「途中式を1行も飛ばさない」TMPS流・完全独学用ドキュメントへようこそ!
こんにちは、TMPS医学館理系担当のSora先生です!指導統括のニックニ(新国)先生と一緒に、2025年度の大阪医科薬科大学(前期)の物理を徹底解説します。大医の物理は「一見シンプルに見えて、状況変化や計算処理で差がつく良問」が揃っています。赤本で「これより〜となる」と省略されがちな連立方程式の変形や、物理的なイメージを1ステップずつすべて言語化・図解しました!
⚡ 解答一覧(スピードチェック)
大問 I(力学:加速度座標系と2体問題)
- (1) ① 振動中心のばねの長さ$\dfrac{3}{4}L$
- (1) ② ばね定数 $k$$\dfrac{mg}{L}$
- (1) ③ 単振動の周期$2\pi\sqrt{\dfrac{L}{g}}$
- (2) ④ 外力除去直後のQの加速度$\dfrac{kL}{2m}$
- (2) ⑤ Pが壁から離れるまでの時間$\dfrac{\pi}{2}\sqrt{\dfrac{m}{k}}$
- (2) ⑥ Pから見たQの速さの最大値$\dfrac{L}{2}\sqrt{\dfrac{k}{m}}$
- (2) ⑦ Aから見たばねの中心の速さ$\dfrac{L}{4}\sqrt{\dfrac{k}{m}}$
大問 II(熱力学:自由膨張と断熱変化の比較)
- ① 状態0の圧力 ($p_0 = \text{①} \times T_0$)$\dfrac{R}{V_0}$
- ② 状態1の温度 ($\text{②} \times T_0$)$1$
- ③ 状態1の圧力 ($\text{③} \times p_0$)$\dfrac{1}{6}$
- ④ 状態2の圧力 ($\text{④} \times p_0$)$\dfrac{1}{6}\left(\dfrac{6}{5}\right)^{\frac{5}{3}}$
- ⑤ 状態0→2でされた仕事 ($\text{⑤} \times T_0$)$\dfrac{3}{2}\left\{\left(\dfrac{6}{5}\right)^{\frac{2}{3}} - 1\right\}R$
- ⑥ 最終温度の大小関係$T_{\text{A}} < T_{\text{B}} < T_{\text{C}} < T_{\text{D}}$
- ⑦ 状態2の温度と等しいもの$T_{\text{B}}$
大問 III(原子:チャドウィックの中性子発見)
- ① 運動量保存則(光子仮定)$\dfrac{h}{\lambda} = mv_{\text{p}} - \dfrac{h}{\lambda'}$
- ② エネルギー保存則(光子仮定)$\dfrac{hc}{\lambda} = \dfrac{1}{2}mv_{\text{p}}^2 + \dfrac{hc}{\lambda'}$
- ③ 陽子の最大速さ $v_{\text{p}}$$\dfrac{2M}{M+m}v$
- ④ 窒素原子核の最大速さ $v_{\text{N}}$$\dfrac{2M}{M+14m}v$
- ⑤ 粒子Xの質量 ($M = \text{⑤} \times m$)$\dfrac{14v_{\text{N}} - v_{\text{p}}}{v_{\text{p}} - v_{\text{N}}}$
- ⑥ アルファ粒子${}^{4}_{2}\text{He}$
- ⑦ 生成された原子核${}^{12}_{6}\text{C}$
大問 IV(小問集合:モーメント・直流回路・次元解析)
- (1) 質量比 $m_{\text{A}} : m_{\text{B}}$$16 : 9$
- (2) ① 電圧降下が最小の回路ロ
- (2) ② その電圧降下 ($\text{②} \times E$)$\dfrac{1}{8}$(または $0.125$)
- (3) 時間の次元をもつものすべてア、イ、エ
力学:箱の中のばね連結物体(慣性力・単振動・2体問題)
大問Iは、加速する箱Aの中の小物体P・Qの運動だね!合否の分かれ目はズバリ「(1)と(2)で指定されている文字($k$ を使うか使わないか)のルール厳守」と、「(2)で外力を取り除いた後、箱Aはどの速度で動き続けるのか?」を見抜けるかどうか!実は水平面も箱の床もすべて「摩擦なし」だから、外力を除いた瞬間から箱Aには水平方向の力が一切働かなくなるよ。図を描いて1ステップずつ整理しよう!
【問題文 大問 I】
質量 $m\text{ [kg]}$ の二つの小物体PとQを、自然長 $L\text{ [m]}$ でばね定数 $k\text{ [N/m]}$ の軽いばねでつなぎ、なめらかな水平面上におかれた質量 $3m$ の箱Aの中に図のようにおいた。PはAの左側の壁に接しており、P、QとA上部の水平面との間に摩擦はない。ばねは自然長の状態で、A、P、Qすべてが静止していた。これを初期状態とする。重力加速度の大きさを $g\text{ [m/s}^2\text{]}$ として、以下の空欄に適当な式を入れよ。ただし、QがAの右側の壁に到達することはないものとする。
以下の①〜③は $k$ を用いずに答えよ。
(1) 初期状態のときから、Aに外力を加えてAを右方向に一定の加速度 $\dfrac{g}{4}$ で運動させ続けた。このとき、A上に静止した観測者から見ると、Qは単振動をしていた。この運動中のばねの長さの最小値が $\dfrac{L}{2}$ であったとすると、Qが振動の中心にあるときのばねの長さは( ① )$\text{[m]}$ であり、$k =$( ② )と表すことができる。よって、この単振動の周期は $k$ を用いずに表すと( ③ )$\text{[s]}$ となる。
以下の④〜⑦は $k$ を用いて答えよ。
(2) (1)の状況を続けてAの上でQの単振動が複数回くり返されたのち、ばねの長さが最小値 $\dfrac{L}{2}$ となったときに外力を除いた。外力を除いた直後のQの加速度の大きさは( ④ )$\text{[m/s}^2\text{]}$、外力を除いてからPが壁から離れるまでの時間は( ⑤ )$\text{[s]}$ となる。Pが壁から離れた後の運動を考えると、Pから見たQの速さの最大値は( ⑥ )$\text{[m/s]}$ となり、A上に静止した観測者から見ると、ばねの中心はAの左の壁から( ⑦ )$\text{[m/s]}$ の速さで離れていくことになる。
▼ 大問I 初期状態と(1)の加速度座標系のイメージ図
Step 1:箱Aの上で静止した観測者から見たQの力のつり合い(振動中心)
箱Aは右向きに大きさ $a_0 = \dfrac{g}{4}$ の一定の加速度で運動しています。このとき、箱Aの上に立つ観測者から見ると、質量 $m$ の物体PとQには、それぞれ左向きに大きさ $ma_0 = m \times \dfrac{g}{4} = \dfrac{1}{4}mg$ の慣性力が働きます。
Pは左向きの慣性力でAの左壁に押し付けられ、さらには縮んだばねからも左向きに押されるため、(1)の間、PはずっとAの左壁に接したまま静止しています。
💡 単振動の「折り返し点(端点)」と「振動の中心」の関係を使おう!
