📊 2024年度 岩手医科大学 物理 全体分析
試験時間:理科2科目120分(物理目安 60分) / 大問3題(マーク式:解答番号 1 〜 24)
【指導統括 ニックニ(新国)先生より】
2024年度の岩手医科大学・物理は、第1問:正三角形構造物(剛体)のつりあい・慣性力、第2問:風船と熱気球の浮力・気体の状態変化、第3問:RC直列交流回路という構成でした。どれも典型的な物理法則(力のモーメント、アルキメデスの浮力と状態方程式、交流の位相差とインピーダンス)を正確に理解していれば、計算量は決して多くありません。ただし、第1問の重心計算の引っ掛けや、第3問の「電位の基準点(どちらに対してどちらか)」の符号ミスなど、焦ると足をすくわれるポイントが随所に仕掛けられています。Sora先生の1ステップ解説で、思考のプロセスを完全に自分のものにしましょう!
⚡ 解答一覧(スピードチェック)
全20問(解答番号 1〜20 )第1問:剛体構造物Kのつりあいと運動(解答番号 1 〜 8)
第2問:風船・熱気球の浮力と熱力学(解答番号 9 〜 16)
第3問:RC直列交流回路(解答番号 17 〜 20)
第1問:3本の円柱からなる正三角形構造物Kのつりあいと運動
第1問は、質量 $M$ の円柱A、B、Cを長さ $l$ の軽い棒でつないだ「正三角形の断面をもつ構造物K」の剛体力学だよ!
一番の武器は「3個の円柱全体の重心を1箇所にまとめて考えること」!問1で重心Gの位置(底辺BCの中点から真上に $\frac{\sqrt{3}}{6}l$)さえ正確に出せれば、問2〜問8のモーメント計算がすべて秒殺できちゃうんだ。「Cが板から浮き上がる直前 $\iff$ Cが受ける垂直抗力 $N_{\text{C}} = 0$」という鉄則を使って、気持ちよく満点を取ろう!
質量が $M$ で太さが無視できる同一の円柱A、B、Cに、質量が無視できる細い棒を直交させてつなぎ、組み立てられた図1のような構造物Kがある。構造物Kは変形しない。
円柱をつなぐ細い棒の長さをすべて $l$ とし、構造物Kを平らで水平な板の上に、BとCだけが板の上面に接触するように置く。図2はこの状態を細い棒に平行になる方向の断面図、つまり構造物Kを横から見たものである。図2においてA、B、Cは一辺の長さ $l$ の正三角形の頂点に存在する。板とBの間には摩擦力が発生するが、板とCの間はなめらかである。重力加速度の大きさを $g$ とする。
問1 [解答番号 1 ]
Kの重心の高さを表す式として適当なものを、次の①〜⑤のうちから1つ選べ。ただし、板の上面を高さの基準とする。
① $\dfrac{1}{5}l$ ② $\dfrac{\sqrt{3}}{6}l$ ③ $\dfrac{1}{3}l$ ④ $\dfrac{1}{2}l$ ⑤ $\dfrac{\sqrt{3}}{3}l$
STEP 1円柱A、B、Cそれぞれの高さを確認する
細い棒の質量は無視でき、円柱の太さも無視できるので、構造物Kの質量は頂点A、B、Cにある質量 $M$ の3つの円柱だけに存在します。
板の上面を高さ $y = 0$ の基準とすると、BとCは板の上面に接触しているため、
また、$\triangle\text{ABC}$ は一辺の長さ $l$ の正三角形なので、頂点Aの高さ $y_{\text{A}}$ は、底辺からの高さ $l\sin 60^\circ$ となります。
STEP 2重心の公式に代入する
質量 $M$ の3つの物体が高さ $y_{\text{A}}, y_{\text{B}}, y_{\text{C}}$ にあるとき、全体の重心Gの高さ $y_{\text{G}}$ は次の公式で求まります(または「正三角形の重心は高さを $2:1$ に内分する点だから、高さの $\dfrac{1}{3}$ 倍」と考えてもOKです!)。
したがって、正解は ② です。
問2 [解答番号 2 ]
A、B、Cが受ける重力による、Bのまわりの力のモーメントの和についてその大きさを表す式として適当なものを、次の①〜⑥のうちから1つ選べ。
① $\dfrac{1}{2}Mgl$ ② $\dfrac{\sqrt{3}}{2}Mgl$ ③ $\dfrac{3}{2}Mgl$ ④ $\dfrac{3\sqrt{3}}{2}Mgl$ ⑤ $3Mgl$ ⑥ $3\sqrt{3}Mgl$
STEP 1個別に足すか、重心にまとめて計算する
点Bからの水平距離(うでの長さ)を考えます。
・円柱Bには重力 $Mg$ が働きますが、回転軸Bそのものに働くので、うでの長さは $0$ です。
・円柱Aは、点Bから右へ $\dfrac{l}{2}$ の位置にあるので、重力 $Mg$ のうでの長さは $\dfrac{l}{2}$ です。
・円柱Cは、点Bから右へ $l$ の位置にあるので、重力 $Mg$ のうでの長さは $l$ です。
STEP 2力のモーメントの和を計算する
時計回りのモーメントの大きさを合計すると、
💡 【別解:重心Gを使うと1秒!】
構造物K全体の質量 $3M$ が、点Bから水平距離 $\dfrac{l}{2}$ の重心Gに集まっていると考えれば、(全重力 $3Mg$)$\times$(うでの長さ $\dfrac{l}{2}$)$= \dfrac{3}{2}Mgl$ と一瞬で求まります!
