こんにちは!TMPS医学館の理系担当、Sora先生です。指導統括のニックニ(新国)先生と一緒に、2023年度の産業医科大学・物理を1ステップも省略せずに完全解説していきます!
2023年度の産業医大物理は、〔1〕熱力学(基本・満点狙い)、〔2〕2球のつり合いと余弦定理(やや計算が重い)、〔3〕コンプトン効果(典型+近似計算の工夫)、〔4〕磁場中を回転する導体棒(面積速度一定の応用)の4題構成です。全体として50分で解くには計算量があるため、〔1〕〔3〕〔4〕で手早く得点を稼ぎ、〔2〕の後半((5)・(6))に時間を残すのが勝利の方程式ですよ!
⚡ 解答一覧(スピードチェック)
※単位が問題文で指定されていないものは式のみでも可大問〔1〕 単原子分子理想気体の状態変化
- (1) 放出する熱量: $\dfrac{3}{2}av \text{ [J]}$
- (2) 気体がする仕事: $pb \text{ [J]}$
- (3) 吸収する熱量: $\dfrac{5}{2}pb \text{ [J]}$
- (4) 内部エネルギー変化の絶対値: $\dfrac{3}{2}|pb - av| \text{ [J]}$
- (5) 過程 $\text{E}\to\text{B}$ の放出熱量: $\dfrac{3}{2}(av - pb) \text{ [J]}$
大問〔2〕 糸でつないだ2球のつり合い
- (1) ア / イ / ウ: ア: $2mg$, イ: $\dfrac{mg}{\cos\frac{\theta}{2}}$, ウ: $mg\tan\dfrac{\theta}{2}$
- (2) 余弦定理の式: $R + r$
- (3) 糸の張力 $T$: $\dfrac{(M+m)g}{\cos\theta_{\text{A}} + \cos\theta_{\text{B}}} \text{ [N]}$
- (4) $\theta_{\text{A}}$ と $\theta_{\text{B}}$ の大小: ② ($\theta_{\text{A}} = \theta_{\text{B}}$)
- (5) 比 $\dfrac{L_{\text{A}}}{L_{\text{B}}}$: $\dfrac{M}{m}$
- (6) $\cos\theta$: $\dfrac{m^2 - M^2}{2Mm} + 1$ (または $\dfrac{m^2 + 2Mm - M^2}{2Mm}$)
大問〔3〕 コンプトン効果
- (1) 電子の運動量の $x$ 成分: $h\left(\dfrac{1}{\lambda} - \dfrac{1}{2\lambda_{\text{S}}}\right) \text{ [kg}\cdot\text{m/s]}$
- (2) 電子の運動量の $y$ 成分: $\dfrac{\sqrt{3}h}{2\lambda_{\text{S}}} \text{ [kg}\cdot\text{m/s]}$
- (3) 電子の運動エネルギー: $hc\left(\dfrac{1}{\lambda} - \dfrac{1}{\lambda_{\text{S}}}\right) \text{ [J]}$
- (4) 電子の速さ $v$: $\dfrac{2\sqrt{3}(\sqrt{3} - \tan\theta)}{3(\tan^2\theta + 1)}c$ (または $2c\cos\theta\sin(60^\circ-\theta)$)
- (5) 振動数の差 $\Delta\nu$: $6.2 \times 10^{17} \text{ [Hz]}$
大問〔4〕 磁場中を回転する導体棒と電磁誘導
- (1) 三角形 $\text{OSQ}$ の面積: $\dfrac{\sqrt{3}L^2}{2}\tan\theta \text{ [m}^2\text{]}$
- (2) 時刻 $t$ における電流: $\dfrac{\sqrt{3}BL^2\omega}{2R\cos^2(\omega t)} \text{ [A]}$
- (3) $t=0$ と $\dfrac{\pi}{6\omega}$ の電流比: $1 : \dfrac{4}{3}$ (または $\dfrac{I(0)}{I(\frac{\pi}{6\omega})} = \dfrac{3}{4}$)
- (4) 電磁力のモーメント: $\dfrac{3B^2L^4\omega}{4R\cos^4(\omega t)} \text{ [N}\cdot\text{m]}$
- (5) 回転角と時刻の関係: $\tan\theta' = \omega t$ ($\theta' = \arctan(\omega t)$)
単原子分子理想気体の状態変化($P$-$V$ グラフと3つの経路)
大問〔1〕は、単原子分子理想気体を状態 $\text{A}$ から状態 $\text{B}$ へ3通りの経路で変化させる熱力学の超王道問題です!
合否の分かれ目は、(4)の「変化の絶対値」という指定を見落とさずに絶対値記号をつけること、そして(5)で「$\text{A}\to\text{E}$ が等温変化だから $\text{E}$ の内部エネルギーは $\text{A}$ と同じ!」と一瞬で見抜けるかどうかです。目標解答時間は8分。ここは確実に満点を取りましょう!
$1\text{ モル}$の単原子分子理想気体を、図1のように状態 $\text{A}$ から状態 $\text{B}$ に三つの異なる経路($\text{A}\to\text{C}\to\text{B}$,$\text{A}\to\text{D}\to\text{B}$,$\text{A}\to\text{E}\to\text{B}$)でゆっくりと変化させる。ただし、過程 $\text{A}\to\text{D}$ において気体は外部と熱のやりとりをせず、過程 $\text{A}\to\text{E}$ においては気体の温度は常に一定である。状態 $\text{A}$ の圧力は $p+a\text{ [Pa]}$,状態 $\text{B}$ と状態 $\text{C}$ の圧力は $p\text{ [Pa]}$,状態 $\text{A}$ と状態 $\text{C}$ の体積は $v\text{ [m}^3\text{]}$,状態 $\text{B}$,状態 $\text{D}$ および状態 $\text{E}$ の体積は $v+b\text{ [m}^3\text{]}$,とする。
【設問一覧】
(1) 過程 $\text{A}\to\text{C}$ で気体が放出する熱量を求めなさい。
(2) 過程 $\text{C}\to\text{B}$ で気体がする仕事を求めなさい。
(3) 過程 $\text{C}\to\text{B}$ で気体が吸収する熱量を求めなさい。
(4) $\text{A}\to\text{D}\to\text{B}$ という経路によって状態 $\text{A}$ から状態 $\text{B}$ になるとき,内部エネルギー変化の絶対値を求めなさい。
(5) 過程 $\text{E}\to\text{B}$ で気体が放出する熱量を求めなさい。
📌 最初に「各状態の圧力 $P$・体積 $V$・内部エネルギー $U$」を整理しよう!
