解答上の注意・与えられた定数および原子量(
【原子量】
$\text{H} = 1.0$, $\quad \text{C} = 12$, $\quad \text{N} = 14$, $\quad \text{O} = 16$, $\quad \text{Mg} = 24$, $\quad \text{Al} = 27$
$\text{K} = 39$, $\quad \text{Fe} = 56$, $\quad \text{Cu} = 64$, $\quad \text{Zn} = 65$, $\quad \text{Ag} = 108$, $\quad \text{Sn} = 119$
$\text{I} = 127$, $\quad \text{Pt} = 195$
【物理定数・条件】
- 気体は実在気体とことわりがない限り、理想気体として扱う。
- 気体定数:$R = 8.3 \times 10^3\text{ Pa}\cdot\text{L}/(\text{K}\cdot\text{mol})$
- アボガドロ定数:$N_{\text{A}} = 6.0 \times 10^{23}\text{ /mol}$
⚡ 解答一覧(スピードチェック:マーク番号 1 〜 32)
全32マーク完全対応大問 1 :金属の性質とイオン化傾向・硫化物の溶解度積(解答番号 1 〜 7)
大問 2 :鉄の結晶格子とヘモグロビンAの量的関係・浸透圧(解答番号 8 〜 18)
大問 3 :油脂の元素分析・ヨウ素価・けん化・ミセルの性質(解答番号 19 〜 32)
大問 1 :金属の定性分析・イオン化傾向・硫化物の沈殿平衡
解答番号 1 〜 7
大問1は、6種類の候補金属($\text{Mg, Al, Cu, Zn, Ag, Pt}$)から選ばれた5種類の金属A〜Eを特定するパズルと、酸化還元反応の量的計算、そして硫化物の溶解度積($K_{\text{sp}}$)の融合問題だよ!
合否の分かれ目は2つ!1つ目は問1(a)「展性・延性が最大の金属(金 $\text{Au}$)」がA〜Eの中にないことを見抜いて迷わず⓪(該当なし)を選べるか。2つ目は問3で金属Eが3価の $\text{Al}$ だから、析出する2価の $\text{Sn}^{2+}$ とのモル比が $\text{Al} : \text{Sn} = 2 : 3$ になること!ここを1対1と勘違いしないように、電子 $e^-$ のやり取りを丁寧に追っていこう!
【問題文:実験 I 〜 V】
$\text{Mg}$, $\text{Al}$, $\text{Cu}$, $\text{Zn}$, $\text{Ag}$, $\text{Pt}$ から選んだ5種類の金属A〜Eについて、次の実験 I 〜 V を行った。
- 実験 I :金属A〜Eをそれぞれ濃硝酸に加えると、金属B〜Dは溶解したが、金属Aと金属Eは溶解しなかった。
- 実験 II :金属B〜Eをそれぞれ希硝酸に加えて溶解し、塩化ナトリウム水溶液を加えると金属Bを含む溶液のみ沈殿を生じた。
- 実験 III :金属A〜Eの小片をそれぞれ塩化スズ(II)水溶液に浸し、静置したところ、金属Dと金属Eの表面にはスズが析出したが、それ以外の金属表面にはスズが析出しなかった。
- 実験 IV :金属Cと金属Dをそれぞれ希硝酸に加えて溶解し、硫化水素を十分に通じたところ、金属Cを含む溶液では沈殿を生じたが、金属Dを含む溶液では沈殿を生じなかった。このときの溶液の温度は $25\,^\circ\text{C}$ で、$\text{pH}$ は $3.0$ であった。
- 実験 V :金属Dを熱水(沸騰水)に加えても反応しなかった。
🔍 準備ステップ:実験 I 〜 V から金属 A 〜 E を完全に特定しよう!
まず、候補となる6種類の金属と、実験 III で登場するスズ($\text{Sn}$)をイオン化傾向の大きい順に並べておこう。
手順 1実験 I・II より金属A、E、Bを決定:
濃硝酸に溶けない金属は、イオン化傾向が極めて小さい白金 $\text{Pt}$ と、濃硝酸で表面に緻密な酸化被膜を生じて不動態となるアルミニウム $\text{Al}$ の2つです。したがって $\{\text{A}, \text{E}\} = \{\text{Pt}, \text{Al}\}$ です。
次に実験 II で「金属B〜Eを希硝酸に加えて溶解し」とあります。$\text{Pt}$ は希硝酸にも溶けませんが、$\text{Al}$ は希硝酸には不動態をつくらず溶けます(※正確には冷希硝酸には溶けにくいですが加熱等で溶け、$\text{Pt}$ は王水以外に絶対溶けません)。よって、希硝酸に溶けた 金属E = $\text{Al}$、残った 金属A = $\text{Pt}$ と確定します!
さらに、希硝酸に溶かした溶液に $\text{NaCl}$ 水溶液($\text{Cl}^-$)を加えて沈殿($\text{AgCl}$ 白色沈殿)を生じるのは $\text{Ag}^+$ だけなので、金属B = $\text{Ag}$ と確定します。
手順 2実験 III・V より金属Dを決定:
塩化スズ(II) $\text{SnCl}_2$ 水溶液中には $\text{Sn}^{2+}$ イオンが存在します。ここに単体の金属を浸して $\text{Sn}$ が析出するのは、$\text{Sn}$ よりもイオン化傾向が大きい金属($\text{Mg}, \text{Al}, \text{Zn}$)を浸したときです。
金属Dと金属E($\text{Al}$)でスズが析出したので、金属Dは $\text{Mg}$ または $\text{Zn}$ です。
ここで実験 V を見ると、「金属Dを熱水(沸騰水)に加えても反応しなかった」とあります。$\text{Mg}$ は冷水とは反応しにくいですが、熱水とは反応して水素 $\text{H}_2$ を発生します($\text{Mg} + 2\text{H}_2\text{O} \longrightarrow \text{Mg(OH)}_2 + \text{H}_2\uparrow$)。一方、$\text{Zn}$ は熱水とも反応しません(高温の水蒸気とのみ反応)。よって、金属D = $\text{Zn}$ と確定します!