したがって、正解は ③ です。
問3 [解答番号 3 ]
図2の状態で、Aを図の水平方向左向きに大きさ $F$ の力で押す。押す力の大きさ $F$ を徐々に大きくしていくと、$F = F_0$ となった直後にCだけが板から浮き上がった。この間、Bと板の間の摩擦はじゅうぶんに大きく、Kが板に対して滑ることはなかった。
$F_0$ の値を表す式として適当なものを、次の①〜⑥のうちから1つ選べ。
① $\dfrac{1}{3}Mg$ ② $\dfrac{1}{\sqrt{3}}Mg$ ③ $Mg$ ④ $\sqrt{3}Mg$ ⑤ $3Mg$ ⑥ $3\sqrt{3}Mg$
STEP 1Cが浮き上がる直前の条件を確認する
$F = F_0$ となってCが板から浮き上がる直前、Cが板から受ける垂直抗力は $0$ になります。また、板とCの間はなめらかなので摩擦力も $0$ です。つまり、点Cには板から一切の力が働きません。
STEP 2点Bのまわりの力のモーメントのつりあいを立てる
点Bには板から垂直抗力と静止摩擦力が働きますが、点Bを回転軸にとれば、Bに働く力のモーメントはすべて $0$ になります。
・Aを水平左向きに押す力 $F_0$ は、点Bのまわりで構造物Kを反時計回りに回そうとします。作用線の板からの高さはAの高さ $y_{\text{A}} = \dfrac{\sqrt{3}}{2}l$ なので、うでの長さは $\dfrac{\sqrt{3}}{2}l$ です。
・一方、A、B、Cの重力は、問2で求めた通り、点Bのまわりで時計回りに大きさ $\dfrac{3}{2}Mgl$ のモーメントを作ります。
両辺を $\dfrac{\sqrt{3}}{2}l$ で割ると、
したがって、正解は ④ です。
図2の状態から、Kを載せたまま、図3のように板を少しずつ傾ける。水平面からの傾斜角 $\theta$ が $\theta_0$ を超えた直後にCだけが板から離れた。この間、Bと板の間の摩擦はじゅうぶんに大きく、Kが板に対して滑ることはなかった。
問4 [解答番号 4 ]
$\theta < \theta_0$ のときに、Cが板から受ける垂直抗力の大きさを表す式として適当なものを、次の①〜⑥のうちから1つ選べ。
① $\dfrac{\sqrt{3}\sin\theta - 3\cos\theta}{2}Mg$ ② $\dfrac{2\sin\theta - \sqrt{3}\cos\theta}{2}Mg$ ③ $\dfrac{3\sin\theta - \sqrt{3}\cos\theta}{2}Mg$
④ $\dfrac{\sqrt{3}\cos\theta - 3\sin\theta}{2}Mg$ ⑤ $\dfrac{2\cos\theta - \sqrt{3}\sin\theta}{2}Mg$ ⑥ $\dfrac{3\cos\theta - \sqrt{3}\sin\theta}{2}Mg$
STEP 1全重力 $3Mg$ を重心Gにおいて「板に垂直な方向」と「板に平行な方向」に分解する
構造物K全体(合計質量 $3M$)の重心Gの位置を、点Bを原点として板に沿う方向(BC方向)と板に垂直な方向で表すと、
重心Gに働く全重力 $3Mg$ を分解すると、
・板に垂直な下向き成分: $3Mg \cos\theta$ (点Bのまわりに時計回りのモーメントを作る。うでの長さは $x_{\text{G}} = \dfrac{l}{2}$)
・板に平行な左下向き成分: $3Mg \sin\theta$ (点Bのまわりに反時計回りのモーメントを作る。うでの長さは $y_{\text{G}} = \dfrac{\sqrt{3}}{6}l$)
STEP 2点Bのまわりの力のモーメントのつりあいを立てる
Cが板から受ける垂直抗力の大きさを $N_{\text{C}}$ とすると、$N_{\text{C}}$ は板に垂直な上向きに働き、点Bのまわりに反時計回りのモーメント(うでの長さ $l$)を作ります。
よって、点Bのまわりのモーメントのつりあいより、
両辺を $l$ で割り、$\dfrac{3\sqrt{3}}{6} = \dfrac{\sqrt{3}}{2}$ に注意して整理すると、
したがって、正解は ⑥ です。
問5 [解答番号 5 ]
$\tan\theta_0$ の値として適当なものを、次の①〜⑥のうちから1つ選べ。
① $\dfrac{1}{4}$ ② $\dfrac{1}{3}$ ③ $\dfrac{1}{2}$ ④ $\dfrac{1}{\sqrt{3}}$ ⑤ $\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ ⑥ $\sqrt{3}$