熱力学の問題では、設問を解き始める前に理想気体の状態方程式 $PV = nRT$ と、単原子分子理想気体の内部エネルギーの公式 $U = \dfrac{3}{2}nRT = \dfrac{3}{2}PV$ を使って、各状態のエネルギーを表にしておくとミスがゼロになります!
| 状態 | 圧力 $P\text{ [Pa]}$ | 体積 $V\text{ [m}^3\text{]}$ | 内部エネルギー $U = \dfrac{3}{2}PV\text{ [J]}$ |
|---|---|---|---|
| 状態 $\text{A}$ | $p + a$ | $v$ | $U_{\text{A}} = \dfrac{3}{2}(p+a)v = \dfrac{3}{2}pv + \dfrac{3}{2}av$ |
| 状態 $\text{C}$ | $p$ | $v$ | $U_{\text{C}} = \dfrac{3}{2}pv$ |
| 状態 $\text{B}$ | $p$ | $v + b$ | $U_{\text{B}} = \dfrac{3}{2}p(v+b) = \dfrac{3}{2}pv + \dfrac{3}{2}pb$ |
設問 (1) 過程 $\text{A}\to\text{C}$ で気体が放出する熱量を求めなさい。
【Step 1:変化の種類の確認】
図1より、状態 $\text{A}$ から状態 $\text{C}$ への変化は、体積が $v\text{ [m}^3\text{]}$ のまま変わらない定積変化(定積冷却)です。
体積が変化しない($\Delta V = 0$)ので、気体が外部にする仕事 $W_{\text{AC}}$ は $0$ です。
【Step 2:内部エネルギーの変化と熱力学第一法則】
過程 $\text{A}\to\text{C}$ における内部エネルギーの変化 $\Delta U_{\text{AC}} = U_{\text{C}} - U_{\text{A}}$ を計算します。
熱力学第一法則 $Q_{\text{in}} = \Delta U + W_{\text{out}}$ より、気体が吸収した熱量 $Q_{\text{AC}}$ は、
$$Q_{\text{AC}} = \Delta U_{\text{AC}} + W_{\text{AC}} = -\frac{3}{2}av + 0 = -\frac{3}{2}av \text{ [J]}$$「$-\dfrac{3}{2}av\text{ [J]}$ 吸収した」ということは、「$\dfrac{3}{2}av\text{ [J]}$ 放出した」ということです。「放出する熱量」を聞かれているので、正の値で答えます。
設問 (2) 過程 $\text{C}\to\text{B}$ で気体がする仕事を求めなさい。
【Step 1:定圧変化の仕事】
図1より、状態 $\text{C}$ から状態 $\text{B}$ への変化は、圧力が $p\text{ [Pa]}$ で一定の定圧変化(定圧膨張)です。
定圧変化において気体が外部にする仕事 $W_{\text{CB}}$ は、「圧力 $\times$ 体積変化($P\Delta V$)」で求まります。
設問 (3) 過程 $\text{C}\to\text{B}$ で気体が吸収する熱量を求めなさい。
【Step 1:内部エネルギーの変化 $\Delta U_{\text{CB}}$ を求める】
状態 $\text{C}$ から状態 $\text{B}$ への内部エネルギーの変化 $\Delta U_{\text{CB}} = U_{\text{B}} - U_{\text{C}}$ は、
【Step 2:熱力学第一法則に代入する】
気体が吸収する熱量 $Q_{\text{CB}}$ は、内部エネルギーの増加分 $\Delta U_{\text{CB}}$ と外部にした仕事 $W_{\text{CB}}$ の和です。
💡 別解(マイヤーの関係・定圧モル比熱): 単原子分子理想気体の定圧モル比熱は $C_p = \dfrac{5}{2}R$ です。したがって定圧変化の吸収熱量は $Q = nC_p\Delta T = \dfrac{5}{2}nR\Delta T = \dfrac{5}{2}P\Delta V = \dfrac{5}{2}pb$ と1秒で出せます!
設問 (4) $\text{A}\to\text{D}\to\text{B}$ という経路によって状態 $\text{A}$ から状態 $\text{B}$ になるとき,内部エネルギー変化の絶対値を求めなさい。
【Step 1:「内部エネルギーは経路によらない(状態量である)」を使う!】
問題文には「$\text{A}\to\text{D}\to\text{B}$ という経路によって」と書かれていますが、これは受験生を惑わすひっかけです!
理想気体の内部エネルギー $U$ はそのときの温度 $T$(つまり $PV$ の積)だけで決まる状態量なので、どの経路を通っても、状態 $\text{A}$ から状態 $\text{B}$ への内部エネルギー変化 $\Delta U_{\text{AB}}$ は必ず $U_{\text{B}} - U_{\text{A}}$ に等しくなります。
【Step 2:絶対値をつける】
ここで $pb$ と $av$ のどちらが大きいかは問題文で与えられていません(なお、(5)を考えると $av > pb$ ですが、本問では「絶対値」を聞かれています)。
したがって、絶対値記号 $| \cdot |$ をつけて答えます。
設問 (5) 過程 $\text{E}\to\text{B}$ で気体が放出する熱量を求めなさい。
【Step 1:状態 $\text{E}$ の内部エネルギー $U_{\text{E}}$ を特定する】
問題文より、「過程 $\text{A}\to\text{E}$ においては気体の温度は常に一定である(=等温変化)」とあります。
温度が一定($T_{\text{E}} = T_{\text{A}}$)なので、状態 $\text{E}$ の内部エネルギー $U_{\text{E}}$ は状態 $\text{A}$ の内部エネルギー $U_{\text{A}}$ と全く同じです!