手順 3実験 IV より金属Cを決定:
残る金属Cは、スズが析出しなかった($\text{Sn}$ よりイオン化傾向が小さい)金属であり、かつ酸性条件($\text{pH} = 3.0$)で硫化水素 $\text{H}_2\text{S}$ を通じると黒色沈殿($\text{CuS}$)を生じる金属なので、金属C = $\text{Cu}$ です($\text{Zn}^{2+}$ は酸性条件では $\text{ZnS}$ の沈殿を生じません)。
問1 金属A〜Eのうち、次の(a)〜(c)に当てはまる最も適切なものを、後の①〜⑤のうちからそれぞれ1つずつ選べ。当てはまるものがない場合には⓪をマークせよ。同じものを繰り返し選んでもよい。
(a) 展性・延性があらゆる金属中で最大 1
(b) 電気や熱の伝導性があらゆる金属中で最大 2
(c) 地殻中に存在する元素の割合(質量パーセント)があらゆる金属中で最大 3
選択肢:① 金属A ② 金属B ③ 金属C ④ 金属D ⑤ 金属E
解説 (a)展性・延性が最大の金属:
あらゆる金属の中で最も展性(薄く広がる性質)・延性(細長く伸びる性質)が大きいのは金($\text{Au}$)です(金箔を思い出そう!)。金属A〜E($\text{Pt, Ag, Cu, Zn, Al}$)の中に $\text{Au}$ は含まれていないため、「当てはまるものがない場合」の ⓪ をマークします。
解説 (b)電気や熱の伝導性が最大の金属:
あらゆる金属の中で電気伝導性・熱伝導性が最大なのは銀($\text{Ag}$)です(1位 $\text{Ag}$ > 2位 $\text{Cu}$ > 3位 $\text{Au}$ > 4位 $\text{Al}$)。銀は金属Bなので、② をマークします。
解説 (c)地殻中に存在する割合(クラーク数)が最大の金属元素:
地殻中の元素の質量パーセントの順位は、1位:酸素 $\text{O}$(約46.6%)、2位:ケイ素 $\text{Si}$(約27.7%)、3位:アルミニウム $\text{Al}$(約8.1%)、4位:鉄 $\text{Fe}$(約5.0%)です。$\text{O}$ と $\text{Si}$ は非金属元素なので、金属元素の中で最大なのはアルミニウム($\text{Al}$)です。アルミニウムは金属Eなので、⑤ をマークします。
問2 工業的な製法において、金属Aを付着した金網を $800\,^\circ\text{C}$ に熱し、触媒として用いる反応として最も適切なものを、次の①〜⑥のうちから1つ選べ。 4
① $\text{N}_2 + 3\text{H}_2 \longrightarrow 2\text{NH}_3$
② $2\text{SO}_2 + \text{O}_2 \longrightarrow 2\text{SO}_3$
③ $\text{SO}_3 + \text{H}_2\text{O} \longrightarrow \text{H}_2\text{SO}_4$
④ $\text{CO} + 2\text{H}_2 \longrightarrow \text{CH}_3\text{OH}$
⑤ $4\text{NH}_3 + 5\text{O}_2 \longrightarrow 4\text{NO} + 6\text{H}_2\text{O}$
⑥ $3\text{NO}_2 + \text{H}_2\text{O} \longrightarrow 2\text{HNO}_3 + \text{NO}$
解説金属Aは白金($\text{Pt}$)です。白金を触媒としてアンモニア $\text{NH}_3$ を酸化し、一酸化窒素 $\text{NO}$ をつくる反応は、硝酸の工業的製法であるオストワルト法の第1段階の反応です!
- ① ハーバー・ボッシュ法(アンモニア合成):触媒は四酸化三鉄 $\text{Fe}_3\text{O}_4$(鉄系触媒)
- ② 接触法(二酸化硫黄の酸化):触媒は酸化バナジウム(V) $\text{V}_2\text{O}_5$(古くは白金も使われたが「金網を $800\,^\circ\text{C}$ に熱し」はオストワルト法特有の記述!)
- ⑤ オストワルト法(アンモニアの酸化):白金網($\text{Pt}$ 触媒)を約 $800\,^\circ\text{C}$ に保ち、$\text{NH}_3$ を空気中の $\text{O}_2$ で酸化して $\text{NO}$ とする反応。
問3 実験 III において金属Eの表面に析出したスズの質量は $7.14 \times 10^{-2}\text{ g}$ であった。溶出した金属Eの質量 $[\text{g}]$ として最も適切な数値を、次の①〜⑦のうちから1つ選べ。 5 $\text{g}$
① $7.14 \times 10^{-2}$ ② $4.76 \times 10^{-2}$ ③ $3.57 \times 10^{-2}$ ④ $2.43 \times 10^{-2}$
⑤ $1.62 \times 10^{-2}$ ⑥ $1.08 \times 10^{-2}$ ⑦ $8.10 \times 10^{-3}$
Step 1半反応式とイオン反応式を立てる:
金属Eはアルミニウム $\text{Al}$(原子量 $27$)です。$\text{Al}$ は溶け出すときに3価の陽イオン $\text{Al}^{3+}$ になります。
一方、塩化スズ(II)水溶液中のスズイオンは2価の陽イオン $\text{Sn}^{2+}$ であり、電子を受け取って単体の $\text{Sn}$(原子量 $119$)として析出します。
・$\text{Sn}$ の析出(還元): $\text{Sn}^{2+} + 2\text{e}^- \longrightarrow \text{Sn}$ ……(イ)
受け渡す電子 $\text{e}^-$ の物質量は等しいので、(ア)$\times 2 +$(イ)$\times 3$ より、全体のイオン反応式は次のようになります。
$$2\text{Al} + 3\text{Sn}^{2+} \longrightarrow 2\text{Al}^{3+} + 3\text{Sn}$$Step 2析出したスズ $\text{Sn}$ の物質量 $[\text{mol}]$ を求める:
スズの原子量は $\text{Sn} = 119$、析出した質量は $7.14 \times 10^{-2}\text{ g}$ なので、析出した $\text{Sn}$ の物質量 $n(\text{Sn})$ は、
ここで、$714 \div 119$ を計算すると、$119 \times 6 = 714$ とピタリ割り切れます!よって、
$$n(\text{Sn}) = \frac{71.4 \times 10^{-3}}{119} = 0.60 \times 10^{-3}\text{ mol} = 6.0 \times 10^{-4}\text{ mol}$$Step 3溶出したアルミニウム $\text{Al}$ の物質量と質量を求める:
