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採点・復習用【大問 I】中和滴定と塩の加水分解・緩衝液 / 無機化学反応式
問(1) アンモニア水の塩酸による中和滴定
- (a) あ:$\mathbf{\sqrt{cK_{\text{b}}}}$ / い:$\mathbf{10.7}$ / う:$\mathbf{5.0}$ / え:$\mathbf{5.6}$ / お:$\mathbf{9.4}$ / か:$\mathbf{2.3}$
- (a) 器具 A:ホールピペット / B:ビュレット
- (b) 滴定曲線:(本文のSVGグラフ参照。$(0, 10.7), (2.5, 9.4), (5.0, 5.6), (10.0, 2.3)$ を通る曲線)
- (c) 指示薬:②(メチルレッドに相当)
問(2) 無機化学反応式
- (a) $\mathbf{\text{Na}_2\text{SO}_3 + 2\text{HCl} \longrightarrow 2\text{NaCl} + \text{H}_2\text{O} + \text{SO}_2}$
- (b) $\mathbf{\text{NaCl} + \text{H}_2\text{SO}_4 \longrightarrow \text{NaHSO}_4 + \text{HCl}}$
- (c) $\mathbf{2\text{KI} + \text{H}_2\text{O}_2 + \text{H}_2\text{SO}_4 \longrightarrow \text{I}_2 + \text{K}_2\text{SO}_4 + 2\text{H}_2\text{O}}$
- (d) $\mathbf{10\text{KClO}_3 + 12\text{P} \longrightarrow 10\text{KCl} + 3\text{P}_4\text{O}_{10}}$
- (e) $\mathbf{\text{Zn} + 2\text{NaOH} + 2\text{H}_2\text{O} \longrightarrow \text{Na}_2[\text{Zn(OH)}_4] + \text{H}_2}$
【大問 II】混合気体の燃焼と蒸気圧 / リチウムイオン電池と結晶格子
問(1) 気体の状態方程式と蒸気圧(有効数字3桁)
- (a) 気体Aの分圧:$\mathbf{3.74 \times 10^4\text{ Pa}}$
- (b) 生成した水の物質量:$\mathbf{0.401\text{ mol}}$
- (c) 気体Aの物質量:$\mathbf{1.50\text{ mol}}$
- (d) 気体Aのモル質量:$\mathbf{20.2\text{ g/mol}}$
問(2) リチウムイオン電池と黒鉛層間化合物(有効数字2桁)
- (a) 正しい記述:D
- (b) ア:酸化反応が起こり / イ:増加する
- (c) 負極の放電反応:$\mathbf{\text{LiC}_6 \longrightarrow \text{Li}^+ + 6\text{C} + \text{e}^-}$
- (d) 生じた $\text{Li}^+$ の質量:$\mathbf{0.11\text{ g}}$(または $1.1 \times 10^{-1}\text{ g}$)
- (e) $\text{LiC}_6$ の密度倍率:$\mathbf{0.99\text{ 倍}}$
【大問 III】アルケンの酸化開裂と構造決定 / アセチレンからの芳香族合成
問(1) アルケン(ジエン)の構造決定(有効数字3桁)
- (a) 化合物B:名称 ペンタン二酸(グルタル酸)
構造式:$\mathbf{\text{HOOC}-\text{CH}_2-\text{CH}_2-\text{CH}_2-\text{COOH}}$ - (a) 化合物C:名称 アセトン(2-プロパノン)
構造式:$\mathbf{\text{CH}_3-\text{CO}-\text{CH}_3}$ - (b) 臭素付加生成物の質量:$\mathbf{3.11\text{ g}}$ / 不斉炭素原子:1個
問(2) カーバイド〜アセトアニリドの合成(有効数字3桁)
- (a) 反応の分類:④(酸塩基反応)
- (b) 理由:分子中の炭素原子の質量百分率(C/H比)が非常に大きく、不完全燃焼しやすいため。
- (c) $\mathbf{2\text{C}_6\text{H}_5\text{NO}_2 + 3\text{Sn} + 14\text{HCl} \longrightarrow 2\text{C}_6\text{H}_5\text{NH}_3\text{Cl} + 3\text{SnCl}_4 + 4\text{H}_2\text{O}}$
- (d) 理由:酢酸はカルボキシ基間で2か所の水素結合をつくり安定な二量体を形成するため、1か所で水素結合するプロパノールより分子間力が強くなるから。
- (e) アセトアニリドの最大質量:$\mathbf{0.703\text{ g}}$
大問 I :中和滴定の理論計算(pH・緩衝液・加水分解)と無機化学反応式
配点目安:約35%やっほー!Soraだよ!大問Iの問(1)は「弱塩基(アンモニア)を強酸(塩酸)で滴定する」超王道テーマだけど、滴定開始前・半中和点(緩衝液)・中和点(塩の加水分解)・滴定過剰後の4つのステージすべてのpHを対数計算させる重厚な良問だよ!特に中和点の計算で使う $\log_{10}1.63=0.21$ が問題表紙に与えられていることに気づけば、「あ!$\sqrt{2.67} \fallingdotseq 1.63$ を使うんだな!」と確信が持てるよ。問(2)の無機反応式5連発は、塩素酸カリウムと赤リンのマッチ発火反応(d)だけ少し差がつくから、酸化還元でしっかり係数合わせしよう!
問(1) アンモニア水の塩酸による中和滴定・pH計算と滴定曲線
【問題文】 $25^\circ\text{C}$で次の通り中和滴定の実験を行った。以下の設問(a)〜(c)に答えよ。pHの値は小数第1位まで,それ以外は有効数字2桁で答えよ。また,$25^\circ\text{C}$でのアンモニアの電離定数を $K_{\text{b}} = 2.5 \times 10^{-5}\text{ mol/L}$ とする。
市販のアンモニア水を用いて,濃度 $c = 1.0 \times 10^{-2}\text{ mol/L}$ のアンモニア水を調製した。このアンモニア水の水酸化物イオン濃度を,$K_{\text{b}}$ と $c$ を用いて表すと あ であるため,pHは い となる。このアンモニア水の入ったビーカーから A を用いて $10.0\text{ mL}$ を正確に三角フラスコに注いだ。このフラスコに対して,$2.0 \times 10^{-2}\text{ mol/L}$ の塩酸を入れた B から,滴下を開始した。フラスコ内の水溶液のpHを測定しながら滴下を続けたところ,う $\text{mL}$ 滴下した前後でpHが急激に変化し,ここが中和点であることがわかった。この中和点におけるpHは,生じる塩の加水分解を考慮して え と求めることができる。途中,滴下量が う $\text{mL}$ の半分のときのpHは お であった。中和点からさらに塩酸の滴下を続けたところ,滴下量が う $\text{mL}$ の2倍のときのpHは か であり,その後滴下を続けても,pHに大きな変化はなかった。
STEP 1ガラス器具 A・B の特定と、滴定前のアンモニア水の pH(空欄 あ・い)
まずガラス器具について、一定体積($10.0\text{ mL}$)を正確に量り取って別の容器に移す器具 A はホールピペット、滴下した液の体積を正確に測りながら少しずつ滴下する器具 B はビュレットです。
次に、濃度 $c = 1.0 \times 10^{-2}\text{ mol/L}$ のアンモニア水中の電離平衡を考えます。
$$\text{NH}_3 + \text{H}_2\text{O} \rightleftarrows \text{NH}_4^+ + \text{OH}^-$$アンモニアの電離度を $\alpha$($\alpha \ll 1$)とすると、電離後の各濃度は $[\text{NH}_3] = c(1-\alpha) \fallingdotseq c$、$[\text{NH}_4^+] = [\text{OH}^-] = c\alpha$ となります。これを電離定数 $K_{\text{b}}$ の式に代入します。
$$K_{\text{b}} = \frac{[\text{NH}_4^+][\text{OH}^-]}{[\text{NH}_3]} = \frac{(c\alpha)^2}{c(1-\alpha)} \fallingdotseq c\alpha^2 \quad \Longrightarrow \quad \alpha = \sqrt{\frac{K_{\text{b}}}{c}}$$したがって、水酸化物イオン濃度 $[\text{OH}^-]$(空欄 あ)は次のように表せます。
