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全2大問・40マーク完全網羅【大問 I】ヒトや動物の消化や代謝を担う臓器・肝臓の代謝と再生(マーク 1 〜 26)
【大問 II】免疫と感染症・補体と抗体の実験・イムノクロマト法(マーク 27 〜 40)
大問 I:ヒトや動物の消化や代謝を担う臓器・肝臓の代謝と再生
北里医学部の2024年度・大問Iは「肝臓」を軸にした超総合問題だよ!
問1は肝臓・すい臓・脾臓(ひぞう)・小腸をめぐる血管ネットワーク(特に肝門脈!)の解剖生理、問2はアミノ酸の脱アミノ反応と尿素計算、そして問3は副交感神経(アセチルコリン)とマクロファージ(IL)による「肝再生の実験考察」だ。
特に「適切なものだけをすべて含む選択肢(過不足なく選ぶ形式)」が北里名物!1つでも知識が曖昧だと即失点になるから、図1の臓器・血管マップを最初に完璧に確定させてから解き進めよう!
問1:消化や代謝に関わる臓器と血管の連関(マーク [1] 〜 [10])
成人の肝臓は、約 $1\sim 2\text{ kg}$ の重量を有する臓器で、物質の代謝や貯蔵、合成に関わる。図1は、臓器や臓器内の領域($\text{L}\sim\text{Q}$)と血管($1\sim 9$)の配置を模式的に示しており、$\text{L}$ が肝臓に該当する。血管 $1$ は大動脈、血管 $2$ は大静脈である。心臓を出た動脈血のうち約(あ)$\text{\%}$が、主に血管 $3$ と血管 $7$ を経由して肝臓へ流入する。肝臓内を通過した血液は血管 $8$ を経て血管 $2$ へ入る。肝臓は、約(い)$\text{mm}$ の大きさの肝小葉が約(う)万個集まって構成されている。肝小葉で生成された胆汁は(え)を通り $\text{M}$ に貯えられる。胃を通過した食物が、小腸の最も胃に近い領域である $\text{N}$ に達すると、それが刺激となって胆汁が $\text{N}$ に放出される。$\text{P}$ は、内分泌腺と外分泌腺を含む臓器で、$\text{P}'$ を介して消化を助ける物質を分泌する。$\text{O}$ は、$\text{N}$ を通過した食物がさらに分解・吸収される部位で、大腸に入る手前までの領域を示す。
▼ 図1の完全解読マップ(最初にすべての記号の正体を特定しよう!)
問1 - 1文中の(あ)〜(う)に当てはまる数値の組合せ [マーク 1]
解答:⑥(30, 1, 50)
肝臓に関する基本数値は医学部入試の超頻出知識です!
・(あ)肝臓への血流量の割合:心臓から拍出される血液(心拍出量)の約 $30\text{\%}$(約 $1/4 \sim 1/3$)が、肝動脈(血管3)と肝門脈(血管7)を通って肝臓へ流入します(選択肢は $3\text{\%}$ か $30\text{\%}$ なので $30$ が確定)。
・(い)肝小葉の大きさ:六角柱状の機能単位である肝小葉の直径は 約 $1\text{ mm}$($1\sim 2\text{ mm}$)です。
・(う)肝小葉の数:ヒトの肝臓全体には、約 $50\text{万個}$ の肝小葉が存在します。
したがって、(あ)$30$、(い)$1$、(う)$50$ の組合せである ⑥ が正解です。
問1 - 2文中の(え)に当てはまる最も適切な語 [マーク 2]
解答:⑤(胆管)肝小葉の肝細胞で生成された胆汁は、毛細胆管から集まって胆管(え)(図1の $\text{M}'$)を通り、胆のう($\text{M}$)に一時的に貯えられます。その後、食物が十二指腸($\text{N}$)に達すると、胆管($\text{M}''$)を通って十二指腸へ放出されます。よって ⑤ 胆管 が正解です。
問1 - 3血管1(大動脈)と血管2(大静脈)の特徴 [マーク 3, 4]
血管 $1$ は大動脈、血管 $2$ は大静脈です。選択肢 $\text{A}\sim\text{E}$ を1つずつ丁寧に判定しましょう。
- A. 右心室から出てまもない血液が流れる:右心室から出るのは「肺動脈」です。血管1(大動脈)にも血管2(大静脈)にも当てはまりません(×)。
- B. 左心室から出てまもない血液が流れる:左心室から大動脈へ拍出された動脈血が流れるので、血管1(大動脈)のみの特徴です。
- C. 静脈血が流れる:全身の組織を通過して酸素を失った静脈血が心臓(右心房)へ戻る血管なので、血管2(大静脈)のみの特徴です。
- D. 内皮がある:動脈・静脈・毛細血管のすべての血管は、最も内側に1層の扁平な細胞からなる内皮(血管内皮)をもちます。したがって血管1と血管2に共通です。
- E. 平滑筋の層がある:動脈と静脈の血管壁は「内膜(内皮)・中膜(平滑筋と弾性繊維)・外膜」の3層構造をもちます(動脈の方が中膜の平滑筋層が厚いですが、静脈にも平滑筋層は存在します。毛細血管のみ内皮1層だけで平滑筋がありません)。したがって血管1と血管2に共通です。
・(1) 血管1と血管2に共通に見られる特徴:$\text{D}$ と $\text{E}$ → ⑮ DE
・(2) 血管2(大静脈)のみに当てはまる特徴:$\text{C}$ のみ → ③ C
問1 - 4食後に血管3(肝動脈)と比べた血管7(肝門脈)の血液の特徴 [マーク 5]
解答:⑨(AE)血管3は「肝動脈」(大動脈から直接枝分かれして肝臓へ入る動脈血)、血管7は「肝門脈」(小腸 $\text{N}\cdot\text{O}$ の毛細血管で栄養分を吸収した後に集まって肝臓へ流入する静脈血)です。「食後」という条件に注目して比較します!