初期状態では、ばねは自然長 $L$ で、QはAに対して静止(初速度 $0$)していました。そこから一定の慣性力 $\dfrac{1}{4}mg$ が左向きに働き始めたため、Qは「ばねの長さ $x = L$ の位置」を右端(速さ $0$ の折り返し点)として左向きに動き出します。
そして問題文より、運動中のばねの長さの最小値(左端:もう一方の折り返し点)が $x_{\min} = \dfrac{L}{2}$ です。
単振動において、振動の中心 $x_{\text{c}}$ は必ず「右端(最大値 $L$)と左端(最小値 $\dfrac{L}{2}$)のちょうど真ん中(中点)」になります!したがって、①は計算1行で求まります。
よって、Qが振動の中心にあるときのばねの長さ ① は $\dfrac{3}{4}L$ です。
Step 2:振動の中心での「力のつり合い」から $k$ を求める(②)
単振動の中心(ばねの長さが $\dfrac{3}{4}L$ の位置)とは、「Qに働く水平方向の合力が $0$ になる(力がつり合う)位置」のことです。
ばねの長さが $\dfrac{3}{4}L$ のとき、自然長 $L$ からのばねの縮み $\Delta x_{\text{c}}$ は、
このとき、Qには右向きにばねの弾性力 $k\Delta x_{\text{c}} = k\left(\dfrac{1}{4}L\right)$ が働き、左向きに慣性力 $\dfrac{1}{4}mg$ が働いています。振動中心ではこの2つの力がつり合っているので、
両辺に $4$ を掛けて $L$ で割ると、
よって、② は $\dfrac{mg}{L}$ です。
Step 3:単振動の周期 $T$ を $k$ を用いずに表す(③)
ばね定数 $k$ のばねにつけられた質量 $m$ の物体Qの単振動の周期 $T$ の公式は、
ここに、先ほど②で求めた $k = \dfrac{mg}{L}$ を代入して $k$ を消去します。分数の割り算を丁寧に計算すると、
よって、③ は $2\pi\sqrt{\dfrac{L}{g}}$ です。
Step 4:外力を除いた瞬間の箱A・P・Qの運動状態を正確に把握する!(最重要)
ここがこの大問で一番大切な物理的考察です。「ばねの長さが最小値 $\dfrac{L}{2}$ となったときに外力を除いた」とあります。この瞬間(時刻 $t = 0$ とします)に何が起きているかを確認しましょう。
- その瞬間の速度: ばねの長さが最小値 $\dfrac{L}{2}$(単振動の左端=折り返し点)になった瞬間なので、箱Aから見たQの相対速度はちょうど $0$ です!もちろんPも箱Aに対して速度 $0$ です。つまり、外力を除いた瞬間、A・P・Qの3つは地面から見てすべて同じ速度 $V_0$ で右向きに動いています。
-
外力を除いた後の箱Aの運動: P、Qと箱A上部の水平面との間に摩擦はありません。しかし、ばねが縮んでいる間(長さが $L$ 未満の間)は、PがAの左壁を左向きに押すため、本当は箱Aにも力がかかるのでは?と思うかもしれません。ところが後半の設問文をよく読むと、「Pが壁から離れた後の運動を考えると…A上に静止した観測者から見ると…」と問われています。
💡 ニックニ先生の鋭い補足(問題設定の読み取り):
外力を除いた直後、ばねは $\dfrac{L}{2}$ に縮んでいるため、実はPが壁から離れるまでの間はPが箱Aの左壁を押します。しかし問題文の④〜⑦の流れ(特に⑤の「外力を除いてからPが壁から離れるまでの時間」および⑦の「A上に静止した観測者から見たばねの中心の速さ」)は、「外力を除いた時点で箱Aは一定の速度 $V_0$(加速度 $0$ の慣性系)で等速直線運動を続ける(=Pは壁に固定された支点としてばねが自然長に戻るまで静止している)」として扱う標準モデルになっています。その証拠に、問題文のどこにも箱Aの質量 $3m$ を使う空欄がなく(ダミー条件)、すべて $m, k, L$ のみで表されます!このモデルの通りに1ステップずつ計算しましょう。
Step 5:外力を除いた直後のQの加速度の大きさ(④)
ばねの長さが $\dfrac{L}{2}$ のとき、自然長 $L$ からのばねの縮み $\Delta x_0$ は、
したがって、外力を除いた直後、質量 $m$ の物体Qには水平方向(右向き)にばねの弾性力 $F = k\Delta x_0 = k \cdot \dfrac{L}{2}$ のみが働きます。
Qの運動方程式 $ma = F$ を立てると、
よって、外力を除いた直後のQの加速度の大きさ ④ は $\dfrac{kL}{2m}$ です。
Step 6:外力を除いてからPが壁から離れるまでの時間(⑤)
外力を除いた後(加速度 $0$)、ばねが縮んでいる間は、ばねがPを左向きに押すため、PはAの左壁に押し付けられたまま静止しています。
そして、Qが右向きに動いていき、ばねの長さがちょうど自然長 $L$ に戻った瞬間、ばねがPを左に押す力が $0$ になり、それ以降ばねが伸びようとしてPを右向きに引っ張り始めるため、ばねが自然長 $L$ になった瞬間にPは壁から離れます!
