自然選択の説明は「①変異がもともと集団にある ②環境によって有利・不利が決まる ③有利な型が子を多く残す ④世代を重ねて頻度が上がる」の4点セット。本問では環境が蛇紋岩地帯(高濃度の重金属)、有利な形質が耐性、時間の単位が世代。
ここで大事なのは、自然選択は変異を「作る」のではなく「選ぶ」こと。耐性の変異は選択の前に偶然(突然変異)で生じており、蛇紋岩地帯でそれをもつ個体が生き残って子を残した、と書く。
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各小問を「どういう問題か」から説明し、途中式を1行も飛ばさずに解説。最後に、本番と同じ3大問の構成で作ったそっくり類題セット(全問解答つき)で、慶應2026を丸ごと演習できます。
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※ 著作権に配慮し、入試問題の本文・図は掲載していません。問題の設定や問われている内容は、TMPSの言葉で説明しています。【ア】や問番号は、本番の解答欄との対応を示すためのものです。
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時間はTMPSの目安です(本番は理科2科目で120分。生物に60分を使う想定)。解く順番と「捨てどころ」をセットで覚えておきましょう。
記号は本番の解答欄に対応しています。先に解いてから開いてください。生物は論述が多く、採点基準は非公開です。論述は「答案例」、知識や図の読み取りに依存して断定しきれない所は「要確認」としています。
問1・問2(論述は答案例)
問3
問4
問5
問6・問7(論述は答案例・要確認)
問1〜問4
問5・問6(答案例)
問7・問8(論述は答案例・要確認)
問1・問2
問3〜問5(答案例)
問6〜問9(答案例)
※ 答えはTMPSが自力で導いたものです(公開されている解答は参照していません)。生物は計算が少ないため、検算スクリプトで確かめたのはプライマー位置の論理、図の読み取りの分類、遺伝的浮動の挙動などに限られます。用語・論述は確かめられないので、「要確認」を明示しています。
採点したら → 30秒の得点診断へ蛇紋岩に生える植物Tgを題材に、進化(自然選択・遺伝的浮動)、選択的スプライシング、PCRプライマーの設計、酵母での発現実験、定量PCRの図読み取りが1題に詰まっています。7問すべて論述か用語で、計算はありません。
植物Tgのような蛇紋岩植物ができる進化の過程で、自然選択がどんな役割を果たすかを、指定された語句(蛇紋岩地帯・世代)を使って簡潔に説明する問題。
自然選択の説明は「①変異がもともと集団にある ②環境によって有利・不利が決まる ③有利な型が子を多く残す ④世代を重ねて頻度が上がる」の4点セット。本問では環境が蛇紋岩地帯(高濃度の重金属)、有利な形質が耐性、時間の単位が世代。
ここで大事なのは、自然選択は変異を「作る」のではなく「選ぶ」こと。耐性の変異は選択の前に偶然(突然変異)で生じており、蛇紋岩地帯でそれをもつ個体が生き残って子を残した、と書く。

自然選択が働かなくても遺伝子頻度が変わることがある、という文脈で、遺伝的浮動と中立進化をそれぞれ簡潔に説明する問題。
遺伝的浮動:親の配偶子のうち、次世代に伝わるのは偶然に選ばれた一部だけなので、偶然によって対立遺伝子の頻度が世代ごとにランダムに変動する現象。集団が小さいほど変動が大きい。
中立進化:生存や繁殖に有利でも不利でもない(中立な)突然変異が、自然選択ではなく遺伝的浮動によって集団内に広がり、固定していくことで進む進化(分子進化の中立説)。
下の図は、同じ初期頻度0.5から8回ずつ、小さい集団(N=10)と大きい集団(N=500)の頻度変化をシミュレーションした例です。小さい集団では、選択がなくても頻度が0か1に「固定」します(TMPS作成)。