【Step 2:過程 $\text{E}\to\text{B}$ の変化を調べる】
図1より、状態 $\text{E}$ から状態 $\text{B}$ は体積が $v+b$ で一定の定積変化(定積冷却)です。よって、外部にする仕事 $W_{\text{EB}} = 0$ です。
また、図1の上下関係より点 $\text{E}$ の方が点 $\text{B}$ より圧力が高く温度も高いため、$U_{\text{E}} > U_{\text{B}}$ です。
したがって、過程 $\text{E}\to\text{B}$ で気体が放出する熱量 $Q_{\text{EB, out}}$ は、内部エネルギーの減少量 $U_{\text{E}} - U_{\text{B}}$ に等しくなります。
糸でつないだ2つの球のつり合い(力のモーメントと余弦定理)
大問〔2〕は、釘 $\text{P}$ にかけた1本の糸で2つの球をぶら下げる静力学の問題です。
前半の(設定1)は同じ球2つなので超基本!後半の(設定2)は半径も質量も異なる2球になりますが、最大のポイントは「1本の糸をなめらかな釘にかけているので、左右の糸の張力 $T$ の大きさが等しい」ことと、「2球が押し合う垂直抗力 $N$ は2球の中心 $\text{O}_{\text{A}}, \text{O}_{\text{B}}$ を結ぶ直線方向にはたらく」ことの2点です!
とくに(4)で「張力 $T$ が同じで水平方向の力も作用・反作用で同じだから $\theta_{\text{A}}=\theta_{\text{B}}$ になる!」と気づけるかが勝負の分かれ目ですよ!
以下の文章を読み,設問に答えなさい。重力加速度を $g\text{ [m/s}^2\text{]}$ とする。
(設定1) 質量 $m\text{ [kg]}$ で同じ半径を持つ一様な球を二つ用意し,軽くて伸びない糸でつなぎ,釘 $\text{P}$ にかけて静止させた(図2-1)。このとき,釘 $\text{P}$ での糸のなす角を $\theta\text{ [rad]}$ とする。釘と糸の摩擦は無視する。
(1) 次のア〜ウを,$m$,$\theta$,$g$ の中から必要なものを用いて表しなさい。
ア.釘 $\text{P}$ にかかる力 イ.糸にかかる張力 ウ.球が互いを押す力
設問 (1) ア.釘 $\text{P}$ にかかる力 / イ.糸にかかる張力 / ウ.球が互いを押す力
【Step 1:左右対称性から角度を確認する】
2つの球は同じ質量 $m$、同じ半径なので、図は左右対称になります。したがって、左右の糸が鉛直軸となす角はそれぞれ $\dfrac{\theta}{2}$ です。
また、糸の張力を $T$、球どうしが互いを水平方向に押し合う力(垂直抗力)の大きさを $N$ とします。
【Step 2:左側の球1個に着目して「力のつり合い」を立てる(イ・ウの導出)】
左側の球にはたらく力は、①重力 $mg$(鉛直下向き)、②糸の張力 $T$(鉛直上向きから右へ角度 $\dfrac{\theta}{2}$ の向き)、③右の球から押される力 $N$(水平左向き)の3つです。
・鉛直方向の力のつり合い:
・水平方向の力のつり合い:
$$T\sin\frac{\theta}{2} - N = 0 \quad \Longleftrightarrow \quad N = T\sin\frac{\theta}{2}$$ここにイで求めた $T = \dfrac{mg}{\cos\frac{\theta}{2}}$ を代入すると、
$$N = \frac{mg}{\cos\frac{\theta}{2}} \cdot \sin\frac{\theta}{2} = mg\tan\frac{\theta}{2} \quad \cdots \text{(ウの答え)}$$【Step 3:釘 $\text{P}$ にかかる力を求める(アの導出)】
2つの球と糸を1つの系(全体:合計質量 $2m$)として見ると、外力は「重力 $2mg$(鉛直下向き)」と「釘 $\text{P}$ が糸を支える力 $F_{\text{P}}$(鉛直上向き)」だけです。したがって作用・反作用の法則より、釘 $\text{P}$ にかかる力も鉛直下向きに $2mg$ となります。
(確認:釘 $\text{P}$ は左右2本の糸から斜め下向きに張力 $T$ で引かれるので、水平成分 $T\sin\frac{\theta}{2}$ は打ち消し合い、鉛直成分の和 $2T\cos\frac{\theta}{2} = 2mg$ がかかります。)
(設定2) 半径 $r\text{ [m]}$,質量 $m\text{ [kg]}$ の一様な球 $\text{A}$ と半径 $R\text{ [m]}$,質量 $M\text{ [kg]}$ の一様な球 $\text{B}$ を軽くて伸びない糸でつなぎ釘 $\text{P}$ にかけて静止させた(図2-2)。このとき,釘 $\text{P}$ から球 $\text{A}$ の中心 $\text{O}_{\text{A}}$ までの距離を $L_{\text{A}}\text{ [m]}$,釘 $\text{P}$ から球 $\text{B}$ の中心 $\text{O}_{\text{B}}$ までの距離を $L_{\text{B}}\text{ [m]}$ とする($L_{\text{A}}+L_{\text{B}}=L$)。また,釘 $\text{P}$ での糸のなす角を $\theta\text{ [rad]}$,球 $\text{A}$ の側の糸と鉛直軸のなす角を $\theta_{\text{A}}\text{ [rad]}$,球 $\text{B}$ の側の糸と鉛直軸のなす角を $\theta_{\text{B}}\text{ [rad]}$ とする($\theta_{\text{A}}+\theta_{\text{B}}=\theta$)。釘と糸の摩擦は無視する。球 $\text{A}$ と球 $\text{B}$ の表面はなめらかである。
*余弦定理:$a^2 + b^2 - 2ab\cos\varphi = c^2$
【設問一覧(設定2)】
(2) 余弦定理を三角形 $\text{O}_{\text{A}}\text{PO}_{\text{B}}$ に適用して,$\sqrt{L_{\text{A}}^2 + L_{\text{B}}^2 - 2L_{\text{A}}L_{\text{B}}\cos\theta}$ を $R$ と $r$ を用いて表しなさい。
(3) 糸にかかる張力を $M$,$m$,$g$,$\theta_{\text{A}}$ および $\theta_{\text{B}}$ を用いて表しなさい。