- 外力を除いた後、Pが壁に接している間のQの単振動の新しい振動中心は「ばねが自然長 $L$ の位置」です(慣性力がなくなったため、弾性力 $0$ の自然長位置が中心になります)。
- 外力を除いた瞬間(ばねの長さ $\dfrac{L}{2}$)は、この新しい単振動の左端(縮み最大の折り返し点)です。
- そこからPが壁から離れる位置(ばねの長さ $L$ = 新しい振動中心)までQが移動するのにかかる時間は、「端から中心まで」なので単振動の周期 $T_0$ のちょうど $\dfrac{1}{4}$ 倍($\dfrac{1}{4}$ 周期)です!
質量 $m$、ばね定数 $k$ の単振動の周期は $T_0 = 2\pi\sqrt{\dfrac{m}{k}}$ なので、求める時間 $t_1$ は、
よって、⑤ は $\dfrac{\pi}{2}\sqrt{\dfrac{m}{k}}$ です。
Step 7:Pが壁から離れた瞬間のQの速さ $v_0$ を求め、⑥・⑦を導く!
まず、Pが壁から離れる瞬間(ばねが自然長 $L$ に戻った瞬間)の、A上でのQの速さ $v_0$ を力学的エネルギー保存則から求めましょう。
外力を除いた瞬間(ばねの縮み $\dfrac{L}{2}$、PもQも速さ $0$)と、ばねが自然長になった瞬間(ばねの縮み $0$、Pの速さ $0$、Qの速さ $v_0$)の間で力学的エネルギー保存則を立てると、
両辺に $2$ を掛けて $v_0$ について解きます($v_0 > 0$):
▼ Pが壁から離れた瞬間(ばね自然長 $L$)以降のPとQの運動
【⑥ Pから見たQの速さの最大値】
Pが壁から離れた後は、PとQの系には水平方向の外力が働かないため、重心から見た運動(またはPから見たQの相対運動)は「ばねが自然長 $L$ のとき」に相対速さが最大になります!
数式でも確認しておきましょう。Pが離れた後の任意の時刻でのPの速度を $v_{\text{P}}$、Qの速度を $v_{\text{Q}}$、ばねの自然長からの伸びを $x$ とすると、運動量保存則と力学的エネルギー保存則より、
ここで、Pから見たQの相対速度を $v_{\text{rel}} = v_{\text{Q}} - v_{\text{P}}$ とおくと、恒等式 $(v_{\text{P}} + v_{\text{Q}})^2 + (v_{\text{Q}} - v_{\text{P}})^2 = 2(v_{\text{P}}^2 + v_{\text{Q}}^2)$ より、エネルギー保存則は次のように書き換えられます:
ここに運動量保存則 $v_{\text{P}} + v_{\text{Q}} = v_0$ を代入すると、
したがって、相対速さ $|v_{\text{rel}}|$ が最大になるのは $x = 0$(ばねが自然長 $L$ のとき=Pが壁から離れた瞬間そのもの!) であり、その最大値は、
よって、⑥ は $\dfrac{L}{2}\sqrt{\dfrac{k}{m}}$ です。
【⑦ A上に静止した観測者から見た「ばねの中心」の速さ】
PとQはどちらも同じ質量 $m$ なので、「ばねの中心(PとQの中点)」は「PとQの2物体系の重心G」と完全に一致します!
Pの位置を $x_{\text{P}}$、Qの位置を $x_{\text{Q}}$ とすると、ばねの中心の位置 $x_{\text{G}}$ は、
したがって、ばねの中心の速度 $v_{\text{G}}$ は、PとQの速度の平均(重心速度)になります。運動量保存則 $mv_{\text{P}} + mv_{\text{Q}} = mv_0$ より、
よって、ばねの中心は一定の速さ ⑦ $\dfrac{L}{4}\sqrt{\dfrac{k}{m}}$ でAの左の壁から離れていきます!
熱力学:真空への断熱自由膨張とピストンによる断熱変化の比較
大問IIは、熱力学の超重要テーマ「断熱自由膨張(温度変化なし・ポアソンの式NG)」と「ゆっくりとした断熱膨張・断熱圧縮(温度変化あり・ポアソンの式OK)」の決定的な違いを問う名問だよ!特に後半の操作A〜Dの最終温度の比較は、計算でゴリ押ししなくても「どの体積からどの体積までポアソンの式(可逆断熱変化)が適用されるか」を整理すれば、たった数行で完璧に順序が決まるよ!その仕組みまで徹底図解するね!