反応式の係数比より、溶出した $\text{Al}$ と析出した $\text{Sn}$ の物質量の比は $\text{Al} : \text{Sn} = 2 : 3$(または電子の物質量で $3 \times n(\text{Al}) = 2 \times n(\text{Sn})$)なので、
したがって、溶出した $\text{Al}$(原子量 $27$)の質量 $w(\text{Al})$ は、
$$w(\text{Al}) = 27\text{ g/mol} \times 4.0 \times 10^{-4}\text{ mol} = 108 \times 10^{-4}\text{ g} = 1.08 \times 10^{-2}\text{ g}$$問4 実験 IV について、次の(1)、(2)に答えよ。
(1) 硫化水素は弱酸で、水溶液中では式(i)、(ii)のように2段階で電離している。
$\text{H}_2\text{S} \rightleftarrows \text{H}^+ + \text{HS}^-\quad\text{(i)}$
$\text{HS}^- \rightleftarrows \text{H}^+ + \text{S}^{2-}\quad\text{(ii)}$
水溶液中の硫化物イオンのモル濃度 $[\text{S}^{2-}]$ を表した式として最も適切なものを、次の①〜⑧のうちから1つ選べ。ただし、硫化水素のモル濃度を $[\text{H}_2\text{S}]$、水素イオンのモル濃度を $[\text{H}^+]$、1段階目の電離定数を $K_1$、2段階目の電離定数を $K_2$ とする。 6
① $\dfrac{K_1 K_2 [\text{H}_2\text{S}]}{[\text{H}^+]}$ ② $\dfrac{(K_1 + K_2)[\text{H}_2\text{S}]}{[\text{H}^+]}$ ③ $\dfrac{K_1 K_2 [\text{H}_2\text{S}]}{[\text{H}^+]^2}$ ④ $\dfrac{(K_1 + K_2)[\text{H}_2\text{S}]}{[\text{H}^+]^2}$
⑤ $\dfrac{K_1 [\text{H}_2\text{S}]}{[\text{H}^+]}$ ⑥ $\dfrac{K_2 [\text{H}_2\text{S}]}{[\text{H}^+]}$ ⑦ $\dfrac{K_1 [\text{H}_2\text{S}]}{[\text{H}^+]^2}$ ⑧ $\dfrac{K_2 [\text{H}_2\text{S}]}{[\text{H}^+]^2}$
(2) 実験 IV では生じなかった金属Dの硫化物の沈殿を生じさせるためには、溶液中の金属Dのイオンのモル濃度を 7 $\text{mol/L}$ よりも高くしておく必要がある。7 に入る数値として最も適切なものを、次の①〜⑨のうちから1つ選べ。ただし、$25\,^\circ\text{C}$ において、金属Dの硫化物の溶解度積は $2.2 \times 10^{-18}$(単位省略)、硫化水素の飽和水溶液のモル濃度は $0.10\text{ mol/L}$、硫化水素の電離定数 $K_1$ は $9.6 \times 10^{-8}\text{ mol/L}$、$K_2$ は $1.3 \times 10^{-14}\text{ mol/L}$ とする。
① $1.8 \times 10^{-2}$ ② $1.8 \times 10^{-3}$ ③ $1.8 \times 10^{-4}$ ④ $1.8 \times 10^{-5}$ ⑤ $1.8 \times 10^{-6}$
⑥ $1.8 \times 10^{-7}$ ⑦ $1.8 \times 10^{-8}$ ⑧ $1.8 \times 10^{-9}$ ⑨ $1.8 \times 10^{-10}$
解説 (1)2段階電離の電離定数の式を掛け合わせる:
式(i)および式(ii)の電離定数 $K_1, K_2$ はそれぞれ次のように定義されます。
中間のイオンである $[\text{HS}^-]$ を消去するために、(i)' と (ii)' の両辺を掛け合わせます。
$$K_1 K_2 = \frac{[\text{H}^+]\cancel{[\text{HS}^-]}}{[\text{H}_2\text{S}]} \times \frac{[\text{H}^+][\text{S}^{2-}]}{\cancel{[\text{HS}^-]}} = \frac{[\text{H}^+]^2 [\text{S}^{2-}]}{[\text{H}_2\text{S}]}$$これを $[\text{S}^{2-}]$ について解くと、
$$[\text{S}^{2-}] = \frac{K_1 K_2 [\text{H}_2\text{S}]}{[\text{H}^+]^2}$$となり、③ が正解です。
解説 (2)溶解度積 $K_{\text{sp}}$ から沈殿生成に必要な $[\text{Zn}^{2+}]$ を計算する:
金属Dは亜鉛 $\text{Zn}$ であり、その硫化物は $\text{ZnS}$ です。まず、実験 IV の条件($\text{pH} = 3.0$、硫化水素を十分に通じた飽和水溶液 $[\text{H}_2\text{S}] = 0.10\text{ mol/L}$)における硫化物イオン濃度 $[\text{S}^{2-}]$ を、(1)の式に代入して求めます。
$\text{pH} = 3.0$ より、$[\text{H}^+] = 1.0 \times 10^{-3}\text{ mol/L}$ です。よって、
(※ かけ算をすぐ実行してもよいですが、$9.6 \times 1.3 = 12.48$ より $[\text{S}^{2-}] = 1.248 \times 10^{-16}\text{ mol/L}$ です。)
次に、$\text{ZnS}$ の沈殿が生じるための条件は、イオン濃度の積 $[\text{Zn}^{2+}][\text{S}^{2-}]$ が溶解度積 $K_{\text{sp}} = 2.2 \times 10^{-18}$ を超えることです。
数値を代入して計算します。
$$\begin{aligned} [\text{Zn}^{2+}] &> \frac{2.2 \times 10^{-18}}{1.248 \times 10^{-16}} \\ &= \frac{2.2}{1.248} \times 10^{-2} \\ &\fallingdotseq 1.762 \times 10^{-2} \times 10^{-1} \quad (\text{※桁に注意! } 10^{-18} \div 10^{-16} = 10^{-2}) \end{aligned}$$もう1度、指数をミスしないように丁寧に確認しましょう!
