸 C8H4O3 【実験⑧〜⑩】エステルBの加水分解とサリチル酸誘導体の反応 B: C16H12O4 NaOH加水分解・CO2処理で F(有機層2) + D(水層2) F: o-クレゾール C7H8O (フェノール類) 酸化 (-CH3→-COOH) G: サリチル酸 C7H6O3 H: アセチルサリチル酸 (+ 無水酢酸 / 濃硫酸) I: サリチル酸メチル (+ メタノール / 濃硫酸) 【実験⑪】ジアゾ化とジアゾカップリング アニリン + HCl + NaNO2 氷冷 (0〜5℃) J: 塩化ベンゼンジアゾニウム [C6H5-N2]+ Cl- + F (NaOH水溶液) K: アゾ化合物 (p位カップリング) 4-フェニルアゾ-o-クレゾール (ナトリウム塩)

問1. Aの炭素数を $m$、水素数を $n$ とし、以下の順で構造式を求めよ。

(1) ②の条件から $n$ を $m$ で表せ。
(2) ③の条件から $n$ を $m$ で表せ。
(3) Aの分子式を求めよ。
(4) ④の条件からAとして可能な構造式をすべて描け。その中で、⑤の条件からAとして考えられる構造式を〇で囲め。

Step 1 (1) 完全燃焼の化学反応式から $n$ を $m$ で表す

炭化水素 A の分子式は $\text{C}_m\text{H}_n$ です。$1\text{ mol}$ の $\text{C}_m\text{H}_n$ を完全燃焼させると、炭素原子 $m\text{ mol}$ から $m\text{ mol}$ の $\text{CO}_2$ が生じ、水素原子 $n\text{ mol}$ から $\dfrac{n}{2}\text{ mol}$ の $\text{H}_2\text{O}$ が生じます。

$$\text{C}_m\text{H}_n + \left(m + \frac{n}{4}\right)\text{O}_2 \longrightarrow m\text{CO}_2 + \frac{n}{2}\text{H}_2\text{O}$$

条件②より、必要な酸素 $\text{O}_2$ の物質量が $10.5\text{ mol}$ なので、次の等式が成り立ちます。

$$m + \frac{n}{4} = 10.5$$

両辺に $4$ を掛けて $n$ について解きます。

$$4m + n = 42 \quad \Longleftrightarrow \quad \mathbf{n = 42 - 4m \quad (または\ -4m + 42)}$$
Step 2 (2) 不飽和度(ベンゼン環1個)の条件から $n$ を $m$ で表す

条件③より、A は「ベンゼン環を1個有するが、それ以外の環構造や多重結合を持たない」炭化水素(アルキルベンゼン)です。
炭素数 $m$ の鎖式飽和炭化水素(アルカン)の水素数は $2m + 2$ です。ベンゼン環1個は「環構造1つ($-2\text{H}$)+二重結合3つ分($-6\text{H}$)」に相当し、不飽和度は $4$(水素原子が $2 \times 4 = 8$ 個少ない状態)となります。したがって、

$$n = (2m + 2) - 8 \quad \Longleftrightarrow \quad \mathbf{n = 2m - 6}$$
Step 3 (3) 連立方程式を解いてAの分子式を求める

(1)と(2)の式を連立して $m, n$ を求めます。

$$42 - 4m = 2m - 6 \quad \Longleftrightarrow \quad 6m = 48 \quad \Longleftrightarrow \quad m = 8$$ $$n = 2 \times 8 - 6 = 10$$

よって、A の分子式は $\text{C}_8\text{H}_{10}$ です。

Step 4 (4) ニトロ化の条件④と酸化の条件⑤から構造式を絞り込む

分子式 $\text{C}_8\text{H}_{10}$ の芳香族炭化水素には、エチルベンゼン、$o$-キシレン、$m$-キシレン、$p$-キシレン の4種類の構造異性体が存在します。
ここで条件④「Aを混酸でニトロ化したところ、トリニトロ体は生成しなかった」を考えます。アルキル基($-\text{CH}_3$ や $-\text{CH}_2\text{CH}_3$)はオルト・パラ配向性を持ちますが、立体障害や配向性の重なりによってベンゼン環上の置換されやすい位置が決まります。あるいは単純に「ベンゼン環の空いている水素の位置」と「配向性」を比較すると:

  • $p$-キシレン:4つの空席(2, 3, 5, 6位)がすべて等価ですが、2個目の $-\text{NO}_2$ 基が入ると強い電子求引性(不活性化)と立体障害のため、通常の混酸条件ではトリニトロ体(3置換体)まで進行しにくい。また、$m$-キシレンは2つの $-\text{CH}_3$ 基に対してオルト・パラ位にあたる場所(2, 4, 6位)がちょうど3か所ありトリニトロ体(2,4,6-トリニトロ-$m$-キシレン)を生じやすい一方、条件⑤を見ると「Aを過マンガン酸カリウムで酸化するとCが生成し、Cの異性体Dを加熱すると脱水してE(無水フタル酸)が生成した」とあります!

💡 条件④と条件⑤の論理的ポイント整理

1. まず条件⑤より、Aを酸化して得られるCには異性体D(加熱で分子内脱水する=フタル酸)が存在します。酸化してフタル酸の異性体(ベンゼンジカルボン酸:イソフタル酸またはテレフタル酸)になることから、Aは2置換ベンゼン(キシレン)であり、1置換のエチルベンゼン(酸化すると安息香酸になり異性体Dを持たない)は除外されます。
2. さらに、もしAが $o$-キシレンなら、酸化生成物C自身がフタル酸になってしまい、「Cの異性体Dが脱水する」という記述と矛盾します。よって⑤を満たすAは $m$-キシレン または $p$-キシレン です。
3. では条件④「トリニトロ体が生成しなかった」はどう解釈すべきでしょうか?
実は芳香族のニトロ化において、$p$-キシレンは対称性が高く立体障害のためトリニトロ体を生じにくい代表例として知られています(この場合、④から可能な構造式は $p$-キシレン、または $o$-キシレン等を含めた候補から⑤で絞り込む形になります)。
一方、高校化学の一般的な「置換基の隣(オルト位)や間(メタ位)の立体障害で2つのメチル基に挟まれた位置にはニトロ基が入らない」というモデル問題では、以下の2通りの出題意図が考えられます。
・パターンA(立体障害モデル):2つの $-\text{CH}_3$ 基に挟まれた2位に $-\text{NO}_2$ が入らないとすると、$m$-キシレンは残り3か所のうち4, 6位の2か所(ジニトロ体まで)、$p$-キシレンはさらに少ないため、$m$-キシレンと$p$-キシレン(および$o$-キシレン)が描かれ、⑤の「Cの異性体Dが脱水」から$m$-キシレンおよび$p$-キシレンが選ばれる。
・パターンB(実験事実モデル):$m$-キシレンは2,4,6-トリニトロキシレン(キシレンムスクの類縁体)を作るが、$p$-キシレンや$o$-キシレンはトリニトロ体を作らないため、④で $o$-キシレンと$p$-キシレン を描き、⑤で $p$-キシレン を〇で囲む。

どちらの採点基準でも満点を取れるよう、下に $\text{C}_8\text{H}_{10}$ のキシレン異性体の構造式と選び方を完全図解します!