STEP 1$\theta = \theta_0$ で $N_{\text{C}} = 0$ となる条件を解く
傾斜角が $\theta_0$ となってCが板から離れる瞬間、問4で求めた垂直抗力 $N_{\text{C}}$ が $0$ になります。
両辺を $\sqrt{3}\cos\theta_0$ で割ると、
💡 【幾何学的な意味】 重心Gが回転軸Bの真上にくるときに倒れ始めます。$\tan\theta_0 = \dfrac{x_{\text{G}}}{y_{\text{G}}} = \dfrac{l/2}{\sqrt{3}l/6} = \dfrac{3}{\sqrt{3}} = \sqrt{3}$(つまり $\theta_0 = 60^\circ$)と図形的に求めることもできます!
したがって、正解は ⑥ です。
図2の状態に板を戻し、次に図4のように板に大きさが $\alpha$ で水平方向右向きの加速度を与える。$\alpha$ の大きさを徐々に大きくしていくと、$\alpha = \alpha_0$ となった直後にCだけが板から離れた。この間Bと板の間の摩擦はじゅうぶんに大きく、Kが板に対して滑ることはなかった。
問6 [解答番号 6 ]
$\alpha < \alpha_0$ のときに、Cが板から受ける垂直抗力の大きさを表す式として適当なものを、次の①〜⑥のうちから1つ選べ。
① $M\left(\dfrac{3}{2}g - \dfrac{\sqrt{3}}{2}\alpha\right)$ ② $M\left(\dfrac{3}{2}g - \dfrac{1}{2}\alpha\right)$ ③ $M\left(\dfrac{1}{2}g - \dfrac{\sqrt{3}}{2}\alpha\right)$
④ $M\left(\dfrac{3}{2}\alpha - \dfrac{\sqrt{3}}{2}g\right)$ ⑤ $M\left(\dfrac{3}{2}\alpha - \dfrac{1}{2}g\right)$ ⑥ $M\left(\dfrac{1}{2}\alpha - \dfrac{\sqrt{3}}{2}g\right)$
STEP 1板とともに加速する観測者から見た「慣性力」を考える
右向きに加速度 $\alpha$ で運動する板の上から見ると、構造物K(合計質量 $3M$)の重心Gには、加速度と逆向き(水平方向左向き)に大きさ $(3M)\alpha$ の慣性力が働きます。
・重心Gに働く全重力 $3Mg$(鉛直下向き):点Bのまわりに時計回りのモーメントを作る(うでの長さ $x_{\text{G}} = \dfrac{l}{2}$)。
・重心Gに働く全慣性力 $3M\alpha$(水平左向き):点Bのまわりに反時計回りのモーメントを作る(うでの長さ $y_{\text{G}} = \dfrac{\sqrt{3}}{6}l$)。
・点Cに働く垂直抗力 $N_{\text{C}}'$(鉛直上向き):点Bのまわりに反時計回りのモーメントを作る(うでの長さ $l$)。
STEP 2点Bのまわりの力のモーメントのつりあいを立てる
両辺を $l$ で割り、整理すると、
したがって、正解は ① です。
問7 [解答番号 7 ]
$\alpha_0$ の値として適当なものを、次の①〜⑥のうちから1つ選べ。
① $\dfrac{1}{3}g$ ② $\dfrac{1}{\sqrt{3}}g$ ③ $g$ ④ $\sqrt{3}g$ ⑤ $3g$ ⑥ $3\sqrt{3}g$
STEP 1$\alpha = \alpha_0$ で $N_{\text{C}}' = 0$ とおく
問6で求めた式において $N_{\text{C}}' = 0$ とすると、
したがって、正解は ④ です。
問8 [解答番号 8 ]
Kが板に対して滑らなかったことよりBと板の間の静止摩擦係数はある値 $\mu_0$ よりも大きいことがわかる。$\mu_0$ の数値として適当なものを、次の①〜⑥のうちから1つ選べ。
① $\dfrac{1}{3}$ ② $\dfrac{1}{\sqrt{3}}$ ③ $1$ ④ $\sqrt{3}$ ⑤ $3$ ⑥ $3\sqrt{3}$
STEP 1$\alpha = \alpha_0$ の瞬間に点Bに働く摩擦力 $f_{\text{B}}$ と垂直抗力 $N_{\text{B}}$ を求める
$\alpha$ が大きくなるほど必要な静止摩擦力は大きくなり、逆に点Bの垂直抗力はどうなるでしょうか?