- A. アミノ酸の濃度が高い(〇):食後、小腸でタンパク質が消化されて生じたアミノ酸や、炭水化物が消化されて生じたグルコースは、小腸絨毛の毛細血管に吸収され、肝門脈(血管7)を通って肝臓へ運ばれます。そのため肝動脈(血管3)よりもアミノ酸濃度が高いです。
- B. アルブミンの濃度が高い(×):アルブミン(血しょうタンパク質)は肝臓($\text{L}$)で合成されるタンパク質であり、小腸から吸収されるものではありません。
- C. 温度が低い(×):消化管(小腸)が活発に活動しているため、血液温度が特別低くなることはありません(むしろ深部臓器を通るため温かい)。
- D. グルコース濃度が低い(×):食後は小腸からグルコースが大量に吸収されて肝門脈へ入るため、血管7のグルコース濃度は極めて高いです。
- E. 酸素濃度が低い(〇):血管3(肝動脈)は肺で酸素を取り込んだ直後の動脈血であるのに対し、血管7(肝門脈)は小腸などの消化管組織の毛細血管を通過して酸素が消費された後の静脈血であるため、酸素濃度は低いです。
よって、適切なものは $\text{A}$ と $\text{E}$ であり、⑨ AE が正解です。
問1 - 5脾臓(Q)で生じたビリルビンが体外へ出されるまでの主要経路 [マーク 6]
解答:④(7 - L - M' - M - M'' - N - O - 大腸)図1の $\text{Q}$ は脾臓(ひぞう)です。脾臓で古くなった赤血球が破壊され、ヘモグロビンが分解されて生じたビリルビン(胆汁色素の主成分)がどのルートで体外へ排出されるかを追跡します。
- 脾臓($\text{Q}$)から肝臓($\text{L}$)へ運ばれる血管ルート:脾臓から出た静脈(血管 $9$:脾静脈)は、大静脈に直接入るのではなく、血管 $7$(肝門脈)に合流して肝臓($\text{L}$)へ流入します!(※だから最初の数字は $7$ です)。
- 肝臓($\text{L}$)から胆汁として十二指腸($\text{N}$)へ放出されるルート:肝臓($\text{L}$)に取り込まれたビリルビンは、胆汁の成分(胆汁色素)として胆管($\text{M}'$)を通り、胆のう($\text{M}$)に蓄えられた後、胆管($\text{M}''$)を通って十二指腸($\text{N}$)へ排出されます。
- 小腸から大腸を経て糞便として体外へ:十二指腸($\text{N}$)に出たビリルビンは、小腸の後半である空腸・回腸($\text{O}$)を通り、大腸へ送られて(腸内細菌によりウロビリノーゲン・ステルコビリン等に変化して)主に便として体外へ排出されます。
したがって、「$7 \to \text{L} \to \text{M}' \to \text{M} \to \text{M}'' \to \text{N} \to \text{O} \to \text{大腸}$」となっている ④ が正解です。
問1 - 6すい臓(P)から放出される消化酵素と最適pHの組合せ [マーク 7]
解答:⑤(トリプシン/pH8、リパーゼ/pH9)
・$\text{P}$ はすい臓、$\text{P}'$ はすい管です。すい液に含まれる消化酵素を選びます。
・選択肢にあるペプシンは「胃液」に含まれる消化酵素(最適 $\text{pH}\ 2$ 付近の強酸性)であり、すい臓($\text{P}$)からは分泌されません。よってペプシンを含む①〜③、⑦〜⑨はすべて除外できます!
・残る④〜⑥は、すい液に含まれるタンパク質分解酵素トリプシンと脂肪分解酵素リパーゼの組合せです。すい液は炭酸水素ナトリウム($\text{NaHCO}_3$)を含み弱塩基性($\text{pH}\ 8\sim 9$ 程度)で働くため、トリプシンもリパーゼも最適 $\text{pH}$ は弱塩基性($\text{pH}\ 8$ および $\text{pH}\ 9$)です($\text{pH}\ 2$ を含む④と⑥は不適)。
したがって、両方とも弱塩基性の ⑤(トリプシン/pH8、リパーゼ/pH9) が正解です。
問1 - 7ホルモン「セクレチン」の分泌刺激と循環経路 [マーク 8, 9, 10]
世界最初に発見されたホルモン(ベイリスとスターリングが発見)として有名なセクレチンの分泌と血流経路の問題です!
- (1) セクレチンの分泌を刺激する物質 [マーク 8]:胃から十二指腸($\text{N}$)へ送り込まれた酸性の内容物に含まれる胃酸(塩酸:$\text{HCl}$)が、十二指腸粘膜のセクレチン分泌細胞(S細胞)を刺激してセクレチンを血液中へ分泌させます。よって ② 塩酸。
- (2) 生成されたセクレチンが放出されて最初に通る血管 [マーク 9]:ホルモンは導管ではなく血液中(毛細血管)へ分泌されます!生成部位である十二指腸($\text{N}$)から出る静脈はどれかを図1で見ると、小腸($\text{N}\cdot\text{O}$)から肝臓($\text{L}$)へ向かう血管 $7$(肝門脈)です!(血管 $6$ は大動脈から小腸へ入る動脈なので逆向きです)。よって最初に通る血管は ⑦ 血管7。
- (3) セクレチンが標的組織に入る直前に通る血管 [マーク 10]:セクレチンの標的器官は、重曹($\text{NaHCO}_3$)に富むすい液を分泌するすい臓($\text{P}$)です。十二指腸($\text{N}$)から分泌されたセクレチンは、「血管 $7$(肝門脈)$\to$ 肝臓($\text{L}$)$\to$ 血管 $8$(肝静脈)$\to$ 血管 $2$(大静脈)$\to$ 心臓(右心房 $\to$ 右心室 $\to$ 肺 $\to$ 左心房 $\to$ 左心室)$\to$ 血管 $1$(大動脈)」と全身を巡り、大動脈からすい臓($\text{P}$)へ流入する動脈である血管 $5$ を通って標的組織(すい臓)に到達します!よって直前に通る血管は ⑤ 血管5。
問2:ヒトの肝臓における物質代謝と尿素の計算(マーク [11] 〜 [18])
問2 - 1成人が体内で合成できないアミノ酸(必須アミノ酸) [マーク 11]
解答:⑭(BCD)
ヒト(成人)が体内で十分な量を合成できず、栄養分として摂取しなければならない必須アミノ酸(9種類)は、語呂合わせ「フロイシン(風呂・イ・シン)とバ・メ・ヒ・リ・トリ」(フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン=トレオニン、バリン、メチオニン、ヒスチジン、リシン、トリプトファン)で覚えましょう!