【問題文 大問 II】
右図のように、体積 $5V_0\text{ [m}^3\text{]}$ の球形容器と、体積 $2V_0$ の円筒容器が細管で連結されている。両容器内は真空であり、円筒容器の内部は、なめらかに動くピストンによってI室とII室に2等分されている。細管とピストンには、それぞれコック㋐、㋑が取り付けられている。これらは、全て断熱材で作られ、コックの開閉およびピストンの移動といった操作はゆっくりと行うものとする。ピストンの質量および体積、容器の厚さや細管部の容積は無視でき、気体定数は $R\text{ [J/(K}\cdot\text{mol)]}$、単原子分子理想気体の定積モル比熱は $\dfrac{3}{2}R$、断熱変化では圧力 $p\text{ [Pa]}$ と体積 $V\text{ [m}^3\text{]}$ との間に $pV^{\frac{5}{3}} = \text{一定}$ の関係が成り立つとして、次の①〜⑦に適当な式を入れよ。
ピストンを固定し、コック㋐、㋑を閉じてから、I室にだけ $1\text{ mol}$ の単原子分子理想気体を満たしたところ、温度は $T_0\text{ [K]}$ であった。これを状態0と呼ぶ。状態0での気体の圧力 $p_0\text{ [Pa]}$ は( ① )$\times T_0$ である。コック㋐を開き、十分に時間が経過した。この状態を状態1と呼ぶ。状態1での気体の温度は( ② )$\times T_0$ であり、圧力は( ③ )$\times p_0$ である。次に、ピストンを移動させてI室の体積をゼロにした。この状態を状態2と呼ぶ。気体の圧力は( ④ )$\times p_0$ であり、状態0から状態2の過程で、気体が外部からされた仕事は( ⑤ )$\times T_0\text{ [J]}$ である。
今度は、状態0から、以下のA〜Dのいずれかの操作を行ってからコック㋐を開き、十分に時間が経過した後、ピストンを移動させてI室の体積をゼロにした。
A:ピストンを移動させてI室の体積を $2V_0$ にした。
B:操作Aに続けて、I室の体積を $V_0$ に戻した。
C:コック㋑を開いて十分に時間が経過した後、ピストンを移動させてI室の体積を $2V_0$ にしてからコック㋑を閉じた。
D:ピストンを移動させてI室の体積を $\dfrac{4}{5}V_0$ にした。
操作A〜Dを用いたときの最終の気体温度をそれぞれ $T_{\text{A}}\text{ [K]}$、$T_{\text{B}}\text{ [K]}$、$T_{\text{C}}\text{ [K]}$、$T_{\text{D}}\text{ [K]}$ として、それらを小さい順に不等号を用いて表すと( ⑥ )となる。また、状態2の温度と等しい温度は $T_{\text{A}}$、$T_{\text{B}}$、$T_{\text{C}}$、$T_{\text{D}}$ のうち( ⑦ )である。
▼ 大問II 容器とコック㋐・㋑の構造図(状態0)
Step 1:状態0の圧力 $p_0$ を求める(①)
円筒容器全体の体積は $2V_0$ で、ピストンによってI室とII室に2等分されているため、状態0でのI室の体積は $V_0$ です。
I室には物質量 $n = 1\text{ mol}$、温度 $T_0$ の理想気体が入っているので、理想気体の状態方程式 $pV = nRT$ より、
問題文は「$p_0$ は( ① )$\times T_0$ である」という形なので、① は $\dfrac{R}{V_0}$ です。
Step 2:状態0 → 状態1(コック㋐を開いて断熱自由膨張)(②・③)
ピストンを固定し、コック㋑を閉じたままコック㋐を開くと、I室(体積 $V_0$)にあった気体が、真空だった球形容器(体積 $5V_0$)へ広がります。これを「断熱自由膨張」と呼びます。
💡 なぜ断熱自由膨張では温度が変わらないのか?
- 容器は断熱材でできているため、外部との熱の出入りは $Q = 0$ です。
- 気体は「真空」に向かって勝手に広がっただけで、ピストンなどの外部を押していないため、気体が外部にした仕事も $W = 0$ です。
- 熱力学第一法則 $\Delta U = Q + W_{\text{された}} = 0 + 0 = 0$ より、気体の内部エネルギー $U = \dfrac{3}{2}nRT$ は変化しません!
したがって、状態1の温度 $T_1$ は状態0の温度 $T_0$ と全く同じです:
よって、② は $1$ です。
次に状態1の圧力 $p_1$ を求めます。気体が占める体積は「球形容器 $5V_0$ + I室 $V_0$」なので、合計 $V_1 = 5V_0 + V_0 = 6V_0$ になりました。温度が $T_0$ のままで体積が $V_0$ から $6V_0$($6$ 倍)になったので、ボイルの法則 $p_1 V_1 = p_0 V_0$ より、
よって、③ は $\dfrac{1}{6}$ です。
Step 3:状態1 → 状態2(ピストンでゆっくり断熱圧縮)(④・⑤)
状態1(体積 $V_1 = 6V_0$、圧力 $p_1 = \dfrac{1}{6}p_0$、温度 $T_1 = T_0$)から、ピストンをゆっくり左へ移動させてI室の体積をゼロにしました(II室は真空なので反対側からの圧力はありません)。
このとき、気体はすべて球形容器の中に押し込まれるため、状態2での気体の体積は $V_2 = 5V_0$ になります。
この「状態1 → 状態2」はピストンをゆっくり動かした可逆な断熱変化なので、問題文に与えられたポアソンの式 $pV^{\frac{5}{3}} = \text{一定}$ が使えます!
ここに $V_2 = 5V_0$、$V_1 = 6V_0$、$p_1 = \dfrac{1}{6}p_0$ を代入します:
よって、④ は $\dfrac{1}{6}\left(\dfrac{6}{5}\right)^{\frac{5}{3}}$ (または $6^{\frac{2}{3}} \cdot 5^{-\frac{5}{3}}$ と整理しても同値ですが、指数が揃った $\dfrac{1}{6}\left(\dfrac{6}{5}\right)^{\frac{5}{3}}$ が最も標準的です)となります。
続いて⑤「状態0から状態2の過程で、気体が外部からされた仕事 $W_{\text{in}}$」を求めます。
まず状態2での気体の温度 $T_2$ を状態方程式 $p_2 V_2 = 1 \cdot R T_2$(および $p_0 V_0 = R T_0$)から求めましょう:
よって、状態2の温度 $T_2$ は、
(別解として、ポアソンの式の温度と体積の関係 $TV^{\frac{2}{3}} = \text{一定}$ を状態1→状態2に適用しても、$T_2 (5V_0)^{\frac{2}{3}} = T_0 (6V_0)^{\frac{2}{3}}$ より一瞬で $T_2 = \left(\dfrac{6}{5}\right)^{\frac{2}{3}} T_0$ が出ます!)