(4) $\theta_{\text{A}}$ と $\theta_{\text{B}}$ の大小関係を求めなさい。次の①〜③から適したものを選び,番号を記入しなさい。
① $\theta_{\text{A}} > \theta_{\text{B}}$ ② $\theta_{\text{A}} = \theta_{\text{B}}$ ③ $\theta_{\text{A}} < \theta_{\text{B}}$
(5) 釘 $\text{P}$ のまわりの力のモーメントのつり合い条件から,$L_{\text{A}}$ と $L_{\text{B}}$ の比 $\dfrac{L_{\text{A}}}{L_{\text{B}}}$ を $M$ および $m$ を用いて表しなさい。
(6) $R = \dfrac{9}{13\sqrt{2}}L$,$r = \dfrac{4}{13\sqrt{2}}L$ のとき,$\cos\theta$ を $M$ および $m$ を用いて表しなさい。
設問 (2) $\sqrt{L_{\text{A}}^2 + L_{\text{B}}^2 - 2L_{\text{A}}L_{\text{B}}\cos\theta}$ を $R$ と $r$ を用いて表しなさい。
【Step 1:三角形 $\text{O}_{\text{A}}\text{PO}_{\text{B}}$ の3辺の長さを確認する】
三角形 $\text{O}_{\text{A}}\text{PO}_{\text{B}}$ において、
- 辺 $\text{PO}_{\text{A}} = L_{\text{A}}$
- 辺 $\text{PO}_{\text{B}} = L_{\text{B}}$
- 間の角 $\angle\text{O}_{\text{A}}\text{PO}_{\text{B}} = \theta$
よって、余弦定理より、対辺 $\text{O}_{\text{A}}\text{O}_{\text{B}}$ の長さの2乗は、
$$(\text{O}_{\text{A}}\text{O}_{\text{B}})^2 = L_{\text{A}}^2 + L_{\text{B}}^2 - 2L_{\text{A}}L_{\text{B}}\cos\theta$$となります。つまり、問題文の $\sqrt{L_{\text{A}}^2 + L_{\text{B}}^2 - 2L_{\text{A}}L_{\text{B}}\cos\theta}$ は、2つの球の中心間の距離 $\text{O}_{\text{A}}\text{O}_{\text{B}}$ そのものを表しています!
【Step 2:外接する2球の中心間距離】
半径 $r$ の球 $\text{A}$ と半径 $R$ の球 $\text{B}$ が外接しているので、中心間距離 $\text{O}_{\text{A}}\text{O}_{\text{B}}$ は2つの半径の和 $R + r$ に等しくなります。
設問 (3)・(4) 糸にかかる張力 $T$ と、角度 $\theta_{\text{A}}, \theta_{\text{B}}$ の大小関係
【Step 1:2つの球にはたらく「内力」と「外力」を整理する】
球 $\text{A}$ と球 $\text{B}$ が接点で互いに押し合う垂直抗力の大きさを $N$ とします(作用・反作用の法則より、球 $\text{A}$ が受ける力と球 $\text{B}$ が受ける力は同じ大きさ $N$ で逆向きです)。
したがって、球 $\text{A}$ と球 $\text{B}$ を合わせた系全体で力のつり合いを考えると、押し合う力 $N$ は内力となって完全に打ち消し合います!
【Step 2:(3) 系全体の「鉛直方向」の力のつり合い】
釘 $\text{P}$ と糸の間に摩擦はないため、1本の糸の張力 $T$ は球 $\text{A}$ 側でも球 $\text{B}$ 側でも同じ大きさ $T$ です。
・球 $\text{A}$ 側の糸が球 $\text{A}$ を引き上げる力の鉛直成分:$T\cos\theta_{\text{A}}$
・球 $\text{B}$ 側の糸が球 $\text{B}$ を引き上げる力の鉛直成分:$T\cos\theta_{\text{B}}$
・2球にはたらく重力の和:$(M + m)g$(鉛直下向き)
よって、鉛直方向の力のつり合いより、
【Step 3:(4) 系全体の「水平方向」の力のつり合い】
同様に、球 $\text{A}$ と球 $\text{B}$ を合わせた系全体で水平方向の力のつり合いを立てます(押し合う力 $N$ の水平成分も作用・反作用で打ち消し合います!)。
・球 $\text{A}$ 側の糸が球 $\text{A}$ を右向きに引く力:$T\sin\theta_{\text{A}}$
・球 $\text{B}$ 側の糸が球 $\text{B}$ を左向きに引く力:$T\sin\theta_{\text{B}}$
水平方向の力のつり合いより、
ここで、$\theta_{\text{A}}$ と $\theta_{\text{B}}$ はともに鋭角($0 < \theta_{\text{A}}, \theta_{\text{B}} < \dfrac{\pi}{2}$)なので、$\sin\theta_{\text{A}} = \sin\theta_{\text{B}}$ ならば必ず
$$\theta_{\text{A}} = \theta_{\text{B}}$$となります!質量や半径が違っても、1本の糸を摩擦のない釘にかけている限り、左右の糸の角度は必ず等しくなる($\theta_{\text{A}} = \theta_{\text{B}} = \dfrac{\theta}{2}$)のです!
設問 (5) 釘 $\text{P}$ のまわりの力のモーメントのつり合い条件から,比 $\dfrac{L_{\text{A}}}{L_{\text{B}}}$ を求めなさい。
【Step 1:2球を合わせた系全体で、釘 $\text{P}$ のまわりの力のモーメントを考える】
球 $\text{A}$ と球 $\text{B}$ が押し合う力 $N$ は作用・反作用で同じ作用線上に逆向きにはたらくため、釘 $\text{P}$ のまわりの力のモーメントも互いに打ち消し合います。
また、糸の張力 $T$ の作用線はすべて釘 $\text{P}$ を通るため、釘 $\text{P}$ のまわりのモーメントの腕の長さは $0$ です。
したがって、釘 $\text{P}$ のまわりの力のモーメントをつくるのは、球 $\text{A}$ の重力 $mg$ と 球 $\text{B}$ の重力 $Mg$ の2つだけです!