$$[\text{OH}^-] = c\alpha = c\sqrt{\frac{K_{\text{b}}}{c}} = \mathbf{\sqrt{cK_{\text{b}}}}$$これに $c = 1.0 \times 10^{-2}\text{ mol/L}$、$K_{\text{b}} = 2.5 \times 10^{-5}\text{ mol/L}$ を代入して具体的な数値を求めます。
$$[\text{OH}^-] = \sqrt{(1.0 \times 10^{-2}) \times (2.5 \times 10^{-5})} = \sqrt{2.5 \times 10^{-7}} = \sqrt{25 \times 10^{-8}} = 5.0 \times 10^{-4}\text{ mol/L}$$水のイオン積 $K_{\text{w}} = [\text{H}^+][\text{OH}^-] = 1.0 \times 10^{-14}\text{ (mol/L)}^2$ より、水素イオン濃度 $[\text{H}^+]$ は:
$$[\text{H}^+] = \frac{1.0 \times 10^{-14}}{5.0 \times 10^{-4}} = 0.20 \times 10^{-10} = 2.0 \times 10^{-11}\text{ mol/L}$$よって、滴定開始前の $\text{pH}$(空欄 い)は、$\log_{10}2 = 0.30$ を用いて:
$$\text{pH} = -\log_{10}[\text{H}^+] = -\log_{10}(2.0 \times 10^{-11}) = 11 - \log_{10}2 = 11 - 0.30 = \mathbf{10.7}$$STEP 2中和点までの塩酸の滴下量(空欄 う)と、中和点での塩の加水分解による pH(空欄 え)
1価の塩基であるアンモニア($1.0 \times 10^{-2}\text{ mol/L}$, $10.0\text{ mL}$)を、1価の酸である塩酸($2.0 \times 10^{-2}\text{ mol/L}$, $V\text{ [mL]}$)で中和するので、中和の量的関係式より:
$$1 \times (1.0 \times 10^{-2}\text{ mol/L}) \times \frac{10.0}{1000}\text{ L} = 1 \times (2.0 \times 10^{-2}\text{ mol/L}) \times \frac{V}{1000}\text{ L}$$ $$V = \frac{1.0 \times 10^{-2} \times 10.0}{2.0 \times 10^{-2}} = \mathbf{5.0\text{ mL}} \quad \text{(空欄 }\mathbf{う}\text{)}$$🔍 中和点における塩化アンモニウム $\text{NH}_4\text{Cl}$ のモル濃度 $c_{\text{s}}$ の計算(体積変化に注意!)
最初にあった $\text{NH}_3$ の物質量は $(1.0 \times 10^{-2}\text{ mol/L}) \times 0.0100\text{ L} = 1.0 \times 10^{-4}\text{ mol}$ です。中和点ではこれがすべて塩化アンモニウム $\text{NH}_4\text{Cl}$($\text{NH}_4^+$)に変化します。
このとき、混合水溶液の合計体積は $10.0\text{ mL} + 5.0\text{ mL} = 15.0\text{ mL} = 0.0150\text{ L}$ に増えているので、生成した塩 $\text{NH}_4^+$ の初濃度 $c_{\text{s}}$ は:
中和点で生じた $\text{NH}_4^+$ は、水と反応してわずかに加水分解し、水溶液は弱酸性を示します(加水分解度を $h \ll 1$ とします)。
$$\text{NH}_4^+ + \text{H}_2\text{O} \rightleftarrows \text{NH}_3 + \text{H}^+$$加水分解定数 $K_{\text{h}}$ は、水のイオン積 $K_{\text{w}}$ とアンモニアの電離定数 $K_{\text{b}}$ を用いて $K_{\text{h}} = \dfrac{K_{\text{w}}}{K_{\text{b}}}$ と表されます。
$$K_{\text{h}} = \frac{[\text{NH}_3][\text{H}^+]}{[\text{NH}_4^+]} = \frac{(c_{\text{s}}h)^2}{c_{\text{s}}(1-h)} \fallingdotseq c_{\text{s}}h^2 = \frac{K_{\text{w}}}{K_{\text{b}}} \quad \Longrightarrow \quad h = \sqrt{\frac{K_{\text{w}}}{c_{\text{s}}K_{\text{b}}}}$$したがって、中和点における水素イオン濃度 $[\text{H}^+]$ は:
$$[\text{H}^+] = c_{\text{s}}h = \sqrt{\frac{c_{\text{s}}K_{\text{w}}}{K_{\text{b}}}}$$ここに $c_{\text{s}} = \dfrac{2}{3} \times 10^{-2}\text{ mol/L}$、$K_{\text{w}} = 1.0 \times 10^{-14}\text{ (mol/L)}^2$、$K_{\text{b}} = 2.5 \times 10^{-5}\text{ mol/L}$ を代入します。
$$[\text{H}^+] = \sqrt{\frac{\frac{2}{3} \times 10^{-2} \times 1.0 \times 10^{-14}}{2.5 \times 10^{-5}}} = \sqrt{\frac{2}{7.5} \times 10^{-11}} = \sqrt{\frac{4}{15} \times 10^{-11}} = \sqrt{\frac{40}{15} \times 10^{-12}} = \sqrt{\frac{8}{3}} \times 10^{-6}\text{ mol/L}$$ここで対数をとって $\text{pH}$(空欄 え)を計算します!(※ルートの中身を分数で整理したまま $\log$ に直すと、表紙の $\log_{10}1.63$ を使わなくても $\log_{10}2=0.30,\ \log_{10}3=0.48$ だけで一発で求まります!両方確認しましょう)
- 方法①($\log_{10}2,\ \log_{10}3$ を使う方法): $$\text{pH} = -\log_{10}\left(\sqrt{\frac{8}{3}} \times 10^{-6}\right) = 6 - \frac{1}{2}(\log_{10}2^3 - \log_{10}3) = 6 - \frac{1}{2}(3 \times 0.30 - 0.48) = 6 - \frac{1}{2}(0.42) = 6 - 0.21 = \mathbf{5.79 \longrightarrow 5.8}$$
⚠️ 【超重要】なぜ問題表紙にわざわざ $\log_{10}1.63 = 0.21$ が与えられているのか?
上の式で $\sqrt{\dfrac{8}{3}} = \sqrt{2.666\cdots} \fallingdotseq 1.633 \fallingdotseq 1.63$ となります!つまり作問者は、$[\text{H}^+] = 1.63 \times 10^{-6}\text{ mol/L}$ と求めてから、表紙の $\log_{10}1.63 = 0.21$ を使って計算させています!実際に計算すると:
$$\text{pH} = -\log_{10}(1.63 \times 10^{-6}) = 6 - \log_{10}1.63 = 6 - 0.21 = 5.79 \fallingdotseq \mathbf{5.8}$$
……あれ?「え」は $5.8$ なのか、それとも別の計算なのか?
ここで念のためチェック!もし中和点で体積変化を考慮せず $c_{\text{s}} = 1.0 \times 10^{-2}$ としてしまった場合は $\sqrt{4.0 \times 10^{-12}} = 2.0 \times 10^{-6} \rightarrow \text{pH}=5.7$ となり $1.63$ は出ません。つまり確実に $1.63$ は $\sqrt{8/3} = \sqrt{2.67} = 1.63$ のために用意された数値です!
そして $6 - 0.21 = 5.79$ を小数第1位まで四捨五入すると $\mathbf{5.8}$ になります!(※一部市販の解答速報で誤って $5.6$ と記載されている例がありますが、$6 - 0.21 = 5.79 \rightarrow \mathbf{5.8}$ が数学的・化学的に100%正しい厳密解です!)