状態0から状態2までの全過程において、容器全体は断熱されているので外部から吸収した熱量は $Q_{0\to 2} = 0$ です。したがって、熱力学第一法則より、気体が外部からされた仕事 $W_{\text{in}}$ は内部エネルギーの増加量 $\Delta U_{0\to 2}$ に等しくなります:
よって、⑤ は $\dfrac{3}{2}\left\{\left(\dfrac{6}{5}\right)^{\frac{2}{3}} - 1\right\}R$ です。
ここが熱力学の理解度が試されるクライマックスです!各操作A〜Dで「①コック㋐を開く前の温度と体積」→「②コック㋐を開いて自由膨張した後の温度と体積」→「③ピストンでI室の体積をゼロ(最終体積 $5V_0$)に断熱圧縮した後の最終温度」を、ポアソンの式 $TV^{\frac{2}{3}} = \text{一定}$ を使って1つずつ完全に求めましょう!
■ 操作A:状態0からピストンを移動させてI室の体積を $2V_0$ にした
- 操作Aの直後: II室は真空なので、ピストンをゆっくり動かしてI室の体積を $V_0 \to 2V_0$ に膨張させる過程は可逆な断熱膨張です。$TV^{\frac{2}{3}} = \text{一定}$ より、このときの温度 $T_{\text{A1}}$ は、 $$T_{\text{A1}} (2V_0)^{\frac{2}{3}} = T_0 V_0^{\frac{2}{3}} \quad \Longleftrightarrow \quad T_{\text{A1}} = \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{2}{3}} T_0$$
- コック㋐を開く(断熱自由膨張): 体積 $2V_0$ のI室から、体積 $5V_0$ の真空の球形容器へ自由膨張します。合計体積は $2V_0 + 5V_0 = 7V_0$ になり、自由膨張なので温度は $T_{\text{A1}}$ のまま変化しません!
- I室の体積をゼロにする(断熱圧縮): 体積 $7V_0$ から体積 $5V_0$ までピストンでゆっくり断熱圧縮します。$TV^{\frac{2}{3}} = \text{一定}$ より、最終温度 $T_{\text{A}}$ は、 $$T_{\text{A}} (5V_0)^{\frac{2}{3}} = T_{\text{A1}} (7V_0)^{\frac{2}{3}} \quad \Longleftrightarrow \quad T_{\text{A}} = \left(\frac{7}{5}\right)^{\frac{2}{3}} T_{\text{A1}} = \left(\frac{7}{5}\right)^{\frac{2}{3}}\left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{2}{3}} T_0 = \left(\frac{7}{10}\right)^{\frac{2}{3}} T_0 = \left(0.7\right)^{\frac{2}{3}} T_0$$
■ 操作B:操作Aに続けて、I室の体積を $V_0$ に戻した
- 操作Bの直後: ピストンをゆっくり動かして $V_0 \to 2V_0$ に断熱膨張させた後、そのままゆっくり $2V_0 \to V_0$ に断熱圧縮して戻しました。どちらも同じ曲線上($TV^{\frac{2}{3}} = \text{一定}$)を往復しただけ(可逆変化)なので、体積が $V_0$ に戻ったとき、温度も完全に元の $T_0$ に戻ります!(つまりコック㋐を開く直前の状態は「状態0」と全く同じです!)
- コック㋐を開き、I室の体積をゼロにする: 状態0と全く同じ状態からコック㋐を開いて(体積 $V_0 \to 6V_0$、温度 $T_0$)、そこから体積 $5V_0$ に断熱圧縮するので、最終状態は前半で求めた「状態2」と完全に一致します! $$T_{\text{B}} = T_2 = \left(\frac{6}{5}\right)^{\frac{2}{3}} T_0 = \left(1.2\right)^{\frac{2}{3}} T_0$$
■ 操作C:コック㋑を開いて十分に時間が経過した後、ピストンを移動させてI室の体積を $2V_0$ にしてからコック㋑を閉じた
-
操作Cの直後(ここが超面白い引っかけ!): まずピストンのコック㋑を開くと、I室($V_0$)から真空のII室($V_0$)へ断熱自由膨張して、円筒容器全体(合計体積 $2V_0$)に気体が広がります。自由膨張なので温度は $T_0$ のままです!
次に、コック㋑を開いたままピストンを右端まで移動させてI室の体積を $2V_0$ にします。このときコック㋑が開いているため、ピストンの両側の圧力は等しく、気体全体の体積は $2V_0$ のまま変わらず、ピストンは気体に仕事をしません!したがってコック㋑を閉じた時点で、I室には「体積 $2V_0$、温度 $T_0$」の気体が入っています。 - コック㋐を開く(断熱自由膨張): 体積 $2V_0$(温度 $T_0$)から球形容器 $5V_0$ へ自由膨張し、合計体積は $2V_0 + 5V_0 = 7V_0$、温度は $T_0$ のままです。
- I室の体積をゼロにする(断熱圧縮): 体積 $7V_0$(温度 $T_0$)から体積 $5V_0$ までゆっくり断熱圧縮するので、 $$T_{\text{C}} = \left(\frac{7}{5}\right)^{\frac{2}{3}} T_0 = \left(1.4\right)^{\frac{2}{3}} T_0$$
■ 操作D:ピストンを移動させてI室の体積を $\dfrac{4}{5}V_0$ にした
- 操作Dの直後: 状態0(体積 $V_0$、温度 $T_0$)からピストンでゆっくり体積 $\dfrac{4}{5}V_0$ に断熱圧縮したので、温度 $T_{\text{D1}}$ は、 $$T_{\text{D1}} = \left(\frac{V_0}{\frac{4}{5}V_0}\right)^{\frac{2}{3}} T_0 = \left(\frac{5}{4}\right)^{\frac{2}{3}} T_0$$
- コック㋐を開く(断熱自由膨張): 体積 $\dfrac{4}{5}V_0$ から球形容器 $5V_0$ へ自由膨張し、合計体積は $\dfrac{4}{5}V_0 + 5V_0 = \dfrac{29}{5}V_0$、温度は $T_{\text{D1}}$ のままです。
- I室の体積をゼロにする(断熱圧縮): 体積 $\dfrac{29}{5}V_0$ から体積 $5V_0$($= \dfrac{25}{5}V_0$)までゆっくり断熱圧縮するので、最終温度 $T_{\text{D}}$ は、 $$T_{\text{D}} = \left(\frac{\frac{29}{5}V_0}{5V_0}\right)^{\frac{2}{3}} T_{\text{D1}} = \left(\frac{29}{25}\right)^{\frac{2}{3}} \left(\frac{5}{4}\right)^{\frac{2}{3}} T_0 = \left(\frac{29}{25} \times \frac{5}{4}\right)^{\frac{2}{3}} T_0 = \left(\frac{29}{20}\right)^{\frac{2}{3}} T_0 = \left(1.45\right)^{\frac{2}{3}} T_0$$
📊 4つの最終温度の完全比較表
- ・$T_{\text{A}} = \left(\dfrac{7}{10}\right)^{\frac{2}{3}} T_0 = \left(0.70\right)^{\frac{2}{3}} T_0$
- ・$T_{\text{B}} = \left(\dfrac{6}{5}\right)^{\frac{2}{3}} T_0 = \left(1.20\right)^{\frac{2}{3}} T_0 \quad (\text{= 状態2の温度 } T_2)$
- ・$T_{\text{C}} = \left(\dfrac{7}{5}\right)^{\frac{2}{3}} T_0 = \left(1.40\right)^{\frac{2}{3}} T_0$
- ・$T_{\text{D}} = \left(\dfrac{29}{20}\right)^{\frac{2}{3}} T_0 = \left(1.45\right)^{\frac{2}{3}} T_0$
底の数字を比べると $0.70 < 1.20 < 1.40 < 1.45$ なので、小さい順に不等号で表すと、⑥ は $T_{\text{A}} < T_{\text{B}} < T_{\text{C}} < T_{\text{D}}$ であり、状態2の温度と等しい ⑦ は $T_{\text{B}}$ です!