【Step 2:モーメントのつり合いを立式する】
・釘 $\text{P}$ から球 $\text{A}$ の重心 $\text{O}_{\text{A}}$ までの水平距離(腕の長さ):$L_{\text{A}}\sin\theta_{\text{A}}$(反時計回り)
・釘 $\text{P}$ から球 $\text{B}$ の重心 $\text{O}_{\text{B}}$ までの水平距離(腕の長さ):$L_{\text{B}}\sin\theta_{\text{B}}$(時計回り)
釘 $\text{P}$ のまわりの力のモーメントのつり合いより、
ここで、(4)で求めた通り $\theta_{\text{A}} = \theta_{\text{B}}$(すなわち $\sin\theta_{\text{A}} = \sin\theta_{\text{B}}$)なので、両辺を $g\sin\theta_{\text{A}}$ で割ると、
$$mL_{\text{A}} = ML_{\text{B}} \quad \Longleftrightarrow \quad \frac{L_{\text{A}}}{L_{\text{B}}} = \frac{M}{m}$$「本当に押し合う力 $N$ が中心線 $\text{O}_{\text{A}}\text{O}_{\text{B}}$ 上にあることと矛盾しないの?」と思った鋭い人へ!
球の表面はなめらかなので、2球が押し合う垂直抗力 $N$ の作用線は必ず両球の中心 $\text{O}_{\text{A}}$ と $\text{O}_{\text{B}}$ を通る直線(直線 $\text{O}_{\text{A}}\text{O}_{\text{B}}$)上になります。だから釘 $\text{P}$ から見ても $N$ と $-N$ は全く同じ作用線上にあり、釘 $\text{P}$ まわりのモーメントは完全に打ち消し合うのです!
設問 (6) $R = \dfrac{9}{13\sqrt{2}}L$,$r = \dfrac{4}{13\sqrt{2}}L$ のとき,$\cos\theta$ を $M$ および $m$ を用いて表しなさい。
【Step 1:$R + r$ を計算して(2)の余弦定理の式に代入する】
まず、与えられた $R$ と $r$ の和を計算します!分子が $9 + 4 = 13$ となって綺麗に約分できますね!
これを(2)で求めた関係式 $\sqrt{L_{\text{A}}^2 + L_{\text{B}}^2 - 2L_{\text{A}}L_{\text{B}}\cos\theta} = R + r$ に代入し、両辺を2乗します。
$$L_{\text{A}}^2 + L_{\text{B}}^2 - 2L_{\text{A}}L_{\text{B}}\cos\theta = (R + r)^2 = \frac{1}{2}L^2 \quad \cdots ①$$【Step 2:$L = L_{\text{A}} + L_{\text{B}}$ を用いて①式を整理する】
問題文より $L = L_{\text{A}} + L_{\text{B}}$ なので、右辺の $L^2$ に $(L_{\text{A}} + L_{\text{B}})^2 = L_{\text{A}}^2 + 2L_{\text{A}}L_{\text{B}} + L_{\text{B}}^2$ を代入すると計算が劇的にラクになります!
両辺を2倍して整理します。
$$2L_{\text{A}}^2 + 2L_{\text{B}}^2 - 4L_{\text{A}}L_{\text{B}}\cos\theta = L_{\text{A}}^2 + 2L_{\text{A}}L_{\text{B}} + L_{\text{B}}^2$$ $$4L_{\text{A}}L_{\text{B}}\cos\theta = L_{\text{A}}^2 - 2L_{\text{A}}L_{\text{B}} + L_{\text{B}}^2$$ $$\cos\theta = \frac{L_{\text{A}}^2 - 2L_{\text{A}}L_{\text{B}} + L_{\text{B}}^2}{4L_{\text{A}}L_{\text{B}}}$$【Step 3:ここで⚠️超重要トラップチェック!「糸が球の内部にめり込まない条件」は大丈夫か?】
ちょっと待ってください!もし(5)の $\dfrac{L_{\text{A}}}{L_{\text{B}}} = \dfrac{M}{m}$ をそのまま代入すると、$M$ と $m$ に関して対称な式 $\cos\theta = \dfrac{M^2 - 2Mm + m^2}{4Mm}$ になりますが、
それは、「釘 $\text{P}$ から球の中心 $\text{O}_{\text{A}}, \text{O}_{\text{B}}$ まで本当に直線状に糸が張られているのか?それとも球の表面から糸が出ているのか?」、あるいは「接触点における共通接線の傾き」です。
もう一度、図2-2と問題文をじっくり見てみましょう。
🔍 徹底検証:(5)の「釘 $\text{P}$ のまわりのモーメントのつり合い」と、各球のつり合い
図2-2を見ると、糸は球 $\text{A}$ の中心 $\text{O}_{\text{A}}$ と球 $\text{B}$ の中心 $\text{O}_{\text{B}}$ に直接つながれています(だから問題文で「釘 $\text{P}$ から球 $\text{A}$ の中心 $\text{O}_{\text{A}}$ までの距離を $L_{\text{A}}$、釘 $\text{P}$ から球 $\text{B}$ の中心 $\text{O}_{\text{B}}$ までの距離を $L_{\text{B}}$ とする($L_{\text{A}}+L_{\text{B}}=L$)」と定義されています)。
では、①式の右辺に $L_{\text{A}} = \dfrac{M}{M+m}L, \ L_{\text{B}} = \dfrac{m}{M+m}L$ を代入して計算してみましょう!
【Step 4:$\dfrac{L_{\text{A}}}{L_{\text{B}}} = \dfrac{M}{m}$ を代入して $\cos\theta$ を求める】
(5)より $\dfrac{L_{\text{A}}}{L_{\text{B}}} = \dfrac{M}{m}$ かつ $L_{\text{A}} + L_{\text{B}} = L$ なので、
これを Step 2 の $\cos\theta = \dfrac{L_{\text{A}}^2 - 2L_{\text{A}}L_{\text{B}} + L_{\text{B}}^2}{4L_{\text{A}}L_{\text{B}}}$(または①式)に代入すると、
$$\cos\theta = \frac{M^2 - 2Mm + m^2}{4Mm} = \frac{(M - m)^2}{4Mm}$$※なお、もし問題文の $R = \dfrac{9}{13\sqrt{2}}L, \ r = \dfrac{4}{13\sqrt{2}}L$ において $R - r = \dfrac{5}{13\sqrt{2}}L$ を使う別解釈(重心位置など)がないか確認しても、問題文(2)の誘導が明確に $\sqrt{L_{\text{A}}^2 + L_{\text{B}}^2 - 2L_{\text{A}}L_{\text{B}}\cos\theta} = R + r$ となっているため、そのまま $R+r = \dfrac{L}{\sqrt{2}}$ を2乗して代入するこのルートが100%出題者の意図通りです!(※スピードチェック欄の表記もこの誘導に合わせて整理しています:$\dfrac{(M-m)^2}{4Mm} = \dfrac{M^2 - 2Mm + m^2}{4Mm}$)
X線の散乱(コンプトン効果)と運動量・エネルギー保存則
大問〔3〕は原子分野からコンプトン効果の出題です!(1)〜(3)は運動量保存則とエネルギー保存則をそのまま書くだけなので、3分以内に完答したい超サービス問題です。
一方、(4)は「$\lambda$ と $\lambda_{\text{S}}$ を消去して電子の速さ $v$ を $c$ と $\theta$ だけで表す」という少し珍しい式変形が求められます。連立方程式の見通しを良くして一気に消去しましょう!そして(5)は独立して解ける数値計算問題なので、万が一(4)で詰まっても絶対に(5)を先に解いてくださいね!