構造物K全体(質量 $3M$)に対する力のつりあい(板の上から見た水平方向・鉛直方向のつりあい)を考えます。
・水平方向:点Cには摩擦がないため、水平方向の力は点Bが受ける右向きの静止摩擦力 $f_{\text{B}}$ と、左向きの全慣性力 $3M\alpha$ だけです。
・鉛直方向:$\alpha = \alpha_0 = \sqrt{3}g$ に達した瞬間、点Cの垂直抗力は $N_{\text{C}}' = 0$ なので、構造物全体の重力 $3Mg$ を点Bの垂直抗力 $N_{\text{B}}$ だけで支えています(なお $\alpha < \alpha_0$ のときは $N_{\text{B}} + N_{\text{C}}' = 3Mg$ です)。
加速度が最大の $\alpha = \alpha_0 = \sqrt{3}g$ のとき、
STEP 2滑らないための静止摩擦係数 $\mu$ の条件を求める
静止摩擦力 $f_{\text{B}}$ が最大静止摩擦力 $\mu N_{\text{B}}$ を超えない条件 $f_{\text{B}} \le \mu N_{\text{B}}$ より、
(問3の左向き外力 $F_0 = \sqrt{3}Mg$ のときは $f_{\text{B}} = \sqrt{3}Mg, N_{\text{B}} = 3Mg$ で $\mu \ge \dfrac{1}{\sqrt{3}}$、問5の傾斜角 $\theta_0 = 60^\circ$ のときは $\mu \ge \tan 60^\circ = \sqrt{3}$ となり、いずれも最小境界値は $\mu_0 = \sqrt{3}$ となります。)
したがって、正解は ④ です。
第2問:風船および熱気球の浮上と理想気体の熱力学
第2問は、前半(問1・問2)が「密閉された風船の定圧膨張」、後半(問3〜問8)が「下部が開いた熱気球の浮上」という2部構成だよ!
一番大事な違いは、「風船は中の気体の質量が一定で体積が増える」のに対して、「熱気球は体積 $V$ が一定で、温めると中の空気が外へ逃げて密度(質量)が減る」という点!
どちらも浮き上がる瞬間の式は「(周囲の大気から受ける浮力 $\rho_{\text{外}} V g$)$=$(皮・ゴンドラの重力 $+$ 内部気体の重力)」のたった1本だけ。図を見ながら力を整理していこう!
図1のように地表面に接触している風船があり、風船の中には一定量の単原子分子理想気体が封入されている。風船内の気体は外部に熱を漏らさずに加熱することができ、中の気体を除いた風船の質量は $M_0$ である。また地表面付近での大気の圧力は $p_0$、大気の密度(単位体積あたりの質量)は $\rho_0$ である。重力加速度の大きさを $g$ とする。
はじめ体積が $V_0$、圧力が $p_0$、密度が $\rho_0$ であった風船内の気体を、圧力を保ちつつゆっくり加熱すると、風船は膨張しやがて地表面から浮き上がった。
問1 [解答番号 9 ]
風船が地表面から浮き上がり始めるときの、風船内の気体の体積を表す式として適当なものを、次の①〜⑥のうちから1つ選べ。
① $V_0$ ② $2V_0$ ③ $V_0 - \dfrac{M_0}{2\rho_0}$ ④ $V_0 - \dfrac{M_0}{\rho_0}$ ⑤ $V_0 + \dfrac{M_0}{2\rho_0}$ ⑥ $V_0 + \dfrac{M_0}{\rho_0}$
STEP 1風船内の気体の質量 $m_{\text{気}}$ は変わらないことを確認する
風船は密閉されており「一定量の気体が封入されている」ので、膨張しても風船内の気体の質量ははじめのまま一定です。
はじめ体積が $V_0$、密度が $\rho_0$ だったので、封入されている気体の質量 $m_{\text{気}}$ は、
STEP 2浮き上がり始めるときの「浮力 = 全重力」のつりあいを立てる
浮き上がり始めるときの風船の体積を $V_1$ とします。
・周囲の大気(密度 $\rho_0$)から受ける上向きの浮力: $\rho_0 V_1 g$
・風船の皮の重力と内部気体の重力の和(下向きの全重力): $M_0 g + m_{\text{気}} g = M_0 g + \rho_0 V_0 g$
地表面から浮き上がり始める瞬間、地表面からの垂直抗力が $0$ となり、浮力と全重力がつりあうので、
両辺を $\rho_0 g$ で割ると、
したがって、正解は ⑥ です。
問2 [解答番号 10 ]