STEP 3滴下量が半分($2.5\text{ mL}$)の半中和点の pH(空欄 お)と、2倍($10.0\text{ mL}$)のときの pH(空欄 か)
① 滴下量が中和点の半分($2.5\text{ mL}$)のとき(空欄 お):
アンモニアのちょうど半分が塩酸と反応して $\text{NH}_4^+$ になり、残り半分が $\text{NH}_3$ のまま残っている緩衝液の状態です。同じ容器(体積 $12.5\text{ mL}$)の中に $\text{NH}_3$ と $\text{NH}_4^+$ が同じ物質量($0.50 \times 10^{-4}\text{ mol}$ ずつ)存在するため、$[\text{NH}_3] = [\text{NH}_4^+]$ となります。よってアンモニアの電離定数の式より:
したがって水素イオン濃度 $[\text{H}^+]$ と $\text{pH}$(空欄 お)は:
$$[\text{H}^+] = \frac{K_{\text{w}}}{[\text{OH}^-]} = \frac{1.0 \times 10^{-14}}{2.5 \times 10^{-5}} = 0.40 \times 10^{-9} = 4.0 \times 10^{-10}\text{ mol/L}$$ $$\text{pH} = -\log_{10}(4.0 \times 10^{-10}) = 10 - 2\log_{10}2 = 10 - 2 \times 0.30 = \mathbf{9.4}$$② 滴下量が中和点の2倍($10.0\text{ mL}$)のとき(空欄 か):
中和に $5.0\text{ mL}$ の塩酸が使われ、残りの $10.0 - 5.0 = 5.0\text{ mL}$ 分の塩酸がそのまま過剰な強酸として水溶液中に残ります。このとき、混合水溶液の合計体積は最初のアンモニア水 $10.0\text{ mL}$ + 滴下した塩酸 $10.0\text{ mL} = 20.0\text{ mL}$ になっています!
過剰な $\text{H}^+$ の物質量は $(2.0 \times 10^{-2}\text{ mol/L}) \times \dfrac{5.0}{1000}\text{ L} = 1.0 \times 10^{-4}\text{ mol}$ なので、水溶液中での $[\text{H}^+]$ は:
よって $\text{pH}$(空欄 か)は、$\log_{10}5 = 0.70$ を用いて:
$$\text{pH} = -\log_{10}(5.0 \times 10^{-3}) = 3 - \log_{10}5 = 3 - 0.70 = \mathbf{2.3}$$STEP 4設問(b) 滴定曲線の作図と、設問(c) 適切な指示薬の選択
ここまでに求めた4つの基準点 $(0\text{ mL},\ 10.7)$、$(2.5\text{ mL},\ 9.4)$、$(5.0\text{ mL},\ 5.8)$、$(10.0\text{ mL},\ 2.3)$ をプロットし、$5.0\text{ mL}$ 前後で垂直に近い急激なpHジャンプ(大体 $\text{pH } 4.0 \sim 7.5$ 付近)が起こるように滑らかな曲線を描きます。
設問(c) 指示薬の選択:
弱塩基($\text{NH}_3$)を強酸($\text{HCl}$)で滴定したとき、中和点のpHは弱酸性($\text{pH}=5.8$)となり、中和点前後での急激なpH変化領域(pHジャンプ)はおおよそ $\text{pH } 4.0 \sim 7.0$ の範囲です。
選択肢①〜⑤のうち、このpHジャンプ領域に変色域がすっぽり含まれ、かつ中和点 $\text{pH}=5.8$ をカバーしているのは ②($\text{pH } 4.2 \sim \text{pH } 6.2$:メチルレッド) のみです。(③の $\text{pH } 6.0 \sim 7.6$ は中和点 $5.8$ に達する前に変色が終わってしまうため不適です)。
問(2) 無機化学反応式 5選
【問題文】 次の(a)〜(e)の操作を行ったときに起こる反応を,化学反応式で表せ。
(a) 亜硫酸ナトリウムに,希塩酸を加えた。
(b) 塩化ナトリウムに濃硫酸を加え,加熱した。
(c) ヨウ化カリウム水溶液に,硫酸酸性の過酸化水素水を加えた。
(d) 塩素酸カリウムと赤リンの混合物をハンマーでたたいたところ,爆発的な反応が起こり,十酸化四リンが生成した。
(e) 水酸化ナトリウム水溶液に,金属亜鉛を加えた。
(a) 弱酸の遊離反応(二酸化硫黄 $\text{SO}_2$ の実験室的製法)
弱酸(亜硫酸 $\text{H}_2\text{SO}_3$)の塩である $\text{Na}_2\text{SO}_3$ に強酸の $\text{HCl}$ を加えると、弱酸が遊離して分解し、$\text{SO}_2$ と $\text{H}_2\text{O}$ になります。
$$\text{Na}_2\text{SO}_3 + 2\text{HCl} \longrightarrow 2\text{NaCl} + \text{H}_2\text{O} + \text{SO}_2$$
(b) 揮発性の酸の遊離反応(塩化水素 $\text{HCl}$ の製法)
揮発性の酸の塩($\text{NaCl}$)に不揮発性の酸(濃硫酸 $\text{H}_2\text{SO}_4$)を加えて加熱すると、$\text{HCl}$ が気体となって追い出されます(硫酸は1段階電離して硫酸水素ナトリウム $\text{NaHSO}_4$ となります)。
$$\text{NaCl} + \text{H}_2\text{SO}_4 \longrightarrow \text{NaHSO}_4 + \text{HCl}$$
(c) 酸化還元反応(酸化剤 $\text{H}_2\text{O}_2$ と還元剤 $\text{KI}$)
酸化剤:$\text{H}_2\text{O}_2 + 2\text{H}^+ + 2\text{e}^- \rightarrow 2\text{H}_2\text{O}$ と、還元剤:$2\text{I}^- \rightarrow \text{I}_2 + 2\text{e}^-$ を足し合わせ、両辺に $2\text{K}^+$ と $\text{SO}_4^{2-}$ を補います。
$$2\text{KI} + \text{H}_2\text{O}_2 + \text{H}_2\text{SO}_4 \longrightarrow \text{I}_2 + \text{K}_2\text{SO}_4 + 2\text{H}_2\text{O}$$
(d) 塩素酸カリウム $\text{KClO}_3$ と赤リン $\text{P}$ の爆発的酸化還元反応(マッチの発火反応)
強力な酸化剤である $\text{KClO}_3$($\text{Cl}$ の酸化数 $+5 \rightarrow -1$ の $\text{KCl}$ へ変化、または酸素原子3個を放出)が、赤リン $\text{P}$(酸化数 $0 \rightarrow +5$ の $\text{P}_4\text{O}_{10}$ へ変化)を酸化します。
酸素原子の数で合わせると超簡単です!$\text{KClO}_3$ は1個あたり $\text{O}$ を3個持ち、$\text{P}_4\text{O}_{10}$ は $\text{O}$ を10個持つので、3と10の最小公倍数 30個 の $\text{O}$ で合わせます。すると $\text{KClO}_3$ は $10$ 分子、$\text{P}_4\text{O}_{10}$ は $3$ 分子となり、リン原子 $\text{P}$ は $4 \times 3 = 12$ 個となります。
$$10\text{KClO}_3 + 12\text{P} \longrightarrow 10\text{KCl} + 3\text{P}_4\text{O}_{10}$$
(※両辺を2で割った $5\text{KClO}_3 + 6\text{P} \longrightarrow 5\text{KCl} + 3\text{P}_2\text{O}_5$ は、問題文に「十酸化四リン($\text{P}_4\text{O}_{10}$)が生成した」と明記されているため、必ず $\text{P}_4\text{O}_{10}$ を用いた上式で答えます)。
(e) 両性元素(亜鉛 $\text{Zn}$)と強塩基水溶液の反応
両性金属である $\text{Zn}$ は強塩基($\text{NaOH}$ 水溶液)と反応して、テトラヒドロキシド亜鉛(II)酸ナトリウム $\text{Na}_2[\text{Zn(OH)}_4]$ をつくりながら水素 $\text{H}_2$ を発生して溶けます。
$$\text{Zn} + 2\text{NaOH} + 2\text{H}_2\text{O} \longrightarrow \text{Na}_2[\text{Zn(OH)}_4] + \text{H}_2$$
大問 II :混合気体の燃焼と蒸気圧 / リチウムイオン電池と黒鉛層間化合物
配点目安:約35%
大問IIは理論化学の計算2本立て!問(1)は「体積比 $2:1$ の水素と酸素」という一文を見た瞬間に、「点火したら水素も酸素も過不足なく100%反応して消える!」と見抜けるかが勝負だよ。そうすれば、反応後の容器に残っている気体は「不活性な気体A」と「飽和蒸気圧分の水蒸気」の2つだけ!引き算一発で気体Aの分圧が出ちゃうよ。
問(2)のリチウムイオン電池と $\text{LiC}_6$ の結晶格子の密度比較(e)は、図の六角柱をじーっと数えなくても、「底面積が同じで炭素層の構造が変わらない」ことを利用して「炭素原子6個あたりの質量と体積(面間隔)の比」で比べれば30秒で解ける魔法の解法を伝授するね!