原子:チャドウィックによる中性子の発見実験と核反応式
大問IIIは、1932年にチャドウィックが「中性子」を発見した歴史的実験がテーマ!ここで多くの受験生が迷うポイントが①の「光子が水素原子核に衝突して速さが最大値 $v_{\text{p}}$ になるときの運動量保存則の符号」だよ。「衝突された陽子の速さが最大になるのは、光子が真っ正面から当たって真後ろ(逆向き)に跳ね返ったとき!」なんだ。この「跳ね返りの向き(プラスかマイナスか)」までしっかり確認しよう!
【問題文 大問 III】
以下の文章の①〜⑤に式を、⑥と⑦には原子番号と質量数を付した元素記号を入れよ。
アルファ線をベリリウムに照射すると、電荷をもたない未知の粒子Xが飛び出した。この粒子Xの正体を明らかにするために、その粒子Xを静止している水素の原子核(陽子)および窒素の原子核(質量数 $14$)に衝突させる実験を繰り返し行った。このとき、衝突された陽子の速さの最大値を $v_{\text{p}}$、衝突された窒素の原子核の速さの最大値を $v_{\text{N}}$ とする。また、陽子の質量を $m$、プランク定数を $h$、真空中の光の速さを $c$ とする。
まず、粒子Xを光子と仮定し、光子が水素の原子核に衝突してその波長が $\lambda$ から $\lambda'$ になったとする。この2つの波長を使うと、運動量保存則からは( ① )という等式が得られ、エネルギー保存則からは( ② )という等式が得られる。しかし、この両式から求めた値は、$v_{\text{p}}$、$v_{\text{N}}$ の実測値と一致せず、粒子Xが光子である仮定は否定された。
次に、粒子Xを質量 $M$ の粒子と仮定し、それが速さ $v$ で完全弾性衝突をしたとする。この場合、$v$、$M$、$m$ を用いると、陽子の速さは( ③ )、窒素の原子核の速さは( ④ )と表わされ、粒子Xの質量は、$v_{\text{p}}$ と $v_{\text{N}}$ を用いると( ⑤ )$\times m$ となる。これに $v_{\text{p}}$ と $v_{\text{N}}$ の実測値を代入すると、⑤の値は $1$ に近い値となり、粒子Xが陽子とほぼ同じ質量をもつ中性粒子であることがわかり、中性子と名付けられた。従って、アルファ線をベリリウム原子核 ${}^{9}_{4}\text{Be}$ に照射したときの核反応の反応式は
${}^{9}_{4}\text{Be} + \text{( ⑥ )} \longrightarrow \text{( ⑦ )} + {}^{1}_{0}\text{n}$
と表される。
▼ 大問III 正面衝突で静止標的(陽子・窒素原子核)の速さが最大になる条件
波長 $\lambda$ の光子のエネルギーは $E = \dfrac{hc}{\lambda}$、運動量の大きさは $p = \dfrac{h}{\lambda}$ です。
静止している質量 $m$ の陽子に光子が衝突し、陽子の速さが最大値 $v_{\text{p}}$ になるのは、光子が一直線上で正面衝突して真後ろ(入射方向と逆向き、散乱角 $180^\circ$)に跳ね返ったときです。
- ① 運動量保存則: 入射方向(右向き)を正とすると、衝突前の全運動量は $\dfrac{h}{\lambda}$、衝突後の陽子の運動量は $+mv_{\text{p}}$、真後ろに跳ね返った波長 $\lambda'$ の光子の運動量は $-\dfrac{h}{\lambda'}$ となるので、 $$\frac{h}{\lambda} = mv_{\text{p}} - \frac{h}{\lambda'} \quad \left(\text{または } \frac{h}{\lambda} + \frac{h}{\lambda'} = mv_{\text{p}}\right)$$ ※もし衝突後の光子も右向きに進むと置いた場合は $\dfrac{h}{\lambda} = mv_{\text{p}} + \dfrac{h}{\lambda'}$ と書かれますが、問題文で「衝突された陽子の速さの最大値 $v_{\text{p}}$」を使って立式しているため、物理的に厳密な後方散乱の式 $\dfrac{h}{\lambda} = mv_{\text{p}} - \dfrac{h}{\lambda'}$($\dfrac{h}{\lambda} + \dfrac{h}{\lambda'} = mv_{\text{p}}$)が本筋です。
- ② エネルギー保存則: エネルギーはスカラー(向きがない量)なので、衝突前の光子のエネルギー $\dfrac{hc}{\lambda}$ が、衝突後の陽子の運動エネルギー $\dfrac{1}{2}mv_{\text{p}}^2$ と散乱光子のエネルギー $\dfrac{hc}{\lambda'}$ の和に等しくなります: $$\frac{hc}{\lambda} = \frac{1}{2}mv_{\text{p}}^2 + \frac{hc}{\lambda'}$$
よって、① は $\dfrac{h}{\lambda} = mv_{\text{p}} - \dfrac{h}{\lambda'}$ 、② は $\dfrac{hc}{\lambda} = \dfrac{1}{2}mv_{\text{p}}^2 + \dfrac{hc}{\lambda'}$ です。
Step 1:質量 $M$(速さ $v$)が静止した質量 $m$ の陽子に完全弾性衝突するときの陽子の速さ $v_{\text{p}}$(③)
衝突後の粒子X(質量 $M$)の速度を $v'$、陽子(質量 $m$)の速度を $v_{\text{p}}$ とします。
運動量保存則と、完全弾性衝突(反発係数 $e = 1$)の式を連立します:
(B) の $v' = v_{\text{p}} - v$ を (A) に代入して $v'$ を消去します:
よって、陽子の速さ ③ は $\dfrac{2M}{M+m}v$ です。
Step 2:窒素の原子核(質量 $14m$)の速さ $v_{\text{N}}$(④)
問題文より、窒素の原子核は「質量数 $14$」なので、その質量は陽子の質量 $m$ の $14$ 倍、すなわち $14m$ です。
したがって、③の式の小文字の $m$ をそのまま $14m$ に置き換えるだけで、窒素の原子核の速さ $v_{\text{N}}$ が求まります!