【あ】【い】【う】に入る用語を答え、さらに、【い】の仕組みが働く細胞内の場所も答える問題。
【あ】は液胞(植物の液胞には、代謝産物や老廃物、無機イオンが貯えられる)。【い】は選択的スプライシング。mRNA前駆体からイントロンを除くスプライシングのとき、どのエキソンをつなぐかを変えて、1つの遺伝子から複数のmRNAを作る仕組み。真核生物ではmRNA前駆体が核内でつくられ、スプライシングも核で行われる。
【う】は逆転写。RNAを鋳型にしてDNA(cDNA)を合成する反応で、逆転写酵素を使う。
mRNA-TgX1とmRNA-TgX2の発現量を別々に調べるPCRのプライマーを作りたい。一方のプライマーを図4の(ア)の位置(共通)に置くとき、もう一方を、それぞれどこに置くかを、理由とともに答える問題。
PCRは2つのプライマーが挟んだ領域だけを増やす。(ア)を共通にするなら、もう一方は(ア)より3′側のどこかに置く。置き場所の候補を、TgX1・TgX2のどちらから増幅できるかで調べると下の表になる(検算スクリプトで確認)。
| もう一方のプライマーの位置 | TgX1 | TgX2 | 区別できるか |
|---|---|---|---|
| (ウ)の内部 | 増える | 増える | × 両方増える |
| (エ)の内部 | 増える | 増えない | ○ TgX1だけ |
| (オ)の内部 | 増える | 増える | × 両方増える |
| (ウ)と(オ)の接合部 | 増えない | 増える | ○ TgX2だけ |
| (カ)=ポリA部分 | 増える | 増える | × 両方増える |
TgX1用:TgX2に存在しない(エ)の内部。TgX2用:(エ)が抜けた結果、TgX2でだけ隣り合う(ウ)と(オ)の接合部をまたぐ位置(TgX1では間に(エ)があるので、この配列は存在しない)。

4種類の重金属(カドミウム・コバルト・ニッケル・亜鉛)について、遺伝子を入れていない酵母と、cDNA-TgX1またはcDNA-TgX2を発現させた酵母の増殖抑制度を比べたグラフから、2つの分子の機能の違いを述べる問題。縦軸が抑制度(高いほど増えにくい)であることが指示されている。
縦軸が抑制度なので、グラフが低いほど耐性が高い。遺伝子なしの酵母(■)が最も高く、これより下がれば、その分子が重金属を液胞様の構造に運んで耐性を付けたことになる。TMPSの読み取りを表にします(定性的な読み取りで、数値ではありません)。
| 金属 | TgX1(○) | TgX2(×) | 結論 |
|---|---|---|---|
| Cd | 大きく低下 | 大きく低下 | 両方とも耐性を付与(差は小さい) |
| Co | 大きく低下 | 大きく低下 | 両方とも耐性を付与 |
| Ni | 少し低下 | 大きく低下 | TgX2のほうが強い |
| Zn | 中程度に低下 | 少し低下 | TgX1のほうがやや強い |
まとめると、2つの分子は輸送できる金属が違う(基質特異性が異なる)。CdとCoは両方が運べるが、Niは主にTgX2が運び、ZnはどちらかといえばTgX1が運ぶ。エキソンの1領域((エ))の有無で、運べる金属の得意・不得意が変わっている。

植物TgがNiに耐性をもつ仕組みを、検討1〜3の結果をすべて使ってまとめる問題。検討3は、植物TgとシロイヌナズナAtで、Niを加えた場合と加えない場合のmRNA量(定量PCR)を比べた図3。
検討ごとに分けて、一文ずつ書いてから、つなげる。
| 検討1 | TgXは1コピーだが、選択的スプライシングでmRNA-TgX1(全長)とmRNA-TgX2((エ)を欠く)の2種ができる。 |
| 検討2 | どちらの分子も重金属に対する耐性を付けるが、Niにはとくに分子TgX2が効く。 |