CH3 CH3 o-キシレン (酸化すると直接Dになる) CH3 CH3 m-キシレン (酸化→イソフタル酸C、異性体Dが脱水) CH3 CH3 p-キシレン (酸化→テレフタル酸C、異性体Dが脱水)

※補足:芳香族求電子置換反応の配向性において、$-\text{CH}_3$ 基はオルト・パラ配向性を持つため、$m$-キシレンは3箇所(2,4,6位)が活性化されてトリニトロ体を生じますが、$o$-キシレンと$p$-キシレンはメチル基のオルト・パラ位が互いに一致しないためトリニトロ体を生じません。この厳密な有機化学的ルールに従うと、④で可能な構造式は「$o$-キシレン」と「$p$-キシレン」(およびエチルベンゼン)となり、その中で⑤を満たす(酸化生成物Cがフタル酸Dの異性体となる)構造式として「$p$-キシレン」を〇で囲むのが最も論理的に一貫した解答となります!

問2. ⑩について、以下の設問に答えよ。

(1) 下線部(b)の反応式を書け。ただし、有機化合物は構造式で示せ。
(2) 下線部(c)の濃硫酸の役割を何というか。適切な用語で答えよ。
(3) G, H, Iについて答えよ。
 (i) 塩化鉄(III)水溶液を加えると呈色するものには〇を、呈色しないものには×を解答欄に記せ。
 (ii) 炭酸水素ナトリウム水溶液に溶解するものには〇を、溶解しないものには×を解答欄に記せ。

Step 1 G, H, I の正体を確定させる

問題文⑩の最後にある「Iはサリチル酸メチルであった」という決定的なヒントから逆算します!

  • G にメタノールと濃硫酸を作用させて I(サリチル酸メチル) が得られたので、G はサリチル酸 です。
  • G(サリチル酸) に無水酢酸と少量の濃硫酸を作用させて得られる酢酸エステル H はアセチルサリチル酸 です。
Step 2 (1) 下線部(b) サリチル酸のアセチル化の反応式

サリチル酸のフェノール性ヒドロキシ基($-\text{OH}$)が無水酢酸と反応し、アセチルサリチル酸と酢酸が生成します。

COOH OH G: サリチル酸 + (CH3CO)2O 構造式: CH3-C(=O)-O-C(=O)-CH3 無水酢酸 COOH OCOCH3 H: アセチルサリチル酸 + CH3COOH 酢酸
Step 3 (2) 下線部(c) 濃硫酸の役割

カルボン酸とアルコールからエステルを合成する反応(フィッシャーのエステル化)において、少量の濃硫酸は反応速度を高める触媒(酸触媒)として働きます。
解答:触媒

Step 4 (3) G, H, I の官能基と性質の比較

・(i) 塩化鉄(III)水溶液で呈色する条件:フェノール性ヒドロキシ基($-\text{OH}$)を持つこと。
・(ii) 炭酸水素ナトリウム水溶液に溶解する条件:炭酸よりも強い酸であるカルボキシ基($-\text{COOH}$)(またはスルホ基)を持つこと。

記号・化合物名 持つ官能基 (i) $\text{FeCl}_3$呈色 (ii) $\text{NaHCO}_3$溶解
G:サリチル酸 フェノール性 $-\text{OH}$, $-\text{COOH}$ 〇 〇
H:アセチルサリチル酸 エステル結合, $-\text{COOH}$ × 〇
I:サリチル酸メチル フェノール性 $-\text{OH}$, エステル結合 〇 ×

問3. Bの組成式、分子式、構造式を求めよ。

Step 1 条件⑦の元素分析からBの組成式を求める

$17.3\text{ mg}$ の B(炭素 $\text{C}$、水素 $\text{H}$、酸素 $\text{O}$ からなる)を完全燃焼させると、二酸化炭素 $\text{CO}_2 = 48.4\text{ mg}$、水 $\text{H}_2\text{O} = 8.10\text{ mg}$ が得られました。
それぞれの質量から、B 中に含まれる $\text{C}, \text{H}, \text{O}$ の質量と物質量($\text{mmol}$)を1ステップずつ計算します。

  • 炭素 $\text{C}$ の質量と物質量: ($\text{CO}_2$ の分子量 $= 44.0$) $$w(\text{C}) = 48.4\text{ mg} \times \frac{12.0}{44.0} = 1.10 \times 12.0 = 13.2\text{ mg}$$ $$n(\text{C}) = \frac{13.2\text{ mg}}{12.0\text{ mg/mmol}} = 1.10\text{ mmol}$$
  • 水素 $\text{H}$ の質量と物質量: ($\text{H}_2\text{O}$ の分子量 $= 18.0$) $$w(\text{H}) = 8.10\text{ mg} \times \frac{2.00}{18.0} = 0.450 \times 2.00 = 0.900\text{ mg}$$ $$n(\text{H}) = \frac{0.900\text{ mg}}{1.00\text{ mg/mmol}} = 0.900\text{ mmol}$$
  • 酸素 $\text{O}$ の質量と物質量: 全体の質量 $17.3\text{ mg}$ から $\text{C}$ と $\text{H}$ の質量を引きます。 $$w(\text{O}) = 17.3\text{ mg} - (13.2\text{ mg} + 0.900\text{ mg}) = 17.3 - 14.1 = 3.2\text{ mg}$$ $$n(\text{O}) = \frac{3.2\text{ mg}}{16.0\text{ mg/mmol}} = 0.20\text{ mmol}$$

よって、B 中の原子数の比 $\text{C} : \text{H} : \text{O}$ は次のようになります。

$$\text{C} : \text{H} : \text{O} = 1.10 : 0.900 : 0.20 = 11 : 9 : 2$$

したがって、B の組成式は $\mathbf{\text{C}_{11}\text{H}_9\text{O}_2}$ です!

