📌 試験冒頭で与えられた共通条件(全大問共通)
必要な場合には次の値を用いよ。原子量 $\mathrm{H}:1.00,\ \mathrm{C}:12.0,\ \mathrm{N}:14.0,\ \mathrm{O}:16.0,\ \mathrm{Na}:23.0,\ \mathrm{S}:32.0,\ \mathrm{Cu}:63.5$
ファラデー定数:$9.65 \times 10^4\ \mathrm{C/mol}$
最終解答スピードチェック一覧
大問 I(電子軌道・共有結合とイオン結合性)
- 問1:ア 低い / イ イオン / ウ $0$ / エ $1$ / オ $1$ / カ $0$
- 問2:(1) 非共有電子対 (2) 配位結合
- 問3:アンモニア,水
- 問4:$2ab$
- 問5:$a = \dfrac{\sqrt{2}}{2},\ b = \dfrac{\sqrt{2}}{2}$(または $\dfrac{1}{\sqrt{2}}$)
- 問6:$\mathrm{H}$ 原子:$-0.41$, $\mathrm{F}$ 原子:$+0.41$
(※A=F,B=Hとした場合は $\mathrm{H}: +0.41,\ \mathrm{F}: -0.41$。詳細は問6解説参照)
大問 II(アスコルビン酸の酸化還元と生合成)
- 問1:変化前:褐色 → 変化後:無色
- 問2:電流の向き:(イ) / 反応:(ウ)(還元)
- 問3:(イ)(デヒドロアスコルビン酸)
- 問4:$579\ \mathrm{C}$(または $5.79 \times 10^2\ \mathrm{C}$)
- 問5:下記解説内の構造式参照(ラクトン環が開環したカルボン酸)
- 問6:$\mathrm{H_2O_2}$(過酸化水素)
大問 III(メチルオレンジの合成実験・収率)
- 問1:(1) ジアゾ化 (2) カップリング(ジアゾカップリング)
- 問2:下記解説内の構造式参照(分子内塩または塩酸塩)
- 問3:ア $\mathrm{H_2O}$ / イ $\mathrm{N_2}$ / ウ 配向性 / エ オルト($o$-) / オ パラ($p$-)
- 問4:下記解説内の構造式参照
- 問5:$53\%$
大問 IV(糖類の構造・アミグダリンの加水分解)
- 問1:ア 単糖(類) / イ 多糖(類) / ウ アミロペクチン / エ アミラーゼ / オ デキストリン
- 問2:割合:$30\%$ / 赤色沈殿の化学式:$\mathrm{Cu_2O}$
- 問3:セルロース:⑧,⑩ / アミロース:③,⑤ / ウ:①,③,⑤
- 問4:化合物A・Cの構造式:下記解説内の構造式参照
還元性を示す分子:B,C
大問 I :電子軌道・共有結合とイオン結合性
理論化学(化学結合)大問Iは「電子軌道の融合(分子軌道法の考え方)」をテーマにしたリード文読解問題だよ!見たことのない文字式 $a^2+b^2=1$ や $p_{\mathrm{AB}}$ が出てきてドキッとするかもしれないけど、実は「問題文に書かれたルール通りに連立方程式を解くだけ」の超サービス問題なんだ!問6だけ「HとFのどちらを原子Aとしたか」を丁寧に見極めよう。目標解答時間は10分だよ!
【問題文 I】
原子や分子には電子の軌道(以下,「軌道」と略す)がある。1つの軌道に電子は最大2個まで入ることができ,同じ軌道に入った2個の電子は電子対と呼ばれる。2つの原子が電子を共有してできる結合を共有結合という。原子Aと原子Bが1個ずつ不対電子を出し合ってできた共有結合では,それらの軌道が融合した新しい軌道に計2個の電子が入る。新しい軌道に入った電子のエネルギーは,もとの軌道にあった電子のエネルギーと比べて ア 。したがって,それぞれの原子が独立にあるよりも,融合した新しい軌道に電子が入って共有結合をつくる方が安定になる。この新しい軌道に入った2つの電子のことを共有電子対と呼ぶ。
原子Aと原子Bの軌道が融合する際,それぞれの軌道は $a:b$ の比率で混ざりあう。ただし,$a, b \geqq 0$ および $a^2 + b^2 = 1$ である。このとき,結合をつくる電子2個のうち,$2a^2$ 個分が原子A側に,$2b^2$ 個分が原子B側に引き寄せられることにより,各原子の電荷は異なりうる。$a$ と $b$ の大小はそれぞれの原子の電気陰性度で決まる。
結合している原子Aと原子Bの電気陰性度の差が大きくなると,共有電子対は一方の原子にかたよるようになり,共有結合性が弱まって イ 結合性が強くなる。$(a-b)^2$ の値は $\mathrm{H_2}$ のような完全な共有結合では ウ であるが,イ 結合性が強まるにつれて エ に近づく。そこで共有結合性の指標として
$p_{\mathrm{AB}} = $ エ $- (a - b)^2$
を定義すると,$p_{\mathrm{AB}}$ の値は完全な共有結合では オ であり,イ 結合性が強まるにつれて カ に近づくことになる。
▼ 軌道の融合と電子の分配イメージ図 ▼
問1:空欄 ア〜カ の穴埋め
【設問】ア,イに適切な語句を,ウ〜カに整数を入れよ。アは次の選択肢(高い,低い,同じである)より選べ。
- 空欄[ ア ]:化学の世界では「エネルギーが低いほど状態として安定である」というのが大原則です。直後の文に「したがって,…共有結合をつくる方が安定になる」とあるため,新しい軌道に入った電子のエネルギーはもとの軌道より「低い」となります。
- 空欄[ イ ]:結合している2原子の電気陰性度の差が大きくなると,共有電子対が一方へ強く引き寄せられ,陽イオンと陰イオンの間の静電気的引力に近い性質,すなわち「イオン」結合性が強くなります。
- 空欄[ ウ ]:$\mathrm{H_2}$ のような同じ原子どうしの完全な共有結合では,2つの原子の電気陰性度が等しいため,電子対のかたよりがありません。つまり比率 $a:b = 1:1$($a = b$)となります。よって, $$(a - b)^2 = (a - a)^2 = 0^2 = 0$$ より,ウには $0$ が入ります。
- 空欄[ エ ]:イオン結合性が極限まで強まると,共有電子対(2個)はどちらか一方の原子に完全に移動します。
- 原子A側に完全に寄ったとき:$2a^2 = 2,\ 2b^2 = 0 \implies a = 1,\ b = 0$
- 原子B側に完全に寄ったとき:$2a^2 = 0,\ 2b^2 = 2 \implies a = 0,\ b = 1$
- 空欄[ オ ]・[ カ ]:エ $= 1$ を代入すると,共有結合性の指標 $p_{\mathrm{AB}}$ は
$$p_{\mathrm{AB}} = 1 - (a - b)^2$$
と定義されます。
- 完全な共有結合のとき:$(a-b)^2 = 0$(ウ)なので,$p_{\mathrm{AB}} = 1 - 0 = \mathbf{1}$(オ)。
- イオン結合性が強まるにつれて:$(a-b)^2$ が $1$(エ)に近づくので,$p_{\mathrm{AB}} = 1 - 1 = \mathbf{0}$(カ)に近づきます。
問2・問3:非共有電子対と配位結合
【問2】下線部で示した場合のほか,原子Aの軌道に電子が入っておらず,原子Bの軌道に2個の電子がある場合も共有結合をつくることができる。
(1) この結合をつくる前の原子Bの2個の電子を何というか,最も適切な語句を答えよ。
(2) このようにしてできた共有結合を特に何というか,その名称を答えよ。
【問3】$\mathrm{H^+}$ との間で問2の結合をつくる分子を選択肢(メタン,エタン,アンモニア,水,ベンゼン)から全て選び答えよ。
【問2の解説】
- (1) 結合をつくる前に,1つの原子(原子B)の軌道にペアで入っており,まだ共有されていない2個の電子の組を非共有電子対といいます。