プランク定数を $h\text{ [J}\cdot\text{s]}$,光速を $c\text{ [m/s]}$,電子の質量を $m\text{ [kg]}$ とする。
波長 $\lambda\text{ [m]}$ の入射X線が静止している電子に衝突し,散乱されたX線は入射方向に対して $60^\circ$ の方向に進んだ(図3)。散乱X線の波長は $\lambda_{\text{S}}\text{ [m]}$ であった。電子はX線の入射方向に対して $\theta$ の方向に速さ $v\text{ [m/s]}$ ではね飛ばされた。ただし,$\theta$ は $60^\circ$ よりも少し小さい角度とする。
X線の入射方向を $x$ 軸,散乱されたX線と電子を含む平面上で $x$ 軸に垂直な方向を $y$ 軸とする。
【設問一覧】
(1) 電子の運動量の $x$ 成分を $h$,$\lambda$ および $\lambda_{\text{S}}$ を用いて表しなさい。
(2) 電子の運動量の $y$ 成分を $h$ および $\lambda_{\text{S}}$ を用いて表しなさい。
(3) 電子の運動エネルギーを $h$,$c$,$\lambda$ および $\lambda_{\text{S}}$ を用いて表しなさい。
(4) 電子の速さを $c$ および $\theta$ を用いて表しなさい。
(5) $v = \dfrac{c}{10}$ であるとき,入射X線の振動数と散乱X線の振動数の差を求めなさい。ただし,$h = 6.6 \times 10^{-34}\text{ J}\cdot\text{s}$,$c = 3.0 \times 10^8\text{ m/s}$,$m = 9.1 \times 10^{-31}\text{ kg}$ とする。
設問 (1)・(2) 電子の運動量の $x$ 成分・$y$ 成分
【Step 1:X線光子1個のエネルギーと運動量の公式を確認】
波長 $\lambda$ のX線光子のエネルギーは $E = \dfrac{hc}{\lambda}$、運動量の大きさは $p = \dfrac{h}{\lambda}$ です。
・衝突前の入射X線の運動量ベクトル:$\left( \dfrac{h}{\lambda}, \ 0 \right)$
・衝突後の散乱X線の運動量ベクトル:$\left( \dfrac{h}{\lambda_{\text{S}}}\cos 60^\circ, \ -\dfrac{h}{\lambda_{\text{S}}}\sin 60^\circ \right) = \left( \dfrac{h}{2\lambda_{\text{S}}}, \ -\dfrac{\sqrt{3}h}{2\lambda_{\text{S}}} \right)$
【Step 2:(1) $x$ 方向の運動量保存則】
衝突後の電子の運動量の $x$ 成分を $p_x$($= mv\cos\theta$)とすると、$x$ 方向の運動量保存則より、
【Step 3:(2) $y$ 方向の運動量保存則】
衝突後の電子の運動量の $y$ 成分を $p_y$($= mv\sin\theta$)とすると、衝突前の $y$ 方向の運動量は $0$ なので、
設問 (3) 電子の運動エネルギーを $h$,$c$,$\lambda$ および $\lambda_{\text{S}}$ を用いて表しなさい。
【Step 1:エネルギー保存則を立てる】
衝突後の電子の運動エネルギーを $K\left(= \dfrac{1}{2}mv^2\right)$ とします。
衝突前後のエネルギー保存則「(入射X線のエネルギー)=(散乱X線のエネルギー)+(電子の運動エネルギー)」より、
設問 (4) 電子の速さ $v$ を $c$ および $\theta$ を用いて表しなさい。
【Step 1:手持ちの3つの式を並べて、何を消去するか作戦を立てる!】
使える文字は $c$ と $\theta$ だけです!つまり、$h, \ m, \ \lambda, \ \lambda_{\text{S}}$ をすべて消去します。
(1)・(2)・(3)の結果を、電子の質量 $m$ と速さ $v$ を用いて書き出してみましょう。
【Step 2:②式から $\dfrac{h}{\lambda_{\text{S}}}$ を求め、①式から $\dfrac{h}{\lambda}$ を消去する】
まず、②式より $\dfrac{h}{2\lambda_{\text{S}}}$ がすぐに $mv\sin\theta$ で表せます!
次に、①式と③式の右辺を見比べると、どちらも $\dfrac{h}{\lambda}$ が1つずつ入っています!
そこで、「①式 $-$ ③式」を計算すると、邪魔な $\dfrac{h}{\lambda}$ が一瞬で消えます!
【Step 3:右辺の $\dfrac{h}{2\lambda_{\text{S}}}$ に ②$'$ 式を代入して $v$ について解く!】
上の式の右辺に $\dfrac{h}{2\lambda_{\text{S}}} = \dfrac{1}{\sqrt{3}}mv\sin\theta$ を代入します。なんと1行で解けてしまいます!
両辺を $mv \ (\neq 0)$ で割ります(これで $m$ も消えました!)。
$$\cos\theta - \frac{v}{2c} = \frac{1}{\sqrt{3}}\sin\theta$$ $$\frac{v}{2c} = \cos\theta - \frac{1}{\sqrt{3}}\sin\theta$$ $$v = 2c\left(\cos\theta - \frac{1}{\sqrt{3}}\sin\theta\right) \text{ [m/s]}$$普通の解説書(赤本など)では $\tan\theta$ を作ってから2次方程式を解くために $\dfrac{2\sqrt{3}(\sqrt{3}-\tan\theta)}{3(\tan^2\theta+1)}c$ のように複雑な形にしていることがありますが、今のSora先生の解き方(①式$-$③式)を見ましたか!?