Step 2 実験⑧・⑨からFとDを特定し、Bの分子式と構造式を決定する

実験⑧で B を $\text{NaOH}$ 水溶液で加水分解し、$\text{CO}_2$ を吹き込んで分離したところ、F(弱酸性:フェノール類)と D(強酸性:カルボン酸)のみが得られました。
・実験⑤より、D は加熱すると1分子脱水して無水フタル酸 E になるジカルボン酸なので、D はフタル酸($\text{C}_8\text{H}_6\text{O}_4$)です。
・実験⑨より、F を酸化すると G(サリチル酸:$\text{C}_7\text{H}_6\text{O}_3$)が得られ、実験⑧で $\text{CO}_2$ 吹き込みによって遊離することから F はフェノール類です。酸化されてサリチル酸($o$-ヒドロキシ安息香酸)になるフェノール類(たとえば $o$-クレゾール $\text{C}_7\text{H}_8\text{O}$ やサリチルアルコール $\text{C}_7\text{H}_8\text{O}_2$、サリチルアルデヒド $\text{C}_7\text{H}_6\text{O}_2$)と、フタル酸($\text{C}_8\text{H}_6\text{O}_4$)がエステル結合してできた化合物 B の組成式が $\text{C}_{11}\text{H}_9\text{O}_2$ になる組み合わせを探します!

🔍 炭素数と水素数のパズルを解こう!

組成式 $\text{C}_{11}\text{H}_9\text{O}_2$ において、1分子中に含まれる水素原子の数(偶数でなければならない)を考えると、分子式は組成式の偶数倍、まずは $2$ 倍の $\text{C}_{22}\text{H}_{18}\text{O}_4$ を試してみます!
・D(フタル酸)1分子:$\text{C}_8\text{H}_6\text{O}_4$
・F($o$-クレゾール)2分子:$2 \times \text{C}_7\text{H}_8\text{O} = \text{C}_{14}\text{H}_{16}\text{O}_2$
これらがエステル結合を2つ作って(水 $2\text{H}_2\text{O} = \text{H}_4\text{O}_2$ が取れて)縮合したジエステルを考えると:

$$\text{C}_8\text{H}_6\text{O}_4 + 2\text{C}_7\text{H}_8\text{O} - 2\text{H}_2\text{O} = \mathbf{\text{C}_{22}\text{H}_{18}\text{O}_4}$$

ピッタリ組成式 $\text{C}_{11}\text{H}_9\text{O}_2$ のちょうど2倍($\text{C}_{22}\text{H}_{18}\text{O}_4$)になりました!しかもエステル結合のみを持ち、遊離の $-\text{OH}$ や $-\text{COOH}$ を持たないため、条件⑥「Bに金属ナトリウムを加えても水素は発生しなかった」も完全に満たします!

よって、F は $o$-クレゾール(2-メチルフェノール)であり、B はフタル酸1分子と $o$-クレゾール2分子がエステル結合したジエステルです。

  • 組成式:$\text{C}_{11}\text{H}_9\text{O}_2$
  • 分子式:$\text{C}_{22}\text{H}_{18}\text{O}_4$
化合物B(C22H18O4)の構造式:フタル酸ビス(2-メチルフェニル) C(=O)-O CH3 C(=O)-O CH3

問4. ⑪について、以下の設問に答えよ。ただし、有機化合物は構造式で示せ。

(1) 下線部(d)について答えよ。
 (i) 反応式を書け。
 (ii) 氷冷する理由について反応式を交えて説明せよ。
(2) 下線部(e)の反応式を書け。

Step 1 (1)(i) ジアゾ化反応の化学反応式

アニリンが希塩酸に溶けてアニリン塩酸塩($\text{C}_6\text{H}_5\text{NH}_3\text{Cl}$)となっており、これに氷冷下で亜硝酸ナトリウム($\text{NaNO}_2$)と塩酸($\text{HCl}$)が反応して、J:塩化ベンゼンジアゾニウム($[\text{C}_6\text{H}_5\text{N}_2]^+\text{Cl}^-$)、塩化ナトリウム、水が生成します。(※反応物の左辺は「アニリン $+ 2\text{HCl} + \text{NaNO}_2$」または「アニリン塩酸塩 $+ \text{HCl} + \text{NaNO}_2$」のどちらでも正解です)。

$\text{C}_6\text{H}_5\text{NH}_2 + \text{NaNO}_2 + 2\text{HCl} \longrightarrow [\text{C}_6\text{H}_5-\text{N}\equiv\text{N}]^+\text{Cl}^- + \text{NaCl} + 2\text{H}_2\text{O}$
(※答案では $\text{C}_6\text{H}_5-$ の部分をベンゼン環の構造式で描くこと)
Step 2 (1)(ii) 氷冷する理由(ジアゾニウム塩の熱分解)

塩化ベンゼンジアゾニウムは熱に不安定であり、氷冷せず温度が高く(約$5^\circ\text{C}$以上に)なると、水と反応してフェノールと窒素ガス($\text{N}_2$)と塩化水素($\text{HCl}$)に分解してしまうためです。

【記述解答】
氷冷しないと、生成した塩化ベンゼンジアゾニウムが次式のように水と反応して分解し、フェノールと窒素および塩化水素になってしまうため。
反応式: $[\text{C}_6\text{H}_5-\text{N}\equiv\text{N}]^+\text{Cl}^- + \text{H}_2\text{O} \longrightarrow \text{C}_6\text{H}_5-\text{OH} + \text{N}_2 + \text{HCl}$ (※ベンゼン環は構造式で記述)
Step 3 (2) 下線部(e) ジアゾカップリングの反応式

F($o$-クレゾール)を $\text{NaOH}$ 水溶液に溶かすと、ナトリウム $o$-クレゾラート($o\text{-CH}_3\text{-C}_6\text{H}_4\text{-ONa}$)になります。これに J(塩化ベンゼンジアゾニウム)を反応させると、$-\text{OH}$($-\text{O}^-$)基に対してパラ位(4位)でジアゾカップリングが起こり、アゾ化合物 K が生成します。

ONa CH3 FのNa塩 + [N≡N]+ Cl- J: 塩化ベンゼンジアゾニウム N=N ONa CH3 K (または -OH 型 + NaCl + H2O) + NaCl

※補足:フェノール類を $\text{NaOH}$ 水溶液に溶かしてカップリングさせる場合、①フリーの $-\text{OH}$ として描き「$o\text{-CH}_3\text{-C}_6\text{H}_4\text{-OH} + [\text{C}_6\text{H}_5\text{N}_2]^+\text{Cl}^- + \text{NaOH} \longrightarrow \text{C}_6\text{H}_5\text{-N=N-C}_6\text{H}_3(\text{CH}_3)\text{-OH} + \text{NaCl} + \text{H}_2\text{O}$」とする書き方と、②ナトリウム塩 $-\text{ONa}$ として描き「$o\text{-CH}_3\text{-C}_6\text{H}_4\text{-ONa} + [\text{C}_6\text{H}_5\text{N}_2]^+\text{Cl}^- \longrightarrow \text{C}_6\text{H}_5\text{-N=N-C}_6\text{H}_3(\text{CH}_3)\text{-ONa} (または \text{-OH} + \text{NaCl})$」とする書き方のどちらも正解になります。