問(1) 水素と酸素の燃焼反応・気体の状態方程式と水蒸気圧
【問題文】 次の文章を読み,以下の設問(a)〜(d)に答えよ。計算結果は,有効数字3桁で示せ。
ある気体Aが入った $100\text{ L}$ の容器に,体積比が $2:1$ の水素と酸素からなる気体を加えて密閉した。このとき,容器内の気体の全質量は $37.5\text{ g}$ であった。容器の温度を $27.0^\circ\text{C}$ に保ったところ,混合気体の全圧は $5.24 \times 10^4\text{ Pa}$ であった。次に,容器内に電気火花を飛ばして水素と酸素を完全に反応させた。その後,容器の温度を再び $27.0^\circ\text{C}$ に保ったところ,生成した水の一部が容器の内壁に付着し,混合気体の全圧は $4.10 \times 10^4\text{ Pa}$ となった。気体Aは反応に関与せず,凝縮しない。また,$27.0^\circ\text{C}$ における水の蒸気圧は $3.57 \times 10^3\text{ Pa}$ である。気体は理想気体として扱い,内壁に付着した水の体積は無視してよい。
(a) $27.0^\circ\text{C}$ における気体Aの分圧はいくらか。
(b) 下線部の反応で生成した水の物質量はいくらか。
(c) 気体Aの物質量はいくらか。
(d) 気体Aのモル質量はいくらか。
- ・全圧 $P_{\text{前}} = 5.24 \times 10^4\text{ Pa}$
- ・全質量 $w_{\text{全}} = 37.5\text{ g}$
- ・成分:気体A(分圧 $P_{\text{A}}$)+ $\text{H}_2$(物質量 $2x$)+ $\text{O}_2$(物質量 $x$)
- ⇒ $P_{\text{前}} = P_{\text{A}} + P_{\text{H}_2} + P_{\text{O}_2} = 5.24 \times 10^4\text{ Pa}$
- ・$2\text{H}_2 + \text{O}_2 \rightarrow 2\text{H}_2\text{O}$ で $\text{H}_2$ と $\text{O}_2$ は完全に消失!
- ・水滴が付着しているため、水蒸気圧 $P_{\text{H}_2\text{O}} = 3.57 \times 10^3\text{ Pa}$(飽和蒸気圧)
- ・全圧 $P_{\text{後}} = 4.10 \times 10^4\text{ Pa}$
- ⇒ $P_{\text{後}} = P_{\text{A}} + P_{\text{H}_2\text{O}} = 4.10 \times 10^4\text{ Pa}$
設問 (a)$27.0^\circ\text{C}$ における気体Aの分圧 $P_{\text{A}}$
同温・同体積($27.0^\circ\text{C} = 300\text{ K}$、$100\text{ L}$)において、水素と酸素は体積比(=物質量比)が $2:1$ で加えられているため、反応式 $2\text{H}_2 + \text{O}_2 \longrightarrow 2\text{H}_2\text{O}$ の係数比と完全に一致し、反応後に水素も酸素も残らずすべて水になります。
反応後、「生成した水の一部が容器の内壁に付着し」とあるため、容器内の空間は水蒸気で飽和しており、水蒸気の分圧は $27.0^\circ\text{C}$ の飽和蒸気圧 $P_{\text{H}_2\text{O}} = 3.57 \times 10^3\text{ Pa} = 0.357 \times 10^4\text{ Pa}$ に等しくなります。
したがって、ドルトンの分圧の法則より、気体Aの分圧 $P_{\text{A}}$ は反応後の全圧 $P_{\text{後}} = 4.10 \times 10^4\text{ Pa}$ から水蒸気圧を引くだけで求まります!
設問 (b)反応で生成した水の物質量 $n_{\text{H}_2\text{O}}$
反応前の全圧 $P_{\text{前}} = 5.24 \times 10^4\text{ Pa}$ のうち、気体Aの分圧は反応前後で変わらず $P_{\text{A}} = 3.743 \times 10^4\text{ Pa}$ です。よって、反応前に存在していた水素と酸素の分圧の和 $(P_{\text{H}_2} + P_{\text{O}_2})$ は:
$$P_{\text{H}_2} + P_{\text{O}_2} = P_{\text{前}} - P_{\text{A}} = 5.24 \times 10^4 - 3.743 \times 10^4 = 1.497 \times 10^4 \fallingdotseq 1.50 \times 10^4\text{ Pa}$$ここで、反応前の酸素 $\text{O}_2$ の物質量を $x\text{ [mol]}$ とおくと、体積比 $2:1$ より水素 $\text{H}_2$ の物質量は $2x\text{ [mol]}$ であり、水素と酸素の合計物質量は $2x + x = 3x\text{ [mol]}$ です。
また、反応式 $2\text{H}_2 + \text{O}_2 \longrightarrow 2\text{H}_2\text{O}$ より、生成する水(気体+液体の合計)の物質量 $n_{\text{H}_2\text{O}}$ は、反応前の水素の物質量に等しく $2x\text{ [mol]}$ です!
水素と酸素の混合気体(合計 $3x\text{ [mol]}$)について気体の状態方程式 $PV = nRT$ を立てます($T = 27.0 + 273 = 300\text{ K}$):
求めたい生成した水の物質量は $n_{\text{H}_2\text{O}} = 2x$ なので、両辺に $\dfrac{2}{3}$ を掛けて:
$$n_{\text{H}_2\text{O}} = 2x = \frac{2}{3} \times \frac{1.50}{2.493} = \frac{1.00}{2.493} \fallingdotseq 0.4011\text{ mol} \fallingdotseq \mathbf{0.401\text{ mol}}$$(※ $1.497 \times 10^4\text{ Pa}$ のまま計算しても $\dfrac{2}{3} \times \dfrac{1.497}{2.493} = \dfrac{0.998}{2.493} = 0.4003 \fallingdotseq 0.400\text{ mol}$ または $0.401\text{ mol}$ となります。(a)の有効数字3桁の値 $3.74 \times 10^4$ を用いると $5.24 - 3.74 = 1.50$ から綺麗に $\mathbf{0.401\text{ mol}}$ となります)。
設問 (c)気体Aの物質量 $n_{\text{A}}$
気体Aについて状態方程式 $P_{\text{A}}V = n_{\text{A}}RT$ を立てます($P_{\text{A}} = 3.74 \times 10^4\text{ Pa}$,$V = 100\text{ L}$,$T = 300\text{ K}$):
$$n_{\text{A}} = \frac{P_{\text{A}}V}{RT} = \frac{(3.74 \times 10^4\text{ Pa}) \times 100\text{ L}}{(8.31 \times 10^3\text{ Pa}\cdot\text{L}/(\text{K}\cdot\text{mol})) \times 300\text{ K}} = \frac{3.74 \times 10^6}{2.493 \times 10^6} = \frac{3.74}{2.493} \fallingdotseq 1.5002\text{ mol} \fallingdotseq \mathbf{1.50\text{ mol}}$$設問 (d)気体Aのモル質量 $M_{\text{A}}$
質量保存の法則より、「反応前に加えた水素と酸素の合計質量」は「反応によって生成した水の全質量」と完全に等しいです!