- (2) 一方の原子(B)の非共有電子対を,もう一方の原子(A)の空の軌道へ一方的に提供して共有することでできる共有結合を配位結合といいます。
【問3の解説】
水素イオン $\mathrm{H^+}$ は電子を1個も持たず,空の軌道(1s軌道)を持っています。したがって,$\mathrm{H^+}$ と配位結合をつくることができるのは,分子内に非共有電子対をもつ分子です。各選択肢の電子式(構造)を確認しましょう。
- メタン ($\mathrm{CH_4}$)・エタン ($\mathrm{C_2H_6}$)・ベンゼン ($\mathrm{C_6H_6}$):炭素原子の価電子4個はすべて共有結合に使われており,非共有電子対はありません。
- アンモニア ($\mathrm{NH_3}$):窒素原子 $\mathrm{N}$ 上に非共有電子対が1組あります。$\mathrm{H^+}$ に配位結合してアンモニウムイオン $\mathrm{NH_4^+}$ になります。
- 水 ($\mathrm{H_2O}$):酸素原子 $\mathrm{O}$ 上に非共有電子対が2組あります。$\mathrm{H^+}$ に配位結合してオキソニウムイオン $\mathrm{H_3O^+}$ になります。
【問3 解答】 アンモニア,水
問4・問5:$p_{\mathrm{AB}}$ の展開と $\mathrm{H_2}$ 分子における $a, b$ の算出
【問4】$p_{\mathrm{AB}}$ を $a$ と $b$ を含む簡単な式で表せ。
【問5】$\mathrm{H_2}$ 分子の場合,各 $\mathrm{H}$ 原子の軌道が融合した新しい軌道に2個の電子が入り共有結合を作っている。$a$ と $b$ の値を求めよ。なお,どちらを原子A,原子Bとするかは任意とする。
【問4の解説】
問1より,$p_{\mathrm{AB}} = 1 - (a - b)^2$ です。ここで,リード文の第2段落に与えられている条件式 $a^2 + b^2 = 1$ を使って式を簡単にします。
$$\begin{aligned} p_{\mathrm{AB}} &= 1 - (a - b)^2 \\ &= 1 - (a^2 - 2ab + b^2) \\ &= 1 - \{ (a^2 + b^2) - 2ab \} \end{aligned}$$ここに $a^2 + b^2 = 1$ を代入すると,
$$p_{\mathrm{AB}} = 1 - (1 - 2ab) = 2ab$$となり,非常にシンプルな式 $2ab$ になります。
【問5の解説】
$\mathrm{H_2}$ 分子は同じ水素原子どうしの結合なので,2つの原子の電気陰性度は等しく,電子対のかたよりはありません。したがって,
$$a = b \quad \cdots \text{①}$$これを条件式 $a^2 + b^2 = 1$ に代入すると,
$$a^2 + a^2 = 1 \implies 2a^2 = 1 \implies a^2 = \frac{1}{2}$$リード文より $a, b \geqq 0$ なので,
$$a = b = \frac{1}{\sqrt{2}} = \frac{\sqrt{2}}{2}$$【問5 解答】 $a = \dfrac{\sqrt{2}}{2},\ b = \dfrac{\sqrt{2}}{2}$ (または $a = \dfrac{1}{\sqrt{2}},\ b = \dfrac{1}{\sqrt{2}}$)
問6:$\mathrm{HF}$ 分子における各原子の電荷の計算
【問6】$\mathrm{HF}$ 分子の結合では $a = 0.84$ である。電子1個の電荷を $-1$ とするときの,$\mathrm{HF}$ 分子の $\mathrm{H}$ 原子と $\mathrm{F}$ 原子それぞれの電荷を有効数字2桁で符号をつけて答えよ。
Step 1:まず $a^2$ と $b^2$ の値を計算する
与えられた $a = 0.84$ を 2乗します。
$$a^2 = (0.84)^2 = 0.7056$$条件式 $a^2 + b^2 = 1$ より,$b^2$ は次のように求まります。
$$b^2 = 1 - a^2 = 1 - 0.7056 = 0.2944$$Step 2:結合をつくる電子2個が何個分ずつ引き寄せられるかを求める
リード文に「結合をつくる電子2個のうち,$2a^2$ 個分が原子A側に,$2b^2$ 個分が原子B側に引き寄せられる」と書かれています。
- 原子A側に引き寄せられる電子数:$2a^2 = 2 \times 0.7056 = 1.4112$ 個分
- 原子B側に引き寄せられる電子数:$2b^2 = 2 \times 0.2944 = 0.5888$ 個分
Step 3:中性の原子状態(電子1個)からの増減で電荷を求める
もともと原子Aも原子Bも,結合に不対電子を1個ずつ出し合っています。つまり,共有電子対のうち「自分側に $1$ 個分」あれば電荷は $\pm 0$(中性)です。
電子1個の電荷は $-1$ なので,もともと持っていた $1$ 個との差を計算すると,
- 原子Aの電荷:電子が $1.4112 - 1 = +0.4112$ 個分増えたので,電荷は $(-1) \times (+0.4112) = -0.4112 \fallingdotseq \mathbf{-0.41}$
- 原子Bの電荷:電子が $0.5888 - 1 = -0.4112$ 個分減ったので,電荷は $(-1) \times (-0.4112) = +0.4112 \fallingdotseq \mathbf{+0.41}$
⚠️【重要補足:「H原子とF原子のどちらが原子Aか?」について】
問題文の表記順「$\mathrm{HF}$ 分子」に従って素直に「左側の $\mathrm{H}$ を原子A,右側の $\mathrm{F}$ を原子B」と対応させると,$\mathrm{H}$ 原子:$-0.41$,$\mathrm{F}$ 原子:$+0.41$ となります。
一方,化学的性質(リード文の「$a$ と $b$ の大小はそれぞれの原子の電気陰性度で決まる」および電気陰性度は $\mathrm{F} > \mathrm{H}$ であるため電子は $\mathrm{F}$ 側に引き寄せられる事実)から「電気陰性度の大きい $\mathrm{F}$ が $a=0.84$(原子A)である」と判断すると,$\mathrm{H}$ 原子:$+0.41$,$\mathrm{F}$ 原子:$-0.41$ となります。問題文に「$\mathrm{H}$ と $\mathrm{F}$ のどちらをAとするか」の明記が抜けているため,されていますが,どちらの解釈でも導出過程は上記の通りです。
・表記順($\mathrm{A=H,\ B=F}$)とした場合:$\mathrm{H}$ 原子:$-0.41$, $\mathrm{F}$ 原子:$+0.41$
・電気陰性度($\mathrm{A=F,\ B=H}$)とした場合:$\mathrm{H}$ 原子:$+0.41$, $\mathrm{F}$ 原子:$-0.41$
大問 II :アスコルビン酸(ビタミンC)の酸化還元と生合成
理論・有機融合(酸化還元・電池)大問IIは誰もがよく知る「ビタミンC(アスコルビン酸)」が主役!一番のポイントは「アスコルビン酸=強い還元剤(相手を還元し、自分は2個の $\mathrm{H^+}$ と $2\mathrm{e^-}$ を出して酸化される)」という基本性質だよ。これさえ押さえておけば、ヨウ素との反応も、木炭電池の電流の向きも、ファラデーの法則の電気量計算も一本の線でスルスル解けちゃうよ!目標解答時間は12分!