問5. ⑧について、以下の設問に答えよ。

(1) 有機層1について答えよ。
 (i) 有機層1に抽出される化合物名を記せ。
 (ii) 有機層1の成分を分離するには、どのようにすればよいか。その操作法の名称とその原理を簡潔に説明せよ。
(2) 下線部(a)の操作により、FとDが分離できる理由について構造式を用いて説明せよ。

Step 1 (1) 有機層1に含まれる成分とその分離法

A(キシレン)とB(エステル)の混合物に $\text{NaOH}$ 水溶液を加えて加熱すると、B は加水分解されて F($o$-クレゾール)のナトリウム塩と D(フタル酸)の二ナトリウム塩になり、水層1に溶けます。
一方、中性物質である A(キシレン)は $\text{NaOH}$ と反応せず、加えたジエチルエーテルとともに有機層1に移ります。
有機層1は「ジエチルエーテル(沸点 約$35^\circ\text{C}$)」と「キシレン(沸点 約$138\sim144^\circ\text{C}$)」の液体混合物なので、沸点の差を利用した「蒸留(または分留)」によって分離できます!

(i) 解答: $p$-キシレン(または $m$-キシレン、化合物A)※溶媒のジエチルエーテルとの混合物から抽出される目的化合物名としてキシレン
(ii) 解答: 操作法:蒸留(または分留) / 原理: 混合物の各成分(ジエチルエーテルとキシレン)の沸点の差を利用して、加熱により沸点の低いジエチルエーテルを先に蒸発させ、冷却・凝縮させて分離する。
Step 2 (2) 二酸化炭素吹き込みで F と D が分離できる理由(構造式入り)

水層1には、F($o$-クレゾール)のナトリウム塩と、D(フタル酸)のナトリウム塩が溶けています。
酸の強さの順序は カルボン酸(フタル酸 D) > 炭酸($\text{H}_2\text{CO}_3$) > フェノール類($o$-クレゾール F) です。
したがって、水層1に二酸化炭素($\text{CO}_2$)を十分に吹き込むと、炭酸より弱い酸である F の塩のみが弱酸の遊離を起こして非イオン性の F($o$-クレゾール)に戻り、ジエチルエーテル(有機層2)に抽出されます。一方、炭酸より強い酸である D の塩は反応せずイオン性のナトリウム塩のまま水層2に残るため、両者を分離できます!

【記述解答(構造式を添えて記述)】
酸の強さは フタル酸(D) > 炭酸 > $o$-クレゾール(F) の順である。そのため、水層1に$\text{CO}_2$を吹き込むと、弱酸の遊離によって炭酸より弱い酸であるFのナトリウム塩($o\text{-CH}_3\text{-C}_6\text{H}_4\text{-ONa}$)のみが遊離して水に溶けにくい $o$-クレゾール($o\text{-CH}_3\text{-C}_6\text{H}_4\text{-OH}$)となり有機層2へ抽出されるが、炭酸より強い酸であるフタル酸はナトリウム塩($o\text{-C}_6\text{H}_4(\text{COONa})_2$ または $o\text{-C}_6\text{H}_4(\text{COOH})(\text{COONa})$)のまま水層2に残るため。(※答案では各ベンゼン環を構造式で描くこと)
大問 II

塩化ナトリウム水溶液の電気分解(イオン交換膜法)・水素とアンモニア

Sora先生
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大問IIは「イオン交換膜法による$\text{NaOH}$の工業的製法」と「水素エネルギー・アンモニアの性質と化学平衡」の融合問題だよ!
一番差がつくのは問1(5)の「隔膜(陽イオン交換膜)の材質選び」!図2に$\text{p}K_{\text{a}}$が並んでいるのを見て戸惑った受験生が多いけれど、原理はとってもシンプル。「陽イオン($\text{Na}^+$)を通し、陰イオン($\text{OH}^-$)を弾くためには、膜自身がマイナスの電荷を持っていればいい」んだよね!その仕組みを1ステップずつ完璧に解説するよ!

【問題文 II】次の文を読み、問いに答えよ。

エネルギー源の多様化やクリーンエネルギーの進展のため、我が国では2017年に水素基本戦略を策定した。現在の工業的な水素製造は、石油製造所や製鉄所で副次的に行われているが、将来的には、水酸化ナトリウム製造工程での生成が期待されている。水酸化ナトリウムは、(a) 塩化ナトリウムを原料とする電気分解(電解ソーダ法)で製造され、この過程で副産物として(b) 水素が生成する。水素は燃焼させても二酸化炭素を発生しないため環境負荷が小さく、燃料電池にも利用できる。一方で、水素は爆発性が高く、大量輸送方法は確立していない。このため、水素を高圧や低温で運ぶ方法のほかに、他の物質に変換して遠隔地へ送るなどの方法が想定されている。例えば、(c) アンモニアは標準大気圧下 $-33^\circ\text{C}$ で液化すると、体積が約 $1/800$ に減少する。そのため、(d) アンモニアは有望な水素担体と考えられている。

図1:塩化ナトリウム水溶液の電気分解の概念図

+ - 隔膜 A極(陽極) (炭素) B極(陰極) (鉄) 気体(ア): Cl2 気体(イ): H2 飽和NaCl水溶液 うすいNaCl(NaOH)水溶液

図2:隔膜の材質候補(Rは炭化水素骨格)

① スルホ基(正解!)
$\text{R}-\text{SO}_2-\text{OH}$
$\text{p}K_{\text{a}}$ 約 $2$(強酸性)
電離して $\text{R}-\text{SO}_3^-$(陰イオン固定基)となり、$\text{Na}^+$ を引きつけて透過させる!
② 第三級アンモニウム塩
$\text{R}-\text{NH}^+(\text{C}_2\text{H}_5)_2$
$\text{p}K_{\text{a}}$ 約 $11$
正電荷を持つため陰イオン交換膜になる(しかも強塩基性では脱プロトン化する)。
③ カルボキシ基
$\text{R}-\text{C}(=\text{O})-\text{OH}$
$\text{p}K_{\text{a}}$ 約 $5$(弱酸性)
①より酸性が弱く、低$\text{pH}$領域(陽極側など)で電離度が下がりやすい。
④ 第三級アンモニウム塩
$\text{R}-\text{NH}^+(\text{CH}_3)_2$
$\text{p}K_{\text{a}}$ 約 $10$
②と同様に陽イオン交換には不適。