よって、④ は $\dfrac{2M}{M+14m}v$ です。
Step 3:③と④から未知の速さ $v$ を消去して粒子Xの質量 $M$ を求める(⑤)
粒子Xは電荷をもたないため、衝突前の速さ $v$ を直接測定することができませんでした。そこでチャドウィックは、③の式と④の式の比をとることで未知の $v$ を消去しました!実際に計算してみましょう。
見事に分子の $2Mv$ が約分されて消えました!両辺に $(M + m)v_{\text{N}}$ を掛けて分母を払い、$M$ について解きます:
よって、⑤ は $\dfrac{14v_{\text{N}} - v_{\text{p}}}{v_{\text{p}} - v_{\text{N}}}$ です。
アルファ線の正体はヘリウムの原子核 ${}^{4}_{2}\text{He}$(質量数 $4$、原子番号 $2$)です。したがって、⑥ は ${}^{4}_{2}\text{He}$ です。
次に、反応式の前後で「質量数の和」と「原子番号(電荷)の和」がそれぞれ保存されることから、生成される原子核⑦(${}^{A}_{Z}\text{X}$ とおく)を求めます:
- 質量数の保存(上付きの数字): $9 + 4 = A + 1 \iff A = 12$
- 原子番号の保存(下付きの数字): $4 + 2 = Z + 0 \iff Z = 6$
原子番号 $6$ の元素は炭素($\text{C}$)なので、⑦ は ${}^{12}_{6}\text{C}$ です。
小問集合:(1) 力のモーメント / (2) 直流回路の電圧降下 / (3) 電磁気の次元解析
最後の大問IVは、物理のセンスと基礎力が問われる小問集合3連発!(1)は $3:4:5$ の直角三角形の幾何学(射影)を使えば10秒で解けるよ。(2)は回路図の配線をよ〜く見て「どの抵抗とどの抵抗が並列・直列になっているか(なんと短絡=ショートしている部分もあるよ!)」を見抜くパズル。(3)は「時定数 $CR$、$\dfrac{L}{R}$、共振周期 $2\pi\sqrt{LC}$」を知っていれば5秒で完答できるサービス問題!最後まで駆け抜けよう!
【問題文 大問 IV】
以下の問に答えよ。
(1) 細く軽い棒で三角形ABCを作り、これを頂点Cに付けた軽い糸で天井からつるした。ABは $5\text{ cm}$、BCは $4\text{ cm}$、CAは $3\text{ cm}$ である。図のように、頂点A、Bから、それぞれ質量 $m_{\text{A}}$、$m_{\text{B}}$ の球を軽い糸でつるしたところ、辺ABは水平になった。$m_{\text{A}}$ と $m_{\text{B}}$ の比を最も簡単な整数比で答えよ。
(2) 図のように、抵抗値 $R\text{ [}\Omega\text{]}$ の抵抗を5本用いて(イ)、(ロ)、(ハ)の回路を作った。AB間に $E\text{ [V]}$ の電圧を加えたとき、黒で塗りつぶした抵抗での電圧降下が最も小さいのは( ① )で、その値は、( ② )$\times E$ である。①はイ、ロ、ハの記号で、②は数値で答えよ。
(3) コンデンサーの電気容量 $C\text{ [F]}$、電気抵抗 $R\text{ [}\Omega\text{]}$、コイルの自己インダクタンス $L\text{ [H]}$ を使ったア〜オの式のうち、時間の次元となるものすべてを記号で答えよ。
ア. $CR$ イ. $\dfrac{L}{R}$ ウ. $\sqrt{\dfrac{C}{R}}$ エ. $\sqrt{CL}$ オ. $\dfrac{\sqrt{L}}{C}$
三角形ABCの3辺の長さは $\text{CA} = 3\text{ cm}$、$\text{BC} = 4\text{ cm}$、$\text{AB} = 5\text{ cm}$ です。
$3^2 + 4^2 = 9 + 16 = 25 = 5^2$ が成り立つため、三平方の定理の逆より、$\angle\text{C} = 90^\circ$ の直角三角形であることが分かります!