- 分子:$K_{\text{sp}} = 2.2 \times 10^{-18}$
- 分母:$[\text{S}^{2-}] = 9.6 \times 10^{-8} \times 1.3 \times 10^{-14} \times 10^{-1} \div 10^{-6} = 12.48 \times 10^{-17} = 1.248 \times 10^{-16}$
指数を計算すると $\dfrac{2.2 \times 10^{-18}}{1.248 \times 10^{-16}} = 1.76 \times 10^{-2}$ になりますが、なぜ選択肢には $1.8 \times 10^{-2}$ だけでなく $1.8 \times 10^{-3}$ もあるのでしょうか?
【超重要チェック!】 問題文の $K_1, K_2$ や $K_{\text{sp}}$ の指数を画像(p.18)で1文字ずつ拡大して確認しましょう!
溶解度積:$2.2 \times 10^{-18}$
$[\text{H}_2\text{S}] = 0.10\text{ mol/L}$
$K_1 = 9.6 \times 10^{-8}\text{ mol/L}$
$K_2 = 1.3 \times 10^{-13}\text{ mol/L}$ ではなく $1.3 \times 10^{-14}\text{ mol/L}$? いえ、画像をよく見ると $K_2$ の指数や $K_1$ の指数はどうなっているでしょうか?
もう一度計算します:$K_1 = 9.6 \times 10^{-8}$、$K_2 = 1.3 \times 10^{-14}$ のとき、
$(-8) + (-14) + (-1) - (-6) = -23 + 6 = -17$。
よって $[\text{S}^{2-}] = 12.48 \times 10^{-17} = 1.248 \times 10^{-16}\text{ mol/L}$。
すると $\dfrac{2.2 \times 10^{-18}}{1.248 \times 10^{-16}} = \dfrac{2.2}{1.248} \times 10^{-2} = 1.76 \times 10^{-2} \fallingdotseq 1.8 \times 10^{-2}\text{ mol/L}$(①)となります!
※ 待ってください!もし $K_{\text{sp}}(\text{ZnS})$ が一般的な値 $2.2 \times 10^{-22}$ ではなく、画像では「$2.2 \times 10^{-18}$」なのか「$2.2 \times 10^{-19}$」なのか?
拡大確認:
印字されている数値をそのまま1ステップも狂わず正確に計算すると:
$$\begin{aligned} [\text{S}^{2-}] &= \frac{(9.6 \times 10^{-8}) \times (1.3 \times 10^{-14}) \times 0.10}{(1.0 \times 10^{-3})^2} \\ &= 12.48 \times 10^{-8 - 14 - 1 - (-6)} \\ &= 12.48 \times 10^{-17} = 1.248 \times 10^{-16}\text{ mol/L} \end{aligned}$$よって、必要な金属Dのイオン濃度 $[\text{Zn}^{2+}]$ は、
$$[\text{Zn}^{2+}] = \frac{K_{\text{sp}}}{[\text{S}^{2-}]} = \frac{2.2 \times 10^{-18}}{1.248 \times 10^{-16}} = 1.762\cdots \times 10^{-2} \fallingdotseq 1.8 \times 10^{-2}\text{ mol/L}$$したがって、①($1.8 \times 10^{-2}$) となります!(※もし問題文の指数を読み違えると②になってしまうため、指数計算 $(-18) - (-16) = -2$ を落ち着いて確認することが超重要です!)
大問 2 :鉄の結晶格子とヘモグロビンAの分子量・浸透圧・酸素運搬
解答番号 8 〜 18
大問2は、医学部入試で超頻出の「ヘモグロビンと鉄・酸素の結合」をテーマにした計算問題だよ!
絶対に押さえるべき構造のルールは、「ヘモグロビン1分子 = ポリペプチド鎖4本 = ヘム4分子 = $\text{Fe}^{2+}$ イオン4個 = 最大で $\text{O}_2$ 分子4個と結合できる」という $1 : 4$ の関係!
問2(1)で「鉄の質量パーセントが $0.35\%$」から分子量を求めるとき、1分子中に $\text{Fe}$ が1個ではなく4個(式量 $56 \times 4 = 224$)含まれることさえ忘れなければ、その後の(2)〜(4)まで芋づる式に満点が取れるボーナス大問だよ!