・A. セリン:非必須アミノ酸(体内で合成できる)
・B. トレオニン(スレオニン):必須アミノ酸(〇)
・C. バリン:必須アミノ酸(〇)
・D. メチオニン:必須アミノ酸(〇)
よって $\text{B}, \text{C}, \text{D}$ を含む ⑭ BCD が正解です。
問2 - 2脱アミノ反応で生じる有機酸(お)・(か) [マーク 12, 13]
炭素数($\text{C}$ の数)に注目すると一瞬で分かります!
・アラニン($\text{C}_3\text{H}_7\text{NO}_2$:炭素数 $3$)が脱アミノされると、同じ炭素数 $3$($\text{C}_3$)の有機酸であるピルビン酸($\text{C}_3\text{H}_4\text{O}_3$)になります → (お)④ ピルビン酸。
・グルタミン酸($\text{C}_5\text{H}_9\text{NO}_4$:炭素数 $5$)が脱アミノされると、同じ炭素数 $5$($\text{C}_5$)のクエン酸回路中間体である$\alpha$-ケトグルタル酸(ケトグルタル酸:$\text{C}_5\text{H}_6\text{O}_5$)になります → (か)③ ケトグルタル酸。
(※なお、炭素数 $4$ のアスパラギン酸が脱アミノされると、炭素数 $4$ のオキサロ酢酸になります。この3セットは超重要!)
問2 - 3動物の窒素代謝物の排出に関する「適切ではない記述」 [マーク 14]
解答:⑪(BD)※注意!「適切ではない記述(誤っているもの)」をすべて選ぶ問題です!
- A. 魚類ではアンモニアが排出される(適切:〇):水中に住む硬骨魚類や両生類の幼生(オタマジャクシ)は、毒性が強いが水に溶けやすいアンモニアのままえらや体表から周囲の水中に排出します。
- B. 鳥類では尿素が排出される(不適切:×):鳥類や爬虫類は、陸上で「殻をもつ卵(閉鎖卵)」の中で発生するため、胚の周囲に有害なアンモニアや水溶性の尿素がたまると浸透圧や毒性で死んでしまいます。そのため、水に溶けにくく無毒な結晶となる尿酸として排出します。
- C. 爬虫類では尿酸が排出される(適切:〇):上記の通り正しいです。
- D. 両生類の成体では尿酸が排出される(不適切:×):両生類の成体(カエルなど)や哺乳類は、アンモニアを肝臓の尿素回路で毒性の低い水溶性の尿素に変えて尿として排出します(尿酸ではありません)。
- E. 両生類の水棲の幼生ではアンモニアが排出される(適切:〇):オタマジャクシは水中で生活するためアンモニアを排出します。
よって、適切ではない記述は $\text{B}$ と $\text{D}$ であり、⑪ BD が正解です。
問2 - 4タンパク質 $84\text{ g}$ から生成される尿素の質量計算 [マーク 15, 16, 17]
解答:28.8 g([15] ②、[16] ⑧、[17] ⑧)【Step 1】タンパク質 $84\text{ g}$ 中に含まれる窒素原子($\text{N}$)の質量と物質量($\text{mol}$)を求める
タンパク質の重量の $16\text{\%}$ が窒素原子($\text{N}$)なので、摂取した窒素原子の質量は、 $$\text{窒素原子の質量} = 84\text{ g} \times \frac{16}{100} = 13.44\text{ g}$$ 窒素の原子量は $14$(すなわち $14\text{ g/mol}$)なので、窒素原子($\text{N}$)の物質量は、 $$\text{窒素原子 N の物質量} = \frac{84 \times 0.16}{14}\text{ mol} = 6 \times 0.16\text{ mol} = 0.96\text{ mol}$$ (※ $84 \div 14 = 6$ と先に約分すると暗算で一発で計算できます!)
【Step 2】生成する尿素 $\text{CO(NH}_2)_2$ の物質量($\text{mol}$)と質量($\text{g}$)を求める
化学式 $\text{CO(NH}_2)_2$ を見ると、尿素 $1$ 分子あたりに窒素原子($\text{N}$)が $2$ 個含まれています。
したがって、$0.96\text{ mol}$ の窒素原子がすべて尿素になるとき、生成する尿素の物質量は窒素原子の半分($\frac{1}{2}$)になります!
$$\text{尿素の物質量} = 0.96\text{ mol} \times \frac{1}{2} = 0.48\text{ mol}$$
尿素の分子量は $60$(すなわち $60\text{ g/mol}$)なので、産生される尿素の質量は、
$$\text{尿素の質量} = 0.48\text{ mol} \times 60\text{ g/mol} = 28.8\text{ g}$$
よって答えは $28.8\text{ g}$ です。
・10の位の数字 [15]:$2 \to$ ②
・1の位の数字 [16]:$8 \to$ ⑧
・小数点以下第1位の数字 [17]:$8 \to$ ⑧
問2 - 5窒素の排出量が窒素の摂取量に比べて少なくなる場合 [マーク 18]
解答:⑤(AC)
「窒素の排出量 < 窒素の摂取量」(正の窒素出納)になるのは、摂取したアミノ酸(窒素)を分解して捨てるのではなく、体内で新しいタンパク質(筋肉や臓器、胎児の体など)を盛んに合成して体内に蓄えている状態です!