はじめの状態から、風船が地表面から浮き上がり始めるまでに、風船内の気体に与えた熱量を表す式として適当なものを、次の①〜⑥のうちから1つ選べ。
① $\dfrac{p_0 M_0}{2\rho_0}$ ② $\dfrac{p_0 M_0}{\rho_0}$ ③ $\dfrac{3p_0 M_0}{2\rho_0}$ ④ $\dfrac{2p_0 M_0}{\rho_0}$ ⑤ $\dfrac{5p_0 M_0}{2\rho_0}$ ⑥ $\dfrac{3p_0 M_0}{\rho_0}$
STEP 1単原子分子理想気体の定圧変化の公式を使う
風船内の気体は「単原子分子理想気体」であり、「圧力 $p_0$ を保ちつつ(定圧変化)」体積が $V_0$ から $V_1 = V_0 + \dfrac{M_0}{\rho_0}$ まで膨張しました。
体積の増加量 $\Delta V$ は、
STEP 2熱力学第一法則 $Q = \Delta U + W$ を計算する
圧力 $p_0$ が一定のとき、
・内部エネルギーの増加量: $\Delta U = \dfrac{3}{2}nR\Delta T = \dfrac{3}{2}p_0 \Delta V$
・気体が外部にした仕事: $W = p_0 \Delta V$
よって、与えた熱量 $Q$ は、
ここに $\Delta V = \dfrac{M_0}{\rho_0}$ を代入すると、
したがって、正解は ⑤ です。
次に、図2のような熱気球を考える。熱気球は大気と同じ組成の空気が入った気球とつなげられたゴンドラからなり、気球以外の体積はじゅうぶんに小さく無視できる。ゴンドラの中にはおもりが積まれており、気球内の空気を除いた熱気球全体の質量は $M$、そのうちおもりの質量は $m$ である。気球内の空気は加熱することができるものの、その時も気球内の体積 $V$ は一定で変化しない。気球の下部は開いていて大気と接しているため、気球内の空気と大気の圧力は等しくなるが、気球内の空気の温度は大気の温度と異なる場合でも一定に保つことができる。気球内の空気と大気の組成は常に一定で、理想気体とみなせる。気体定数を $R$ とする。
はじめ気球は地表付近にあった。地表付近の大気についてその圧力を $p_0$、絶対温度を $T_0$、密度(単位体積あたりの質量)を $\rho_0$ とする。
問3 [解答番号 11 ]
大気の性質として圧力 $p$、絶対温度 $T$、密度 $\rho$ は $\dfrac{p}{\rho T} = \text{一定}$ の関係を満たす。$1\text{ mol}$ あたりの大気の質量 $\mu$ を用いて、この一定値を表す式として適当なものを、次の①〜⑥のうちから1つ選べ。
① $\dfrac{R}{\mu}$ ② $\dfrac{3R}{2\mu}$ ③ $\dfrac{5R}{2\mu}$ ④ $\dfrac{\mu}{R}$ ⑤ $\dfrac{3\mu}{2R}$ ⑥ $\dfrac{5\mu}{2R}$
STEP 1理想気体の状態方程式 $pV = nRT$ を密度 $\rho$ の式に書き換える
体積 $V$ の中に物質量 $n\text{ [mol]}$ の大気があるとします。$1\text{ mol}$ あたりの質量(モル質量)が $\mu$ なので、この大気の質量 $w$ は $w = n\mu$ です。
したがって、物質量 $n = \dfrac{w}{\mu}$ を理想気体の状態方程式 $pV = nRT$ に代入すると、
ここで、単位体積あたりの質量 $\dfrac{w}{V}$ が密度 $\rho$ であるから、$\dfrac{w}{V} = \rho$ を代入して、
したがって、正解は ① です。
問4 [解答番号 12 ]
地表付近にある熱気球が浮上するためには、気球内の空気の密度をある値 $\rho_1$ よりも小さくする必要がある。$\rho_1$ を表す式として適当なものを、次の①〜⑤のうちから1つ選べ。
① $\rho_0 - \dfrac{2M}{V}$ ② $\rho_0 - \dfrac{M}{V}$ ③ $\rho_0$ ④ $\rho_0 + \dfrac{M}{V}$ ⑤ $\rho_0 + \dfrac{2M}{V}$
STEP 1地表付近で浮上し始める境界(浮力 = 全重力)を立てる
地表付近(大気の密度 $\rho_0$)において、気球(体積 $V$)に働く力は、
・周囲の大気から受ける浮力: $\rho_0 V g$
・おもりを含む熱気球本体(空気を除く)の重力: $Mg$