【問題文 II】
アスコルビン酸(ビタミンC,図1)の生合成経路としては,化合物Aを分子内脱水して化合物Bを得たのちに,これと等しい物質量の酸素分子を作用させて化合物B内の炭素間の単結合を二重結合にして合成する経路などが知られている。以下の操作を読み問に答えよ。
操作1:ヨウ素ヨウ化カリウム水溶液を準備し,ここにアスコルビン酸を十分含む水溶液を混合してかくはんしたところ,色が変化した。
操作2:アスコルビン酸を $0.528\ \mathrm{g}$ すり込んで固定した木炭と,アスコルビン酸をすり込んでいない木炭を,適切に処理して電極とした。これらの電極を単一容器に入った食塩水に互いに離して浸し,導線でつないだところ電流が流れた。
▼ 図1:アスコルビン酸の構造と酸化反応(問3・問4の核心!) ▼
問1:操作1におけるヨウ素ヨウ化カリウム水溶液の色の変化
【設問】操作1の色の変化について,変化の前後の色を下記の選択肢(黒色,褐色,青紫色,赤色,緑色,無色)より選んで答えよ。
ヨウ素ヨウ化カリウム水溶液は,ヨウ素 $\mathrm{I_2}$ がヨウ化物イオン $\mathrm{I^-}$ と結合して三ヨウ化物イオン $\mathrm{I_3^-}$ となって溶けており,特有の褐色(黄褐色〜赤褐色)を呈しています(※デンプンは入っていないので青紫色ではありません!ひっかけに注意!)。
ここに還元剤であるアスコルビン酸($\mathrm{C_6H_8O_6}$)を加えると,ヨウ素 $\mathrm{I_2}$ が還元されて無色のヨウ化物イオン $\mathrm{I^-}$ に変わります。
$$\mathrm{I_2 + 2e^- \longrightarrow 2I^-}\quad \text{(褐色 $\longrightarrow$ 無色)}$$問2:操作2(木炭電池)における電流の向きと電極反応
【設問】操作2で流れた電流の向きと,アスコルビン酸をすり込んでいない電極で起こった反応について,適切な選択肢を選んで記号で答えよ。
<電流の向き> (ア) アスコルビン酸をすり込んだ電極から他方の電極に向かって電流が流れた。/ (イ) アスコルビン酸をすり込んだ電極に向かって他方の電極から電流が流れた。
<反応> (ア) 中和 (イ) 酸化 (ウ) 還元 (エ) 脱水
- 負極(アスコルビン酸をすり込んだ木炭):アスコルビン酸は還元剤なので,自身が酸化反応を起こして電子 $\mathrm{e^-}$ を放出します。電子を導線へ送り出す極が負極です。
- 正極(アスコルビン酸をすり込んでいない木炭):導線を通ってきた電子 $\mathrm{e^-}$ を受け取り,電極付近の物質(主に木炭に吸着している溶存酸素 $\mathrm{O_2}$ や水)が電子を受け取る還元反応(ウ)が起こります。
- 電流の向き:「電流の向きは,電子 $\mathrm{e^-}$ の流れる向きと逆(正極 $\longrightarrow$ 負極)」です。つまり,他方の電極(正極)からアスコルビン酸をすり込んだ電極(負極)に向かって電流が流れるので,(イ) が正解です。
問3:アスコルビン酸が酸化されて生じる物質の構造
【設問】ア〜エのうち,操作1や操作2によりアスコルビン酸から生じた物質の構造として最も適したものを選び記号で答えよ。
上の「図1:アスコルビン酸の構造と酸化反応」で図解した通り,アスコルビン酸($\mathrm{C_6H_8O_6}$)が酸化されると,五員環の下部にあるエンジオール構造($-\mathrm{C(OH)=C(OH)}-$)から水素原子2個($2\mathrm{H^+} + 2\mathrm{e^-}$)が取れて,2つのカルボニル基($-\mathrm{C(=O)-C(=O)}-$)をもつデヒドロアスコルビン酸($\mathrm{C_6H_6O_6}$)になります。
選択肢を見ると,
- (ア) は二重結合に水素が付加(還元)された構造。
- (イ) が $-\mathrm{C(OH)=C(OH)}-$ が2つの $\mathrm{C=O}$ になったデヒドロアスコルビン酸であり正解!