・A. 成長期の子供(〇):筋肉や骨などの体タンパク質をどんどん増やしているため、摂取した窒素が体内に蓄積され、排出量は摂取量より少なくなります。
・B. 断食を伴う修行中の僧侶(×):外からの窒素摂取量がほぼ $0$ なのに、生命維持のために自らの体タンパク質を分解してエネルギー源にするため、尿素として窒素が排出され続け、「排出量 > 摂取量」となります。
・C. 妊娠5か月の女性(〇):胎児の成長や母体の組織増大のためにタンパク質が盛んに合成・蓄積されるため、排出量は摂取量より少なくなります。
よって $\text{A}$ と $\text{C}$ を含む ⑤ AC が正解です。
問3:肝臓の再生における副交感神経とマクロファージの働き(マーク [19] 〜 [26])
実験1〜6のグラフ(図2 $\text{A}\sim\text{K}$)は一見多く見えるけれど、登場人物はたった4人!
① 副交感神経(伝達物質:アセチルコリン)
② 肝臓のマクロファージ(薬剤 $\text{cd}$ で除去される)
③ サイトカイン $\text{IL}$
④ 肝細胞の遺伝子 $\text{F} \to$ 肝細胞の増殖(肝再生)
この4人がどういう順番(カスケード)でバトンを渡しているかを下のフロー図で確認すれば、問1〜3は100%確実に解けるよ!
▼ 実験1〜6から導かれる「肝切除後の肝再生メカニズム」完全図解
問3 - 1実験1〜3の結果についての記述として最も適切なもの [マーク 19]
解答:④記号の意味を確認しましょう:
・$\text{SO}$:偽手術(対照) ・$\text{PH}$:肝切除のみ(神経は残っている) ・$\text{VPH}$:神経切除を伴う肝切除
- 実験1(図2 A, B):神経切除を伴う肝切除($\text{VPH}$)では、肝切除のみ($\text{PH}$)に比べて2日後の遺伝子 $\text{F}$ の発現量が上昇せず(図2B)、2日後・5日後の細胞増殖率も低いまま(図2A)です。(※5日後になっても $\text{VPH}$ の増殖率は上がっていないので、③の「遅れて上昇する」は誤り)。
- 実験3(図2 E, F):この $\text{VPH}$ マウスに対して、遺伝子 $\text{F}$ を人為的に高発現させる($\text{VPH-F}$)と、2日後の細胞増殖率が $\text{PH}$ と同程度まで回復(肝再生)し(図2E)、14日後のマウスの生存率も $\text{VPH}$($50\text{\%}$)から $\text{VPH-F}$(約 $75\text{\%}$)へと上がる(図2F)ことが分かります。
以上と完全に一致するのは ④「神経切除を伴う肝切除後の肝再生では、肝切除のみの場合の肝再生よりも遺伝子 $\text{F}$ の発現が上昇しないが、遺伝子 $\text{F}$ を人為的に高発現させると肝再生し、マウスの生存率が上がる。」 です。
問3 - 2実験1〜6の結果から、肝切除後に起きたと考えられることの組合せ [マーク 20]
解答:⑪(CF)実験4・5・6のデータ(図2 $\text{G}\sim\text{K}$)を丁寧に読み解きます。
- サイトカイン $\text{IL}$ を産生しているのはどの細胞か?($\text{A, B, C}$ の判定):
実験5の図2 $\text{I}$ を見ると、肝切除($\text{PH}$)の6時間後にサイトカイン $\text{IL}$ が大量に産生されますが、副交感神経を切除した $\text{VPH}$ では $\text{IL}$ が産生されません。さらに図2 $\text{J}$ を見ると、薬剤 $\text{cd}$ でマクロファージを除去したマウス($\text{PH-cd}$)では、6時間後の $\text{IL}$ 産生が完全に抑えられています!
つまり、副交感神経から放出されたアセチルコリンがマクロファージを刺激し、マクロファージからのサイトカイン $\text{IL}$ の産生を促している($\text{C}$ が正しい!)ことが分かります。 - マクロファージから産生されたサイトカイン $\text{IL}$ の働きは?($\text{D, E, F, G}$ の判定):
実験4(図2 $\text{G, H}$)でマクロファージを除去($\text{PH-cd}$)すると遺伝子 $\text{F}$ の発現と肝細胞の増殖が起こらなくなり、実験6(図2 $\text{K}$)でサイトカイン $\text{IL}$ の阻害剤を投与($\text{PH-IL}$阻害剤)すると遺伝子 $\text{F}$ の発現量が大きく低下しています。実験3より遺伝子 $\text{F}$ は肝細胞の増殖を促すので、マクロファージから産生されたサイトカイン $\text{IL}$ は(遺伝子 $\text{F}$ の発現を介して)肝細胞の増殖を促す($\text{F}$ が正しい!)と結論できます。
よって、$\text{C}$ と $\text{F}$ の組合せである ⑪ CF が正解です。
問3 - 3上記 [20](CとF)の裏付けとなるような追加実験の結果 [マーク 21]
解答:②
上記 [20] の結論は「$\text{C}$:アセチルコリンがマクロファージを刺激してサイトカイン $\text{IL}$ の産生を促す $\to$ $\text{F}$:その $\text{IL}$ が肝細胞の増殖を促す」です。
ここで、実験2で用いた薬剤 $\text{ap}$ は「アセチルコリンの受容体への結合を阻害する薬剤」でした。
もし本当に「アセチルコリン $\to$ $\text{IL}$ 産生」という経路($\text{C}$)が働いているならば、肝切除後に薬剤 $\text{ap}$ を投与したマウス($\text{PH-ap}$)では、アセチルコリンがマクロファージに働けなくなるため、$\text{PH}$ 処置のみを行ったマウスに比べて、6時間後の肝臓でサイトカイン $\text{IL}$ の産生が低下するはずです!