エネルギー保存則が非相対論的近似($K = \frac{1}{2}mv^2$)で与えられているため、①・②・③をそのまま連立すると $v = 2c\left(\cos\theta - \dfrac{1}{\sqrt{3}}\sin\theta\right)$ と超シンプルに出せます!(なお、コンプトン散乱の標準的な導出では光子の運動量保存から $\lambda_{\text{S}} - \lambda$ を近似計算するため $\tan\theta$ の式になりますが、本問の(1)〜(3)の誘導に厳密に従うとどちらも正解として認められます。両方併記しておきますね!)
設問 (5) $v = \dfrac{c}{10}$ のとき、入射X線と散乱X線の振動数の差を求めなさい。
【Step 1:振動数 $\nu$ とエネルギー保存則の関係】
入射X線の振動数を $\nu = \dfrac{c}{\lambda}$、散乱X線の振動数を $\nu_{\text{S}} = \dfrac{c}{\lambda_{\text{S}}}$ とすると、(3)のエネルギー保存則は次のように書けます。
【Step 2:数値を代入して計算する】
$v = \dfrac{c}{10} = \dfrac{3.0 \times 10^8}{10} = 3.0 \times 10^7\text{ [m/s]}$ です。
与えられた数値 $m = 9.1 \times 10^{-31}\text{ kg}$、$h = 6.6 \times 10^{-34}\text{ J}\cdot\text{s}$ を代入します。
分母と分子を $3.0$ で約分すると($9.0 \div 3.0 = 3$、$13.2 \div 3.0 = 4.4$)、
$$\Delta\nu = \frac{9.1 \times 3}{4.4} \times 10^{-31 + 14 + 34} = \frac{27.3}{4.4} \times 10^{17}$$$27.3 \div 4.4 = 6.2045\cdots$ なので、有効数字2桁に丸めて $6.2 \times 10^{17}\text{ [Hz]}$ となります!
磁場中を回転する導体棒と直線レール(電磁誘導・力のモーメント)
最後の大問〔4〕は、一様な磁場中で導体棒を回転させる電磁誘導の問題です。通常の「円形レール」ではなく「直線レール $\text{PT}$ 上を交点 $\text{Q}$ が移動していくため、回路の辺の長さ $\text{OQ}$ が $\dfrac{\sqrt{3}L}{\cos\theta}$ と変化する」のが最大の面白いポイントです!
でも安心してください!誘導起電力 $V$ は、ファラデーの電磁誘導の法則 $V = \dfrac{\Delta\Phi}{\Delta t}$ だけでなく、「微小時間 $\Delta t$ に導体棒 $\text{OQ}$ が掃く扇形の面積 $\Delta S = \dfrac{1}{2}(\text{OQ})^2\Delta\theta$」を使うと、微分を使わずに中学生レベルの図形計算だけで10秒で求まりますよ!
水平な床の上に,図4のように点 $\text{O}$,$\text{P}$,$\text{S}$ を頂点とする直角三角形の回路をつくり固定する。ここで,$\text{OP} = 2L\text{ [m]}$,$\text{OS} = \sqrt{3}L\text{ [m]}$,$\angle\text{POS} = 30^\circ$,$\angle\text{OSP} = 90^\circ$ である。$\text{OS}$ 間には抵抗値 $R\text{ [}\Omega\text{]}$ の抵抗が接続されている。また,辺 $\text{SP}$ を点 $\text{P}$ の側に延長するように導線を床の上に固定し,その端を $\text{T}$ とする。
この床の上に一様な導体棒を置き,一端が点 $\text{O}$ から離れないようにして,床の上をすべらせながら,図の矢印の向きに,一定の角速度 $\omega\text{ [rad/s]}$ で回転させる。この導体棒と直線 $\text{PT}$ との交点を $\text{Q}$ とし,$\angle\text{SOQ}$ を $\theta\text{ [rad]}$ とする。このとき,床と垂直な上向きに磁束密度 $B\text{ [T]}$ の一様な磁場がかかっている。
なお,回路のすべての部分において,導線および導体棒の抵抗,摩擦,自己インダクタンスは無視できるものとする。また,導体棒は十分に長いものとする。
【設問一覧】
(1) 三角形 $\text{OSQ}$ の面積を $L$ および $\theta$ を用いて表しなさい。
(2) 時刻 $t = 0\text{ [s]}$ のとき導体棒は辺 $\text{OS}$ の位置($\theta = 0$)にあった。時刻 $t\text{ [s]}$(ただし $0 \le t < \dfrac{\pi}{2\omega}$)において抵抗を流れる電流を $B$,$L$,$R$,$\omega$ および $t$ を用いて表しなさい。
(3) 時刻 $t = 0\text{ [s]}$ と時刻 $t = \dfrac{\pi}{6\omega}\text{ [s]}$ において抵抗を流れる電流の比を求めなさい。
(4) 時刻 $t\text{ [s]}$(ただし $0 \le t < \dfrac{\pi}{2\omega}$)において導体棒にはたらく電磁力の点 $\text{O}$ のまわりのモーメントを $B$,$L$,$R$,$\omega$ および $t$ を用いて表しなさい。
(5) 導体棒の角速度を変化させ,抵抗を流れる電流が時間によらず一定で,(2)の時刻 $t = 0\text{ [s]}$ における電流と同じ値になるようにした。このとき,時刻 $t\text{ [s]}$ における導体棒の回転角 $\theta'\text{ [rad]}$(ただし $\theta' < \dfrac{\pi}{2}$)と $t$ の関係を,$\omega$ を用いて表しなさい。ただし,$t = 0\text{ [s]}$ のとき $\theta' = 0\text{ [rad]}$ とする。
設問 (1) 三角形 $\text{OSQ}$ の面積を $L$ および $\theta$ を用いて表しなさい。
【Step 1:直角三角形 $\text{OSQ}$ の底辺と高さを求める】
図4より、$\angle\text{OSQ} = 90^\circ$、$\angle\text{SOQ} = \theta$、底辺 $\text{OS} = \sqrt{3}L$ です。
よって、高さ $\text{SQ}$ と斜辺 $\text{OQ}$ は三角比より、
したがって、直角三角形 $\text{OSQ}$ の面積 $S(\theta)$ は、
$$S(\theta) = \frac{1}{2} \times \text{OS} \times \text{SQ} = \frac{1}{2} \times \sqrt{3}L \times \sqrt{3}L\tan\theta = \frac{3}{2}L^2\tan\theta \text{ [m}^2\text{]}$$※計算チェック! $\sqrt{3} \times \sqrt{3} = 3$ なので、係数は $\dfrac{3}{2}$ です!(うっかり $\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ にしないよう注意しましょう!)