- (ウ),(エ) は側鎖が環化しており誤り。
問4:流れた電気量の計算
【設問】操作2について,すり込んだアスコルビン酸がすべて反応したと仮定する。このときに流れた電気量を有効数字3桁で単位とともに答えよ。
Step 1:アスコルビン酸の分子量と物質量($\mathrm{mol}$)を求める
図1の構造式より,アスコルビン酸の分子式を数えます。
- 炭素 $\mathrm{C}$:環に4個 + 側鎖に2個 = 6個
- 水素 $\mathrm{H}$:側鎖に $\mathrm{HO-CH_2-CH(OH)-}$ で5個 + 環に $\mathrm{HC}$ で1個 + 下部の $\mathrm{OH}$ 2個 = 8個
- 酸素 $\mathrm{O}$:合計 6個
よって,アスコルビン酸の分子式は $\mathrm{C_6H_8O_6}$ です。分子量は,
$$\text{分子量} = 12.0 \times 6 + 1.00 \times 8 + 16.0 \times 6 = 72.0 + 8.0 + 96.0 = 176$$操作2ですり込んだアスコルビン酸は $0.528\ \mathrm{g}$ なので,その物質量は,
$$n = \frac{0.528\ \mathrm{g}}{176\ \mathrm{g/mol}} = 0.00300\ \mathrm{mol} = 3.00 \times 10^{-3}\ \mathrm{mol}$$Step 2:流れた電子 $\mathrm{e^-}$ の物質量と電気量($\mathrm{C}$)を求める
問3で確認した通り,アスコルビン酸 $1\ \mathrm{mol}$ がデヒドロアスコルビン酸へ酸化されるとき,
$$\mathrm{C_6H_8O_6 \longrightarrow C_6H_6O_6 + 2H^+ + 2e^-}$$より,アスコルビン酸 $1\ \mathrm{mol}$ あたり $2\ \mathrm{mol}$ の電子 $\mathrm{e^-}$ が流れます。したがって,流れた電子の物質量は,
$$n(\mathrm{e^-}) = 3.00 \times 10^{-3}\ \mathrm{mol} \times 2 = 6.00 \times 10^{-3}\ \mathrm{mol}$$ファラデー定数 $F = 9.65 \times 10^4\ \mathrm{C/mol}$ を掛けると,流れた電気量 $Q$ は,
$$Q = 6.00 \times 10^{-3}\ \mathrm{mol} \times 9.65 \times 10^4\ \mathrm{C/mol} = 579\ \mathrm{C}$$問5・問6:生合成経路における化合物Aの構造式と酸素分子の変換
【問5】化合物Aの構造式を図1にならって書け。
【問6】下線部について,酸素分子が変換されて生じる物質の分子式を答えよ。
リード文の生合成経路を逆向き(ゴールからスタートへ)にたどってみましょう!
【Step 1:化合物Bの構造と問6(酸素分子の変換)を特定する】
反応②は「化合物B内の炭素間の単結合を二重結合にしてアスコルビン酸を合成する」反応です。図1のアスコルビン酸にある唯一の炭素間二重結合(下部の $-\mathrm{C(OH)=C(OH)}-$)が,反応前は単結合($-\mathrm{CH(OH)-CH(OH)}-$)だったということです!
つまり,化合物Bは問3の選択肢(ア)の構造(分子式 $\mathrm{C_6H_{10}O_6}$)です。
ここで,化合物B($\mathrm{C_6H_{10}O_6}$)$1\ \mathrm{mol}$ と,等しい物質量($1\ \mathrm{mol}$)の酸素分子 $\mathrm{O_2}$ が反応して,アスコルビン酸($\mathrm{C_6H_8O_6}$)$1\ \mathrm{mol}$ が生じる反応式を書くと,
$$\mathrm{C_6H_{10}O_6 + O_2 \longrightarrow C_6H_8O_6 + X}$$両辺の原子の数を比べると,化合物Bから引き抜かれた水素原子2個($\mathrm{2H}$)と酸素分子($\mathrm{O_2}$)が結びついて $\mathrm{H_2O_2}$(過酸化水素) が生じることがわかります!これが問6の答えです。
【Step 2:問5(化合物Aの構造式)を特定する】
反応①は「化合物Aを分子内脱水して化合物B(環状エステル=ラクトン)を得た」反応です。
化合物Bの五員環にはエステル結合($-\mathrm{CH-O-C(=O)}-$)があります。分子内脱水でエステル結合ができる前の構造(化合物A)は,このエステル結合に水 $\mathrm{H_2O}$ を戻して開環させたヒドロキシ基($-\mathrm{OH}$)とカルボキシ基($-\mathrm{COOH}$)をもつ鎖状化合物です。
▼ 問5の解答:化合物Aの構造式(と化合物Bとの関係) ▼
【問6 解答】 $\mathrm{H_2O_2}$
大問 III :メチルオレンジの合成実験・配向性と収率
有機化学(芳香族アミン・アゾ染料)大問IIIは芳香族の定番「メチルオレンジの合成」だけど、注意点が2つあるよ!1つ目は問2・問4の「窒素原子がかかわる結合では、単結合・二重結合・三重結合の区別を明確にして線(価標)を用いて記せ」という指定!ジアゾニウム基を $-\mathrm{N_2^+}$ と省略せず、必ず $-\mathrm{N^+\equiv N}$ と三重結合で書こう。2つ目は問5の収率計算!スルファニル酸とジメチルアニリンのどちらが先に使い切られるか(制限試薬か)をモル計算でしっかり比較しようね。目標解答時間は13分!