問1. 下線部(a)の塩化ナトリウム水溶液の電気分解(図1)について答えよ。

(1) A極とB極で起こる化学変化を電子 $\text{e}^-$ を含むイオン反応式で書け。また、それぞれの電極から発生する気体の名称を書け。
(2) A極で発生する気体を臭化カリウム水溶液に通したときの反応式を書け。反応しない場合には解答欄に×を書け。
(3) B極で発生する気体の構成原子には安定同位体が存在する。この安定同位体をすべて書け。ただし、陽子数と質量数を含めた元素記号で示せ。
(4) A極、B極の電極物質の代わりとして、次にあげる組み合せの中から水酸化ナトリウム生成に適するものをすべて選べ。
 ① A極:炭素, B極:炭素 ② A極:炭素, B極:銅 ③ A極:鉄, B極:炭素
 ④ A極:鉄, B極:銅   ⑤ A極:銅, B極:炭素 ⑥ A極:銅, B極:鉄
(5) 図1の隔膜はイオンだけを透過させる膜である。この隔膜について、水酸化ナトリウムの製造効率が最もよい官能基を含む材質を図2の中から選び記号で答えよ。また、その理由を簡潔に書け。

Step 1 (1) A極(陽極)とB極(陰極)のイオン反応式と発生気体

図1の直流電源の記号を見ると、長い縦線が正極($+$)、短い太線が負極($-$)です。
・A極は正極につながる「陽極」:飽和 $\text{NaCl}$ 水溶液中の $\text{Cl}^-$ が酸化されて 塩素($\text{Cl}_2$) が発生します。
・B極は負極につながる「陰極」:水 $\text{H}_2\text{O}$ が還元されて 水素($\text{H}_2$) と $\text{OH}^-$ が生成します。

A極(陽極): $2\text{Cl}^- \longrightarrow \text{Cl}_2 + 2\text{e}^-$ / 気体の名称:塩素
B極(陰極): $2\text{H}_2\text{O} + 2\text{e}^- \longrightarrow \text{H}_2 + 2\text{OH}^-$ / 気体の名称:水素
Step 2 (2) 塩素と臭化カリウム水溶液の反応

ハロゲン単体の酸化力は $\text{F}_2 > \mathbf{\text{Cl}_2 > \text{Br}_2} > \text{I}_2$ の順です。A極で発生する塩素($\text{Cl}_2$)は臭素($\text{Br}_2$)より酸化力が強いため、臭化カリウム($\text{KBr}$)水溶液中の $\text{Br}^-$ を酸化して単体の $\text{Br}_2$ を遊離させます。

解答:$2\text{KBr} + \text{Cl}_2 \longrightarrow 2\text{KCl} + \text{Br}_2$

Step 3 (3) 水素原子の安定同位体

B極で発生する気体は水素($\text{H}_2$)です。水素原子(原子番号=陽子数 $1$)の同位体には、軽水素 ${}_{1}^{1}\text{H}$、重水素(デューテリウム)${}_{1}^{2}\text{H}$、三重水素(トリチウム)${}_{1}^{3}\text{H}$ がありますが、${}_{1}^{3}\text{H}$ は放射性同位体(半減期 約12.3年で$\beta^-$崩壊する)です。したがって、安定同位体は ${}_{1}^{1}\text{H}$ と ${}_{1}^{2}\text{H}$ の2つです!

解答:${}_{1}^{1}\text{H},\ {}_{1}^{2}\text{H}$

Step 4 (4) 電極物質の適切な組み合わせ

・A極(陽極)の条件:もし陽極に鉄($\text{Fe}$)や銅($\text{Cu}$)を用いると、電極の金属自身が酸化されて溶け出してしまい($\text{Fe} \rightarrow \text{Fe}^{2+} + 2\text{e}^-,\ \text{Cu} \rightarrow \text{Cu}^{2+} + 2\text{e}^-$)、目的の反応が起こりません。したがって、陽極(A極)には不溶性電極である「炭素(または白金)」を用いる必要があります。
・B極(陰極)の条件:陰極では還元反応しか起こらないため、電極自身が溶け出すことはありません。炭素、鉄、銅のいずれを用いても水の還元($\text{H}_2$ と $\text{OH}^-$ の生成)が問題なく進行します。
よって、A極が「炭素」である ① と ② が正解です!

Step 5 (5) 隔膜(陽イオン交換膜)の材質選びと理由

図1の電気分解で純度の高い $\text{NaOH}$ を効率よく製造するためには、陽極室(A極側)から陰極室(B極側)へ陽イオンである $\text{Na}^+$ だけを透過させ、陰極室で生じた陰イオンである $\text{OH}^-$ が陽極室へ移動するのを防ぐ(静電反発させる)「陽イオン交換膜」が必要です。
そのためには、膜の高分子骨格 $\text{R}$ に結合した官能基が水溶液中で $\text{H}^+$ を放出して負電荷(陰イオン、アニオン)として電離している必要があります。
・②、④は正電荷(カチオン)を持つため陰イオンを通す「陰イオン交換膜」になり不適です。
・①(スルホ基:$-\text{SO}_3\text{H}$、$\text{p}K_{\text{a}}$ 約 $2$)と ③(カルボキシ基:$-\text{COOH}$、$\text{p}K_{\text{a}}$ 約 $5$)を比較すると、①の方が $\text{p}K_{\text{a}}$ が小さく強酸性であるため、塩素が溶けて酸性になりやすい陽極側を含め、幅広い $\text{pH}$ 領域でほぼ $100\%$ 電離して負電荷($-\text{SO}_3^-$)を維持でき、最も効率よく $\text{Na}^+$ を透過させ $\text{OH}^-$ や $\text{Cl}^-$ を排除できます!(※実際の工業的イオン交換膜法でも、スルホ基とカルボキシ基を持つフッ素樹脂膜が使われています)。

【記述解答】
記号:①
理由: 水酸化ナトリウムを効率よく製造するには、陽極側から$\text{Na}^+$のみを透過させ、陰極側で生じた$\text{OH}^-$の移動を静電反発で防ぐ陽イオン交換膜(負に帯電した官能基を持つ膜)が必要である。①のスルホ基は$\text{p}K_{\text{a}}$が最も小さく強酸性であるため、水溶液中で最も電離しやすく安定して負電荷($-\text{SO}_3^-$)を保ち、陽イオンの透過効率が最も高くなるから。

問2〜問4. ファラデーの法則・アンモニアの沸点と分解平衡

問2. 下線部(b)について、$50.0\text{ A}$の電流を8時間2分30秒流した場合、発生する水素の標準状態($0^\circ\text{C},\ 1.013 \times 10^5\text{ Pa}$)における体積(単位:$\text{m}^3$)を求めよ。導出過程も簡潔に記せ。ただし、この電気分解は電流効率 $100\%$ で行われるものとする。
問3. 下線部(c)について、水素およびアンモニアの沸点は、それぞれ $-253^\circ\text{C}$ と $-33^\circ\text{C}$ であり、水素に比べてアンモニアの沸点はかなり高い。その主な理由を二つあげよ。
問4. 下線部(d)について、アンモニアから水素を取り出すための研究開発が進んでいる。その一つとして、アンモニアを分解して混合気体から水素を分離する方法がある。ここでは、下記の反応式とエンタルピー変化 $\Delta H$ をもとに、アンモニアを効率よく分解するにはどのような操作を行えばよいか答えよ。また、その理由を簡潔に述べよ。
$$\text{N}_2\text{ (気)} + 3\text{H}_2\text{ (気)} \rightleftarrows 2\text{NH}_3\text{ (気)} \qquad \Delta H = -92\text{ kJ}$$

問2 電気分解で発生する水素の体積計算(単位 $\text{m}^3$ に注意!)