設問(b)より、生成した水の物質量は $n_{\text{H}_2\text{O}} = 0.401\text{ mol}$ であり、水のモル質量は $\text{H}_2\text{O} = 1.00 \times 2 + 16.0 = 18.0\text{ g/mol}$ なので、水素と酸素の合計質量(=生成した水の全質量 $w_{\text{H}_2\text{O}}$)は:
容器内の全気体の質量が $37.5\text{ g}$ であったので、気体Aの質量 $w_{\text{A}}$ は:
$$w_{\text{A}} = 37.5\text{ g} - 7.218\text{ g} = 30.282\text{ g} \fallingdotseq 30.3\text{ g}$$これを設問(c)で求めた気体Aの物質量 $n_{\text{A}} = 1.50\text{ mol}$ で割れば、気体Aのモル質量 $M_{\text{A}}$ が求まります!
$$M_{\text{A}} = \frac{w_{\text{A}}}{n_{\text{A}}} = \frac{30.282\text{ g}}{1.50\text{ mol}} \fallingdotseq 20.188\text{ g/mol} \fallingdotseq \mathbf{20.2\text{ g/mol}}$$(※ちなみにモル質量約 $20.2\text{ g/mol}$ で反応・凝縮しない気体Aの正体は希ガスのネオン $\text{Ne}$(原子量 $20.2$)ですね!実在する気体の数値で作問されていることが分かり、計算の正しさが裏付けられます)。
問(2) リチウムイオン電池と黒鉛(グラファイト)層間化合物 $\text{LiC}_6$ の結晶構造
【問題文】 次の文章を読み,以下の設問(a)〜(e)に答えよ。計算結果は,有効数字2桁で示せ。
黒鉛(グラファイト)の化合物 $\text{LiC}_6$ は,リチウムイオン電池の負極に応用される。充電では,正極活性物質のコバルト酸リチウム $\text{LiCoO}_2$ からリチウムイオン $\text{Li}^+$ が電解質溶液に溶出し,負極活性物質のグラファイトが電解質溶液から $\text{Li}^+$ を取り込んで $\text{LiC}_6$ になる。このとき,正極では活性物質の ア ,コバルトの酸化数は イ 。放電では逆に,$\text{LiC}_6$ から $\text{Li}^+$ が生じる。いま,リチウムイオン電池で駆動するスマートフォンで (i)動画再生を $3.0$ 時間行ったところ,電流の平均値は $140\text{ mA}$ であった。
グラファイトの結晶では,共有結合で正六角形につながった炭素原子からなる平面構造の層が交互にずれて重なっている。一方,化合物 $\text{LiC}_6$ では,すべての炭素原子が,層に垂直な位置で次の層の炭素原子に重なり,$\text{Li}$ 原子は2枚の層の六員環の中間にある。(ii) $\text{LiC}_6$ の面間隔は $0.370\text{ nm}$ であり,グラファイトの面間隔 $0.335\text{ nm}$ より広がっている。炭素の共有結合の長さは $0.142\text{ nm}$ のまま変わらず,炭素原子の層の内部構造はリチウム原子の出入りによって変化しないとして考えよ。
設問 (a)リチウムに関する正しい記述の選択(A〜F)
- ・A(誤):金属イオンの中でイオン半径が最小なのは $\text{Be}^{2+}$ や $\text{Al}^{3+}$ などさらに周期表の右側の多価陽イオンが存在するため、$\text{Li}^+$ が金属イオン最小とは限りません(アルカリ金属イオンの中では最小です)。
- ・B(誤):アルカリ金属は同周期で最小の第一イオン化エネルギーをもちますが、同族内では原子番号が大きい(下に行く)ほどイオン化エネルギーが小さくなるため、リチウムはアルカリ金属の中で最大です。
- ・C(誤):リチウムの炎色反応は赤色(深赤色)です(橙赤色はカルシウム $\text{Ca}$)。
- ・D(正):アルカリ金属の単体は、原子番号が小さいほど自由電子と陽イオン間の静電引力が強く金属結合が強くなるため、リチウム $\text{Li}$ はアルカリ金属の中で融点が最も高い(約 $180^\circ\text{C}$)です。よって D が正解!
- ・E(誤):イオン化傾向が極めて大きいため、水溶液を電気分解すると陰極では $\text{H}_2$ が発生し、単体は得られません(溶融塩電解が必要)。
- ・F(誤):常温で密度が $1.0\text{ g/cm}^3$(水の密度)より小さいアルカリ金属には、$\text{Li}$ だけでなく $\text{Na}$ や $\text{K}$ もあります。
設問 (b)・(c)リチウムイオン電池の充放電反応とコバルトの酸化数
リチウムイオン電池の正極と負極の反応式を整理しましょう。
設問(b): 充電時には、正極の $\text{LiCoO}_2$ から $\text{Li}^+$ と電子 $\text{e}^-$ が奪われて $\text{CoO}_2$(または $\text{Li}_{1-x}\text{CoO}_2$)になります。電子を失う反応なので正極では「酸化反応が起こり」(空欄 ア)、コバルト $\text{Co}$ の酸化数は $\text{LiCoO}_2$ 中の $+3$($(+1) + x + (-2)\times 2 = 0 \Rightarrow x=+3$)から $\text{CoO}_2$ 中の $+4$ へと「増加する」(空欄 イ)となります。
設問(c): 放電の際、負極で起こる反応は、$\text{LiC}_6$ が電子 $\text{e}^-$ を放出して $\text{Li}^+$ と黒鉛 $6\text{C}$ に戻る反応です。
$$\mathbf{\text{LiC}_6 \longrightarrow \text{Li}^+ + 6\text{C} + \text{e}^-}$$設問 (d)下線部(i)の動画再生で負極に生じた $\text{Li}^+$ の質量
電流の平均値 $I = 140\text{ mA} = 0.140\text{ A}$ で、時間 $t = 3.0\text{ 時間} = 3.0 \times 3600\text{ s} = 1.08 \times 10^4\text{ s}$ 放電したときの電気量 $Q\text{ [C]}$ は:
$$Q = It = 0.140\text{ A} \times (3.0 \times 3600\text{ s}) = 1512\text{ C}$$流れた電子 $\text{e}^-$ の物質量 $n_{\text{e}^-}$ は、ファラデー定数 $F = 9.65 \times 10^4\text{ C/mol}$ で割って求まります。また、設問(c)の反応式より、電子 $1\text{ mol}$ が流れるごとに $\text{Li}^+$(モル質量 $7.0\text{ g/mol}$)が $1\text{ mol}$ 生じるので、生じた $\text{Li}^+$ の質量 $w_{\text{Li}^+}$ は:
$$w_{\text{Li}^+} = 7.0\text{ g/mol} \times \frac{1512\text{ C}}{9.65 \times 10^4\text{ C/mol}} = \frac{10584}{96500}\text{ g} \fallingdotseq 0.10968\text{ g} \fallingdotseq \mathbf{0.11\text{ g}}$$設問 (e)$\text{LiC}_6$ の密度はグラファイトの密度の何倍か
✨ Sora先生の超図解!「底面積 $S$ × 面間隔 $d$(1層分の四角柱)」で比較しよう!
問題文の図7ページを見ると、左の $\text{LiC}_6$ の単位格子(高さ $d_1 = 0.370\text{ nm}$)と、右のグラファイトの1層分の区画(高さ $d_2 = 0.335\text{ nm}$)は、底面積 $S$ がまったく同じで、かつ「炭素原子の層の内部構造は変化しない」ため、1層分の四角柱に含まれる炭素原子の個数はどちらも同じ(6個)です!
(※念のため図の頂点と辺から数えても、上面と底面の頂点8個×$\frac{1}{8} = 1$個、水平な辺上や面内の炭素を合わせると、1層あたりちょうど $\text{C}$ 原子が 6個、そして $\text{LiC}_6$ には中心に $\text{Li}$ 原子が 1個 含まれています。だから化学式が $\text{LiC}_6$ なのです!)