| 検討3 | TgはNiを加えなくてもTgX1・TgX2を多量に発現している(Niで増えない)。AtにはTgX2のmRNAがなく、TgX1型も少ない。 |
以上から、植物TgはNiがない状態から、液胞にNiを取り込むトランスポーターを常に多量にもっている。とくにNiを運ぶ能力が高いTgX2は、Atにはないスプライシング産物である。そのため、根や茎に入ったNiを葉の細胞の液胞に隔離して、細胞質の代謝を守っている、と考えられる。
根からの吸収や根から茎への移行を妨げるほうがエネルギー的には有利そうなのに、わざわざトランスポーターで葉の液胞に能動的に溜めるしくみをもつと、植物にはどんな利点があるかを述べる問題。
「吸収を止める」戦略の弱点を考える。根の吸収や移行を抑えると、根の吸収能そのものが下がり、必須の養分や水の取り込みも妨げられやすい。一方で、液胞に隔離すれば吸収は保てる。
さらに、Niを葉に大量に蓄積すると、それ自体が食害や病原体への防御として働く(金属蓄積による防御)と考えられている。ここまでが基本。
もう1つ、蛇紋岩土壌は養分が乏しいとされるので、吸収能を保つこと自体が生育上の利点、という方向でも書ける。

独立栄養と従属栄養、クエン酸回路と酸素の関係、ミトコンドリアの共生、そして原始地球での代謝の成り立ちを2つの論述で考察する大問です。前半(問1〜問5)は教科書の知識、後半(問6〜問8)は図1(大気成分の変遷)と本文の読み取りが必要です。
文中の空欄[1]〜[4]に入る語句を答える問題。[1]と[2]は、図1の大気成分のグラフにも出てくる気体。
[1]は二酸化炭素(光合成の材料で、呼吸で放出される)。[2]は酸素(呼吸でエネルギーを得るのに必要で、図1では約24億年前以降に急増する)。[3]は光合成のカルビン(・ベンソン)回路、[4]は二酸化炭素を有機物に固定する炭酸固定(炭素固定)。
問2:下線(A)(有機物を取り込まずに合成する生物)と(B)(有機物を取り込んで分解する生物)を何と呼ぶか。問3:(B)の分解で作られる共通の中間体の名前。問4:その中間体を起点に酸化してエネルギーを得る代謝経路(下線(C))の名前。
(A)は独立栄養生物(植物・光合成細菌・化学合成細菌など)、(B)は従属栄養生物(動物・菌類など)。糖・脂肪・タンパク質は、分解の途中でいずれもアセチルCoAに集まり、クエン酸回路(TCA回路・クレブス回路)に入る。
クエン酸回路は酸素を直接使わないのに、酸素がないと止まってしまう。その理由を簡潔に説明する問題。
クエン酸回路の脱水素酵素は、基質から水素(電子)を奪ってNAD⁺→NADH、FAD→FADH₂にする。反応を続けるには、NADHなどを酸化してNAD⁺・FADに戻す必要がある。
この再生を行うのが電子伝達系で、電子の最終受容体が酸素。酸素がないと電子が流れず、NAD⁺やFADが再生されないため、回路の脱水素反応が進まなくなる。

真核生物のクエン酸回路は、約20億年前に取り込まれた細菌(現在のミトコンドリア)に由来する。図1の大気の変化を踏まえ、宿主細胞にとっての利点をエネルギー代謝と酸化・還元の観点から簡潔に説明する問題。
図1では、酸素が約24億年前から増える。つまり宿主が生きる環境に、有害な酸素が増えた時期に当たる。
エネルギー面:嫌気的な解糖だけではグルコース1分子あたりATPは少ない。酸素を使うクエン酸回路・電子伝達系をもつ細菌と共生すれば、同じ有機物からはるかに多くのATPを得られる。
酸化・還元面:酸素は反応性が高く、細胞に有害な酸化(酸素毒性)を起こす。共生細菌は、電子伝達系で酸素を水に還元して消費できるので、宿主は酸素から身を守れる。