① 通電時間 $t\text{ [s]}$ を求める:
8時間2分30秒をすべて「秒($\text{s}$)」に変換します。

$$t = 8 \times 3600 + 2 \times 60 + 30 = 28800 + 120 + 30 = 28950\text{ s}$$

ここで $28950 = 300 \times 96.5 = 3.00 \times 10^2 \times 96.5\text{ s}$ であることに気づくと、ファラデー定数 $F = 9.65 \times 10^4\text{ C/mol}$ と綺麗に約分できます!
② 流れた電子 $\text{e}^-$ の物質量 $n(\text{e}^-)$ を求める:

$$n(\text{e}^-) = \frac{I \cdot t}{F} = \frac{50.0\text{ A} \times 28950\text{ s}}{9.65 \times 10^4\text{ C/mol}} = \frac{50.0 \times 300 \times 96.5}{96500} = 15.0\text{ mol}$$

③ 発生する水素 $\text{H}_2$ の物質量と標準状態の体積を求める:
陰極の反応式 $2\text{H}_2\text{O} + 2\text{e}^- \longrightarrow \text{H}_2 + 2\text{OH}^-$ より、$2\text{ mol}$ の $\text{e}^-$ が流れると $1\text{ mol}$ の $\text{H}_2$ が発生します。

$$n(\text{H}_2) = \frac{1}{2} n(\text{e}^-) = \frac{15.0}{2} = 7.50\text{ mol}$$

標準状態($T = 273\text{ K},\ P = 1.013 \times 10^5\text{ Pa}$)における体積 $V\text{ [L]}$ は、気体定数 $R = 8.31 \times 10^3\text{ Pa}\cdot\text{L/(K}\cdot\text{mol)}$ より $1\text{ mol}$ あたり $\dfrac{8.31 \times 10^3 \times 273}{1.013 \times 10^5} = 22.4\text{ L/mol}$ なので、

$$V = 7.50\text{ mol} \times 22.4\text{ L/mol} = 168\text{ L}$$

最後に単位を $\text{L}$ から $\text{m}^3$($1\text{ m}^3 = 1000\text{ L} = 10^3\text{ L}$)に変換します!

$$V = 168\text{ L} \times 10^{-3}\text{ m}^3/\text{L} = \mathbf{0.168\text{ m}^3 \quad (または\ 1.68 \times 10^{-1}\text{ m}^3)}$$

※単位トラップ注意!計算結果の $168\text{ L}$ をそのまま書かず、必ず $1000$ で割って $\mathbf{0.168\text{ m}^3}$ と答えるのが合否の分かれ目です!

問3 アンモニアの沸点が水素よりはるかに高い2つの理由

分子性物質の沸点は分子間力の大きさで決まります。水素($\text{H}_2$、分子量 $2.0$、無極性分子)とアンモニア($\text{NH}_3$、分子量 $17.0$、三角錐形の極性分子)を比較すると、次の2点が挙げられます。

理由①: アンモニア分子間には、電気陰性度の大きい$\text{N}$原子と$\text{H}$原子の間で強い分子間力である水素結合が働くため。
理由②: 水素は無極性分子であるのに対し、アンモニアは極性分子であるため静電的な引力(双極子間相互作用)が働き、さらに水素より分子量が大きいためファンデルワールス力も大きいため。
問4 アンモニアを効率よく分解するための操作とその理由

与えられた熱化学反応式 $\text{N}_2 + 3\text{H}_2 \rightleftarrows 2\text{NH}_3 \quad \Delta H = -92\text{ kJ}$ において、アンモニアを分解する反応は「左向きの反応(逆反応)」です!
・温度について:右向き(合成)が発熱反応($\Delta H < 0$)なので、左向き(分解)は吸熱反応です。ルシャトリエの原理より、高温にするほど吸熱方向(左向き=分解方向)へ平衡が移動します。
・圧力について:左辺の気体分子数は $1 + 3 = 4$、右辺の気体分子数は $2$ です。左向き(分解)は気体分子数が増加する反応なので、ルシャトリエの原理より、低圧にするほど分子数が増える方向(左向き=分解方向)へ平衡が移動します。
・生成物の分離について:問題文に「混合気体から水素を分離する方法がある」とある通り、生成した水素を系外へ分離・除去することでも平衡は左向き(分解方向)へ移動します。

【記述解答】
操作: 高温・低圧の条件にする(また、生成した水素を順次分離して系外へ取り除く)。
理由: アンモニアの分解反応(逆反応)は吸熱反応であり、かつ気体の総物質量(分子数)が増加する反応であるため、ルシャトリエの原理より、高温・低圧にする(また生成物である水素の分圧を下げる)と分解が進む方向へ平衡が移動するから。
大問 III

メーオーの実験(一酸化窒素と酸素の反応・気体の状態方程式)

Sora先生
💡 Sora先生の1秒核心スキャン

最後の大問IIIは、17世紀の化学者ジョン・メーオー(John Mayow)が行った歴史的実験を題材にした「無機化学(窒素酸化物)× 気体の量的関係」だよ!
一見すると古典的な長文にびっくりするかもしれないけど、起きている化学反応は「鉄と希硝酸から$\text{NO}$が発生 $\rightarrow$ 空気中の$\text{O}_2$と反応して$\text{NO}_2$になる $\rightarrow$ 水に溶けて$\text{HNO}_3$と$\text{NO}$になる」というオストワルト法でおなじみの2式だけ!問3と問5の「2つの反応式を合体させて$\text{NO}$を消去するテクニック」をマスターすれば、計算も一発で解けるよ!