・気球内の空気(密度 $\rho_1$、体積 $V$)の重力: $\rho_1 V g$
これらがつりあう境界を考えると、
両辺を $Vg$ で割って $\rho_1$ について解くと、
したがって、正解は ② です。
問5 [解答番号 13 ]
地表付近にある熱気球が浮上するためには、気球内の空気の絶対温度をある値 $T_1$ よりも大きくする必要がある。$T_1$ を表す式として適当なものを、次の①〜⑤のうちから1つ選べ。ただし、$\rho_1$ は問4で求めた値である。
① $T_0$ ② $\dfrac{\rho_1}{2\rho_0}T_0$ ③ $\dfrac{\rho_1}{\rho_0}T_0$ ④ $\dfrac{\rho_0}{2\rho_1}T_0$ ⑤ $\dfrac{\rho_0}{\rho_1}T_0$
STEP 1圧力が等しい大気と気球内の空気で問3の式を比較する
気球の下部は開いているため、気球内の空気の圧力は周囲の大気の圧力 $p_0$ と等しくなっています。
問3で求めた $\dfrac{p}{\rho T} = \text{一定}$ より、圧力が同じ $p_0$ であれば $\rho T = \text{一定}$(密度と絶対温度は反比例) が成り立ちます。
よって、周囲の大気 $(\rho_0, T_0)$ と気球内の空気 $(\rho_1, T_1)$ について、
したがって、正解は ⑤ です。
その後、地表付近において気球内の空気の温度を、問5で求めた $T_1$ にして一定に保ち、おもりをゴンドラから下ろすと、図3のように熱気球は地表から浮上し、じゅうぶんに時間が経過するとある高度で静止した。静止している高度での大気の絶対温度は地表付近と等しく $T_0$ であった。
問6 [解答番号 14 ]
熱気球が静止したときの気球内の空気の密度を表す式として適当なものを、次の①〜⑤のうちから1つ選べ。
① $\dfrac{M-m}{V}$ ② $\dfrac{T_0}{T_1}\cdot\dfrac{M-m}{V}$ ③ $\dfrac{T_0}{T_1-T_0}\cdot\dfrac{M-m}{V}$ ④ $\dfrac{T_1}{T_0}\cdot\dfrac{M-m}{V}$ ⑤ $\dfrac{T_1-T_0}{T_0}\cdot\dfrac{M-m}{V}$
STEP 1静止した高度での「大気の密度 $\rho_{\text{外}}$」と「気球内の密度 $\rho_{\text{内}}$」の関係式を立てる
熱気球が静止した高度における、周囲の大気の圧力を $p'$、密度を $\rho_{\text{外}}$、温度を $T_0$ とします。
また、このときの気球内の空気の圧力を $p'$(下部が開いているため外気と同じ)、密度を $\rho_{\text{内}}$、温度を $T_1$ とします。
問3の関係式 $\dfrac{p}{\rho T} = \text{一定}$ より、同じ圧力 $p'$ において、
STEP 2静止した高度での力のつりあいを立てて $\rho_{\text{外}}$ を消去する
質量 $m$ のおもりを下ろしたので、空気を除いた熱気球本体の質量は $M - m$ になっています。
静止している高度での力のつりあい(浮力 = 本体の重力 + 気球内の空気の重力)より、
②式に①式の $\rho_{\text{外}} = \dfrac{T_1}{T_0}\rho_{\text{内}}$ を代入すると、
したがって、正解は ③ です。
問7 [解答番号 15 ]
熱気球が静止した高度における大気の密度を表す式として適当なものを、次の①〜⑤のうちから1つ選べ。
① $\rho_0$ ② $\dfrac{M}{m}\rho_0$ ③ $\dfrac{m}{M}\rho_0$ ④ $\dfrac{M-m}{M}\rho_0$ ⑤ $\dfrac{M}{M-m}\rho_0$
STEP 1問6の①式・②式から大気の密度 $\rho_{\text{外}}$ を求める
問6の①式より $\rho_{\text{内}} = \dfrac{T_0}{T_1}\rho_{\text{外}}$ です。また、問5より $\dfrac{T_0}{T_1} = \dfrac{\rho_1}{\rho_0}$ です。
これを問6の②式 $\rho_{\text{外}} - \rho_{\text{内}} = \dfrac{M - m}{V}$ に代入すると、
STEP 2問4の $\rho_0 - \rho_1 = \dfrac{M}{V}$ を代入して一気に簡単にする!