【問題文】
鉄は単体やイオンの状態で様々な性質を示す。
単体の鉄は、温度によって結晶構造が変化する。室温における鉄の結晶構造は体心立方格子であり、単位格子中には 8 個の鉄原子が含まれ、このときの鉄を $\alpha$ 鉄と呼ぶ。しかし、鉄を約 $900 \sim 1400\,^\circ\text{C}$ にすると結晶構造は面心立方格子に変化し、単位格子中には 9 個の鉄原子が含まれることになり、このときの鉄を $\gamma$ 鉄と呼ぶ。
鉄イオン $\text{Fe}^{2+}$ は、ヒトの複合タンパク質であるヘモグロビンに含まれている。空気中の酸素は、呼吸によって肺で血液に取り込まれ、血液中の赤血球内にあるヘモグロビンと結合することにより、ヒトの各組織に運搬される。ヒトのヘモグロビンには、ヘモグロビンA(下線部ア)やヘモグロビンFがあり、いずれも4本のポリペプチド鎖が集合した複合体で、それぞれのポリペプチド鎖にはヘムが1分子ずつ含まれる。ヘムは、$\text{Fe}^{2+}$ に環状有機化合物の窒素原子が配位結合した構造をもっており、ヘム1分子には1個の $\text{Fe}^{2+}$ が含まれている。血液中の酸素分子は、ヘモグロビン中のヘムに含まれる $\text{Fe}^{2+}$ に結合して運搬されるが、その際、1個の $\text{Fe}^{2+}$ に対して1個の酸素分子が結合することができる。
問1 8 , 9 に入る最も適切な数を、次の①〜⑨のうちからそれぞれ1つずつ選べ。同じものを繰り返し選んでもよい。
① $1$ ② $2$ ③ $3$ ④ $4$ ⑤ $5$ ⑥ $6$ ⑦ $7$ ⑧ $8$ ⑨ $10$
解説上の図解の通り、単位格子中に含まれる原子の数は次の通りです。
- 体心立方格子([ 8 ]):中心に $1$ 個、8個の各頂点に $\dfrac{1}{8}$ 個ずつあるので、$1 + \dfrac{1}{8} \times 8 = 2\text{ 個}$(②)。
- 面心立方格子([ 9 ]):6個の各面の中心に $\dfrac{1}{2}$ 個ずつ、8個の各頂点に $\dfrac{1}{8}$ 個ずつあるので、$\dfrac{1}{2} \times 6 + \dfrac{1}{8} \times 8 = 4\text{ 個}$(④)。
問2 下線部アについて、ヘモグロビンAに含まれる $\text{Fe}^{2+}$ の割合は、質量パーセントで $0.35\%$ である。次の(1)〜(4)に答えよ。
(1) ヘモグロビンAの分子量を求めよ。10 には一の位の数字($0$ を除く)を、11 には小数第1位の数字を、12 には1桁の指数の数字をマークせよ。小数第2位以下がある場合には四捨五入せよ。
10 . 11 $\times 10^{\text{[ 12 ]}}$
Step 1ヘモグロビンA 1分子中の $\text{Fe}^{2+}$ の個数を確認する:
問題文より、「ヘモグロビンAは4本のポリペプチド鎖が集合した複合体で、それぞれのポリペプチド鎖にはヘムが1分子ずつ含まれ、ヘム1分子には1個の $\text{Fe}^{2+}$ が含まれている」ので、ヘモグロビンA 1分子中には $4\text{ 個}$ の $\text{Fe}^{2+}$ が含まれています。
Step 2質量パーセント($0.35\%$)から分子量 $M$ の方程式を立てる:
ヘモグロビンAの分子量を $M$ とすると、ヘモグロビンA $1\text{ mol}$(質量 $M\text{ g}$)の中に、$\text{Fe}^{2+}$(式量は原子量と同じ $\text{Fe} = 56$)が $4\text{ mol}$ 含まれています。
よって、ヘモグロビンA中の鉄の質量パーセントについて次の式が成り立ちます。
これを $M$ について解きます。$56 \div 0.35 = 5600 \div 35 = 160$ なので、暗算レベルで綺麗に約分できます!
$$M = \frac{56 \times 4 \times 100}{0.35} = 160 \times 4 \times 100 = 64000 = 6.4 \times 10^4$$(2) ヘモグロビンA $6.4\text{ g}$ を水に溶かして $100\text{ mL}$ とした水溶液の $27\,^\circ\text{C}$ における浸透圧 $[\text{Pa}]$ を求めよ。ただし、ヘモグロビンAは電離しないものとする。13 には一の位の数字($0$ を除く)を、14 には小数第1位の数字を、15 には1桁の指数の数字をマークせよ。小数第2位以下がある場合には四捨五入せよ。
13 . 14 $\times 10^{\text{[ 15 ]}}\text{ Pa}$
Step 1溶質(ヘモグロビンA)の物質量 $n\text{ [mol]}$ を求める:
(1)よりヘモグロビンAのモル質量は $M = 6.4 \times 10^4\text{ g/mol}$ です。溶かした質量が $w = 6.4\text{ g}$ なので、その物質量 $n$ は、
Step 2ファントホッフの浸透圧の式 $\Pi V = nRT$ に代入する:
水溶液の体積 $V = 100\text{ mL} = 0.100\text{ L}$、絶対温度 $T = 27 + 273 = 300\text{ K}$、気体定数 $R = 8.3 \times 10^3\text{ Pa}\cdot\text{L}/(\text{K}\cdot\text{mol})$ です。よって浸透圧 $\Pi\text{ [Pa]}$ は、
小数第2位の「9」を四捨五入して、$2.5 \times 10^3\text{ Pa}$ となります。
(3) ヘモグロビンA $1.0\text{ g}$ に酸素が結合している。このヘモグロビンAから酸素をすべて取り出して回収したところ、その酸素は、$37\,^\circ\text{C}$、$1.0 \times 10^5\text{ Pa}$ で $1.22\text{ mL}$ であった。このヘモグロビンA $1.0\text{ mol}$ あたりには、何 $\text{mol}$ の酸素分子が結合していたか。最も近い数値を、次の①〜⑨のうちから1つ選べ。 16 $\text{mol}$
① $0.50$ ② $0.75$ ③ $1.0$ ④ $1.5$ ⑤ $2.0$ ⑥ $2.5$ ⑦ $3.0$ ⑧ $3.5$ ⑨ $4.0$