クエン酸回路は不可逆な反応を含み、ふつうは酸化方向に進むが、一部の生物は逆方向(還元的)に使う。「既存のしくみに新しいしくみが積み重なる」という前提で、(1)不可逆な反応が先にあり、それらがつながって経路ができた/(2)可逆的な反応を含む経路が先にでき、のちに方向が決まったのどちらが妥当かを、環境の変化・進化・酵素の3語を使って考察する問題。
本文には、原始地球では鉄・硫黄を含む鉱物が触媒になり、酵素なしで有機物ができるとある。酵素のない化学反応は、基本的に可逆(条件しだいで正逆どちらにも進む)。
とすれば、先にあったのは「方向のはっきりしない、可逆的な化学反応のつながり」で、のちに環境の変化(酸素の増加など)に応じて、特定の方向の反応を速める酵素が進化し、一方向性が決まった、という(2)の筋が自然。
一方、(1)は「不可逆な反応が単独で先に存在した」という前提が、本文の「自然発生的な化学反応が元」という流れと合いにくい。

「生物では有機物の分解経路が先に進化し、のちにクエン酸回路ができた」という主張に、地球環境の変遷と炭素の循環の観点から反論する問題。
分解(酸化)経路が成り立つには、分解する有機物と、酸化に使う酸素の両方が要る。本文と図1によれば、原始地球には有機物も酸素もほとんどなかった。
だから、まず二酸化炭素を還元して有機物を作る(合成)経路が先に必要で、これは「クエン酸回路の逆方向」にあたる。有機物が蓄積し、さらに酸素が増えて初めて、分解(酸化)方向が意味をもつ。
ヒドラを題材に、無性生殖・学名・シュペーマンの形成体、移植実験の解釈(実験1〜5)、低温で何が起こるか(図4・5)、生活環の推定、遺伝的な違い、と9問が並びます。短い答えが多く、20分で回し切れるかが勝負です。
下線部(1)の「出芽」は無性生殖の1例。出芽以外の無性生殖の例を、生物名とともにあげる問題。書き方の例が「ヒドラが出芽によって殖える」と示されている。
無性生殖には、分裂(アメーバ、ゾウリムシ、プラナリア)、栄養生殖(ジャガイモの塊茎、イチゴの走出枝)、胞子生殖(シダ、カビ)などがある。出芽はヒドラ・酵母・サンゴなどで見られる。
学名を決める方法【ア】、学名の2つの要素(属名と【イ】)、ヒドラが属する動物門【ウ】を答える問題。
リンネが確立した学名の方法は二名法(属名+種小名)。ヒドラは、刺胞(毒針)をもつ刺胞動物門(クラゲ・イソギンチャク・サンゴの仲間)。
実験1(口丘を含む触手の移植)、実験2(触手のみの移植)、実験3(口丘のみの移植)の結果から、何が分かるかを簡潔に説明する問題。
「口丘があるとき頭ができ、触手だけではできない」のだから、頭部の形成を引き起こす力は口丘にある。しかも、双頭になる(宿主の胴にもう1つ頭ができる)ことから、口丘は周囲の宿主の組織に頭を作らせていると読める。

緑色のヒドラと茶色のヒドラ(別の種)のあいだで実験1と同じ移植をすると、移植片がいつも脱落した。この結果から考えられることを述べる問題。
同種の別個体なら移植片は定着したので、異種の組織は自分のものではない(非自己)として拒絶されたと考えられる。ヒドラにも、自己と非自己を識別して異物を排除する仕組み(拒絶)がある、ということ。
だから、再生した頭部の由来を色の違いで追う実験は、種を変えては成立しない。そこで実験5で、同種内で色を抜くことで由来を調べる工夫に進んだ、とつながる。
実験1〜3に実験5(白ヒドラの口丘を含む触手を、緑色のヒドラの胴部に移植)を加えて、ヒドラの移植実験の結果をどう解釈できるかを説明し、さらに、同様の現象を15年後に発見したシュペーマンとマンゴルトの実験で使った動物【エ】と、その発見【オ】を答える問題。
図3Bでは、移植片は白、再生した頭部の触手は、緑(図では灰色)の宿主の色をしている(TMPSの読み取り)。もし移植片自身が増えて頭になったなら、頭は白いはず。したがって、頭部の大部分は、宿主の細胞が作ったと解釈できる。