問4の結果 $\rho_1 = \rho_0 - \dfrac{M}{V}$ より、$\rho_0 - \rho_1 = \dfrac{M}{V}$ です。これを代入すると、
両辺の $V$ がきれいに消えて、
したがって、正解は ④ です。
問8 [解答番号 16 ]
熱気球が静止した高度における大気の圧力を表す式として適当なものを、次の①〜⑤のうちから1つ選べ。
① $p_0$ ② $\dfrac{M}{m}p_0$ ③ $\dfrac{m}{M}p_0$ ④ $\dfrac{M-m}{M}p_0$ ⑤ $\dfrac{M}{M-m}p_0$
STEP 1大気の温度が地表と同じ $T_0$ であることを利用する
静止した高度での大気の圧力を $p'$ とすると、大気の温度は地表付近と等しく $T_0$ であるから、問3の関係式 $\dfrac{p}{\rho T} = \text{一定}$ より、
問7より $\dfrac{\rho_{\text{外}}}{\rho_0} = \dfrac{M - m}{M}$ なので、
したがって、正解は ④ です。
第3問:抵抗とコンデンサーの直列交流回路(RC交流回路)
第3問は、抵抗RとコンデンサーCを交流電源Eにつないだ「RC直列交流回路」だよ!
ここで絶対に引っかかってはいけない超重要ポイントが2つ!
1つ目は、「電源の起電力 $V$ は最大値ではなく『実効値』で与えられている」こと!だから最大値は $V_0 = \sqrt{2}V$ になるよ。
2つ目は、「点bに対する点aの電位($V_{\text{a}} - V_{\text{b}}$)」と「点cに対する点bの電位($V_{\text{b}} - V_{\text{c}}$)」という日本語の向き!電流 $i = I_0\sin(\omega t)$ が $a \to b \to c$ の向きに流れるとき、コンデンサーの上側極板(b側)に蓄えられる電荷 $q$ の符号と位相がどうなるか、微積(または位相ベクトル図)でスッキリ視覚化しよう!
図のように、抵抗RとコンデンサーCを直列に交流電源Eに接続した回路がある。Eの起電力の実効値は $V$、角周波数は $\omega$、Cの電気容量は $C$ である。また、Rの電気抵抗は $R$ であり、これ以外の電気抵抗は無視できる。
問1 [解答番号 17 ]
点bに対する点aの電位が最大値をとる時刻において、点cに対する点bの電位を表す式として適当なものを、次の①〜⑤のうちから1つ選べ。
① $-\sqrt{2}V$ ② $-V$ ③ $0$ ④ $V$ ⑤ $\sqrt{2}V$
STEP 1「点bに対する点aの電位」と「点cに対する点bの電位」が何を表すか整理する
・点bに対する点aの電位 $V_{\text{ab}} = V_{\text{a}} - V_{\text{b}}$ は、抵抗Rにかかる電圧 $V_{\text{R}} = R i$ です。
・点cに対する点bの電位 $V_{\text{bc}} = V_{\text{b}} - V_{\text{c}}$ は、コンデンサーCにかかる電圧 $V_{\text{C}}$ です。
STEP 2抵抗の電圧 $V_{\text{R}}$ とコンデンサーの電圧 $V_{\text{C}}$ の位相差を考える
直列回路なので、抵抗RとコンデンサーCには共通の電流 $i = I_0 \sin(\omega t)$ が流れます。
・抵抗にかかる電圧 $V_{\text{ab}} = R i = R I_0 \sin(\omega t)$ は、電流 $i$ と同位相です。
・一方、コンデンサーにかかる電圧 $V_{\text{bc}}$ は、電流 $i$ よりも位相が $\dfrac{\pi}{2}$($90^\circ$)遅れます(すなわち $\sin\left(\omega t - \dfrac{\pi}{2}\right) = -\cos(\omega t)$ に比例します)。
したがって、$V_{\text{ab}} \propto \sin(\omega t)$ が最大値($\sin(\omega t) = 1$)をとる時刻では、必ず $\cos(\omega t) = 0$ となるため、コンデンサーの電位差 $V_{\text{bc}}$ はちょうど $0$ になります!