【問題文 III】
スルファニル酸を炭酸ナトリウム水溶液に加えて完全に溶解させ,(1)冷やしながら亜硝酸ナトリウム水溶液を加えさらに塩酸を加えると化合物Aが生じた。これに(2)ジメチルアニリンと酢酸の混液を加えると赤色のメチルオレンジが生じた。さらに,水酸化ナトリウム水溶液を加え塩基性にすると,(3)黄橙色のメチルオレンジ(ナトリウム塩)の沈殿が得られた。
下線部(1)において低温で反応を行ったのは,温度が上がると生成物が ア と反応し気体 イ を発生して分解されるからである。
ベンゼンの一置換体にさらに置換反応を行う場合,すでに結合している置換基の性質によって2つめの置換基が入りやすい位置が決まる。これを置換基の ウ といい,置換基がベンゼン環に電子を与えやすい性質をもつと,オルト・パラ ウ を示す。しかし,下線部(2)の反応では,ジメチルアニリンの置換基の立体障害のため エ 位では反応が起こりにくく, オ 位に置換反応が起りやすい。
▼ メチルオレンジの合成反応と構造式(問2・問4の注意書き完全準拠!) ▼
問1〜問4:反応名・構造式・ジアゾニウム塩の分解と配向性
【問1】下線部(1)と(2)の反応名
- (1) 芳香族第一級アミンに冷却下で亜硝酸ナトリウムと塩酸を作用させてジアゾニウム塩をつくる反応をジアゾ化といいます。
- (2) ジアゾニウム塩を別の芳香族化合物と反応させてアゾ化合物($-\mathrm{N=N}-$ をもつ化合物)をつくる反応をカップリング(またはジアゾカップリング)といいます。
【問2】化合物Aの構造式
スルファニル酸($p$-アミノベンゼンスルホン酸)がジアゾ化された化合物($p$-ジアゾベンゼンスルホン酸)です。設問の注意書きに従い,ジアゾニウム基の窒素間の結合を三重結合($-\mathrm{N^+\equiv N}$)で明記します。スルホン酸基($-\mathrm{SO_3H}$)は強酸性のため,分子内で $\mathrm{H^+}$ を放出して双性イオン(分子内塩:$-\mathrm{SO_3^-}$ と $-\mathrm{N^+\equiv N}$)として存在しますが,塩酸中のため $-\mathrm{SO_3H}$ と $-\mathrm{N^+\equiv N\ Cl^-}$ の形で書いても正解です(上図参照)。
【問3】空欄 ア〜オ の補充
- ア・イ:ジアゾニウム塩の水溶液を温めると,溶媒の水($\mathrm{H_2O}$)と反応してフェノール類になり,気体の窒素($\mathrm{N_2}$)を発生して分解します。設問に「分子式を記せ」とあるため,アは $\mathrm{H_2O}$,イは $\mathrm{N_2}$ です。
- ウ:既存の置換基によって次の置換基が入りやすい位置が決まる性質を置換基の配向性といいます。
- エ・オ:ジメチルアニリンの $-\mathrm{N(CH_3)_2}$ 基は電子供与性基であり,オルト・パラ配向性を示しますが,$-\mathrm{N(CH_3)_2}$ 基がかさ高いため,すぐ隣のオルト位(エ)では立体障害によって反応が起こりにくく,反対側のパラ位(オ)でカップリング反応が起こります。
【問4】メチルオレンジ(ナトリウム塩)の構造式
化合物Aのジアゾニウム基と,ジメチルアニリンのパラ位の $\mathrm{H}$ が反応してアゾ基($-\mathrm{N=N}-$:二重結合を明記!)でつながり,さらに $\mathrm{NaOH}$ によってスルホン酸基がナトリウム塩($-\mathrm{SO_3Na}$)になった構造を書きます(上図参照)。
【問2・問4 解答】 上記黄色枠内の構造式を参照
【問3 解答】 ア:$\mathrm{H_2O}$ / イ:$\mathrm{N_2}$ / ウ:配向性 / エ:オルト / オ:パラ
問5:メチルオレンジ合成の収率計算
【問5】スルファニル酸とジメチルアニリンをそれぞれ $1.00\ \mathrm{g}$ ずつ反応させたところ,$1.00\ \mathrm{g}$ のメチルオレンジ(ナトリウム塩)が得られた。この反応の収率は何$\%$か,有効数字2桁で答えよ。
Step 1:各物質の分子式と分子量(式量)を正確に求める
- スルファニル酸($\mathrm{HO_3S-C_6H_4-NH_2}$):分子式 $\mathrm{C_6H_7NO_3S}$ $$M_1 = 12.0 \times 6 + 1.00 \times 7 + 14.0 \times 1 + 16.0 \times 3 + 32.0 \times 1 = 72.0 + 7.0 + 14.0 + 48.0 + 32.0 = \mathbf{173}$$
- ジメチルアニリン($\mathrm{C_6H_5-N(CH_3)_2}$):分子式 $\mathrm{C_8H_{11}N}$ $$M_2 = 12.0 \times 8 + 1.00 \times 11 + 14.0 \times 1 = 96.0 + 11.0 + 14.0 = \mathbf{121}$$
- メチルオレンジ(ナトリウム塩)($\mathrm{NaO_3S-C_6H_4-N=N-C_6H_4-N(CH_3)_2}$):分子式 $\mathrm{C_{14}H_{14}N_3NaO_3S}$ $$M_3 = 12.0 \times 14 + 1.00 \times 14 + 14.0 \times 3 + 23.0 \times 1 + 16.0 \times 3 + 32.0 \times 1$$ $$M_3 = 168 + 14 + 42 + 23 + 48 + 32 = \mathbf{327}$$
Step 2:どちらの反応物が先に使い切られるか(制限試薬の判定)
スルファニル酸 $1\ \mathrm{mol}$ とジメチルアニリン $1\ \mathrm{mol}$ は $1:1$ の物質量比で反応して,$1\ \mathrm{mol}$ のメチルオレンジ(ナトリウム塩)を生じます。それぞれ $1.00\ \mathrm{g}$ ずつの物質量($\mathrm{mol}$)を比べると,
- スルファニル酸の物質量:$n_1 = \dfrac{1.00}{173}\ \mathrm{mol}$
- ジメチルアニリンの物質量:$n_2 = \dfrac{1.00}{121}\ \mathrm{mol}$
分母が大きい方が値は小さいので,$n_1 < n_2$ です。つまり,スルファニル酸の方が物質量が少なく,先にすべて反応してなくなります(ジメチルアニリンは余ります)。
したがって,理論上得られるメチルオレンジ(ナトリウム塩)の最大物質量 $n_{\text{理論}}$ は,スルファニル酸の物質量 $n_1$ に等しくなります!
$$n_{\text{理論}} = \frac{1.00}{173}\ \mathrm{mol}$$Step 3:実際に得られた物質量と比較して収率を求める
実際に得られたメチルオレンジ(ナトリウム塩,式量 $327$)は $1.00\ \mathrm{g}$ なので,その物質量 $n_{\text{実際}}$ は,
$$n_{\text{実際}} = \frac{1.00}{327}\ \mathrm{mol}$$よって,求める収率($\%$)は,
$$\text{収率} = \frac{n_{\text{実際}}}{n_{\text{理論}}} \times 100 = \frac{\dfrac{1.00}{327}}{\dfrac{1.00}{173}} \times 100 = \frac{173}{327} \times 100 \fallingdotseq 52.905\dots \% \fallingdotseq \mathbf{53\%}$$大問 IV :糖類の構造・加水分解と配糖体アミグダリン
天然有機化合物(糖類・配糖体)いよいよ最後の大問IV!糖類の総合問題だよ。問2のフェーリング反応の計算では「デンプンのグルコース単位2個(式量 $162 \times 2$)からマルトース1分子ができ、マルトース1分子から $\mathrm{Cu_2O}$ が1分子沈殿する」という対応関係がカギ!問3は図1の4つの単糖を見比べて「どれが $\alpha$-グルコースで、どれが $\beta$-グルコースか」を見抜くパズルだよ。4位(左端)の $-\mathrm{OH}$ の向きまでしっかりチェックしよう!目標解答時間は15分!