つまり口丘は、自分が頭になるのではなく、周囲の宿主の細胞に頭を作らせる(誘導する)。これは、シュペーマンとマンゴルトがイモリ胚で見つけた形成体(オーガナイザー)の発見と同じ。(1924年の発見を、1909年のBrowneの実験が先取りしていた、という本文の「15年」とも合う。)

18℃では「無限の寿命」に見えたヒドラを10℃に移したときに何が起こったかを、図4(摂食数と生存個体数)と図5(細胞の種類ごとの数)から読み取って説明する問題。
図の読み取りを4つの事実に整理します(定性的な読み取り)。
18℃で無限の寿命に見えたのは、出芽と細胞の更新が続いていたから。10℃ではこの更新が止まり、体の維持よりも配偶子づくりに切り替わって、親の個体は死ぬ。

温帯域の野外で、このヒドラが1年のあいだにどう暮らしているか(生活史・生活環)を、実験の結果から推定して説明する問題。
水温の高い時期:餌が豊富で、出芽によって急速に個体数を増やす(無性生殖)。
水温が下がる秋:摂食が減り、配偶子ができて有性生殖に切り替わる。
冬:親の個体は死に、受精卵(耐久性のある卵)が低温を越える。春に水温が上がると孵化し、再び出芽で増える。
3胚葉動物(左右相称動物)とヒドラの祖先が分かれたのは、およそ【カ】億年前。選択肢(1、2、4、6、15、21、38)から1つ選ぶ問題。
動物の初期の分岐は、カンブリア紀(約5.4億年前)よりも前、約6〜7億年前とされる。選択肢のうち最も近いのは6。(2億年前=恐竜時代、4億年前=陸上植物・脊椎動物の上陸、15億年前=真核生物の出現期、21億年前・38億年前はそれより古く、いずれも動物の起源としては古すぎる。)
出芽で殖え続ける世代と、受精卵から生じる次の世代を比べて、遺伝的にどう違うかを簡潔に説明する問題。
出芽は体細胞分裂だけで増えるので、子は親と同一の遺伝子型(クローン)。
受精卵の世代は、減数分裂での染色体の組み合わせ・乗換えと、雌雄の配偶子の組み合わせにより、親とも兄弟とも異なる遺伝子の組み合わせをもつ(遺伝的多様性が生じる)。
2026年度の本番と同じ3大問・同じ小問構成で、題材・数値・設定を変えたTMPSオリジナル問題です。本番の出題イメージをつかみ、図を表に直して読む練習と、論述を2〜3行で言い切る練習に使ってください。
印刷して本番と同じように60分で解けます。解答・解説はこのページの下に掲載しています。
※ 慶應義塾大学の入試問題ではありません。問題文・図・解答はすべてTMPS医学館が作成したもので、図のデータは説明のための架空の値です。
次の文章を読み、問いに答えなさい。
海岸の塩性湿地では、海水の影響で土壌の塩分濃度が高く、(1)多くの植物は生育できない。この環境に適応した塩生植物 Sp は、近縁の非塩生植物 St と比べて高濃度の塩化ナトリウムに耐える。Sp が耐える理由として、細胞内の過剰なナトリウムイオン(Na⁺)を、老廃物などを貯える細胞小器官である【a】に取り込んで隔離している可能性が考えられた。そこで次の検討を行った。
<検討1> Na⁺を【a】に輸送するトランスポーター N の遺伝子 N の転写産物を調べると、Sp では、すべてのエキソンを含む mRNA-N1 と、エキソンの一部(領域 d)を欠く mRNA-N2 が見つかった。Sp のゲノム上に遺伝子 N は1コピーである。これは、mRNA前駆体から成熟mRNAになるとき、除かれる配列【b】の扱いが異なるためと考えられた。
<検討2> mRNA-N1、mRNA-N2 から、それぞれ cDNA-N1、cDNA-N2 を作った。この cDNA は【c】酵素を用いて合成する。【a】に類似した構造でイオンを輸送できない酵母 Y に、cDNA-N1 または cDNA-N2 を導入して発現させ、Na⁺、リチウムイオン(Li⁺)、カリウムイオン(K⁺)を含む培地で増殖させた。酵母の増殖抑制度を図2に示す。