【問題文 III】次の文を読み、問いに答えよ。なお、気体は理想気体として扱うものとする。

1670年頃、イギリスのメーオーは、空気に関して次の実験を行った。図3に示すように、水槽Aに逆さに立てたガラス容器Bの中に、1本の棒Cが取り付けてある。Cには希硝酸が十分に入ったつぼDがつるしてあり、鉄片の束EがDのすぐ上に糸でぶら下げてある。(中略)Fをゆるめて(a) EをD中の希硝酸に浸けると、さかんに気体が発生してB内の水位が押し下げられた。約20分反応させて内側の水面が約$5\text{ cm}$下がったら、Fを引っ張ってDからEを引き上げた。すると、まもなく内側の水面が上昇しはじめ、2時間以内に初めの水位 $h_0$ を越えて水が上がってきた。なぜなら、反応によって発生した [ ア ] は水に溶けないが、空気中の [ イ ] によって [ ウ ] に変わり、水に溶けたからである。その主な反応式は次のとおりである。

$2\text{[ ア ]} + \text{[ イ ]} \longrightarrow 2\text{[ ウ ]}$
$3\text{[ ウ ]} + \text{H}_2\text{O} \longrightarrow 2\text{[ エ ]} + \text{[ ア ]}$

ここで、[ ウ ] は [ オ ] の気体である。最終的に水面はさらに約$5\text{ cm}$上昇し、(b) 初期状態のとき空気によって満たされていたB内の容積の約$1/5$が水で占められた。さて、内側の水面が上昇しなくなったら、その水面の高さ $h$ に再び印をつけてEを希硝酸に浸した。そして、水面が約$9\text{ cm}$下降後、EをDから引き上げた。そうすると、(c) 水面が上昇してくるが、前に比べてその速度は遅く、上昇は$3\text{ cm}$程度で止まり、$h$ までは達しなかった。この一連の操作をもう1回行っても結果は同じであった。

図3:メーオーの実験装置と水面変化のメカニズム

h₀ 空気 (N₂+O₂) ① 初期状態 +NO発生 -5cm 2NO + O₂ → 2NO₂ 3NO₂ + H₂O → 2HNO₃ + NO ② NO発生で一旦下降→O₂消費 NO₂溶解 h (約1/5減) N₂ + わずかなO₂ ③ 水面がh₀を越えて上昇
問1 空欄 [ ア ] 〜 [ エ ] に当てはまる化学式と、[ オ ] に当てはまる色

鉄片 $\text{Fe}$ を希硝酸 $\text{HNO}_3$ に浸けると、水に溶けにくい無色の気体である一酸化窒素 $\text{NO}$([ ア ])が発生します。
発生した $\text{NO}$ は、容器内の空気中に含まれる酸素 $\text{O}_2$([ イ ])と直ちに反応して、赤褐色([ オ ])の気体である二酸化窒素 $\text{NO}_2$([ ウ ])に変わります。
さらに、$\text{NO}_2$ は水に溶けて温水と反応し、硝酸 $\text{HNO}_3$([ エ ])と一酸化窒素 $\text{NO}$ を生じます。

【解答】 ア:$\text{NO}$ / イ:$\text{O}_2$ / ウ:$\text{NO}_2$ / エ:$\text{HNO}_3$ / オ:赤褐色
問2 下線部(a)について、鉄がすべて3価のイオンになるとしたときの化学反応式

鉄の酸化反応と、希硝酸の還元反応の半反応式を立てて合体させます。
・鉄の酸化:$\text{Fe} \longrightarrow \text{Fe}^{3+} + 3\text{e}^-$ ⋯①
・希硝酸の還元:$\text{HNO}_3 + 3\text{H}^+ + 3\text{e}^- \longrightarrow \text{NO} + 2\text{H}_2\text{O}$ ⋯②
①+②より $\text{e}^-$ を消去し、両辺に $3\text{NO}_3^-$ を加えて化学反応式にまとめます。

【解答】 $\text{Fe} + 4\text{HNO}_3 \longrightarrow \text{Fe(NO}_3)_3 + \text{NO} + 2\text{H}_2\text{O}$
問3 下線部(b)(初期状態の空気の容積の約$1/5$が水で占められた)の理由

容器内で起きた2つの反応式から、再生される $\text{NO}_2$ を消去して全体の反応式を作ります。
・$2\text{NO} + \text{O}_2 \longrightarrow 2\text{NO}_2$ ⋯(1)
・$3\text{NO}_2 + \text{H}_2\text{O} \longrightarrow 2\text{HNO}_3 + \text{NO}$ ⋯(2)
$\text{NO}_2$ を消去するため、$\text{(1)}\times 3 + \text{(2)}\times 2$ を計算すると、
$$4\text{NO} + 3\text{O}_2 + 2\text{H}_2\text{O} \longrightarrow 4\text{HNO}_3 \quad \cdots (*)$$ となります。生成した $\text{HNO}_3$ はすべて水に溶けるため、気体として消費される物質量比は $\text{NO} : \text{O}_2 = 4 : 3$ です。
1回目の操作では、発生した $\text{NO}$ がすべて反応して消失し、同時に容器内の空気の体積の約$1/5$(約$20\%$)を占めていた酸素 $\text{O}_2$ の大部分が反応して硝酸となり水に溶けたため、減少した酸素の体積の分(約$1/5$)だけ水面が上昇しました。

【記述解答】
発生した一酸化窒素が、容器内の空気の体積の約$1/5$を占める酸素と反応して二酸化窒素となり、それが水に溶けて硝酸になる反応が繰り返された結果、発生した一酸化窒素と空気中の酸素の大部分が消費されて気体の体積が初期状態の約$4/5$(窒素の分)になったため。
問4 下線部(c)(2回目の操作では水面が上昇してくる速度が前に比べて遅い)の理由

1回目の反応によって容器内の酸素 $\text{O}_2$ の大部分が消費されているため、2回目に $\text{NO}$ を発生させた時点では容器内の酸素濃度(分圧)が非常に低くなっています。そのため、$\text{NO}$ と $\text{O}_2$ が反応して $\text{NO}_2$ を生じる反応速度が小さくなったからです。

【記述解答】
1回目の操作によって容器内の酸素の大部分が消費され、残存する酸素の濃度(分圧)が著しく低くなったため、一酸化窒素と酸素の反応速度が低下したから。
問5 各過程における一酸化窒素の物質量・鉄の質量・初期状態の空気の体積の計算

一般に、温度 $T$・圧力 $P$ が一定のとき、気体の状態方程式 $PV = nRT$ より、気体の体積変化 $\Delta V$(=断面積 $S \times$ 水位変化 $\Delta h$)は気体の物質量変化 $\Delta n$ に比例します。容器の円筒部分の断面積を $S = 100\text{ cm}^2$、高さを $\Delta h\text{ [cm]}$ とすると、体積は $\Delta V = 100 \times \Delta h\text{ [cm}^3\text{]} = 0.10 \times \Delta h\text{ [L]}$ となります。
$P = 1.0 \times 10^5\text{ Pa}$、$T = 300\text{ K}$、$R = 8.3 \times 10^3\text{ Pa}\cdot\text{L}/(\text{K}\cdot\text{mol})$ より、水位 $1\text{ cm}$(体積 $0.10\text{ L}$)あたりの気体の物質量は、 $$n_1 = \frac{1.0 \times 10^5 \times 0.10}{8.3 \times 10^3 \times 300} = \frac{10}{2490} = \frac{1}{249}\text{ mol/cm}$$ と表せます!これを使うと超高速で計算できます。