【問題文 IV】
糖類は自然界に最も多く存在する有機化合物で,グルコースのようにそれ以上加水分解されない糖類を ア という。それに対し,セルロースのように加水分解されて1分子から数多くの ア を生じるものを イ という。イ のひとつであるデンプンは,温水に可溶なアミロースと不溶な ウ とで構成されており,唾液に含まれる酵素 エ によってマルトースと重合度の小さい イ である オ を生じる。
問1:空欄 ア〜オ の穴埋め
- ア:それ以上加水分解されない最小単位の糖類を単糖(類)といいます。
- イ:加水分解によって多数の単糖を生じる糖類を多糖(類)といいます。
- ウ:デンプンは,直鎖状で温水に溶けるアミロースと,枝分かれ構造をもち温水に溶けないアミロペクチンから構成されています。
- エ・オ:唾液に含まれる消化酵素アミラーゼは,デンプンを加水分解して二糖のマルトースや,中間生成物(重合度の小さい多糖類)であるデキストリンを生じます。
問2:デンプンの酵素加水分解とフェーリング反応の量的計算
【問2】デンプン $27\ \mathrm{g}$ を温水に加えて $100\ \mathrm{mL}$ の溶液とし,十分な量の[ エ:アミラーゼ ]を加えて放置した。次に,フェーリング液とともに加熱したところ $7.15\ \mathrm{g}$ の赤色沈殿を生じた。[ エ ]を加えることによりデンプンの何$\%$がマルトースに変化したか。また,この赤色沈殿の化学式を書け。ただし,[ オ:デキストリン ]はフェーリング液を還元しないものとする。
Step 1:赤色沈殿の化学式と物質量($\mathrm{mol}$)を求める
フェーリング液を還元性のある糖(ここではマルトース)とともに加熱すると,溶液中の銅(II)イオン $\mathrm{Cu^{2+}}$ が還元されて,酸化銅(I)(化学式:$\mathrm{Cu_2O}$)の赤色沈殿を生じます。
$\mathrm{Cu_2O}$ の式量は,$\mathrm{Cu}=63.5,\ \mathrm{O}=16.0$ より,
$$\mathrm{Cu_2O}\text{ の式量} = 63.5 \times 2 + 16.0 = 127.0 + 16.0 = 143$$生じた $\mathrm{Cu_2O}$ は $7.15\ \mathrm{g}$ なので,その物質量は,
$$n(\mathrm{Cu_2O}) = \frac{7.15\ \mathrm{g}}{143\ \mathrm{g/mol}} = 0.0500\ \mathrm{mol}$$Step 2:生じたマルトースの物質量を求める
還元性をもつ二糖であるマルトースは,1分子中に還元性を示すヘミアセタール構造(開環してアルデヒド基 $-\mathrm{CHO}$ になる部分)を1つ持っています。アルデヒド基 $1\ \mathrm{mol}$ が酸化されてカルボン酸になるとき $2\ \mathrm{mol}$ の電子を放出し,$2\ \mathrm{mol}$ の $\mathrm{Cu^{2+}}$ を還元して $1\ \mathrm{mol}$ の $\mathrm{Cu_2O}$ を沈殿させます。
$$\text{マルトース } 1\ \mathrm{mol} \longrightarrow \mathrm{Cu_2O}\ 1\ \mathrm{mol}$$したがって,溶液中に生成していたマルトースの物質量は,
$$n(\text{マルトース}) = n(\mathrm{Cu_2O}) = 0.0500\ \mathrm{mol}$$Step 3:もとのデンプンのグルコース単位の物質量と比較する
デンプン $(\mathrm{C_6H_{10}O_5})_n$ は,グルコース単位 $\mathrm{C_6H_{10}O_5}$(式量 $= 12.0 \times 6 + 1.00 \times 10 + 16.0 \times 5 = 162$)が多数つながったものです。デンプン $27\ \mathrm{g}$ 中に含まれるグルコース単位の総物質量は,
$$n(\text{全グルコース単位}) = \frac{27\ \mathrm{g}}{162\ \mathrm{g/mol}} = \frac{1}{6}\ \mathrm{mol}$$ここで,マルトース $1\ \mathrm{mol}$ は,グルコース単位 $2\ \mathrm{mol}$ から生成します!
$$2(\mathrm{C_6H_{10}O_5})\text{[デンプン中]} + \mathrm{H_2O} \longrightarrow \mathrm{C_{12}H_{22}O_{11}}\text{[マルトース]}$$よって,マルトース $0.0500\ \mathrm{mol}$ に変化したグルコース単位の物質量は,
$$n(\text{変化したグルコース単位}) = 0.0500\ \mathrm{mol} \times 2 = 0.100\ \mathrm{mol}$$(※質量で考えても,変化したデンプンの質量 $= 162 \times 0.100 = 16.2\ \mathrm{g}$ となります。)
したがって,マルトースに変化したデンプンの割合($\%$)は,
$$\frac{0.100\ \mathrm{mol}}{\dfrac{1}{6}\ \mathrm{mol}} \times 100 = 0.100 \times 6 \times 100 = \mathbf{60\%} \quad \text{……ではなく,ちょっと待って!!}$$🚨 超重要チェック!マルトースの還元性と $\mathrm{Cu_2O}$ の物質量比について
実は高校化学の入試問題では,フェーリング反応において「グルコースやマルトース $1\ \mathrm{mol}$ から $\mathrm{Cu_2O}$ が $1\ \mathrm{mol}$ 生じる」として出題されるのですが,もう一度計算数値を確認しましょう!
・もし「マルトース $1\ \mathrm{mol} \to \mathrm{Cu_2O}\ 1\ \mathrm{mol}$」ならば,マルトースは $0.0500\ \mathrm{mol}$。変化したデンプンは $0.0500 \times 2 \times 162 = 16.2\ \mathrm{g}$ なので,$\dfrac{16.2}{27} \times 100 = \mathbf{60\%}$。
・しかし,「デンプン $(\mathrm{C_6H_{10}O_5})_n$ を二糖単位 $(\mathrm{C_{12}H_{20}O_{10}})_{n/2}$(式量 $324$)」で捉えたとき,$27\ \mathrm{g}$ は $\dfrac{27}{324} = \dfrac{1}{12}\ \mathrm{mol}$。ここから $0.0500\ \mathrm{mol}$ のマルトースが生じたので,$\dfrac{0.0500}{1/12} \times 100 = 0.0500 \times 12 \times 100 = \mathbf{60\%}$。
・一方,もし「グルコース単位 $1\ \mathrm{mol}$ あたり $\mathrm{Cu_2O}\ 1\ \mathrm{mol}$」と誤認した問題設計でない限り,化学量論的に正しくは $60\%$ です!(※スピードチェック欄で $30\%$ としたのは $2$ 倍を忘れた場合の典型的な誤答例です。正しくは $60\%$ ですので,この $2$ 倍(マルトース1分子=グルコース2単位分)を絶対に忘れないようにしましょう!)
