こんにちは、TMPS医学館のSora先生です!そして指導統括のニックニ(新国)先生と一緒に、2025年度・日本大学医学部(N1方式)の物理を1ステップの省略もなしで完全解説します。日大医学部の物理は60分で大問5題(マーク25箇所)というスピード勝負ですが、1問ずつ丁寧に分解すれば基礎〜標準法則の美しい組み合わせで解けます。物理が苦手な人も、上から順番に読んでいけば100%理解できるように途中計算まで全部書きました!
⚡ 解答一覧(スピードチェック・全25マーク)
配点目安:各4点 × 25問 = 100点大問 I(力学)
- [ 1 ] (1)①
- [ 2 ] (2)⑥ ($\frac{1}{e}\tan\theta$)
- [ 3 ] (3)⑤ ($\frac{3\sqrt{2}}{4}mv_0$)
- [ 4 ] (4)① ($\frac{\sqrt{2}}{8}v_0$)
- [ 5 ] (5)③ ($\frac{1}{2}$)
大問 II(熱力学)
- [ 6 ] (1)③ ($T_0$)
- [ 7 ] (2)② ($\frac{p_0Sl}{2RT_0}$)
- [ 8 ] (3)② ($\frac{3}{4}p_0Sl$)
- [ 9 ] (4)⑥ ($4T_0$)
- [ 10 ] (5)⑤ ($\frac{5}{2}T_0$)
大問 III(波動)
- [ 11 ] (1)⑤ ($3d$)
- [ 12 ] (2)①
- [ 13 ] (3)③
- [ 14 ] (4)④ ($\sqrt{\frac{2}{3}kR\lambda}$)
- [ 15 ] (5)①
大問 IV(電磁気)
- [ 16 ] (1)⑥ ($\frac{v_1Bl}{R}$)
- [ 17 ] (2)⑥ ($\frac{FR}{B^2l^2}$)
- [ 18 ] (3)⑥ ($Cv_2Bl$)
- [ 19 ] (4)③ ($\frac{m}{Bl}$)
- [ 20 ] (5)②
大問 V(原子)
- [ 21 ] (1)④ (連鎖反応・熱)
- [ 22 ] (2)④ ($a=141, b=56$)
- [ 23 ] (3)② ($173$)
- [ 24 ] (4)⑤ ($8.3\times 10^{19}$)
- [ 25 ] (5)④ ($0.3$)
大問 I :平面上の小球と壁の斜め衝突(摩擦なし・摩擦あり)
力学 / 目標時間 10分大問Iは「小球と壁の斜め衝突」です!角度 $\theta, \phi$ が「壁とのなす角」ではなく「壁の法線(壁に垂直な線)とのなす角」として定義されている点に100%集中してください!ここを取り違えると(1)からドミノ倒しになってしまいます。後半(3)〜(5)は「壁との摩擦によって平行方向にも力積を受けるタイプ」の典型問題。「運動量の変化=受けた力積」を壁に垂直な方向と平行な方向に分けて丁寧につくれば、確実に満点が取れますよ!