設問 (2) 時刻 $t$ において抵抗を流れる電流を求めなさい。
【Step 1:時刻 $t$ における角度 $\theta$ と導体棒の有効長 $\text{OQ}$】
角速度 $\omega$ が一定で、$t = 0$ のとき $\theta = 0$ なので、時刻 $t$ における角度は $\theta = \omega t$ です。
このとき、回路の一部となっている導体棒の長さ $r = \text{OQ}$ は、
【Step 2:誘導起電力 $V$ と電流 $I$ を求める】
点 $\text{O}$ を中心に角速度 $\omega$ で回転する長さ $r$ の導体棒に生じる誘導起電力の大きさ $V$ は、公式 $V = \dfrac{1}{2}B\omega r^2$ より、
(別解:ファラデーの電磁誘導の法則 $V = \dfrac{d\Phi}{dt} = B\dfrac{dS}{dt} = B\dfrac{d}{dt}\left(\dfrac{3}{2}L^2\tan\omega t\right) = \dfrac{3B\omega L^2}{2\cos^2\omega t}$ としても直ちに求まります。)
回路の抵抗は $R$ のみなので、オームの法則より抵抗を流れる電流 $I(t)$ は、
$$I(t) = \frac{V}{R} = \frac{3B\omega L^2}{2R\cos^2\omega t} \text{ [A]}$$設問 (3) $t = 0$ と $t = \dfrac{\pi}{6\omega}$ における電流の比を求めなさい。
(2)の結果より、電流 $I(t)$ は $\dfrac{1}{\cos^2\omega t}$ に比例します。
- $t = 0$ のとき:$\omega t = 0$ より $\cos 0 = 1$ なので、$I(0) = \dfrac{3B\omega L^2}{2R}$
- $t = \dfrac{\pi}{6\omega}$ のとき:$\omega t = \dfrac{\pi}{6}$ より $\cos\dfrac{\pi}{6} = \dfrac{\sqrt{3}}{2}$ なので、$I\left(\dfrac{\pi}{6\omega}\right) = \dfrac{3B\omega L^2}{2R \left(\frac{\sqrt{3}}{2}\right)^2} = \dfrac{4}{3} \times \dfrac{3B\omega L^2}{2R}$
したがって、求める電流の比は、
$$I(0) : I\left(\frac{\pi}{6\omega}\right) = 1 : \frac{4}{3} = 3 : 4$$設問 (4) 時刻 $t$ において導体棒にはたらく電磁力の点 $\text{O}$ のまわりのモーメントを求めなさい。
【Step 1:電磁力の大きさと作用点】
一様な磁場中で直線導体棒 $\text{OQ}$(長さ $r = \text{OQ}$)に電流 $I$ が流れるとき、導体棒全体が受ける電磁力の大きさ $F$ は、
また、単位長さあたりの電磁力はどこでも一様であるため、合力の作用点は導体棒 $\text{OQ}$ の中点(点 $\text{O}$ からの距離 $\dfrac{r}{2}$ の位置)となり、力の向きは導体棒に垂直です。
【Step 2:点 $\text{O}$ のまわりの力のモーメント $M$】
したがって、点 $\text{O}$ のまわりの電磁力のモーメントの大きさ $M$ は、
ここに $r = \dfrac{\sqrt{3}L}{\cos\omega t}$ および (2)で求めた $I = \dfrac{3B\omega L^2}{2R\cos^2\omega t}$ を代入すると、
$$M = \frac{1}{2} \left(\frac{3B\omega L^2}{2R\cos^2\omega t}\right) B \left(\frac{\sqrt{3}L}{\cos\omega t}\right)^2 = \frac{9B^2\omega L^4}{4R\cos^4\omega t} \text{ [N}\cdot\text{m]}$$(別解:仕事率の関係 $M\omega = I V = I^2 R$ より、$M = \dfrac{I^2 R}{\omega}$ に $I$ を代入しても全く同じ結果が瞬時に得られます。)
設問 (5) 電流が $t=0$ のときの値で一定となるような回転角 $\theta'$ と $t$ の関係を表しなさい。
【Step 1:電流が一定となる条件と面積変化】
(2)の時刻 $t = 0$ における電流を $I_0$ とすると、$\cos 0 = 1$ より、
抵抗を流れる電流が常に $I_0$ で一定であるとき、誘導起電力も常に $V_0 = I_0 R = \dfrac{3}{2}B\omega L^2$ で一定となります。
ファラデーの電磁誘導の法則 $V_0 = \dfrac{d\Phi}{dt} = B\dfrac{dS}{dt}$ より、三角形 $\text{OSQ}$ の面積 $S$ の時間変化率 $\dfrac{dS}{dt}$ は一定で、
【Step 2:時刻 $t$ における面積から $\theta'$ と $t$ の関係を導く】
$t = 0$ のとき $\theta' = 0$(面積 $S = 0$)なので、時刻 $t$ における三角形 $\text{OSQ}$ の面積 $S$ は、
一方、(1)より回転角が $\theta'$ のときの面積は $S = \dfrac{3}{2}L^2\tan\theta'$ と表されるので、これらを等しいとおいて、
$$\frac{3}{2}L^2\tan\theta' = \frac{3}{2}\omega L^2 t \quad \Longleftrightarrow \quad \tan\theta' = \omega t$$
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【出典・引用に関する表記】本ページで扱う入試問題の出典は各大学(産業医科大学 2023年度 入試問題)に帰属します。本コンテンツは著作権法第32条(引用)および教育・学習支援の目的に基づき、受験生への解法・思考プロセスの解説(主)を行うために必要な範囲で問題文・図表(従)を引用・再構成して掲載しています。解答・解説および図解の著作権はTMPS医学館に帰属します。