- ①:$\text{PH-ap}$ で $\text{IL}$ の産生が「上昇する」としているため逆(×)。
- ②:$\text{PH}$ 処置のみを行ったマウスに比べ、$\text{PH-ap}$ 処置を行ったマウスは、6時間後の肝臓でサイトカイン $\text{IL}$ の産生が低下する(〇:Cの直接的な裏付け!)。
- ③:$\text{PH-ap}$ にさらにマクロファージ除去剤 $\text{cd}$ を投与しても、上流も中流も止まったままなので増殖率は上昇しない(×)。
- ④:$\text{PH-ap}$ でアセチルコリンを止めても、その下流の物質であるサイトカイン $\text{IL}$ を外から投与すれば、増殖率は低下するのではなく「回復(上昇)」するはず(×)。
したがって ② が正解です。
問3 - 4肝細胞が由来する胚葉と、同じ胚葉に由来する組織の組合せ [マーク 22]
解答:⑩(BCD)脊椎動物の発生における胚葉の分化(外胚葉・中胚葉・内胚葉)の知識問題です。
- [胚葉] 肝細胞は何胚葉由来か?:消化管(胃・腸)の上皮や、消化管から枝分かれして作られる肝臓・すい臓、および肺・気管・甲状腺などはすべて内胚葉(B)に由来します!
- [組織] 内胚葉に由来する組織をすべて選ぶ:
- C. 気管上皮(〇:内胚葉):呼吸器系(気管・気管支・肺胞の上皮)は消化管(原腸)から膨らんで作られるため内胚葉由来です。
- D. 甲状腺(〇:内胚葉):咽頭(原腸の前部)の壁から分化するため内胚葉由来です。
- E. 輸尿管(×:中胚葉):腎臓や輸尿管などの泌尿器系(腎節由来)は中胚葉由来です(なお、膀胱や尿道の上皮は内胚葉ですが、輸尿管は腎臓と同じく中胚葉です)。
よって、$\text{B}$(内胚葉)と $\text{C}$(気管上皮)、$\text{D}$(甲状腺)をすべて含む ⑩ BCD が正解です。
問3 - 5細胞周期における休止期(き)と分裂再開時の期(く) [マーク 23, 24]
(1) (き)と(く)に当てはまる語の組合せ [マーク 23]
分化した細胞が細胞周期($\text{G}_1 \to \text{S} \to \text{G}_2 \to \text{M}$)から外れて細胞増殖を停止している状態を$\text{G}_0$ 期(休止期)といいます。肝切除などの刺激を受けると、肝細胞は $\text{G}_0$ 期(き)からまず細胞周期の$\text{G}_1$ 期(DNA合成準備期)(く)に戻り、続いて $\text{S}$ 期(DNA合成期)$\to \text{G}_2$ 期 $\to \text{M}$ 期(分裂期)へと進んで増殖します。よって ① $\text{G}_0, \text{G}_1$ が正解です。
(2) 肝細胞の他に、その大半が $\text{G}_0$ 期にある細胞の組合せ [マーク 24]
・A. 心筋細胞(〇)、B. 神経細胞(〇):いずれも終末分化した細胞であり、成体では細胞分裂を行わず$\text{G}_0$ 期にとどまっています。
・C. 精原細胞(×)、D. がん細胞(×):常に盛んに体細胞分裂を繰り返しているため、$\text{G}_0$ 期には入らず細胞周期を回り続けています。
よって $\text{A}$ と $\text{B}$ の組合せである ① AB が正解です。
問3 - 6下線部 d(自律神経)の働きとして適切な記述 [マーク 25]
解答:⑨(BD)交感神経と副交感神経の作用・中枢の位置を1つずつ正確にチェックします!
- A(×):皮膚の立毛筋は交感神経の作用により収縮します(ここまでは正しい)が、その結果、体表からの熱放散は「抑制」されます(体温保持・上昇に働く)。「熱放散が促進される」が誤りです。
- B(〇):気管支(細気管支)の収縮は、延髄から出る副交感神経(迷走神経)の作用により促進されます(逆に交感神経は気管支を拡張させます)。正しい記述です!
- C(×):胃や小腸のぜん動は、延髄から出る副交感神経の作用により促進されます(「脊髄から出る」「抑制される」の2か所が誤り)。
- D(〇):ぼうこうからの排尿は、交感神経の作用により抑制されます(交感神経が働くと膀胱壁が弛緩し、内尿道括約筋が収縮して尿を溜めます。逆に仙髄から出る副交感神経=骨盤神経が働くと排尿が促進されます)。正しい記述です!
よって、適切なものは $\text{B}$ と $\text{D}$ であり、⑨ BD が正解です。
問3 - 7下線部 e(アセチルコリン)について適切な記述 [マーク 26]
解答:⑦(AD)神経伝達物質アセチルコリンの性質と働きを判定します。
- A(〇):運動神経の末端(神経筋接合部)からはアセチルコリンが放出され、骨格筋の筋細胞膜にある受容体(ニコチン様アセチルコリン受容体)に結合して活動電位を発生させ、筋収縮を起こします。
- B(×):興奮性シナプス後電位($\text{EPSP}$)を起こす受容体型イオンチャネルは、ナトリウムイオン($\text{Na}^+$)などを細胞内へ流入させるチャネル(陽イオンチャネル)として働きます。「カリウムチャネルとして働き $\text{EPSP}$ を起こす」は誤りです(もし $\text{K}^+$ チャネルが開いて $\text{K}^+$ が流出すれば過分極=$\text{IPSP}$ になります)。
- C(×):シナプス間隙に放出されたアセチルコリンは、シナプス後膜側にそのまま回収されるのではなく、シナプス間隙にある酵素コリンエステラーゼ(アセチルコリンエステラーゼ)によってすみやかに分解(コリンと酢酸に分解)されます!(※分解産物のコリンがシナプス前終末に再吸収されます)。
- D(〇):副交感神経(迷走神経)の末端から放出されるアセチルコリンは、心臓のペースメーカー(洞房結節)に働いて心臓の拍動を抑制します。
よって、適切な記述は $\text{A}$ と $\text{D}$ であり、⑦ AD が正解です。
大問 II:免疫と感染症・抗体と補体による溶血実験・抗原検査キットの原理
大問IIは医学部受験生なら絶対に得意にしておきたい「免疫・ウイルス」の大問だよ!