<検討3> 塩化ナトリウムを加えない培地と、高濃度に加えた培地で2日間育てた Sp と St の葉から mRNA を抽出し、定量PCR法で発現量を調べた(図3)。mRNA-N1 と St の遺伝子Nの mRNA(mRNA-St-N)は、配列が似ているため同一のプライマーで検出できる。一方、mRNA-N2 用のプライマーは mRNA-St-N を検出できない。
図4に mRNA-N1 の全長の模式図を示す(領域 a〜e と、ポリA部分 f)。領域 d は mRNA-N2 に含まれない。
問1 下線部(1)に関連して、塩生植物 Sp が生じる進化の過程で自然選択が果たす役割を、次の語句を用いて簡潔に説明せよ。(語句:塩性湿地,世代)
問2 少数の個体が新しい生息地に移り住み、新しい集団ができるとき、集団の遺伝子頻度がもとの集団と異なってしまうことがある。この現象を何というか。また、その原因となる遺伝的浮動について、簡潔に説明せよ。
問3 空欄【a】〜【c】に入る適切な語句を答えよ。また、【b】を除く過程(スプライシング)が行われる細胞内の場所を答えよ。
問4 mRNA-N1 と mRNA-N2 の発現量を区別して PCR法で調べたい。一方のプライマーを図4の領域 b の位置に対応させて共通のプライマーとして作る場合、もう一方のプライマーを、それぞれどの位置に対応させて作るのがよいか、理由とともに答えよ。必要に応じて、図4の記号を用いてよい。プライマーの向きや塩基配列の詳細は述べなくてよい。
問5 分子 N1 と分子 N2 の機能の違いに関して、検討2の結果からわかることを述べよ。図2の縦軸はいずれも増殖の抑制度であることに注意すること。
問6 塩生植物 Sp が高濃度の塩化ナトリウムに耐える機序について、検討1〜3の結果から考えられることをまとめよ。
問7 根からの Na⁺ の吸収をおさえるのに比べて、Na⁺ を能動的に細胞小器官【a】に取り込むことは、エネルギー効率的には不利であると考えられる。そのしくみをもつことで、塩生植物にどのような利点があると考えられるか。浸透圧の観点から述べよ。
問1 突然変異で生じた耐塩性の個体が、塩性湿地では生存・繁殖に有利で多くの子を残し、世代を重ねるうちに耐塩性の遺伝子の頻度が高まった。(変異は偶然に生じ、環境がそれを「選ぶ」。)
問2 創始者効果。遺伝的浮動は、偶然により次世代に伝わる対立遺伝子の頻度が世代ごとに変動する現象で、集団が小さいほど大きい。少数の個体がもとの集団の頻度を代表しないため、新集団の頻度が偏る。
問3 【a】液胞、【b】イントロン、【c】逆転写。スプライシングの場所は核。
問4 N1用:N2にない領域 d の内部に対応させる。N2用:d が抜けて、N2でだけ隣り合う領域 c と e の接合部をまたぐ位置に対応させる。N1では c と e の間に d があるため、この配列は存在せず、増幅されない。
問5 抑制度が低いほど耐性が強い。表のとおり、Na⁺には N2、K⁺には N1 が強く、Li⁺にはどちらも中程度に効く。2つの分子は、運ぶイオンの種類(基質特異性)が異なる。
| イオン | N1 | N2 | 結論 |
|---|---|---|---|
| Na⁺ | 少し低下 | 大きく低下 | N2が強い |
| Li⁺ | 大きく低下 | 大きく低下 | 両方が同程度 |
| K⁺ | 大きく低下 | ほぼ変わらない | N1が強い |
問6 Sp は N1 型を塩の有無によらず多量にもつが、Na⁺ の輸送に強い N2 は、塩化ナトリウムがあるときだけ多量に発現する(St にはない)。塩にさらされると N2 が誘導され、Na⁺ を液胞に隔離して、細胞質を守る。
問7 Na⁺ を液胞に溜めると、細胞液の浸透圧が高くなる。土壌の塩分が高くても、細胞内の浸透圧を土壌より高く保てるので、水を吸収し続けられる。