【問題文】
なめらかな水平面上を運動する小球を壁と衝突させた場合のはねかえり方について考える。下図は衝突の様子を上から見たものである。小球の質量を $m$,衝突前の小球の速さを $v_0$,衝突後の小球の速さを $v$,衝突前の小球の進行方向が壁の法線となす角を $\theta$,衝突後の小球の進行方向が壁の法線となす角を $\phi$ とする。また,小球と壁との間のはねかえり係数を $e$ とし,空気抵抗および水平面と小球の間の摩擦は無視できるものとする。
はじめに,小球と壁の間に働く摩擦力を無視できる場合について考える。この場合,小球の速度の壁に対して平行な成分は向きも大きさも変化しないが,壁に対して垂直な成分は向きが逆向きになり,大きさが $e$ 倍となる。
(1) 衝突後の小球の速度の壁に対して平行な成分の大きさ $v_{/\!/}$ と,壁に対して垂直な成分の大きさ $v_{\perp}$ の組合わせとして最も適当なものを一つ選べ。 1
図をよく見ると,角度 $\theta$ は「壁の法線(=壁に垂直な線)」と進行方向のなす角です。
したがって,直角三角形の底辺($\theta$ を挟む辺)が「壁に垂直な方向」,対辺($\theta$ の向かい側の辺)が「壁に平行な方向」になります。
摩擦力を無視できるとき:
- 壁に平行な方向には力が一切働かないので,速度成分はそのまま保たれます: $$ v_{/\!/} = v_0 \sin\theta $$
- 壁に垂直な方向は,はねかえり係数 $e$ によって速さが $e$ 倍になって跳ね返ります: $$ v_{\perp} = e \times (\text{衝突前の垂直成分}) = e v_0 \cos\theta $$
(2) 摩擦力を無視できる場合の $\tan\phi$ を求めよ。 2
衝突後の進行方向が壁の法線(壁に垂直な線)となす角が $\phi$ です。
よって,衝突後の速度ベクトルがつくる直角三角形において,
- 角 $\phi$ を挟む隣辺(底辺)= 壁に垂直な成分の大きさ $v_{\perp}$
- 角 $\phi$ の向かい側の対辺(高さ)= 壁に平行な成分の大きさ $v_{/\!/}$
次に,小球と壁の間に働く摩擦力が無視できない場合について考える。この場合,衝突時に壁に対して平行な方向に摩擦力が働くため,小球の速度の壁に対して平行な成分の大きさも変化する。ここで,衝突時に小球が壁から受ける,壁に対して平行な方向の力積の大きさは,壁に対して垂直な方向の力積の大きさの $\dfrac{1}{2}$ 倍になるとする。また, $\theta = 45^\circ$,はねかえり係数を $e = \dfrac{1}{2}$ とする。
(3) 衝突時に小球が壁から受ける,壁に対して垂直な方向の力積の大きさを求めよ。 3
まず,$\theta = 45^\circ$, $e = \dfrac{1}{2}$ を用いて,壁に垂直な方向の速さを計算します。
$\cos 45^\circ = \dfrac{\sqrt{2}}{2}$ なので,
- 衝突前の壁に垂直な速さ(壁に向かう右向き): $$ v_{0\perp} = v_0 \cos 45^\circ = \frac{\sqrt{2}}{2} v_0 $$
- 衝突後の壁に垂直な速さ(壁から跳ね返る左向き): $$ v_{\perp} = e v_0 \cos 45^\circ = \frac{1}{2} \times \frac{\sqrt{2}}{2} v_0 = \frac{\sqrt{2}}{4} v_0 $$
壁から離れる向き(左向き)を正とすると,衝突前の垂直方向の速度は $-v_{0\perp}$,衝突後は $+v_{\perp}$ です。
向きが逆転しているので,運動量の変化の大きさは「足し算」になることに注意しましょう!
(4) 衝突後の小球の速度の壁に対して平行な成分の大きさ $v_{/\!/}$ を求めよ。 4
問題文の条件より,平行な方向の力積の大きさ $I_{/\!/}$ は,垂直な方向の力積の大きさ $I_{\perp}$ の $\dfrac{1}{2}$ 倍です。
(3)で求めた $I_{\perp} = \dfrac{3\sqrt{2}}{4} m v_0$ を使うと,
壁に平行な方向(図の上向き)を正とします。
衝突前の平行方向の速度は $v_0 \sin 45^\circ = \dfrac{\sqrt{2}}{2} v_0$ です。
動摩擦力は運動を妨げる向き(図の下向き=負の向き)に働くため,小球は $-I_{/\!/}$ の力積を受けます。
両辺を $m$ で割り,$\sin 45^\circ = \dfrac{\sqrt{2}}{2} = \dfrac{4\sqrt{2}}{8}$ を代入します:
(5) 摩擦力が無視できない場合の $\tan\phi$ の値を求めよ。 5
(2)で確認した通り,いつでも $\tan\phi = \dfrac{v_{/\!/}}{v_{\perp}}$ が成り立ちます。
ここで,
- 衝突後の壁に平行な速度成分((4)より):$v_{/\!/} = \dfrac{\sqrt{2}}{8} v_0$
- 衝突後の壁に垂直な速度成分((3)のSTEP 1より):$v_{\perp} = e v_0 \cos 45^\circ = \dfrac{1}{2} \times \dfrac{\sqrt{2}}{2} v_0 = \dfrac{\sqrt{2}}{4} v_0$
この2つを割り算すると,
大問 II :連結された断熱容器とピストンによる気体の状態変化
熱力学 / 目標時間 12分
大問IIは熱力学の超王道「コック(栓)でつながれた2つの断熱容器」です!この問題で使う武器はたった3つ。
① 断熱自由膨張やコック開放後の混合(ピストン固定)では「内部エネルギーの総和が保存される($\Delta U_{\text{全体}} = 0$)」こと。
② ピストンを固定して加熱 = 定積変化($W=0$)。
③ ピストンを自由に動けるようにして加熱 = 外気圧 $p_0$ とつり合う定圧変化。
各状態の $(p, V, n, T)$ を整理しながら進めば絶対に迷いません!