(1) 1回目の実験で発生した一酸化窒素の物質量 [mol]

1回目の実験では、鉄片を浸けて水面が $5.0\text{ cm}$ 下降し($\text{NO}$ の発生)、引き上げたあと初めの水位 $h_0$ を越えてさらに $5.0\text{ cm}$ 上昇しました(全体として初期状態から $5.0\text{ cm}$ 分の気体が減少)。
問3で導いた全体の反応式 $(*)$: $$4\text{NO} + 3\text{O}_2 + 2\text{H}_2\text{O} \longrightarrow 4\text{HNO}_3$$ において、1回目は発生した $\text{NO}$ がすべて使い切られ、その分の $\text{O}_2$ が減少したため、初期状態 $h_0$ からの最終的な水位上昇分($5.0\text{ cm}$)が、消費された $\text{O}_2$ の体積にそのまま対応します!(※あるいは、鉄片を浸けている間に $\text{NO}$ と $\text{O}_2$ が反応していなければ発生した $\text{NO}$ が $5.0\text{ cm}$ 分ですが、問題文に「引き上げたあと初めの水位 $h_0$ を越えて最終的にさらに $5\text{ cm}$ 上昇した(計 $10\text{ cm}$ 上昇した)」とあるため、引き上げ時の $5.0\text{ cm}$ 下降状態から $h$ まで計 $10\text{ cm}$ 上昇しています。式 $(*)$ より、$\text{NO}$ が $4$、$\text{O}_2$ が $3$ 反応すると気体は計 $7$ 減少します)。
ここで、問題文の条件を整理します:
・解釈A(発生時は反応せず、引き上げ後に反応が進んだとする標準モデル):水位下降 $5.0\text{ cm}$ 分が発生した $\text{NO}$ の体積($0.50\text{ L}$)を表す場合:
$$n(\text{NO}) = 5.0\text{ cm} \times \frac{1}{249}\text{ mol/cm} = \frac{5.0}{249} \approx 2.008 \times 10^{-2}\text{ mol} \longrightarrow \mathbf{2.0 \times 10^{-2}\text{ mol}}$$ (※なお、初期状態から最終的に $5.0\text{ cm}$ 上昇した分=消費された $\text{O}_2$ が $5.0\text{ cm}$ 分とし、反応式 $(*)$ の物質量比 $\text{NO} : \text{O}_2 = 4 : 3$ から発生した $\text{NO}$ を求めるモデル(浸けている最中にも一部反応が進行していたとする厳密モデル)では、消費された $\text{O}_2$ が $5.0 \times \frac{1}{249}\text{ mol}$ より、発生した $\text{NO}$ は $\frac{4}{3} \times \frac{5.0}{249} = \frac{20}{747} \approx \mathbf{2.7 \times 10^{-2}\text{ mol}}$ となります。以下、慶應医の誘導の意図に沿い両方の数値を併記します)。

(2) 2回目の実験で反応した鉄の質量 [g]

2回目は水位 $h$ から水面が $9.0\text{ cm}$ 下降するまで気体($\text{NO}$)を発生させました。
・解釈A(下降した $9.0\text{ cm}$ 分=$0.90\text{ L}$ が発生した $\text{NO}$ の体積):
発生した $\text{NO}$ の物質量は $n(\text{NO}) = \frac{9.0}{249} = \frac{3.0}{83}\text{ mol}$ です。
問2の反応式 $\text{Fe} + 4\text{HNO}_3 \longrightarrow \text{Fe(NO}_3)_3 + \text{NO} + 2\text{H}_2\text{O}$ より、反応した $\text{Fe}$ の物質量は発生した $\text{NO}$ の物質量と等しい($1 : 1$)ので、$\text{Fe} = 56\text{ g/mol}$ より、 $$w(\text{Fe}) = \frac{3.0}{83}\text{ mol} \times 56\text{ g/mol} = \frac{168}{83} \approx 2.024\text{ g} \longrightarrow \mathbf{2.0\text{ g}}$$

(3) 初期状態で容器B内を占めていた空気の体積 [L]

2回目の操作では、水面が $9.0\text{ cm}$ 下降したあと、上昇は $3.0\text{ cm}$ で止まり、3回目も同じ結果(もう上昇しない=容器内の酸素 $\text{O}_2$ が2回目で完全に使い切られた)となりました。
反応式 $(*)$:$4\text{NO} + 3\text{O}_2 + 2\text{H}_2\text{O} \longrightarrow 4\text{HNO}_3$ より、すでに発生していた $\text{NO}$(気体)と容器内に残っていた $\text{O}_2$(気体)が $4 : 3$ の物質量比で反応して水溶液($\text{HNO}_3$)になるとき、消費される気体の合計体積は $\text{NO} + \text{O}_2 = 4 + 3 = 7$ 単位です。
2回目に引き上げたあと水面が $3.0\text{ cm}$ 上昇したということは、この反応によって減少した気体($\text{NO} + \text{O}_2$)の合計が $3.0\text{ cm}$ 分($0.30\text{ L}$)であり、そのうち消費された残存酸素 $\text{O}_2$ の分は $\frac{3}{4+3} = \frac{3}{7}$ を占めます(すなわち $3.0\text{ cm} \times \frac{3}{7} = \frac{9.0}{7}\text{ cm}$ 分)。
一方、1回目の操作では初期水位 $h_0$ から $h$ まで $5.0\text{ cm}$ 上昇しており、これが1回目に消費された酸素 $\text{O}_2$ の体積($5.0\text{ cm}$ 分=$0.50\text{ L}$)に相当します。
したがって、初期状態の空気中に含まれていた全酸素 $\text{O}_2$ の体積 $V(\text{O}_2)$ は、

  • 1回目でほぼすべての酸素($5.0\text{ cm}$ 分=$0.50\text{ L}$)が消費され、これが初期空気の $1/5$($20\%$)にあたるとする概算:
    $$V_{\text{空気}} = 0.50\text{ L} \times 5 = \mathbf{2.5\text{ L}}$$
  • 2回目で消費された酸素も合算する計算:
    1回目の酸素消費分($5.0\text{ cm}$ 分)+2回目の酸素消費分($\frac{9.0}{7}\text{ cm} \approx 1.29\text{ cm}$ 分)=計 $6.29\text{ cm}$ 分($0.629\text{ L}$)。空気中の酸素の体積百分率を $20\%$($1/5$)とすると、 $$V_{\text{空気}} = 0.629\text{ L} \times 5 \approx \mathbf{3.1\text{ L}}$$

【問5 解答まとめ】
(1) $2.0 \times 10^{-2}\text{ mol}$(別解:$2.7 \times 10^{-2}\text{ mol}$)
(2) $2.0\text{ g}$
(3) $2.5\text{ L}$(2回目の残存酸素合算モデルでは $3.1\text{ L}$)
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