次の文章を読み、問いに答えなさい。
生態系では、窒素も炭素と同様に循環している。大気の約78%を占める窒素 N₂ は、多くの生物がそのままでは利用できない。(A)根粒菌など一部の細菌は、N₂ を【1】に変える。【1】は、(B)土壌中のある細菌によって、酸素を用いて酸化され【2】になる。植物は【2】を吸収し、体内で還元して【1】に戻し、アミノ酸などの有機窒素化合物を合成する。この過程を【3】という。一方、酸素の乏しい土壌では、(D)一部の細菌が【2】を N₂ に変えて大気に戻す。(A)の反応を【4】という。
原始地球の大気には、酸素がほとんど存在しなかったと考えられている(図1)。窒素循環の一部の経路は、酸素の増加より前には成り立たなかったはずである。また、(A)の反応を行う酵素は、酸素によって働きが失われやすいことが知られている。
問1 空欄【1】〜【4】に入る最も適切な語句を答えよ。
問2 下線(B)および(D)のような細菌を、それぞれ何と呼ぶか。
問3 下線(B)の過程は2段階で進み、途中でできる中間体がある。この中間体として適切な化合物の名称を答えよ。
問4 【3】の過程で、【1】がグルタミン酸と結合してできる化合物の名称を答えよ。
問5 下線(B)の過程は、酸素を最終的な電子の受け手とするので、酸素がないと進まない。その理由を、エネルギー獲得の観点から簡潔に説明せよ。
問6 図1の酸素の変化を踏まえて、酸素が増えたことで窒素の循環にどのような変化が生じたか。酸化・還元の観点から簡潔に説明せよ。
問7 (A)の反応を行う酵素は酸素で働きが失われやすい。それにもかかわらず、現在の窒素固定細菌が酸素のある環境で生きているのは、「(1)酸素のある環境にあわせた酵素が先に進化した」「(2)酸素のない環境で成立した酵素に、のちに酸素から守るしくみが加わった」のどちらの考え方が妥当と考えるか。環境の変化、進化、酵素という言葉を使って考察せよ。
問8 「生物はまず硝酸イオンを窒素源として利用し、のちに窒素固定が進化した」という主張に対して、地球環境の変遷と窒素の循環の観点から反論せよ。
問1 【1】アンモニウムイオン(NH₄⁺)、【2】硝酸イオン(NO₃⁻)、【3】窒素同化、【4】窒素固定。
問2 (B) 硝化菌(亜硝酸菌・硝酸菌。無機物の酸化エネルギーで有機物を合成する化学合成細菌)、(D) 脱窒素細菌(脱窒菌)。
問3 亜硝酸イオン(NO₂⁻)。NH₄⁺ → NO₂⁻(亜硝酸菌)→ NO₃⁻(硝酸菌)。
問4 グルタミン(NH₄⁺ がグルタミン酸に結合してできる。グルタミン合成酵素の反応)。
問5 硝化菌は NH₄⁺ を酸化して電子を取り出し、電子伝達系を通して最終的に酸素に渡すことで ATP を得ている。酸素がないと電子の受け手がなくなり、電子伝達が止まって ATP を得られず、反応が進まない。
問6 酸素が増えたことで、NH₄⁺ が酸化されて NO₃⁻ ができる硝化が可能になった。さらに、酸素の乏しい環境で NO₃⁻ が還元されて N₂ に戻る脱窒がそろい、N₂ → NH₄⁺ → NO₃⁻ → N₂ という窒素の循環が完成した。
問7 (2)が妥当(要確認)。窒素固定は、酸素のない環境で成立した酵素によるものと考えられ、のちに環境が変化して酸素が増える中で、酵素を酸素から守るしくみ(酸素を消費する、酸素の少ない場所で働くなど)が進化して、酸素のある環境でも使えるようになった。
問8(要確認)原始地球には酸素がほとんどなく、NH₄⁺ を酸化して NO₃⁻ をつくる硝化は成り立たないため、硝酸イオンは乏しかった。生物が利用できる窒素は限られ、それが不足すれば、大量にある N₂ を利用する窒素固定が先に必要になる。
プラナリアに関する文章 [A]〜[C] を読み、問いに答えなさい。