【問題文】
図1のように,断面積 $S$,長さ $l$ の容器Aと,なめらかに動くピストンによって容積を自由に変えることができる断面積 $S$ の容器Bが細い管で接続されている。細い管には自由に開閉できる栓が設けてあり,容器,ピストン,細い管および栓は断熱材でできている。また容器Bには大きさおよび熱容量の無視できる温度調節器が取り付けられていて,内部の気体に熱を加えることができる。ただし,細い管の体積は無視できるものとし,栓が閉じている場合,容器Aおよび容器Bの気体はお互いに影響を与えないものとする。温度調節器はピストンの動きを妨げないものとする。ピストンの右側は一定の圧力 $p_0$ の外気に接している。また,気体定数を $R$ とし,実験使用する理想気体の定積モル比熱を $\dfrac{3}{2}R$ とする。
| 段階 | 栓・ピストン条件 | 容器A $(p, V, n, T)$ | 容器B $(p, V, n, T)$ |
|---|---|---|---|
| 初期状態 | 栓:閉 / Bは真空($V_B=Sl$) | $(p_0, Sl, n_0, T_0)$ | 真空 $(0, Sl, 0, -)$ |
| 状態 I (1)(2) | 栓:開 / ピストン固定($V_B=Sl$) | $(\frac{1}{2}p_0, Sl, \frac{1}{2}n_0, T_0)$ | $(\frac{1}{2}p_0, Sl, \frac{1}{2}n_0, T_0)$ |
| 状態 II (3) | 栓:閉 / ピストン固定でBを$p_0$まで加熱 | $(\frac{1}{2}p_0, Sl, \frac{1}{2}n_0, T_0)$ | $(p_0, Sl, \frac{1}{2}n_0, 2T_0)$ |
| 状態 III (4) | 栓:閉 / ピストン自由でBを$2Sl$まで加熱→固定 | $(\frac{1}{2}p_0, Sl, \frac{1}{2}n_0, T_0)$ | $(p_0, 2Sl, \frac{1}{2}n_0, 4T_0)$ |
| 状態 IV (5) | 栓:開 / ピストン固定($V_{\text{全}}=3Sl$)で均一化 | A+B全体で均一:体積 $3Sl$,物質量 $n_0$,温度 $\frac{5}{2}T_0$ | |
はじめに,容器Aに圧力が $p_0$,温度が $T_0$ の理想気体を封入し栓を閉じる。その後,容器Bの内部を真空にして,容積が $Sl$ となる位置でピストンを固定する。その状態で栓を開き十分に時間が経過すると,気体は容器Aと容器B全体に均一にひろがった。この状態を状態Iとする。
(1) 状態Iにおける,気体の温度を求めよ。 6
はじめ容器Aに入っていた気体の物質量を $n_0$ とすると,理想気体の状態方程式より,
次に栓を開くと,気体は真空だった容器Bへ膨張します(断熱自由膨張)。このとき:
- 容器・ピストン・管はすべて断熱材であり,温度調節器も作動させていないので,外部との熱の出入りは $Q = 0$。
- ピストンは固定されており,真空に向かって広がるだけなので,気体が外部にする仕事も $W = 0$。
したがって,熱力学第一法則 $\Delta U = Q + W$ より,内部エネルギーの変化は $\Delta U = 0$ となります。
理想気体の内部エネルギー $U = n_0 C_V T$ は絶対温度 $T$ のみに比例するため,温度は変化せず $T_0$ のままです!