したがって、正解は ③ です。
問2 [解答番号 18 ]
図の矢印の向きに流れる電流が、正の一定値 $I_0$ を用いて
$$i = I_0 \sin(\omega t)$$
と表された。$I_0$ を表す式として適当なものを、次の①〜⑧のうちから1つ選べ。
① $V\sqrt{\dfrac{1}{R^2 + \left(\frac{1}{\omega C}\right)^2}}$ ② $V\sqrt{\dfrac{2}{R^2 + \left(\frac{1}{\omega C}\right)^2}}$ ③ $V\sqrt{\dfrac{1}{R^2 - \left(\frac{1}{\omega C}\right)^2}}$ ④ $V\sqrt{\dfrac{2}{R^2 - \left(\frac{1}{\omega C}\right)^2}}$
⑤ $V\sqrt{\dfrac{1}{R^2 + (\omega C)^2}}$ ⑥ $V\sqrt{\dfrac{2}{R^2 + (\omega C)^2}}$ ⑦ $V\sqrt{\dfrac{1}{R^2 - (\omega C)^2}}$ ⑧ $V\sqrt{\dfrac{2}{R^2 - (\omega C)^2}}$
STEP 1RC直列回路のインピーダンス $Z$ を求める
抵抗のリアクタンス(抵抗値)は $R$、コンデンサーのリアクタンスは $X_{\text{C}} = \dfrac{1}{\omega C}$ です。
互いに位相が $\dfrac{\pi}{2}$ ずれているため、回路全体のインピーダンス $Z$ は三平方の定理より、
STEP 2実効値 $V$ と最大値 $I_0$ の関係に注意して計算する
問題文で与えられている $V$ は起電力の実効値です。したがって、起電力の最大値 $V_{\text{max}}$ は、
電流の最大値(振幅)$I_0$ は $I_0 = \dfrac{V_{\text{max}}}{Z}$ で与えられるので、
したがって、正解は ② です。
問3 [解答番号 19 ]
点cに対する点bの電位を表す式として適当なものを、次の①〜⑧のうちから1つ選べ。
① $\dfrac{I_0}{\omega C}\sin(\omega t)$ ② $-\dfrac{I_0}{\omega C}\sin(\omega t)$ ③ $\dfrac{I_0}{\omega C}\cos(\omega t)$ ④ $-\dfrac{I_0}{\omega C}\cos(\omega t)$
⑤ $\omega C I_0 \sin(\omega t)$ ⑥ $-\omega C I_0 \sin(\omega t)$ ⑦ $\omega C I_0 \cos(\omega t)$ ⑧ $-\omega C I_0 \cos(\omega t)$
STEP 1電流 $i$ の向きとコンデンサーの上側極板(b側)の電荷 $q$ の関係を確認する
図の矢印の向き($\text{a} \to \text{R} \to \text{b}$)に電流 $i = I_0 \sin(\omega t)$ が流れるとき、電流はコンデンサーの上側の極板(点b側)に流れ込みます。
したがって、上側の極板(点b側)に蓄えられる電荷を $q$ とすると、$\dfrac{dq}{dt} = i$ であり、またコンデンサーの電圧の位相は電流より $\dfrac{\pi}{2}$ 遅れるため、
STEP 2位相の遅れ $-\dfrac{\pi}{2}$(または積分)から式を求める
電流 $i = I_0 \sin(\omega t)$ に対して、コンデンサーの電位 $V_{\text{bc}}$ は振幅が $X_{\text{C}} I_0 = \dfrac{I_0}{\omega C}$ であり、位相が $\dfrac{\pi}{2}$ 遅れるので、
💡 【微分による検算】 $q = C V_{\text{bc}} = -\dfrac{I_0}{\omega}\cos(\omega t)$ を時刻 $t$ で微分すると、$\dfrac{dq}{dt} = -\dfrac{I_0}{\omega} \cdot (-\omega \sin(\omega t)) = I_0 \sin(\omega t) = i$ となり、符号まで完全に一致することが確認できます!
したがって、正解は ④ です。
問4 [解答番号 20 ]
Rの平均消費電力を表す式として適当なものを、次の①〜⑥のうちから1つ選べ。
① $\dfrac{1}{2}RI_0^2$ ② $RI_0^2$ ③ $2RI_0^2$ ④ $\dfrac{1}{2}RI_0$ ⑤ $RI_0$ ⑥ $2RI_0$
STEP 1瞬間消費電力 $P(t) = R i^2$ の時間平均をとる(または実効値を使う)
電流の最大値が $I_0$ なので、電流の実効値 $I_{\text{e}}$ は、
抵抗Rでの平均消費電力 $\overline{P}$ は、実効値を用いて $\overline{P} = R I_{\text{e}}^2$ で表されるため、
💡 【三角関数での確認】 $P(t) = R i^2 = R I_0^2 \sin^2(\omega t) = R I_0^2 \cdot \dfrac{1 - \cos(2\omega t)}{2}$ となり、1周期平均をとると $\overline{\cos(2\omega t)} = 0$ となるため、$\overline{P} = \dfrac{1}{2}RI_0^2$ となります。
したがって、正解は ① です。
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