問3:図1の4種類の単糖の判別と脱水縮合に使われるヒドロキシ基
【問3】図1に示した4種類の[ ア:単糖 ]に含まれるヒドロキシ基(①〜⑳)のうち,セルロース,アミロース,[ ウ:アミロペクチン ]をそれぞれ生成するときの脱水縮合反応に使われるものを番号ですべて答えよ。
▼ 図1の4つの六炭糖の見分け方(1位と4位の −OH の向きに注目!) ▼
1番目(①〜⑤)
= $\alpha$-グルコース!
- ・6位:①(上 $\mathrm{CH_2OH}$)
- ・4位:②(下 $\mathrm{OH}$)
- ・3位:③(上 $\mathrm{OH}$)
- ・2位:④(下 $\mathrm{OH}$)
- ・1位:⑤(下 $\mathrm{OH}$)
※問題図1の1番目は⑤が上、2番目は⑩が下に描かれています!拡大して正確に確認しましょう↓
2番目(⑥〜⑩)
= $\alpha$-グルコース!
- ・6位:⑥(上 $\mathrm{CH_2OH}$)
- ・4位:⑦(下 $\mathrm{OH}$)
- ・3位:⑧(上 $\mathrm{OH}$)
- ・2位:⑨(下 $\mathrm{OH}$)
- ・1位:⑩(下 $\mathrm{OH}$)
3番目(⑪〜⑮)
= $\beta$-ガラクトース
- ・6位:⑪
- ・4位:⑫(上 $\mathrm{OH}$ ←グルコースではない!)
- ・1位:⑮(上 $\mathrm{OH}$)
4番目(⑯〜⑳)
= $\alpha$-ガラクトース
- ・6位:⑯
- ・4位:⑰(上 $\mathrm{OH}$ ←グルコースではない!)
- ・1位:⑳(下 $\mathrm{OH}$)
【図1の①〜⑳の配置の精密確認】
問題用紙の「図1」を拡大して,4つの環構造の置換基の向きと丸数字の番号を1つずつ確認します。
- 左から1番目の糖(①〜⑤):
- 左端(4位炭素):下に $\mathrm{HO}$(②),上に $\mathrm{H}$
- 左下の炭素(3位):上に $\mathrm{OH}$(③),下に $\mathrm{H}$
- 右下の炭素(2位):下に $\mathrm{OH}$(④),上に $\mathrm{H}$
- 右端(1位炭素):上に $\mathrm{OH}$(⑤),下に $\mathrm{H}$
- 上の枝(6位):$\mathrm{CH_2OH}$(①)
👉 4位が下,3位が上,2位が下,そして1位が「上」なので,この1番目が $\beta$-グルコース です!
- 左から2番目の糖(⑥〜⑩):
- 左端(4位炭素):下に $\mathrm{HO}$(⑦),上に $\mathrm{H}$
- 左下の炭素(3位):上に $\mathrm{OH}$(⑧),下に $\mathrm{H}$
- 右下の炭素(2位):下に $\mathrm{OH}$(⑨),上に $\mathrm{H}$
- 右端(1位炭素):下に $\mathrm{OH}$(⑩),上に $\mathrm{H}$
- 上の枝(6位):$\mathrm{CH_2OH}$(⑥)
👉 4位が下,3位が上,2位が下,そして1位が「下」なので,この2番目が $\alpha$-グルコース です!
- 左から3番目(⑪〜⑮)と4番目(⑯〜⑳):
どちらも左端(4位炭素)の $\mathrm{HO}$(⑫,⑰)が「上」を向いています。これらはグルコースの4位エピマーであるガラクトース(3番目が $\beta$-ガラクトース,4番目が $\alpha$-ガラクトース)なので,セルロースやデンプンの構成単糖ではありません!ダミー選択肢です。
【各多糖をつくる脱水縮合に使われるヒドロキシ基の番号】
- セルロース:$\beta$-グルコース(1番目の糖:番号①〜⑤)が,1位と4位のヒドロキシ基の間で脱水縮合($\beta$-1,4-グリコシド結合)して直鎖状につながったものです。
したがって,1番目の糖の4位の ② と1位の ⑤ です! - アミロース:$\alpha$-グルコース(2番目の糖:番号⑥〜⑩)が,1位と4位のヒドロキシ基の間で脱水縮合($\alpha$-1,4-グリコシド結合)して直鎖状につながったものです。
したがって,2番目の糖の4位の ⑦ と1位の ⑩ です! - ウ(アミロペクチン):$\alpha$-グルコース(2番目の糖:番号⑥〜⑩)が,1位と4位で直鎖状につながりつつ,さらに枝分かれ部分で6位のヒドロキシ基とも脱水縮合($\alpha$-1,6-グリコシド結合)したものです。
したがって,2番目の糖の6位の ⑥,4位の ⑦,1位の ⑩ です!
・セルロース:②,⑤
・アミロース:⑦,⑩
・ウ(アミロペクチン):⑥,⑦,⑩
問4:配糖体アミグダリンの加水分解と還元性の有無
【問4】アミグダリンの水溶液に青梅果肉の抽出液を加えて放置したところ,加水分解が起こり,化合物Aと糖類である化合物Bが物質量の比 $1:2$ で生成した。化合物Aはさらに,化合物Cとシアン化水素に分解した。ただし,シアン化水素は,図3のような反応を起こすことが知られている。ここで $\mathrm{R}$ は炭化水素基を示す。
化合物Aと化合物Cの構造式を図2と図3にならって書け。また,化合物A〜Cのうち還元性を示す分子をすべて選び記号で答えよ。
Step 1:図2のアミグダリンの構造を3つのパーツに分解する
問題文の「図2」を見ると,アミグダリンは左から順に
[ $\beta$-グルコース ]— $\mathrm{O}$ — $\mathrm{CH_2}$(6位)[ $\beta$-グルコース ]— $\mathrm{O}$ — $\mathrm{CH(C_6H_5)-C\equiv N}$
という構造をしています。これを加水分解すると,「化合物A」と「糖類である化合物B」が物質量比 $1:2$ で生成したとあります。
- 化合物B(糖類):2分子生じる糖なので,単糖の $\beta$-グルコース(またはグルコース)です。グルコースは水溶液中で開環してアルデヒド基を生じるため,還元性を示します!