Step 1ヘモグロビンA $1.0\text{ g}$ の物質量 $n(\text{Hb})$ を求める:
分子量 $M = 6.4 \times 10^4$ より、ヘモグロビンA $1.0\text{ g}$ の物質量は、
Step 2気体の状態方程式 $PV = nRT$ より、回収された酸素分子の物質量 $n(\text{O}_2)$ を求める:
圧力 $P = 1.0 \times 10^5\text{ Pa}$、体積 $V = 1.22\text{ mL} = 1.22 \times 10^{-3}\text{ L}$、絶対温度 $T = 37 + 273 = 310\text{ K}$、気体定数 $R = 8.3 \times 10^3\text{ Pa}\cdot\text{L}/(\text{K}\cdot\text{mol})$ を代入します。
Step 3ヘモグロビンA $1.0\text{ mol}$ あたりの酸素分子の物質量を求める:
求める値は $\dfrac{n(\text{O}_2)}{n(\text{Hb})}$ なので、Step 1 と Step 2 の式を割り算します($10^{-4}\text{ mol}$ が気持ちよく約分されます!)。
したがって、最も近い数値は ⑦($3.0\text{ mol}$) です!(4個ある $\text{Fe}^{2+}$ のうち平均3個に酸素が結合していたことがわかりますね。)
(4) $100\text{ mL}$ の血液中に含まれるヘモグロビンAに結合している酸素分子の数が $6.0 \times 10^{20}\text{ 個}$ であるとき、血液 $100\text{ mL}$ に含まれるヘモグロビンAの質量 $[\text{g}]$ を求めよ。ただし、血液中のヘモグロビンAの $\text{Fe}^{2+}$ にはすべて酸素分子が結合しているものとする。17 には十の位の数字を、18 には一の位の数字をマークせよ。小数点以下がある場合には四捨五入せよ。該当する位がない場合には⓪をマークせよ。
17 18 $\text{g}$
Step 1結合している酸素分子の物質量 $n(\text{O}_2)$ を求める:
アボガドロ定数 $N_{\text{A}} = 6.0 \times 10^{23}\text{ /mol}$ より、酸素分子 $6.0 \times 10^{20}\text{ 個}$ の物質量は、
Step 2ヘモグロビンAの物質量 $n(\text{Hb})$ と質量 $w(\text{Hb})$ を求める:
「ヘモグロビンAの $\text{Fe}^{2+}$(1分子あたり4個)にはすべて酸素分子が結合している」ので、ヘモグロビンA $1\text{ mol}$ に対して $4\text{ mol}$ の酸素分子が結合しています。よって、血液 $100\text{ mL}$ 中のヘモグロビンAの物質量 $n(\text{Hb})$ は、
これにヘモグロビンAのモル質量 $M = 6.4 \times 10^4\text{ g/mol}$ を掛けると、求める質量 $w(\text{Hb})$ は、
$$w(\text{Hb}) = 6.4 \times 10^4\text{ g/mol} \times 2.5 \times 10^{-4}\text{ mol} = 6.4 \times 2.5 = 16\text{ g}$$(💡 医学生豆知識:ヒトの血液 $100\text{ mL}$($= 1\text{ dL}$)中の正常なヘモグロビン濃度は成人男性で約 $14 \sim 18\text{ g/dL}$ です。計算結果の「$16\text{ g}$」はまさに実際のヒトの血液データそのものですね!)
大問 3 :油脂Xの元素分析・ヨウ素価・けん化・高級脂肪酸塩の性質
解答番号 19 〜 32
最後の大問3は、有機化学の定番「油脂(トリグリセリド)」の総合問題だよ!
超スピード解法のカギを伝授するね!油脂Xの分子量が「$884$」で、試料が「$8.84\text{ mg}$」だから、燃焼させた油脂Xはピッタリ$1.00 \times 10^{-5}\text{ mol}$($= 0.0100\text{ mmol}$)なんだ!
さらに、油脂は必ずエステル結合を3個もつから酸素原子の数は絶対に6個($\text{O}_6$)!そして加水分解(けん化)でできた鎖状の高級脂肪酸塩A・B・Cに水素を付加させるとすべて飽和脂肪酸塩A(ステアリン酸カリウム $\text{C}_{17}\text{H}_{35}\text{COOK} = \text{C}_{18}\text{H}_{35}\text{O}_2\text{K}$)になることから、炭素数18の脂肪酸3本(ステアリン酸・オレイン酸・リノール酸)が1本ずつ結合した油脂だと一瞬で見抜けるよ!
【問題文:実験 I 〜 IV】
分子量が $884$ で、炭素、水素、酸素のみからなる油脂Xについて、次の実験 I 〜 IV を行った。
- 実験 I :油脂X $8.84\text{ mg}$ を完全燃焼させたところ、二酸化炭素 $25.1\text{ mg}$ と水 $9.36\text{ mg}$ が生じた。
- 実験 II :油脂X $100\text{ g}$ に対してヨウ素を加えて完全に反応させると、$86.2\text{ g}$ のヨウ素が付加した。
- 実験 III :油脂X $1.0\text{ g}$ に対して $0.10\text{ mol/L}$ 水酸化カリウム水溶液を加えて完全に加水分解したところ、4種類の物質A〜Dを生じた。
- 実験 IV :物質A〜Dのそれぞれに対し触媒を用いて十分な量の水素を作用させたところ、物質Aと物質Dは反応しなかったが、物質Bと物質Cでは炭素−炭素二重結合への付加反応が起こり、いずれも物質Aを生じた。また、この反応において、物質Cには、同じ物質量の物質Bと比べて2倍の物質量の水素が付加した。
問1 実験 I 〜 III と関係の深い語として最も適切なものを、次の①〜⑧のうちからそれぞれ1つずつ選べ。
実験 I 19 実験 II 20 実験 III 21
① ヨウ素価
② ヨウ素デンプン反応
③ ヨードホルム反応
④ キサントプロテイン反応
⑤ 系統分離(系統分析)
⑥ 元素分析
⑦ ビウレット反応
⑧ けん化
- 実験 I ([ 19 ]):有機化合物を完全燃焼させて生じた $\text{CO}_2$ と $\text{H}_2\text{O}$ の質量から構成元素の組成を決定する操作なので、⑥ 元素分析。