(2) 状態Iにおいて,容器Bに存在する気体の物質量を求めよ。 7
状態Iでは,容器Aの容積は $V_A = Sl$,容器Bの容積も $V_B = Sl$ でまったく同じ容積です。
気体はAとB全体に均一(同じ圧力・同じ温度 $T_0$)に広がっているので,全物質量 $n_0$ がちょうど半分ずつAとBに分かれます。
※なお,このとき状態Iにおける気体の圧力 $p_{\text{I}}$ は,体積が $Sl \to 2Sl$ の2倍になったのでボイルの法則より $p_{\text{I}} = \dfrac{1}{2}p_0$ です。
次に,状態Iから細い管に取り付けられた栓を閉じた後,ピストンを固定したまま温度調節器で容器Bに存在する気体の圧力が $p_0$ になるまで加熱した。この状態を状態IIとする。続いて,ピストンを自由に動けるようにしてから,図2のように容器Bの容積が $2Sl$ となる位置まで容器Bの気体を温度調節器で加熱し,その後ピストンを固定した。この状態を状態IIIとする。
(3) 状態Iから状態IIまでの間に容器Bに存在する気体が吸収した熱量を求めよ。 8
栓を閉じてピストンを固定したまま容器Bを加熱するので,容器Bの気体(物質量 $n_B = \dfrac{p_0 S l}{2 R T_0}$,容積 $V_B = Sl$ 一定)は定積変化をします。
容器Bの気体の圧力は,
- 状態Iの圧力:$p_{\text{I}} = \dfrac{1}{2} p_0$ (温度 $T_{\text{I}} = T_0$)
- 状態IIの圧力:$p_{\text{II}} = p_0$ (圧力が2倍になったので,温度も2倍の $T_{\text{II}} = 2T_0$)
定積変化では気体がする仕事は $0$ なので,吸収した熱量 $Q_{\text{I}\to\text{II}}$ はすべて内部エネルギーの増加 $\Delta U_B$ になります。
定積モル比熱 $C_V = \dfrac{3}{2}R$ を用いると,
ここに(2)で求めた $n_B = \dfrac{p_0 S l}{2 R T_0}$(すなわち $n_B R T_0 = \dfrac{1}{2} p_0 S l$)を代入します:
(4) 状態IIIにおいて,容器Bに存在する気体の温度を求めよ。 9
状態IIで容器Bの圧力は外気圧と同じ $p_0$ になっており,温度は $T_{\text{II}} = 2T_0$,容積は $V_{\text{II}} = Sl$ です。
ここからピストンを自由に動けるようにして加熱すると,ピストンは常に右側の外気圧 $p_0$ とつり合いながら動くため,容器Bの気体は圧力 $p_0$ 一定の定圧変化をします。
容積が $V_{\text{II}} = Sl$ から $V_{\text{III}} = 2Sl$ へと2倍になったので,シャルルの法則($\dfrac{V}{T} = \text{一定}$)より絶対温度も状態IIの2倍になります!
【別解(状態方程式で一発確認)】状態IIIの容器Bについて $p_0 (2Sl) = n_B R T_{\text{III}}$。ここに $n_B R = \dfrac{p_0 S l}{2 T_0}$ を代入すると $2 p_0 S l = \dfrac{p_0 S l}{2 T_0} T_{\text{III}} \implies T_{\text{III}} = 4 T_0$。バッチリ一致しますね!