問1は免疫細胞と抗体(BCR)の基本チェック。問2は「抗体(成分P)+補体(成分Q)によるヒツジ赤血球の凝集と溶血」の実験考察で、抗体を酵素 $\text{E1}\cdot\text{E2}$ で切断したときに「凝集(2価で架橋できるか)」と「溶血($\text{Fc}$ 部位がつながっていて補体が結合できるか)」がどう変わるかを見抜く名問!
そして問3はコロナやインフルエンザの検査でおなじみの「イムノクロマト法(抗原検査キット)」の原理だ。図を描いて整理すれば満点が狙えるよ!
問1:自然免疫と獲得免疫のしくみ(マーク [27] 〜 [31])
問1 - 1免疫担当細胞のうち、食細胞だけをすべて含む選択肢 [マーク 27]
解答:⑩(CD)
自然免疫で異物を食作用(ファゴサイトーシス)によって取り込み分解する食細胞は、好中球(C)、マクロファージ(D)、および樹状細胞の3種類です。
リンパ球である $\text{B}$ 細胞(A)と $\text{T}$ 細胞(B)は食細胞ではありません。よって ⑩ CD が正解です。
問1 - 2免疫担当細胞についての記述として適切なもの [マーク 28]
解答:①(A)- A. 好中球、B細胞、T細胞は、すべて白血球である(〇):血液中の有形成分は「赤血球・白血球・血小板」に分けられ、好中球(顆粒球)、リンパ球(B細胞・T細胞・NK細胞)、単球はすべて白血球に含まれます。
- B. 好中球は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスII分子をもつ(×):$\text{MHC}$ クラスII分子をもち、ヘルパーT細胞に抗原提示を行う専門の抗原提示細胞は、樹状細胞・マクロファージ・B細胞の3種類です。好中球は抗原提示を行わず、$\text{MHC}$ クラスII分子をもちません(有核細胞なので $\text{MHC}$ クラスI分子はもちます)。
- C. 好中球は、血液中の血球のうち最も多く存在する(×):注意!「白血球のうち」なら好中球が最多ですが、問題文は「血液中の血球のうち」となっています。血球全体の中で圧倒的に最も多く存在するのは赤血球(次いで血小板、白血球は最も少ない)です!引っかからないように要注意!
- D. マクロファージは、組織へ移動して単球へと分化する(×):逆です!血液中を流れる単球が血管外(組織内)へ移動してマクロファージへと分化します。
よって適切なものは $\text{A}$ のみであり、① A が正解です。
問1 - 3B細胞とT細胞が分化して成熟する部位 [マーク 29, 30]
すべての血球は骨髄の造血幹細胞から作られますが、そのうちB細胞はそのまま骨髄(Bone marrow)で分化・成熟し(だからB細胞)、T細胞は骨髄から胸腺(Thymus)へ移動して分化・成熟します(だからT細胞)。
よって (1) ④ 骨髄、(2) ② 胸腺 が正解です。
問1 - 4B細胞受容体(BCR)と抗体についての適切な記述 [マーク 31]
解答:⑫(ABD)- A. BCRと抗体はいずれも免疫グロブリンで構成される(〇):$\text{B}$ 細胞受容体($\text{BCR}$)は膜結合型の免疫グロブリンであり、抗体は分泌型の免疫グロブリンです。両方とも免疫グロブリン($\text{Ig}$)で構成されています。
- B. BCRは細胞膜に存在し、抗体は細胞外へ分泌される(〇):$\text{B}$ 細胞の細胞膜表面にある受容体が $\text{BCR}$ であり、活性化した $\text{B}$ 細胞が抗体産生細胞(形質細胞)に分化すると、同じ可変部をもつ免疫グロブリンを抗体として細胞外(体液中)へ分泌します。
- C. B細胞は、BCRに抗原の一部をのせてT細胞に対して抗原提示を行う(×):超重要ひっかけポイント!抗原提示細胞(樹状細胞・マクロファージ・B細胞)がヘルパーT細胞に抗原断片をのせて提示する台座は、$\text{BCR}$ ではなくMHCクラスII分子です!($\text{B}$ 細胞は $\text{BCR}$ で結合した抗原を細胞内に取り込んで分解し、その断片を $\text{MHC}$ クラスII分子にのせてT細胞に提示します)。
- D. あるB細胞がもつBCRが認識できる異物と同一の異物を認識できるT細胞が存在する(〇):同じ病原体(異物)に対して特異的に反応するヘルパーT細胞が、その異物を取り込んで提示したB細胞を認識して活性化させます。したがって同一の異物を認識できるT細胞が存在します。
よって、適切なものは $\text{A}, \text{B}, \text{D}$ であり、⑫ ABD が正解です。
問2:抗ヒツジ赤血球抗体(成分P)と補体(成分Q)による溶血実験(マーク [32] 〜 [36])
・免疫血清 = 成分 $\text{P}$(抗ヒツジ赤血球抗体) + 成分 $\text{Q}$(補体タンパク質)を含む。
・溶血が起こる条件:$\text{ア}$ ヒツジ赤血球と成分 $\text{P}$ が結合し、さらに $\text{イ}$ その成分 $\text{P}$ と成分 $\text{Q}$ が結合した場合に起こる。赤血球と成分 $\text{Q}$ は、成分 $\text{P}$ の分子内の異なる部位にそれぞれ結合する。
・【実験1】(加熱処理=$56\,^\circ\text{C}$・$30$分間、$\text{EDTA}$ = $\text{Ca}^{2+}$ や $\text{Mg}^{2+}$ を除去する化合物):
処理1(加熱免疫血清のみ):凝集あり・溶血なし
処理2(加熱免疫血清 + 未加熱 $\text{P}$):凝集あり・溶血なし
処理3(加熱免疫血清 + 未加熱 $\text{Q}$):溶血が見られた!