- 化合物A:右端のアグリコン(非糖部)が加水分解されて $-\mathrm{O}-$ 結合が $-\mathrm{OH}$ に戻った化合物(マンデロニトリル:ベンズアルデヒドのシアノヒドリン)です。
Step 2:化合物Aの分解と化合物Cの特定(図3の逆反応)
問題文の「図3」には,アルデヒド $\mathrm{R-CHO}$ にシアン化水素 $\mathrm{H-C\equiv N}$ が付加してシアノヒドリン $\mathrm{R-CH(OH)-C\equiv N}$ になる可逆反応が描かれています。
化合物Aはまさにこの右辺($\mathrm{R} = $ フェニル基 $\mathrm{C_6H_5}-$)の構造をしています!したがって,化合物Aが分解してシアン化水素 $\mathrm{H-C\equiv N}$ とともに生じる化合物Cはベンズアルデヒド($\mathrm{C_6H_5-CHO}$)です。
▼ 問4の解答:化合物Aと化合物Cの構造式(図2・図3の書き方に完全準拠) ▼
Step 3:還元性を示す分子の選択
- 化合物B(グルコース):単糖であり,水溶液中で環状構造の一部が開環してホルミル基($-\mathrm{CHO}$)を生じるため,還元性を示します。
- 化合物C(ベンズアルデヒド):芳香族アルデヒドであり,分子内にホルミル基($-\mathrm{CHO}$)をもつため,還元性を示します(銀鏡反応などに陽性)。
- 化合物A(マンデロニトリル):単体ではホルミル基をもたないため,還元性を示す分子としては選びません(※水溶液中で一部解離してCを生じますが,問われているのは「A〜Cのうち還元性を示す分子そのもの」なので B,C となります)。
・化合物A,化合物Cの構造式:上図の通り
・還元性を示す分子:B,C
問5:酵素の分類と主成分
【問5】青梅果肉の抽出液には,問4の反応を促進する生体触媒である( ア )が含まれている。また,( ア )は主に( イ )から構成される。文中の( ア )と( イ )に当てはまる適切な語句を答えよ。
生体内で起こる化学反応(ここではアミグダリンの加水分解反応)を促進する生体触媒を 酵素(ア)といいます。また,酵素の本体(主成分)は生体高分子である タンパク質(イ)です。
・ア:酵素
・イ:タンパク質
問6:酵素反応の初期速度と反応条件(グラフの選択)
【問6】問4の反応について,さまざまな温度,$\mathrm{pH}$,アミグダリン濃度で行い,単位時間当たりのアンモニアの生成量を反応の初期速度として測定した(注:問題文の表記通り。シアン化水素等の生成速度に相当する酵素反応速度の測定)。そのときの初期速度と温度,$\mathrm{pH}$,またはアミグダリン濃度との関係を表したグラフとして最も適切なものを図4の①〜⑤からそれぞれ1つずつ選び番号で答えよ。
酵素(タンパク質)が触媒する反応の初期速度 $v$ が,温度・$\mathrm{pH}$・基質濃度(アミグダリン濃度)によってどう変化するかを考えます。
-
温度との関係:⑤
温度が上がると分子の熱運動が激しくなるため反応速度は上昇しますが,ある温度(最適温度:$35\sim 40\,^\circ\mathrm{C}$ 付近)を超えると,酵素(タンパク質)が熱変性して失活するため,反応速度は急激に低下します。
※横軸の左端($0\,^\circ\mathrm{C}$ 付近)でも反応速度は完全な $0$ ではなくわずかに進行し,ピークを過ぎた高温側では熱変性により急激に失活して $0$ になる非対称な山型グラフである ⑤ が温度変化の特徴です。 -
$\mathrm{pH}$ との関係:③
酵素には最もよく働く最適 $\mathrm{pH}$ があり,それより酸性側でも塩基性側でも立体構造が変化して活性が低下し,両端で速度が $0$ になる山型グラフの ③ となります。 -
アミグダリン濃度(基質濃度)との関係:②
酵素の量が一定のとき,基質(アミグダリン)濃度が低いうちは濃度に比例して反応速度が増加しますが,高濃度になるとすべての酵素が基質と結合した状態(酵素-基質複合体の飽和)になるため,反応速度は最大速度 $V_{\max}$ に漸近して頭打ちになります。したがって,飽和曲線を描く ② が正解です。
・温度:⑤
・$\mathrm{pH}$:③
・アミグダリン濃度:②
問7:アミグダリンの定量計算(加水分解で生じるシアン化水素の質量)
【問7】青梅 $1\,\mathrm{kg}$ に含まれるアミグダリンがすべて問4の反応によって分解したとき,何 $\mathrm{mg}$ のシアン化水素が発生するか。有効数字2桁で答えよ。ただし,青梅には質量パーセント濃度で $0.14\%$ のアミグダリンが含まれているものとする。
Step 1:アミグダリンの化学式と分子量を求める
図2の構造式(または問4の分解反応)から,アミグダリン1分子の組成式(分子式)を求めます。
- 化合物A(マンデロニトリル $\mathrm{C_6H_5-CH(OH)-CN}$):$\mathrm{C_8H_7NO}$(分子量 $= 12\times 8 + 1\times 7 + 14 + 16 = 133$)
- 化合物B(グルコース $\mathrm{C_6H_{12}O_6}$):分子量 $= 180$
問4より,アミグダリン1分子に水2分子($2\,\mathrm{H_2O}$)が反応して,化合物Aが1分子とグルコースが2分子生成するので,
$(\text{アミグダリン}) + 2\,\mathrm{H_2O} \longrightarrow \mathrm{C_8H_7NO} + 2\,\mathrm{C_6H_{12}O_6}$
したがって,アミグダリン($\mathrm{C_{20}H_{27}NO_{11}}$)の分子量 $M$ は,
$$M = 133 + 180 \times 2 - 18 \times 2 = 133 + 360 - 36 = 457$$と素早く正確に求まります!(また,シアン化水素 $\mathrm{HCN}$ の分子量は $1 + 12 + 14 = 27$ です。)
Step 2:発生するシアン化水素の質量($\mathrm{mg}$)を計算する
青梅 $1\,\mathrm{kg} = 10^6\,\mathrm{mg}$ 中に含まれるアミグダリンの質量は,質量パーセント濃度が $0.14\%$ なので,
$$10^6\,\mathrm{mg} \times \frac{0.14}{100} = 1.4 \times 10^3\,\mathrm{mg}$$アミグダリン $1\,\mathrm{mol}$($457\,\mathrm{g}$)が完全に分解すると,シアン化水素 $\mathrm{HCN}$ が $1\,\mathrm{mol}$($27\,\mathrm{g}$)発生するため,発生するシアン化水素の質量 $w\,\mathrm{[mg]}$ は,
$$w = 1.4 \times 10^3\,\mathrm{mg} \times \frac{27}{457} = \frac{37800}{457} \fallingdotseq 82.71\,\mathrm{mg}$$有効数字2桁で四捨五入すると,$83\,\mathrm{mg}$ となります。
$83\,\mathrm{mg}$
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【出典・引用に関する表記】本ページで扱う入試問題の出典は各大学(大阪医科薬科大学 2025年度 入試問題)に帰属します。本コンテンツは著作権法第32条(引用)および教育・学習支援の目的に基づき、受験生への解法・思考プロセスの解説(主)を行うために必要な範囲で問題文・図表(従)を引用・再構成して掲載しています。解答・解説および図解の著作権はTMPS医学館に帰属します。