次に,状態IIIから細い管に取り付けられた栓を開き十分に時間が経過すると,気体は容器Aと容器B全体に均一にひろがった。この状態を状態IVとする。
(5) 状態IVにおける,気体の温度を求めよ。 10
状態IIIではピストンは再び固定されています。栓を開く直前のAとBの状態を確認しましょう:
- 容器Aの気体:状態Iで栓を閉じてから何も変化していないので,物質量 $n_A = \dfrac{1}{2} n_0$,温度 $T_A = T_0$。
- 容器Bの気体:物質量 $n_B = \dfrac{1}{2} n_0$,温度 $T_B = T_{\text{III}} = 4T_0$。
ピストンが固定された断熱容器内で栓を開いて気体を混合するとき,外部との熱の出入りも仕事もゼロ($Q=0, W=0$)なので,AとBの気体の内部エネルギーの和が保存されます。
状態IVでの全体の温度を $T_{\text{IV}}$(全物質量は $n_A + n_B = n_0$)とすると,
$n_A = \dfrac{1}{2}n_0$, $n_B = \dfrac{1}{2}n_0$, $T_A = T_0$, $T_B = 4T_0$ を代入し,両辺を $n_0 C_V$ で割ると,
大問 III :平凹レンズに入れた液体薄膜による光の干渉(変形ニュートンリング)
波動 / 目標時間 15分
大問IIIは2025年度の日大医学部物理のなかで一番差がつく要注意問題です!
普通のニュートンリングは「中心でレンズが板に接していて厚さ $0$,外側ほど厚くなる」のですが,今回は平凹レンズ(凹面に液体を溜めている)なので「中心が最も深く(深さ $d$),外側に行くほど浅くなる(液体の厚さが減る)」のです!
しかも屈折率が「空気 $1.0 <$ 液体 $1.5 <$ レンズ $1.7$」と単調増加しているため,上面反射も下面反射も両方とも固定端反射(位相が $\pi$ ずれる)になり,位相のずれが相殺されます。ここを丁寧に追えば(5)まで完答できます!
【問題文】
図1のように,一方が平面で他方が半径 $R$ の球面の一部になっている平凹レンズを水平な床の上に置き,少量の液体を入れた。レンズ中央における液体の深さを $d$ とする。図2は液面付近を拡大したものである。レンズの上方から空気中の波長 $\lambda$ の単色光を液面に対して垂直に入射させ,レンズの上方から観察すると,液面で反射する光とレンズの上面で反射する光が干渉して,レンズの中央付近が暗点となり,暗点を中心とする同心円状の明環,暗環が見られた。空気の屈折率は $1.0$,レンズの屈折率は $1.7$,液体の屈折率は $1.5$ とする。また, $R$ は $d$ に比べて十分大きいとし,液体の表面張力はなく,液面は完全に水平を保つものとする。
(1) レンズ中央付近において,液面で反射する光とレンズの上面で反射する光の光路差を求めよ。 11
レンズの上面で反射する光は,液面で反射する光に比べて,屈折率 $n = 1.5$ の液体中(深さ $d$)を往復(距離 $2d$)だけ余分に進みます。
したがって,光路差 $\Delta L$ は,
(2) レンズ中央付近が暗点となることから,自然数 $m$ を用いて,レンズ中央における液体の深さ $d$ が満たす条件を求めよ。 12
屈折率の大小関係を比べると,
- 液面での反射:空気($1.0$)$\to$ 液体($1.5$)の境界での反射。屈折率が小さい媒質から大きい媒質へ向かう反射なので,位相が $\pi$(半波長分)ずれる。
- レンズ上面での反射:液体($1.5$)$\to$ レンズ($1.7$)の境界での反射。こちらも屈折率が小さい媒質($1.5$)から大きい媒質($1.7$)へ向かう反射なので,位相が $\pi$(半波長分)ずれる。
両方とも位相が $\pi$ ずれるため,反射による位相差は打ち消し合って同位相の波源の干渉と同じ条件になります!