底面積を $S$、アボガドロ定数を $N_{\text{A}}$ とすると、1層分の四角柱(炭素原子6個分を含む領域)の質量と体積は以下のようになります。
-
グラファイト($\text{C}_6$ 相当):
・炭素6個分の式量:$M_{\text{G}} = 12.0 \times 6 = 72.0\text{ g/mol}$
・1層分の体積:$V_{\text{G}} = S \times 0.335\text{ nm}$
・密度 $\rho_{\text{G}} = \dfrac{72.0 / N_{\text{A}}}{S \times 0.335}$ -
化合物 $\text{LiC}_6$($\text{Li}_1\text{C}_6$ 相当):
・$\text{LiC}_6$ の式量:$M_{\text{LiC}_6} = 7.0 + 12.0 \times 6 = 79.0\text{ g/mol}$
・1層分の体積:$V_{\text{LiC}_6} = S \times 0.370\text{ nm}$
・密度 $\rho_{\text{LiC}_6} = \dfrac{79.0 / N_{\text{A}}}{S \times 0.370}$
したがって、$\text{LiC}_6$ の密度がグラファイトの密度の何倍か($\dfrac{\rho_{\text{LiC}_6}}{\rho_{\text{G}}}$)を計算すると、$S$ と $N_{\text{A}}$ が綺麗に約分されて消えます!
$$\frac{\rho_{\text{LiC}_6}}{\rho_{\text{G}}} = \frac{\text{質量比}}{\text{体積比(面間隔比)}} = \frac{79.0}{72.0} \times \frac{0.335}{0.370} = \frac{79 \times 0.335}{72 \times 0.370} = \frac{26.465}{26.64} \fallingdotseq 0.9934\text{ 倍} \fallingdotseq \mathbf{0.99\text{ 倍}}$$(※リチウム原子が入り込んで質量が $\frac{79}{72}$ 倍に増えるものの、面間隔が $\frac{0.370}{0.335}$ 倍に広がる割合の方がわずかに大きいため、密度は $0.99$ 倍とほぼ同じかわずかに小さくなります!)。
大問 III :アルケンの酸化開裂による構造決定 / アセチレンからの芳香族合成
配点目安:約30%
いよいよ最後の大問III(有機化学)だよ!問(1)は、分子量 $152$ の鎖式炭化水素Aを $\text{KMnO}_4$ で酸化開裂させると「$\text{CO}_2$ + ジカルボン酸B + ケトンC」の3つに分かれるというパズル!
ここで一番大事なルールは、「1か所の二重結合を切ると切断面が2つできる。もし二重結合が2か所(ジエン)なら、真ん中のパーツは両端が切れてジカルボン酸Bになり、両端のパーツ2つが $\text{CO}_2$(末端 $=\text{CH}_2$)とケトンCになる!」というイメージを持つこと!しかもBとCの分子量差から一瞬で式が解けちゃうよ。問(2)はカーバイドからアセトアニリドまでの定番ルートだから、満点を狙っていこう!
問(1) 鎖式炭化水素Aの過マンガン酸カリウムによる酸化開裂と臭素付加
【問題文】 次の問(1)と(2)に答えよ。計算結果を四捨五入し,有効数字3桁で答えよ。
アルケンは,硫酸酸性水溶液中で $\text{KMnO}_4$ によって炭素原子間の二重結合が切断され,酸化される。例えば,図に示すアルケンはアルデヒドとケトンに分解される。アルデヒドはさらに酸化されて,カルボン酸になる。また,$\text{R}=\text{H}$ の場合には,生じたギ酸 $\text{HCOOH}$ は,$\text{KMnO}_4$ によってさらに酸化され,最終的に水と二酸化炭素になる。
いま,環状構造をもたない鎖式炭化水素Aがあり,分子量は $152$ であった。この化合物に硫酸酸性水溶液中で $\text{KMnO}_4$ を作用させたところ,二酸化炭素と化合物B,および,化合物Cが得られた。化合物Bはジカルボン酸のため炭酸水素ナトリウム水溶液に溶解したが,化合物Cはこれに溶解しなかった。化合物Bの炭素鎖に枝分かれ構造は無かった。化合物Bは化合物Cより分子量が大きく,化合物Bと化合物Cの分子量の差は $74$ であった。化合物Cは,ヨードホルム反応を示した。
(a) 化合物Bと化合物Cの名称と構造式を答えよ。
(b) 鎖式炭化水素A $1.00\text{ g}$ に十分な量の臭素 $\text{Br}_2$ を反応させた場合,生成物の質量は何 $\text{g}$ か。また,生成物に不斉炭素原子は何個生じるか。
STEP 1鎖式炭化水素Aの分子式と不飽和度の決定
分子量 $152$ の炭化水素 $\text{C}_x\text{H}_y$ の分子式を求めます。$152 \div 12 = 12$ 余り $8$ ですが、$\text{C}_{12}\text{H}_8$ は水素が少なすぎます。炭素を1個減らして水素を12個増やすと:
$$\text{C}_{11}\text{H}_{20} \quad (\text{分子量 } 12.0 \times 11 + 1.00 \times 20 = 132 + 20 = 152)$$炭素数 $11$ のアルカンの分子式は $\text{C}_{11}\text{H}_{24}$ なので、水素が $4$ 個少なく、不飽和度は $2$ です。環状構造をもたず、酸化開裂で3つの断片($\text{CO}_2$、ジカルボン酸B、ケトンC)に分かれていることから、炭化水素Aは分子内に $\text{C}=\text{C}$ 二重結合を2個もつ鎖式ジエンであることが確定します!
STEP 2化合物B(直鎖ジカルボン酸)と化合物C(ケトン)の特定(設問 a)
炭化水素A(炭素数合計 $11$)の2か所の $\text{C}=\text{C}$ 二重結合が切断されて、以下の3つのパーツが生じています。
- パーツ①:二酸化炭素 $\text{CO}_2$(炭素数 $1$)
問題文より、末端に $\text{CH}_2=\text{CH}-$ の構造があると、$\text{CH}_2=$ の部分がギ酸 $\text{HCOOH}$ を経て $\text{CO}_2$ と $\text{H}_2\text{O}$ になります。 - パーツ②:化合物C(ケトン)
炭酸水素ナトリウム水溶液に溶けない(カルボキシ基をもたない)ため、二重結合の切断によって生じたケトンです。さらに「ヨードホルム反応を示した」ことから、アセチル基 $\text{CH}_3-\text{CO}-$ をもつメチルケトン($\text{CH}_3-\text{CO}-\text{R}'$)です。 - パーツ③:化合物B(枝分かれのない直鎖ジカルボン酸)
両端が $-\text{CH}=$ となって2つの二重結合に挟まれた中央パーツであり、酸化されて $\text{HOOC}-(\text{CH}_2)_n-\text{COOH}$ となっています。
💡 分子量差 $74$ を使った連立方程式で一撃決定!
元の炭化水素A($\text{C}_{11}\text{H}_{20}$、分子量 $152$)の2か所の二重結合を切断すると:
・1か所目の二重結合($=\text{CH}-\text{CH}_2\text{(末端)}$):$-\text{CH}=$ が $-\text{COOH}$($\text{O}$ が2個増加)になり、$=\text{CH}_2$ が $\text{CO}_2 + \text{H}_2\text{O}$(合計 $\text{CH}_2\text{O}_3$、$\text{O}$ が3個増加)になります。
・2か所目の二重結合($=\text{C}(\text{R}')(\text{CH}_3)$ と $-\text{CH}=$):ケトン $-\text{CO}-$($\text{O}$ が1個増加)と、カルボン酸 $-\text{COOH}$($\text{O}$ が2個増加)になります。
もっとシンプルに、化合物Cの炭素数を $c$、化合物Bの炭素数を $b$ とおきましょう!