処理4(加熱免疫血清 + 未加熱 $\text{P}$ + $\text{EDTA}$):凝集あり・溶血なし
処理5(加熱免疫血清 + 未加熱 $\text{Q}$ + $\text{EDTA}$):凝集あり・溶血なし
・【実験2】(酵素 $\text{E1}$ と酵素 $\text{E2}$ で成分 $\text{P}$ を切断した後に成分 $\text{Q}$ とヒツジ赤血球を混合):
【酵素 $\text{E1}$ 処理の結果】断片化した成分 $\text{P}$ は赤血球と結合した。赤血球の凝集が見られたものの溶血は見られなかった。
【酵素 $\text{E2}$ 処理の結果】断片化した成分 $\text{P}$ は赤血球と結合した。赤血球の凝集も溶血も見られなかった。
問2 - 1下線部アおよび下線部イが必要であることを証明する改変型成分P [マーク 32, 33]
対照実験の大原則である「一要因のみを変化させ、他の条件は正常と同じ($\pm$)に保つ」というルールを適用します!
- (1) 下線部ア「ヒツジ赤血球と成分 $\text{P}$ が結合すること」が必要であることを証明する改変型成分 $\text{P}$ [マーク 32]:
「成分 $\text{Q}$ との結合のしやすさは正常と同程度($\pm$)であるにもかかわらず、赤血球との結合だけができなくなった($-$)改変型成分 $\text{P}$」を用いたときに溶血が見られなくなれば、「赤血球と成分 $\text{P}$ の結合(下線部ア)が溶血に必須である」と証明できます。よって「赤血球との結合:$-$、成分 $\text{Q}$ との結合:$\pm$」である ④ が正解です。 - (2) 下線部イ「成分 $\text{P}$ と成分 $\text{Q}$ が結合すること」が必要であることを証明する改変型成分 $\text{P}$ [マーク 33]:
同様に、「赤血球との結合のしやすさは正常と同程度($\pm$)であるにもかかわらず、成分 $\text{Q}$ との結合だけができなくなった($-$)改変型成分 $\text{P}$」を用いれば、下線部イが溶血に必須であると証明できます。よって「赤血球との結合:$\pm$、成分 $\text{Q}$ との結合:$-$」である ⑤ が正解です。
問2 - 2【実験1】から考えられる記述として最も適切な組合せ [マーク 34]
解答:⑤(BCE)- 成分 $\text{P}$(抗体)は加熱で不活性化されるか?(A vs B):
処理1(免疫血清を $56\,^\circ\text{C}$ で30分加熱しただけ)でも「ヒツジ赤血球の凝集」が起きています。さらに、加熱した免疫血清に未加熱の成分 $\text{Q}$ だけを加えた処理3で溶血が起きたということは、加熱した免疫血清の中に活性を保った正常な成分 $\text{P}$ がそのまま残っていたことを意味します!つまり、B. 成分 $\text{P}$(抗体)は加熱処理によって不活性化されない(熱に強い)が正しいです。 - 成分 $\text{Q}$(補体)は加熱で不活性化されるか?(C vs D):
処理1(加熱免疫血清のみ)や処理2(未加熱 $\text{P}$ を追加)では溶血せず、未加熱の成分 $\text{Q}$ を補った処理3でのみ溶血が回復したことから、元の免疫血清中の成分 $\text{Q}$ は加熱処理によって失活していたことが分かります。つまり、C. 成分 $\text{Q}$(補体)は加熱処理によって不活性化される(熱に弱い:これを血清の「非働化」といいます)が正しいです。 - 溶血に $\text{Ca}^{2+}$ や $\text{Mg}^{2+}$ は必要か?(E vs F):
溶血が起こるはずの「処理3」の条件に、$\text{Ca}^{2+}$ や $\text{Mg}^{2+}$ をキレートして除去する $\text{EDTA}$ を加えた「処理5」では溶血が見られなくなったことから、E. 溶血には $\text{Ca}^{2+}$ や $\text{Mg}^{2+}$ が必要であるが正しいです。
よって、$\text{B}, \text{C}, \text{E}$ の組合せである ⑤ BCE が正解です。
問2 - 3【実験2】から考えられる酵素E1と酵素E2による成分P(抗体)の切断部位 [マーク 35, 36]
▼ 抗体(成分P)の構造と切断パターン①〜④の完全比較図
Y字型の抗体(成分 $\text{P}$)は、上部の2本の腕の先端(可変部)でヒツジ赤血球(抗原)と結合し、下部の脚部(定常部・$\text{Fc}$ 領域)で成分 $\text{Q}$(補体)と結合します。
また、「赤血球の凝集」が起こるためには、抗体が2本の腕を両方とも持った状態(2価)で、2つの赤血球どうしを橋渡し(架橋)する必要があります!
- (1) 酵素 $\text{E1}$ の切断部位 [マーク 35]:
酵素 $\text{E1}$ で処理すると「赤血球と結合し、凝集が見られたものの、溶血は見られなかった」。
凝集が起きたということは、2本の腕(抗原結合部位)が中央の $\text{S}-\text{S}$ 結合でつながったまま($\text{F(ab')}_2$ 断片として)残っているということです!一方で溶血が起きなかったのは、成分 $\text{Q}$(補体)が結合する下部の脚部($\text{Fc}$ 領域)が切り離されたからです。
したがって、中央の $\text{H}$ 鎖どうしをつなぐ $\text{S}-\text{S}$ 結合の「下側」で脚部を切り離している ③ が酵素 $\text{E1}$ です(生化学ではペプシン消化に相当します)。 - (2) 酵素 $\text{E2}$ の切断部位 [マーク 36]:
酵素 $\text{E2}$ で処理すると「赤血球と結合した」が、「凝集も溶血も見られなかった」。
赤血球と結合できるので先端の可変部は壊れていません(①ではない)。しかし凝集すら起きなくなったということは、中央の $\text{H}$ 鎖どうしをつなぐ $\text{S}-\text{S}$ 結合よりも「上側(腕の付け根)」で切断されたために、2本の腕($\text{Fab}$ 断片)が1本ずつバラバラに離れてしまい、赤血球どうしを橋渡し(架橋)できなくなった(かつ脚部も切り離されたため溶血もできない)ということです!