STEP 2:弱め合う条件(暗点)に自然数 $m = 1, 2, 3, \dots$ を当てはめる
反射で位相差が生じないため,2つの光が弱め合って暗点となる条件は,「光路差 $\Delta L = 3d$ が半波長 $\dfrac{\lambda}{2}$ の奇数倍」であることです。
問題文で「自然数 $m$($m = 1, 2, 3, \dots$)を用いて」と指定されているので,$m=1$ のとき $\dfrac{1}{2}\lambda$ となるように $\left( m - \dfrac{1}{2} \right)\lambda$ と表します:
(3) レンズの上から見たときに,液面上に現れる暗点とレンズ中央に近い4つの暗環の様子を表した図として最も適当なものを一つ選べ。 13
レンズ中央付近では球面がほぼ水平なので,外側へ少し進んでも液体の深さは緩やかにしか変化しません。しかし,外側へ行けば行くほど球面の傾きが急になるため,少し外へ進むだけで液体の深さが急激に変化します。
したがって,隣り合う暗環どうしの間隔は外側へ行くほど狭く(密に)なります。
また,中央が暗点なので,中央と1番目の暗環の間はある程度広く開き,1番目 $\to$ 2番目 $\to$ 3番目 $\to$ 4番目と外側に行くにつれて間隔が単調に狭くなっている ③ が正解です!(次の(4)で半径が $\sqrt{k}$ に比例することからも $1 : \sqrt{2} : \sqrt{3} : 2$ の間隔である③だと数学的にも証明できます)。
(4) レンズ中央の暗点を $0$ 番目として,外側に向かって $1$ 番目, $2$ 番目,$\cdots$ と暗環を数える場合, $k$ 番目の暗環の半径を求めよ。ただし,必要であれば $|x|$ が $1$ より十分小さいときに成り立つ近似式 $(1+x)^n \fallingdotseq 1 + nx$ を用いてよい。 14
上の図解のように,中心から水平距離 $r$ だけ離れた位置において,レンズの凹面が中央の最下点よりもどれだけ高くなっているかを $\Delta y$ とします。
球面の中心Oから引いた半径 $R$ の直角三角形に三平方の定理を使うと,
ここで近似式 $(1+x)^n \fallingdotseq 1 + nx$ において $x = -\dfrac{r^2}{R^2}$, $n = \dfrac{1}{2}$ を用いると,
液面は水平で中央の深さが $d$ なので,半径 $r$ の位置における液体の深さ $h$ は中央の深さ $d$ から $\Delta y$ だけ浅くなります:
半径 $r$ の位置での光路差は $3h = 3\left( d - \dfrac{r^2}{2R} \right) = 3d - \dfrac{3r^2}{2R}$ です。
いま,レンズ中央($r=0$)がすでに暗点($0$ 番目)になっており,そこでの光路差は $3d = \left( m - \dfrac{1}{2} \right)\lambda$ です。
中央から外側へ向かうと液体の深さ $h$ が減り,光路差が $1$ 波長 $\lambda$ 減るごとに次の暗環($1$ 番目, $2$ 番目,$\dots$)が現れます!
したがって,外側から数えて $k$ 番目の暗環(半径 $r_k$)では,中央よりも光路差がちょうど $k\lambda$ だけ小さくなっています:
(5) 液体を少しずつ追加していくと,液面上に暗環が $5$ つになった。このときのレンズ中央における液体の深さ $d'$ が満たすべき条件として最も適当なものを一つ選べ。 15
レンズ中央での液体の深さが $d'$ のとき,液面上の位置によって液体の深さ $h$ は,
- 液面の最も外側の縁(液体の端)では,液体の深さは $h = 0$(光路差 $3h = 0$)。
- レンズ中央では,液体の深さは $h = d'$(光路差 $3h = 3d'$)。
そして,半径 $r > 0$ の場所で暗環(輪っか)ができるのは,光路差 $3h$ が $$ 3h = \frac{1}{2}\lambda,\ \frac{3}{2}\lambda,\ \frac{5}{2}\lambda,\ \frac{7}{2}\lambda,\ \frac{9}{2}\lambda,\ \frac{11}{2}\lambda,\ \dots $$ となる場所です(※中央 $r=0$ 自身がちょうどこの値になったときは,輪っか状の「暗環」ではなく点状の「暗点」になります)。
STEP 2:「暗環(輪っか)がちょうど5つ存在する」条件を不等式にする液体の外縁($3h = 0$)から内側に向かって,
- 外側から1つ目の暗環:$3h = \dfrac{1}{2}\lambda$
- 外側から2つ目の暗環:$3h = \dfrac{3}{2}\lambda$
- 外側から3つ目の暗環:$3h = \dfrac{5}{2}\lambda$
- 外側から4つ目の暗環:$3h = \dfrac{7}{2}\lambda$
- 外側から5つ目の暗環:$3h = \dfrac{9}{2}\lambda$
- (外側から6つ目の暗環:$3h = \dfrac{11}{2}\lambda$)
$5$ つ目の暗環($3h = \dfrac{9}{2}\lambda$)が中心($r=0$)の単なる「暗点」ではなく半径をもった「暗環」として液面上に存在するためには,中央の光路差 $3d'$ が $\dfrac{9}{2}\lambda$ より真に大きくなければなりません($\dfrac{9}{2}\lambda < 3d'$)。
一方で,中央の光路差 $3d'$ が $\dfrac{11}{2}\lambda$ を超えてしまうと,$6$ つ目の暗環が生まれてしまいます(なお,ちょうど $3d' = \dfrac{11}{2}\lambda$ のときは中央が「暗点」になり,周囲の「暗環」は5つのままなので等号 $\leqq$ が入ります!)。
よって,中央の光路差 $3d'$ が満たすべき条件は,
各辺を $3$ で割ると,
大問 IV :磁場中の平行レール上を運動する導体棒(抵抗回路・コンデンサー回路)
電磁気 / 目標時間 12分
大問IVは医学部入試で超頻出の「磁場中の導体棒レール問題」です!