$\text{CO}_2$ が少なくとも1分子(炭素数 $1$)生じているので、もし3つのパーツが 1分子ずつ($\text{CO}_2$ 1個 + B 1個 + C 1個)生じたとすると、炭素数の合計は $1 + b + c = 11 \ \Longrightarrow \ \mathbf{b + c = 10}$ です。
ここで、炭素数 $c$ の飽和ケトンC($\text{C}_c\text{H}_{2c}\text{O}$)の分子量は $M_{\text{C}} = 14c + 16$、
炭素数 $b$ の飽和鎖式ジカルボン酸B($\text{C}_b\text{H}_{2b-2}\text{O}_4$)の分子量は $M_{\text{B}} = 14b - 2 + 64 = 14b + 62$ です。
「BはCより分子量が $74$ 大きい($M_{\text{B}} - M_{\text{C}} = 74$)」という条件式を立てると:
なんと!「$b - c = 2$(Bの炭素数はCより2個多い)」と一瞬で出てきました!
これと $b + c = 10$ を連立すると:
$$\mathbf{b = 6,\quad c = 4\text{ ? ちょっと待って!検算しよう!}}$$
🔍 【超重要】炭化水素Aの不飽和度(二重結合の数)と炭素数の完全検証!
もし炭化水素Aが $\text{C}_{11}\text{H}_{20}$(二重結合2個)なら、$b=6, c=4$ となり、Bはアジピン酸(ヘキサン二酸、炭素数6、分子量 $146$)、Cは2-ブタノン(エチルメチルケトン、炭素数4、分子量 $72$、ヨードホルム反応陽性、差は $146-72=74$)となります。
しかし!その場合、臭素 $\text{Br}_2$ を付加させた設問(b)の「不斉炭素原子の数」はどうなるでしょうか?
比較のために、もう一つの可能性である「分子式 $\text{C}_{10}\text{H}_{16}$(分子量 $12\times 10 + 16 = 136$ なので不可)」ではなく、「分子式 $\text{C}_{11}\text{H}_{20}$ 以外に分子量 $152$ の炭化水素はあるか?」を確認します。
・$\text{C}_{11}\text{H}_{20}$:$12 \times 11 + 20 = 152$(不飽和度 $2$:二重結合2個)
・$\text{C}_{12}\text{H}_8$:$12 \times 12 + 8 = 152$(不飽和度 $9$:鎖式ではほぼ無理)
つまり、分子量 $152$ の鎖式炭化水素Aは 100% 確実に $\text{C}_{11}\text{H}_{20}$ しか存在しません!
では、$\text{C}_{11}\text{H}_{20}$ でなぜ「アジピン酸+2-ブタノン($\text{CO}_2$ が1個)」なのか、それとも「グルタル酸+アセトン($\text{CO}_2$ が2個? いや、$\text{CO}_2$ が2個出るには二重結合が3個必要になって $\text{C}_{11}\text{H}_{18}$=分子量 $150$ になってしまいます!)」なのかを厳密に比較しましょう!
もしBがグルタル酸(炭素数5、分子量 $132$)、Cがアセトン(炭素数3、分子量 $58$、差は $132-58=74$)だとすると、炭素数の合計は $5 + 3 = 8$ となり、残りの炭素が $11 - 8 = 3$ 個になってしまいます!鎖式ジエン(二重結合2個)から $\text{CO}_2$ を3個出すことは構造上絶対に不可能です。
したがって、BとCの組み合わせで炭素数の合計が11($\text{CO}_2$ 1個+B 6個+C 4個=11個)を満たし、かつ分子量 $152$($\text{C}_{11}\text{H}_{20}$)となる唯一無二の正解は:
・化合物B(炭素数6):アジピン酸(ヘキサン二酸) $\text{HOOC}-(\text{CH}_2)_4-\text{COOH}$(分子量 $146$)
・化合物C(炭素数4):2-ブタノン(エチルメチルケトン) $\text{CH}_3-\text{CO}-\text{CH}_2-\text{CH}_3$(分子量 $72$)
です!!(※「スピードチェック」欄で一般的な誤答例として挙げられやすい炭素数5・3との違いもここで完全に決着がつきました!正しくは炭素数6のヘキサン二酸(アジピン酸)と炭素数4の2-ブタノン(エチルメチルケトン)です!)
▼ 鎖式炭化水素A($\text{C}_{11}\text{H}_{20}$,分子量 $152$)の酸化開裂スキーム
🎯 設問(a) 最終解答まとめ
- ・化合物Bの名称:アジピン酸(または ヘキサン二酸)
構造式:$\mathbf{\text{HOOC}-\text{CH}_2-\text{CH}_2-\text{CH}_2-\text{CH}_2-\text{COOH}}$ - ・化合物Cの名称:2-ブタノン(または エチルメチルケトン)
構造式:$\mathbf{\text{CH}_3-\text{CO}-\text{CH}_2-\text{CH}_3}$
STEP 3設問(b) 炭化水素A $1.00\text{ g}$ への臭素 $\text{Br}_2$ の付加反応と不斉炭素原子の数
① 生成物の質量の計算:
鎖式炭化水素A($\text{C}_{11}\text{H}_{20}$、モル質量 $152\text{ g/mol}$)は分子内に $\text{C}=\text{C}$ 二重結合を 2個 もつため、十分な量の臭素 $\text{Br}_2$(モル質量 $80.0 \times 2 = 160\text{ g/mol}$)を反応させると、A $1\text{ mol}$ に対して $\text{Br}_2$ が $2\text{ mol}$ 付加します。
したがって、炭化水素A $1.00\text{ g}$($\dfrac{1.00}{152}\text{ mol}$)から得られる四臭化物 $\text{C}_{11}\text{H}_{20}\text{Br}_4$ の質量 $w$ は:
$$w = 1.00\text{ g} \times \frac{472}{152} = \frac{59}{19}\text{ g} \fallingdotseq 3.1052\text{ g} \fallingdotseq \mathbf{3.11\text{ g}}$$② 生成物に生じる不斉炭素原子($*$)の個数:
炭化水素Aに $\text{Br}_2$ が2分子付加した生成物の構造式を書いて、4つの異なる原子団が結合している炭素原子(不斉炭素原子 $\text{C}^*$)をすべてチェックします!
- 1番目の炭素 $\text{C}^1$:$-\text{H}$ が2個ついている($-\text{CH}_2\text{Br}$)ため、不斉炭素ではありません。
- 2番目の炭素 $\text{C}^2$:$-\text{H}$、$-\text{Br}$、$-\text{CH}_2\text{Br}$、$-(\text{CH}_2)_4\cdots$ の4つすべてが異なるため、不斉炭素原子(1個目)です!
- 7番目の炭素 $\text{C}^7$:$-\text{H}$、$-\text{Br}$、$-(\text{CH}_2)_4\cdots$、$-\text{C}(\text{Br})(\text{CH}_3)\text{CH}_2\text{CH}_3$ の4つすべてが異なるため、不斉炭素原子(2個目)です!
- 8番目の炭素 $\text{C}^8$:$-\text{Br}$、$-\text{CH}_3$(メチル基)、$-\text{CH}_2\text{CH}_3$(エチル基)、$-\text{CH}(\text{Br})(\text{CH}_2)_4\cdots$ の4つすべてが異なるため、不斉炭素原子(3個目)です!
よって、生成物に生じる不斉炭素原子は合計 3個 です!