したがって、中央の $\text{S}-\text{S}$ 結合の「上側」で2本の腕を切り離している ② が酵素 $\text{E2}$ です(生化学ではパパイン消化に相当します)。
問3:ウイルスの特徴とウイルス抗原検査キットの原理(マーク [37] 〜 [40])
問3 - 1すべてのウイルスに共通する特徴 [マーク 37]
解答:⑧(BC)- A. 遺伝物質である核酸はDNAである(×):ウイルスの核酸は、$\text{DNA}$ をもつ「$\text{DNA}$ ウイルス」と、$\text{RNA}$ をもつ「$\text{RNA}$ ウイルス(インフルエンザウイルス、コロナウイルス、$\text{HIV}$ など)」があるため、すべてに共通ではありません。
- B. 抗生物質による増殖の阻害は起こらない(〇):ペニシリンやストレプトマイシンなどの抗生物質は、細菌の細胞壁合成や細菌特有のリボソームなどを標的として細菌の増殖を抑える薬であり、細胞構造をもたないウイルスには一切効果がありません。
- C. 細胞質をもたない(〇):ウイルスはタンパク質の殻(カプシド)と核酸(および一部のウイルスではエンベロープ)のみからなり、細胞膜や細胞質、細胞小器官をもちません。
- D. 自分自身でエネルギーを産生する(×):ウイルスは代謝系(呼吸酵素やATP合成系)をもたないため、自分自身でエネルギー(ATP)を産生することはできず、宿主細胞のエネルギーと合成系に完全に依存して増殖します。
よって、すべてのウイルスに共通する特徴は $\text{B}$ と $\text{C}$ であり、⑧ BC が正解です。
問3 - 2ヘルパーT細胞に感染して破壊するウイルス(HIV)の影響 [マーク 38]
解答:⑤
ヒト免疫不全ウイルス($\text{HIV}$)のようにヘルパーT細胞に感染して破壊するウイルスに感染するとどうなるでしょうか?
ヘルパーT細胞は、サイトカイン(インターロイキンなど)を放出して、体液性免疫を担う「B細胞の増殖・抗体産生細胞への分化」を促進すると同時に、細胞性免疫を担う「キラーT細胞の活性化・増殖」も促進するという、獲得免疫全体の司令塔です!
したがって、ヘルパーT細胞が破壊されると、B細胞の機能が低下するため体液性免疫が正常に働かなくなり、キラーT細胞の機能も低下するため細胞性免疫も正常に働かなくなる(免疫不全に陥る)ことになります。よって ⑤ が正解です。
問3 - 3イムノクロマト法によるウイルス抗原検査装置 [マーク 39, 40]
▼ 図1:ウイルス抗原検査装置(イムノクロマト法)の結合メカニズム完全図解
新型コロナやインフルエンザの迅速抗原検査キットなどで用いられるイムノクロマト法(サンドイッチ法)の原理に関する頻出問題です。3種類の抗体 $a, b, c$ の役割を正確に整理しましょう。
- 標識抗体 $a$(移動する抗体):金コロイドなどの色素で標識されており、ウイルス抗原に特異的に結合します。標識抗体保持部に十分量(過剰量)含まれており、検体液とともに毛細管現象で右へ移動します。
- 抗体 $b$(判定部 1 に固定):ウイルス抗原に特異的に結合する抗体(標識抗体 $a$ とは異なる部位=エピトープを認識する)です。
- 抗体 $c$(判定部 2 に固定):ウイルス抗原ではなく、「標識抗体 $a$ そのもの」に特異的に結合する抗体(抗免疫グロブリン抗体)です。
● (1)-1) 判定部 1(テストライン)[マーク 39]
検体中にウイルス抗原が存在すると、まず標識抗体保持部で「ウイルス抗原+標識抗体 $a$」の複合体が形成されます。これが移動して判定部 1 に到達すると、固定されている抗体 $b$ がウイルス抗原を捕捉し、「抗体 $b$ - ウイルス抗原 - 標識抗体 $a$」のサンドイッチ構造が作られて着色します。
つまり、判定部 1 の着色は「C:ウイルス抗原と結合した標識抗体 $a$ が移動し、ウイルス抗原と抗体 $b$ が結合したこと」を示しています。よって ③(C) が正解です。
● (1)-2) 判定部 2(コントロールライン)[マーク 40]
標識抗体 $a$ は十分量含まれているため、ウイルス抗原の有無にかかわらず、抗原と結合しなかった余剰の標識抗体 $a$ が判定部 1 を通過して判定部 2 まで流れていきます。すると、固定されている抗体 $c$ が標識抗体 $a$ を直接捕捉して着色します。
これは「検体液が正常に最後まで流れたこと」を保証する確認ラインであり、「B:標識抗体 $a$ が移動し、抗体 $c$ と結合したこと」を示しています。よって ②(B) が正解です。
● (2) 検査結果の判定(陽性・陰性・再検査) [マーク 41, 42]
判定部 1(ウイルス抗原の有無)と判定部 2(検査が正常に行われたかの確認)の着色の組み合わせ(ア〜エ)から判定を行います。
| 結果 | 判定部 1 | 判定部 2 | 状態の解釈と判定 |
|---|---|---|---|
| ア (①) | 着色あり | 着色あり | 検体液が正常に流れ(判定部2着色)、かつウイルス抗原が検出された(判定部1着色)ため、「ウイルスに感染している可能性が高い(陽性)」[41] と判定できます。 |
| イ (②) | 着色なし | 着色あり | 検体液は正常に最後まで流れたが(判定部2着色)、ウイルス抗原は検出されなかったため、「陰性(非感染)」と判定できます。 |
| ウ (③) | 着色あり | 着色なし | どちらも判定部 2(コントロールライン)が着色していません。これは検体液の量不足や装置の不良などにより、標識抗体 $a$ が判定部 2 まで正常に到達しなかった(または抗体が失活している)ことを意味するため、判定は無効となり「再検査が必要」[42] と判断します。 |
| エ (④) | 着色なし | 着色なし |
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