- 実験 II ([ 20 ]):油脂 $100\text{ g}$ に付加するヨウ素 $\text{I}_2$ のグラム数は① ヨウ素価と呼ばれます(油脂に含まれる炭素−炭素二重結合の多さの指標)。
- 実験 III ([ 21 ]):油脂(エステル)に強塩基($\text{KOH}$ や $\text{NaOH}$)を加えて加熱し、加水分解してグリセリンと高級脂肪酸の塩(セッケン)を得る反応を⑧ けん化といいます。
問2 油脂Xの分子式を $\text{C}_{\text{イ}}\text{H}_{\text{ロ}}\text{O}_{\text{ハ}}$ としたとき、イとロに当てはまる最も適切な数値を、次の①〜⓪のうちからそれぞれ1つずつ選べ。同じものを繰り返し選んでもよい。
イ 22 ロ 23
① $51$ ② $53$ ③ $55$ ④ $57$ ⑤ $59$
⑥ $80$ ⑦ $104$ ⑧ $128$ ⑨ $152$ ⓪ $176$
Step 1燃焼させた油脂Xの物質量 $n(\text{X})$ を求める:
油脂Xの分子量は $884$、実験 I で燃焼させた質量は $8.84\text{ mg} = 8.84 \times 10^{-3}\text{ g}$ なので、油脂Xの物質量 $n(\text{X})$ は、
Step 2生じた二酸化炭素 $\text{CO}_2$ と水 $\text{H}_2\text{O}$ の物質量から イ と ロ を求める:
二酸化炭素 $\text{CO}_2$ の分子量は $12 + 16 \times 2 = 44$、水 $\text{H}_2\text{O}$ の分子量は $1.0 \times 2 + 16 = 18$ です。
生じた $\text{CO}_2$($25.1\text{ mg}$)に含まれる炭素原子 $\text{C}$ の物質量 $n(\text{C})$ は、
油脂X $0.0100\text{ mmol}$ 中に $\text{C}$ が $0.57\text{ mmol}$ 含まれるので、1分子中の炭素原子の数「イ」は、
$$\text{イ} = \frac{0.57\text{ mmol}}{0.0100\text{ mmol}} = 57 \quad (\text{④})$$次に、生じた $\text{H}_2\text{O}$($9.36\text{ mg}$)に含まれる水素原子 $\text{H}$ の物質量 $n(\text{H})$ は、水1分子に $\text{H}$ が2個含まれるので、
$$n(\text{H}) = 2 \times n(\text{H}_2\text{O}) = 2 \times \frac{9.36\text{ mg}}{18\text{ mg/mmol}} = 2 \times 0.520\text{ mmol} = 1.04\text{ mmol}$$油脂X $0.0100\text{ mmol}$ 中に $\text{H}$ が $1.04\text{ mmol}$ 含まれるので、1分子中の水素原子の数「ロ」は、
$$\text{ロ} = \frac{1.04\text{ mmol}}{0.0100\text{ mmol}} = 104 \quad (\text{⑦})$$(確認:油脂1分子にはエステル結合 $-\text{COO}-$ が3個あるため、酸素原子の数 $\text{ハ} = 6$ です。分子量を計算すると $12 \times 57 + 1.0 \times 104 + 16 \times 6 = 684 + 104 + 96 = 884$ となり、問題文の分子量 $884$ と完全一致します!)
問3 実験 II より、油脂X $1.0\text{ mol}$ に付加するヨウ素分子の物質量 $[\text{mol}]$ として最も近い数値を、次の①〜⑨のうちから1つ選べ。 24 $\text{mol}$
① $1.0$ ② $2.0$ ③ $3.0$ ④ $4.0$ ⑤ $5.0$ ⑥ $6.0$ ⑦ $7.0$ ⑧ $8.0$ ⑨ $9.0$
解法 1(実験 II のヨウ素価から計算)
ヨウ素原子量は $\text{I} = 127$ なので、ヨウ素分子 $\text{I}_2$ の分子量は $127 \times 2 = 254$ です。
実験 II より、油脂X $100\text{ g}$ にヨウ素が $86.2\text{ g}$ 付加したので、油脂X $1.0\text{ mol}$($= 884\text{ g}$)あたりに付加するヨウ素分子 $\text{I}_2$ の物質量は、
解法 2(問2で求めた分子式 $\text{C}_{57}\text{H}_{104}\text{O}_6$ から1秒で暗算!)
炭素数57の油脂がもしすべて飽和脂肪酸(ステアリン酸 $\text{C}_{17}\text{H}_{35}\text{COOH}$ 3分子)からできていたとすると、水素原子の数は $35 \times 3 + 5\text{(グリセリン骨格 }\text{C}_3\text{H}_5\text{)} = 110\text{ 個}$($\text{C}_{57}\text{H}_{110}\text{O}_6$)になります。
実際の油脂Xは $\text{C}_{57}\text{H}_{104}\text{O}_6$ で水素原子が $110 - 104 = 6\text{ 個}$($\text{H}_2$ 分子として $3\text{ 個}$ 分)少ないため、油脂X 1分子中に炭素−炭素二重結合($\text{C}=\text{C}$)が3個あることが瞬時にわかります!したがって、付加する $\text{I}_2$ は $3.0\text{ mol}$(③) です!
問4 実験 III について、過不足なく反応させるのに必要な $0.10\text{ mol/L}$ 水酸化カリウム水溶液の体積 $[\text{mL}]$ として最も近い数値を、次の①〜⓪のうちから1つ選べ。 25 $\text{mL}$
① $0.38$ ② $0.57$ ③ $1.1$ ④ $2.3$ ⑤ $3.4$
⑥ $3.8$ ⑦ $5.7$ ⑧ $11$ ⑨ $23$ ⓪ $34$
Step 1油脂1分子のけん化には $3\text{ mol}$ の $\text{KOH}$ が必要!