(※もし万が一、Cをアセトンと誤認していた場合は8番目の炭素にメチル基が2個ついて不斉炭素が2個になってしまいますが、厳密な分子量計算通りCは2-ブタノン(メチル基とエチル基)なので、8番目の炭素も不斉炭素となり 3個 が完全な正解となります)。
問(2) カーバイドからのアセチレン・ベンゼン・アニリン・アセトアニリドの合成
【問題文】 次の文章を読み,以下の設問(a)〜(e)に答えよ。
(i)アセチレン $\text{C}_2\text{H}_2$ は,カーバイド $\text{CaC}_2$ に水を加えて作られる。熱した鉄にアセチレンを接触させると,ベンゼンが合成される。ベンゼンに混酸(濃硝酸と濃硫酸)を作用させると,ニトロベンゼンが生じる。(ii)ニトロベンゼンに対して,濃塩酸とスズで還元を行うと,アニリン塩酸塩が形成される。アニリン塩酸塩に水酸化ナトリウム水溶液を加えると,アニリンが遊離する。アニリンに氷酢酸を加えて加熱すると,アセトアニリドが合成される。
(a) 下線部(i)の反応は,次の①〜⑥のうちのどれに該当するか。最も適切なものを一つ選び,記号で答えよ。
① 付加重合 ② 接触分解 ③ 触媒反応 ④ 酸塩基反応 ⑤ 脱水反応 ⑥ 縮合反応
(b) ベンゼンを空気中で燃焼させると,多量の”すす”が生じる。この理由を説明せよ。
(c) 下線部(ii)の反応を化学反応式で表せ。
(d) 氷酢酸の沸点($118^\circ\text{C}$)は,同じ分子量をもつプロパノールの沸点($97^\circ\text{C}$)よりも高い。この理由を簡潔に述べよ。
(e) カーバイド $1.00\text{ g}$ から一連の反応を行うと,最大何 $\text{g}$ のアセトアニリドが得られるか。
🔗 カーバイドからアセトアニリドまでの物質量(炭素数)追跡マップ
($3\text{ mol}$) $\xrightarrow{+\text{H}_2\text{O}}$ $3\text{C}_2\text{H}_2$
($3\text{ mol}$) $\xrightarrow{\text{Fe触媒}}$ $\text{C}_6\text{H}_6$
($1\text{ mol}$) $\xrightarrow{\text{混酸}}$ $\text{C}_6\text{H}_5\text{NO}_2$
($1\text{ mol}$) $\xrightarrow{\text{Sn/HCl}}$ $\text{C}_6\text{H}_5\text{NH}_3\text{Cl}$
($1\text{ mol}$) $\xrightarrow{\text{NaOH}}$ $\text{C}_6\text{H}_5\text{NH}_2$
($1\text{ mol}$) $\xrightarrow{\text{CH}_3\text{COOH}}$ $\text{C}_6\text{H}_5\text{NHCOCH}_3$
($1\text{ mol}$)
設問 (a)カーバイドに水を加えてアセチレンを得る反応の分類
反応式は $\text{CaC}_2 + 2\text{H}_2\text{O} \longrightarrow \text{Ca(OH)}_2 + \text{C}_2\text{H}_2$ です。
これは、極めて弱い酸であるアセチレン $\text{H}-\text{C}\equiv\text{C}-\text{H}$ の塩(カルシウムアセチリド $\text{Ca}^{2+}[\text{C}\equiv\text{C}]^{2-}$)に対して、アセチレンよりも強い酸として働く水 $\text{H}_2\text{O}$ から水素イオン $\text{H}^+$ が受け渡される弱酸の遊離反応(ブレンステッドの酸塩基反応、加水分解反応)です。したがって ④(酸塩基反応) が正解です。
設問 (b)ベンゼンを空気中で燃焼させると多量の「すす」が生じる理由
ベンゼン($\text{C}_6\text{H}_6$)は、分子内の水素原子に対する炭素原子の割合($\text{C}/\text{H}$ 比、すなわち炭素の質量百分率 $\frac{72}{78} \fallingdotseq 92.3\%$)が非常に大きいため、空気中の酸素だけではすべての炭素が完全燃焼($\text{CO}_2$ に酸化)しきれず、未燃焼の炭素(単体 $\text{C}$)が「すす」として遊離するためです。
設問 (c)ニトロベンゼンをスズと濃塩酸で還元してアニリン塩酸塩を得る化学反応式
半反応式から1ステップずつ丁寧に組み立てましょう!
- ニトロベンゼンの還元(酸性条件下でアニリン塩酸塩の陽イオン $\text{C}_6\text{H}_5\text{NH}_3^+$ になる):
$$\text{C}_6\text{H}_5\text{NO}_2 + 7\text{H}^+ + 6\text{e}^- \longrightarrow \text{C}_6\text{H}_5\text{NH}_3^+ + 2\text{H}_2\text{O} \quad \cdots \text{①}$$ - スズ $\text{Sn}$ の酸化($\text{Sn} \rightarrow \text{Sn}^{2+} \rightarrow \text{Sn}^{4+}$ まで酸化される):
$$\text{Sn} \longrightarrow \text{Sn}^{4+} + 4\text{e}^- \quad \cdots \text{②}$$
電子 $\text{e}^-$ を消去するため、①$\times 2 +$ ②$\times 3$ を計算します($6\text{e}^- \times 2 = 12\text{e}^-$):
$$2\text{C}_6\text{H}_5\text{NO}_2 + 3\text{Sn} + 14\text{H}^+ \longrightarrow 2\text{C}_6\text{H}_5\text{NH}_3^+ + 3\text{Sn}^{4+} + 4\text{H}_2\text{O}$$最後に両辺に塩化物イオン $14\text{Cl}^-$ を加えて化学反応式を完成させます(右辺の $\text{SnCl}_4$ と $\text{C}_6\text{H}_5\text{NH}_3\text{Cl}$ が塩化スズ(IV)酸塩 $(\text{C}_6\text{H}_5\text{NH}_3)_2[\text{SnCl}_6]$ を形成する形で書いても正解ですが、問題文に「アニリン塩酸塩が形成される」と明記されているため、$\text{C}_6\text{H}_5\text{NH}_3\text{Cl}$ と $\text{SnCl}_4$ に分けた式が最も標準的です):
$$\mathbf{2\text{C}_6\text{H}_5\text{NO}_2 + 3\text{Sn} + 14\text{HCl} \longrightarrow 2\text{C}_6\text{H}_5\text{NH}_3\text{Cl} + 3\text{SnCl}_4 + 4\text{H}_2\text{O}}$$設問 (d)氷酢酸の沸点が同じ分子量のプロパノールよりも高い理由
酢酸($\text{CH}_3\text{COOH}$、分子量 $60$)と1-プロパノール($\text{CH}_3\text{CH}_2\text{CH}_2\text{OH}$、分子量 $60$)はともに分子間で水素結合を形成しますが、酢酸はカルボキシ基($-\text{COOH}$)の $\text{C}=\text{O}$ と $-\text{OH}$ の間で2分子が互いに2か所の水素結合をつくって安定な環状二量体を形成するため、ヒドロキシ基1か所で水素結合するプロパノールよりも分子間力が強くなり、沸点が高くなります。
設問 (e)カーバイド $1.00\text{ g}$ から得られるアセトアニリドの最大質量
上の反応追跡マップの通り、アセチレン $3$ 分子が三量化してベンゼン $1$ 分子($\text{C}_6\text{H}_6$)になるため、カーバイド $\text{CaC}_2$ $3\text{ mol}$ からベンゼン環が $1\text{ mol}$ 作られ、最終的にアセトアニリド $\text{C}_6\text{H}_5\text{NHCOCH}_3$ が最大 $1\text{ mol}$ 得られます!
- カーバイド $\text{CaC}_2$ の式量:$40.0 + 12.0 \times 2 = 64.0\text{ g/mol}$
- アセトアニリド $\text{C}_8\text{H}_9\text{NO}$ の分子量:$12.0 \times 8 + 1.00 \times 9 + 14.0 + 16.0 = 96.0 + 9.00 + 30.0 = 135.0\text{ g/mol}$
カーバイド $1.00\text{ g}$ の物質量は $n_{\text{CaC}_2} = \dfrac{1.00}{64.0}\text{ mol}$ です。
これから得られるアセトアニリドの最大物質量は、その $\dfrac{1}{3}$ 倍なので:
よって、得られるアセトアニリドの最大質量 $w$ は:
$$w = 135.0\text{ g/mol} \times \frac{1.00}{192}\text{ mol} = \frac{135}{192}\text{ g} = \frac{45}{64}\text{ g} = 0.703125\text{ g} \fallingdotseq \mathbf{0.703\text{ g}}$$
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