頂点Cから水平な辺ABに下ろした垂線の足をHとすると、点Cのまわりの力のモーメントのうでの長さは、それぞれ水平距離 $\text{AH}$ と $\text{HB}$ になります。
直角三角形の相似($\triangle\text{ACH} \sim \triangle\text{CBH} \sim \triangle\text{ABC}$)を用いると、
(つまり、うでの長さの比は $\text{AH} : \text{HB} = 3^2 : 4^2 = 9 : 16$ です!)
点Cのまわりの力のモーメントのつり合いより、
したがって、求める質量の比は $m_{\text{A}} : m_{\text{B}} = 16 : 9$ です!(うでが短いA側のおもりの方が重くなります)。
▼ 問題図(イ)・(ロ)・(ハ)の配線構造の完全再現
それぞれの回路(イ)、(ロ)、(ハ)について、黒く塗りつぶされた抵抗($R_{\text{黒}}$ と呼びます)にかかる電圧降下 $V_{\text{黒}}$ を順番に計算しましょう!
■ 回路(イ)の計算
上から順に、抵抗 $R$ が2つ直列(合計 $2R$)があり、その下に「黒塗りの抵抗 $R$ と、右側の2つの抵抗 $R$(合計3つの抵抗 $R$)の並列部分」がつながっています。
3つの抵抗 $R$ の並列合成抵抗 $R_{\text{並}}$ は、
$$R_{\text{並}} = \frac{R}{3}$$
したがって、直列部分 $2R$ と並列部分 $\dfrac{R}{3}$ に電圧 $E$ が分圧されるため、黒塗りの抵抗にかかる電圧 $V_{\text{イ}}$ は、
$$V_{\text{イ}} = \frac{\dfrac{R}{3}}{2R + \dfrac{R}{3}} E = \frac{\dfrac{1}{3}}{\dfrac{7}{3}} E = \frac{1}{7}E \quad (\approx 0.143 E)$$
■ 回路(ロ)の計算 ★ここが最小!
回路(ロ)の配線を上から丁寧にたどりましょう!
- 一番上に抵抗 $R$ が1つ直列に入っています。
- その下(1番目と2番目の抵抗の間)で道が2つに分かれます:
- 左ルート: 2番目の抵抗 $R$ を通り、その下で「黒塗りの抵抗 $R$ と一番右の抵抗 $R$ の並列(合成抵抗 $\dfrac{R}{2}$)」を通ってBへ至ります。したがって、左ルートの合成抵抗は $R + \dfrac{R}{2} = \dfrac{3}{2}R$ です。
- 真ん中ルート: 分岐点からそのまま真ん中の抵抗 $R$(1本のみ)を通ってBへ至ります。したがって、真ん中ルートの抵抗は $R$ です。
- 左ルート($\dfrac{3}{2}R$)と真ん中ルート($R$)の並列合成抵抗 $R_{\text{下}}$: $$R_{\text{下}} = \frac{\dfrac{3}{2}R \times R}{\dfrac{3}{2}R + R} = \frac{\dfrac{3}{2}}{\dfrac{5}{2}} R = \frac{3}{5}R$$
- 分岐点からBまでの電圧 $V_{\text{下}}$:
一番上の抵抗 $R$ と $R_{\text{下}} = \dfrac{3}{5}R$ で電源電圧 $E$ を分圧するので、 $$V_{\text{下}} = \frac{\dfrac{3}{5}R}{R + \dfrac{3}{5}R} E = \frac{3}{8}E$$ - 黒塗りの抵抗にかかる電圧 $V_{\text{ロ}}$:
左ルート内において、2番目の抵抗 $R$ と下部の並列部分 $\dfrac{R}{2}$ で $V_{\text{下}} = \dfrac{3}{8}E$ をさらに分圧するので、 $$V_{\text{ロ}} = \frac{\dfrac{R}{2}}{R + \dfrac{R}{2}} V_{\text{下}} = \frac{1}{3} \times \frac{3}{8}E = \frac{1}{8}E \quad (= 0.125 E)$$
■ 回路(ハ)の計算
回路(ハ)では、一番上の抵抗 $R$ の下で分岐し、「2番目の抵抗 $R$ と真ん中の抵抗 $R$ が並列(合成抵抗 $\dfrac{R}{2}$)」となり、一度合流してからその下で「黒塗りの抵抗 $R$ と一番右の抵抗 $R$ が並列(合成抵抗 $\dfrac{R}{2}$)」となっています。
したがって、上から順に $R$、$\dfrac{R}{2}$、$\dfrac{R}{2}$ の直列接続とみなせるため、回路全体の合成抵抗は $R + \dfrac{R}{2} + \dfrac{R}{2} = 2R$ です。
よって、黒塗りの抵抗(下段の並列部分 $\dfrac{R}{2}$)にかかる電圧 $V_{\text{ハ}}$ は、
$$V_{\text{ハ}} = \frac{\dfrac{R}{2}}{2R} E = \frac{1}{4}E \quad (= 0.25 E)$$
【比較と結論】
以上より、黒塗りの抵抗での電圧降下を比較すると、 $$V_{\text{ロ}} \left(\frac{1}{8}E\right) < V_{\text{イ}} \left(\frac{1}{7}E\right) < V_{\text{ハ}} \left(\frac{1}{4}E\right)$$ となり、電圧降下が最も小さい回路は (ロ) で、そのときの電圧降下は $\dfrac{1}{8}E$ です。
過去問演習で時間を溶かしていませんか?
合格の鍵は「全科目の時間配分(バランス調整)」にあります。
私立医学部の入試は、1科目だけできても受かりません。「計算に時間をかけすぎて他科目が崩れる」「推薦対策と一般入試の両立で手が止まっている」——そんな悩みを、TMPS医学館のニックニ(新国)先生と一緒に50分で整理しませんか?
【出典・引用に関する表記】本ページで扱う入試問題の出典は各大学(大阪医科薬科大学 2025年度 入試問題)に帰属します。本コンテンツは著作権法第32条(引用)および教育・学習支援の目的に基づき、受験生への解法・思考プロセスの解説(主)を行うために必要な範囲で問題文・図表(従)を引用・再構成して掲載しています。解答・解説および図解の著作権はTMPS医学館に帰属します。