前半(1)(2)は外力 $F$ で引く基本問題ですが,電流の正の向きが「P $\to$ Q(図の上から下)」と指定されているため,右向きに動いたときの誘導電流の符号が正か負かをローレンツ力(またはレンツの法則)で慎重に判定しましょう。
後半(3)〜(5)は「充電されたコンデンサー $Q_0$ をつないで導体棒を加速させる問題」。問題文の(4)に誘導の式まで書いてくれているので,それに沿って計算するだけで秒殺できます!
【問題文】
図1のように鉛直下向き(紙面の表側から裏側の向き)で磁束密度の大きさが $B$ の一様な磁場(磁界)中で,水平面上に十分長い2本の導体のレールが間隔 $l$ で平行に置かれている。そのレールの左端には抵抗値 $R$ の抵抗がつながれている。このレールの上におかれた質量 $m$ の導体棒の運動について考える。導体棒は2本のレールに対して常に垂直を保ちながら,その上を左右になめらかに動くことができる。ここで,導体棒とレールの接点を図のように P,Q とし,電流は導体棒を P $\to$ Q の向きに流れる場合を正とし,速度,加速度は水平右向きを正とする。また,導体棒とレールの間の摩擦,空気抵抗およびレールと導体棒の電気抵抗は無視できるものとし,棒とレールに流れる電流が作る磁場の磁束密度の大きさは $B$ に比べ十分小さく無視できるものとする。
はじめに,導体棒に水平右向きに一定の大きさ $F$ の力を加えると,導体棒はレール上をすべりだし,しばらくして一定の速度 $v_1$ になった。
(1) 導体棒が一定の速度 $v_1$ で運動しているときに導体棒に流れる電流を求めよ。 16
導体棒が磁束密度 $B$ の磁場(紙面表から裏向き)を横切って右向きに速さ $v_1$ で動くと,棒に生じる誘導起電力の大きさ $V_1$ は,
よって,回路に流れる電流の大きさはオームの法則より $I_1 = \dfrac{V_1}{R} = \dfrac{v_1 B l}{R}$ です。
ここで向き(符号)を確認します:
- 導体棒が右へ動くと,閉回路を貫く紙面裏向きの磁束が増えます。レンツの法則(右ねじの法則)より,回路全体には反時計回りに誘導電流が流れます。
- 反時計回りということは,導体棒内部では下から上(Q $\to$ P の向き)に電流が流れます(※なお,
問題文冒頭に「電流は導体棒を P $\to$ Q の向きに流れる場合を正とし」と明記されています。導体棒が右向き($v_1 > 0$)に動くとき,フレミングの右手の法則(またはローレンツ力 $q\vec{v}\times\vec{B}$)より正電荷は Q $\to$ P(上向き)に力を受けるため,導体棒内を流れる電流の向きは Q $\to$ P(すなわち負の向き) となり,符号を含めた電流値は ③ $-\dfrac{v_1 B l}{R}$ となります。一方で「電流(の大きさ)」として正の値 ⑥ $\dfrac{v_1 B l}{R}$ を指す場合もありますが,冒頭で「電流はP$\to$Qを正とする」と定義している理由は後半(4)の $I = -\dfrac{\Delta Q}{\Delta t}$ の符号定義と統一するためでもあります。試験本番で向きを厳密に問う場合は ③ $-\dfrac{v_1 B l}{R}$(
(2) 速度 $v_1$ を求めよ。 17
導体棒に大きさ $|I_1| = \dfrac{v_1 B l}{R}$ の電流が流れると,磁場から左向きに大きさ $|I_1| B l$ の電磁力(アンペール力)を受けます。
導体棒が一定の速度 $v_1$ で運動しているとき,加速度は $0$ なので,右向きの外力 $F$ と左向きの電磁力がつり合っています:
これを $v_1$ について解くと,
次に図2のように,導体棒をレールから取り除き,レールの左端の抵抗値 $R$ の抵抗に,電気量 $Q_0\ (Q_0 > 0)$ に帯電した電気容量 $C$ のコンデンサーを直列に接続する。その後,導体棒をレールに対して常に垂直になるように静かに置くと導体棒はレール上をすべりだし,しばらくして一定の速度 $v_2$ になった。ただし,コンデンサーに蓄えられた電荷は,抵抗側につながれた極板を正とする。
(3) 導体棒が一定の速度 $v_2$ で運動しているときにコンデンサーに蓄えられている電気量 $Q$ を求めよ。 18
導体棒を静かに置くと,コンデンサーの上側極板($+$)から抵抗 $R$ $\to$ P $\to$ Q へと放電電流が流れ,導体棒は右向きの電磁力 $IBl$ を受けて右向きに加速します。
しばらくして導体棒が一定の速度 $v_2$ になったとき,加速度は $a = 0$ です。
導体棒に働く力は電磁力 $IBl$ のみなので,$a=0$ ということは回路に流れる電流が $I = 0$ になったことを意味します!
電流が $I = 0$ のとき,抵抗 $R$ での電圧降下 $RI$ は $0$ です。
したがって,コンデンサーの電圧 $\dfrac{Q}{C}$(上側極板が高電位)と,導体棒の誘導起電力 $v_2 B l$(上側Pが高電位)がちょうどつり合って等しくなっています:
(4) 時間 $\Delta t$ の間に,コンデンサーの電気量が $\Delta Q$ だけ変化した場合,導体棒を流れる電流は $I = - \dfrac{\Delta Q}{\Delta t}$ と表せる。また,導体棒の加速度を $a$ とすると,導体棒の速度の変化量 $\Delta v$ を用いて $a = \dfrac{\Delta v}{\Delta t}$ と表せる。導体棒の運動方程式とこれらの式を用いて,導体棒の速度が $v_2$ となるまでの,導体棒の速度の変化量 $\Delta v$ あたりのコンデンサーの電気量の減少量 $- \dfrac{\Delta Q}{\Delta v}$ を求めよ。 19
導体棒を P $\to$ Q の向き(正の向き)に電流 $I$ が流れるとき,フレミングの左手の法則より,導体棒は水平右向き(正の向き)に大きさ $I B l$ の電磁力を受けます。
したがって,導体棒の運動方程式は,
ここに問題文で与えられた $a = \dfrac{\Delta v}{\Delta t}$ と $I = - \dfrac{\Delta Q}{\Delta t}$ を代入します:
両辺に $\Delta t$ を掛けて消去し,$- \dfrac{\Delta Q}{\Delta v}$ の形に変形すると,
(5) 速度 $v_2$ を求めよ。 20
(4)で求めた関係式 $m \Delta v = - \Delta Q \cdot B l$ は,運動中のどの微小時間においても常に成り立ちます。
したがって,導体棒を静かに置いてから(初速度 $0$,電気量 $Q_0$),一定の速度 $v_2$ に達するまで(終速度 $v_2$,電気量 $Q = C v_2 B l$)の全体の変化量に対してもそのまま成り立ちます!
全体の速度の変化量は $\Delta v = v_2 - 0 = v_2$,コンデンサーの電気量の減少量は $- \Delta Q = Q_0 - Q$ なので,
上式に(3)で求めた $Q = C v_2 B l$ を代入して整理します:
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