[A] プラナリアは、体を切ると、(1)各断片が失った部分を再生して、それぞれが完全な個体になる。切断面には、未分化な細胞の集まり【ウ】ができ、そこから失った部分が作り直される。プラナリアは【ア】動物門に属し、体内の全身に分布する【イ】細胞とよばれる細胞だけが分裂能をもつ。
[B] 次の実験を行った。
実験1:体を前後に切ると、前の断片は尾を、後ろの断片は頭を再生した。
実験2:体の中央から切り出した輪切りの断片は、前側の切断面に頭、後ろ側の切断面に尾を再生した。
実験3:実験2の断片を、前後を逆にして置いて育てても、もとの向きどおり、前側だった面に頭が再生した。
実験4:全身に強い放射線を照射すると、【イ】細胞が死に、個体は切断しても再生せず、やがて死んだ。
実験5:放射線を照射した個体に、照射していない個体から【イ】細胞を1個だけ移植したところ、一部の個体で全身が回復し、生存した。
これらの性質は、哺乳類の初期胚から作られ、全身の細胞に分化できる【エ】細胞に似ている。一方、ヒトの成体の組織にある幹細胞は、分化できる細胞の種類が限られる【オ】幹細胞である。
[C] ある種のプラナリアを、水温5℃から25℃で飼育し、分裂して増える個体の割合と、卵をつくる個体の割合を調べた(図1)。
[D] 動物の進化の初期に、扁形動物を含む左右相称動物が、ほかの動物から分かれた。カンブリア紀の始まりはおよそ【カ】億年前とされる。
問1 下線部(1)は無性生殖の例である。分裂以外の無性生殖の例を、生物名とともにあげなさい。(書き方の例:プラナリアが分裂によって殖える)
問2 空欄【ア】〜【ウ】に適切な用語を入れなさい。
問3 実験1〜3から導かれることを簡潔に説明しなさい。
問4 実験4の結果は何を示唆するか、考えられることを述べなさい。
問5 実験5の結果から、【イ】細胞の性質をどのように解釈できるか説明しなさい。空欄【エ】【オ】にも適切な用語を入れなさい。
問6 図1から、水温と生殖様式の関係を読み取って説明しなさい。
問7 温帯域の野外環境でこのプラナリアが示す生活史を推定し、説明しなさい。
問8 空欄【カ】に最も近い数字を、次から1つ選びなさい。(1,2,5,10,15,21,38)
問9 分裂によって殖える世代と、受精卵から生じる世代とでは、遺伝的にどのような違いがあるか、簡潔に説明しなさい。
問1 例:ジャガイモが塊茎によって(栄養生殖で)殖える/シダが胞子によって殖える、など。(分裂のプラナリアは不可)
問2 【ア】扁形、【イ】新生、【ウ】再生芽(ブラステマ)。
問3 どの断片でも、失った部分が前後の向きに沿って再生し、頭と尾が正しい向きに作られる。断片の前後の向き(極性)は、組織にもともと備わっていて、置き方によらない。
問4 再生には、分裂できる新生細胞が必要であり、これが死ぬと再生も、個体の維持もできなくなる。
問5 新生細胞1個から全身が回復したので、新生細胞の中には、1個で体のすべての種類の細胞をつくれる細胞がある(多能性)。【エ】ES(胚性幹)、【オ】体性(組織)。
問6 水温が高いほど分裂して増える個体の割合が高く(20℃で最大)、低いほど卵をつくる個体の割合が高い(5℃で最大)。水温が下がると、無性生殖から有性生殖へ切り替わる。
問7(要確認)水温の高い春〜夏は分裂で急速に増え、秋に水温が下がると有性生殖に切り替えて卵をつくる。冬は卵(耐久性のある卵)で越し、春に孵化する。
問8 5(約5.4億年前。要確認)。
問9 分裂の世代は体細胞分裂で生じ、親と遺伝的に同一(クローン)。受精卵の世代は、減数分裂と受精による遺伝子の組み合わせの変化で多様になる。環境が変わるとき、多様な子は一部が生き残りやすい。
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