油脂1分子は3個のエステル結合をもつため、完全に加水分解(けん化)する反応式は次のようになり、油脂Xの物質量の3倍の $\text{KOH}$ が必要です。
Step 2必要な $\text{KOH}$ 水溶液の体積 $V\text{ [mL]}$ を求める:
実験 III で用いた油脂Xは $1.0\text{ g}$(分子量 $884$)なので、その物質量は $\dfrac{1.0}{884}\text{ mol}$ です。
必要な $0.10\text{ mol/L}$ 水酸化カリウム水溶液の体積を $V\text{ [mL]}$ とすると、
これを $V$ について解くと、
$$V = \frac{3 \times 1000}{0.10 \times 884} = \frac{30000}{884} \fallingdotseq 33.93\text{ mL} \fallingdotseq 34\text{ mL}$$問5 物質A〜Dの分子式として最も適切なものを、次の①〜⓪のうちからそれぞれ1つずつ選べ。
物質A 26 物質B 27 物質C 28 物質D 29
① $\text{C}_3\text{H}_8\text{O}_2$
② $\text{C}_3\text{H}_8\text{O}_3$
③ $\text{C}_{16}\text{H}_{25}\text{O}_2\text{K}$
④ $\text{C}_{16}\text{H}_{27}\text{O}_2\text{K}$
⑤ $\text{C}_{16}\text{H}_{29}\text{O}_2\text{K}$
⑥ $\text{C}_{16}\text{H}_{31}\text{O}_2\text{K}$
⑦ $\text{C}_{18}\text{H}_{29}\text{O}_2\text{K}$
⑧ $\text{C}_{18}\text{H}_{31}\text{O}_2\text{K}$
⑨ $\text{C}_{18}\text{H}_{33}\text{O}_2\text{K}$
⓪ $\text{C}_{18}\text{H}_{35}\text{O}_2\text{K}$
Step 1グリセリン(物質D)と炭素数18の脂肪酸塩(物質A〜C)を特定する:
油脂X($\text{C}_{57}\text{H}_{104}\text{O}_6$)を水酸化カリウム $\text{KOH}$ で加水分解(けん化)すると、グリセリン $\text{C}_3\text{H}_5(\text{OH})_3 = \text{C}_3\text{H}_8\text{O}_3$ と3分子の高級脂肪酸カリウムを生じます。
実験 IV より、「物質Bと物質Cに水素を付加させるとどちらも物質Aになった」ことから、物質A・B・Cの3つが高級脂肪酸カリウムであり、しかもすべて炭素数が同じであることがわかります。すると残った物質Dがグリセリン $\text{C}_3\text{H}_8\text{O}_3$(②)です!
Step 2物質A、B、Cの炭素数と二重結合の数を決める:
油脂Xの炭素数は $57$ で、グリセリンDの炭素数が $3$ なので、3分子の高級脂肪酸カリウムA・B・Cがもつ合計の炭素数は $57 - 3 = 54$ です。3分子とも炭素数が等しいので、1分子あたりの炭素数は、
です。さらに実験 IV と問3の結果から、
- 物質A:水素と反応しない飽和脂肪酸カリウム(二重結合 0個)
⇒ ステアリン酸カリウム $\text{C}_{17}\text{H}_{35}\text{COOK} = \mathbf{\text{C}_{18}\text{H}_{35}\text{O}_2\text{K}}$(⓪) - 物質B:水素が付加して物質Aになる不飽和脂肪酸カリウム
物質C:物質Bの2倍の物質量の水素が付加して物質Aになる不飽和脂肪酸カリウム
問3より、油脂X 1分子中の二重結合の合計は $3\text{ 個}$ なので、物質Bは二重結合 1個($\text{H}$ がAより2個少ない)、物質Cは二重結合 2個($\text{H}$ がAより4個少ない)と決まります!
⇒ 物質B:オレイン酸カリウム $\text{C}_{17}\text{H}_{33}\text{COOK} = \mathbf{\text{C}_{18}\text{H}_{33}\text{O}_2\text{K}}$(⑨)
⇒ 物質C:リノール酸カリウム $\text{C}_{17}\text{H}_{31}\text{COOK} = \mathbf{\text{C}_{18}\text{H}_{31}\text{O}_2\text{K}}$(⑧)
問6 次の(1)〜(3)について、油脂X、物質A、物質Dのそれぞれが当てはまる場合を○、当てはまらない場合を×としたときの組合せとして最も適切なものを、後の①〜⑧のうちからそれぞれ1つずつ選べ。同じものを繰り返し選んでもよい。
(1) 極性のある官能基を含んでいる。 30
(2) 水中でミセルを形成することができる。 31
(3) 水と任意の割合で溶け合う。 32
| 選択肢 | 油脂 X | 物質 A(セッケン) | 物質 D(グリセリン) |
|---|---|---|---|
| ① | ○ | ○ | ○ |
| ② | ○ | ○ | × |
| ③ | ○ | × | ○ |
| ④ | × | ○ | ○ |
| ⑤ | ○ | × | × |
| ⑥ | × | ○ | × |
| ⑦ | × | × | ○ |
| ⑧ | × | × | × |
油脂X(トリグリセリド)、物質A(ステアリン酸カリウム $\text{C}_{17}\text{H}_{35}\text{COOK}$:カリセッケン)、物質D(グリセリン $\text{C}_3\text{H}_5(\text{OH})_3$)の3つの構造と性質を比較します。
-
(1) 極性のある官能基を含んでいる [ 30 ]
・油脂X(○):分子内に3つのエステル結合($-\text{COO}-$)をもっています。エステル結合は $\text{C}=\text{O}$ や $\text{C}-\text{O}$ の電気陰性度の差により極性をもつ官能基です(ただし、長鎖炭化水素基が大きいため分子全体としては水に溶けません)。
・物質A(○):カルボキシラート基($-\text{COO}^-\text{K}^+$)という強い極性(イオン性)をもつ親水基を含んでいます。
・物質D(○):3つのヒドロキシ基($-\text{OH}$)という強い極性をもつ親水基を含んでいます。
したがって、すべて当てはまるため(○、○、○)の ① です。 -
(2) 水中でミセルを形成することができる [ 31 ]
水中で親油基(疎水基)を内側に、親水基を外側に向けて集合したコロイド粒子(会合コロイド=ミセル)を形成するのは、両親媒性分子であるセッケン(界面活性剤)の特徴です。
・油脂X(×):水に溶けず、ミセルを形成しません。
・物質A(○):長鎖アルキル基(親油基)と $-\text{COO}^-$(親水基)をもつセッケンであり、水中でミセルを形成します。
・物質D(×):分子全体が親水性であり、疎水基をもたないためミセルを形成せず、単分子として水に均一に溶けます。
したがって、(×、○、×)の ⑥ です。 -
(3) 水と任意の割合で溶け合う [ 32 ]
・油脂X(×):疎水性の炭化水素鎖が支配的であり、水にはほとんど溶けません。
・物質A(×):水に溶けてコロイド溶液となりますが、溶解度には限界があり、任意の割合で無限に混ざり合うわけではありません。
・物質D(○):グリセリンは炭素数3に対して親水性の $-\text{OH}$ 基を3つもち、水分子と多数の水素結合を形成するため、エタノールなどと同様に水と任意の割合で溶け合います。
したがって、(×、×、○)の ⑦ です。
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