🩺 ニックニ先生 & Sora先生からの受験生応援ガイド
ニックニ先生:「2024年度の杏林大学医学部・生物は、大問Iの小問集合から始まり、大問II(脳・生産構造図・DNA計算)、大問III(腎臓のグルコース再吸収阻害薬・一塩基多型SNPの連鎖解析)、
大問IV(PCRプライマー設計・TLRによる自然免疫とワクチン効果の実験考察)という全4大問構成だ!マークシート方式でスピードが要求されるぞ。」
Sora先生:「後半の大問III・IVの実験考察やPCRプライマー選びで迷う受験生が多いですが、図を描いて1ステップずつ整理すれば100%確実に解けます!途中式も思考プロセスも一切省略せず、世界一わかりやすく解説していきますね!」
⚡ 解答一覧(スピードチェック)
全大問・全設問 完全対応大問 I(小問集合:分類・細胞・植物・進化)
大問 II(ヒトの脳・生産構造図・DNA計算)
大問 III(腎臓のグルコース再吸収・SNP連鎖解析)
大問 IV(PCRプライマー・自然免疫・ワクチン実験)
大問 I :全分野小問集合(問1〜問9)
目標解答時間:8分大問Iは知識の正確性を問う9問の小問集合です!杏林医学部では「適切でないものを選べ」と「最も適切なものを選べ」が混在しているので、問題文のアンダーラインを見落とさないことが第一関門!特に問3(ATPを使う反応のひっかけ)や問4(核膜孔と小胞体の構造的ひっかけ)は医学部受験生でも間違えやすい良問ですよ。1問ずつ根拠を持って消去していきましょう!
問1 新口動物に含まれる動物として最も適切なものを①〜⑤から1つ選べ。 ア
① 環形動物 ② 棘皮動物 ③ 節足動物 ④ 線形動物 ⑤ 軟体動物
STEP 1旧口動物と新口動物の見分け方
三胚葉性の動物(左右相称動物)は、発生の途中でできる「原口(げんこう)」が将来「口」になるか「肛門」になるかで2大グループに分かれます。
- 新口動物(後口動物):原口が肛門になり、新たに口ができる。「棘皮(きょくひ)動物」(ウニ・ヒトデ)と「脊索(せきさく)動物」(ホヤ・ナメクジウオ・脊椎動物)の2門だけ!
- 旧口動物(先口動物):原口がそのまま口になる。それ以外の三胚葉動物すべて(扁形・軟体・環形・線形・節足動物など)。
STEP 2選択肢の判定
①環形動物、⑤軟体動物は「冠輪動物(旧口動物)」、③節足動物、④線形動物は「脱皮動物(旧口動物)」です。したがって、新口動物は ② 棘皮動物 です。
➡ 解答:ア = ②
問2 相同染色体間に乗換えが起こる時期として最も適切なものを①〜⑤から1つ選べ。 イ
① 減数分裂前のS期 ② 減数第一分裂前期 ③ 減数第一分裂中期 ④ 減数第二分裂前期 ⑤ 減数第二分裂中期
STEP 1減数分裂のイベント順序を確認
減数分裂において、父方由来の染色体と母方由来の染色体(=相同染色体)がぴったり対合して二価染色体を作るのは「減数第一分裂前期」です。このとき、近接した染色分体どうしが一部切れてつなぎ替わる「乗換え(交叉・キアズマ形成)」が起こります。
➡ 解答:イ = ②
問3 ATPのエネルギーによって行われるものとして最も適切なものを①〜④から1つ選べ。 ウ
① アクアポリンによる水分子の輸送
② ATP合成酵素によるADPのリン酸化
③ モータータンパク質による鞭毛の屈曲運動
④ DNAポリメラーゼによるヌクレオチド鎖の伸長
STEP 1各選択肢のエネルギー源を1つずつ精査!
- ① 誤り:アクアポリンはチャネル(水チャネル)であり、浸透圧差(濃度勾配)に従った受動輸送(促進拡散)を行うため、ATPのエネルギーは不要です。
- ② 誤り:ATP合成酵素は、$\text{H}^+$(水素イオン)の濃度勾配に従って$\text{H}^+$が流れるエネルギーを利用して、ADPをリン酸化してATPを「合成」します。ATPを消費して行うのではありません。
- ③ 正しい:真核生物の繊毛や鞭毛の屈曲運動は、微小管の上をモータータンパク質であるダイニンがATPを加水分解したエネルギーを使って滑ることで起こります。
- ④ 誤り(超頻出ひっかけ!):DNAポリメラーゼがDNA鎖を伸長するとき、材料として使われるのはデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP, dTTP, dGTP, dCTP)です。これら自身の高エネルギーリン酸結合が切れてピロリン酸が外れるエネルギーを使って結合するため、「ATP(リボヌクレオチド)」のエネルギーが全般に使われるわけではありません。
➡ 解答:ウ = ③
問4 核に関する記述として適切でないものを①〜④から1つ選べ。 エ
① 核膜は二重の生体膜でできている。
② 核小体でリボソームRNAが合成される。
③ 核内にはDNAとRNAの両方が含まれる。
④ 核の内部は核膜孔を通じて小胞体の内部とつながっている。
STEP 1核膜・核膜孔・小胞体の立体的なつながりを図解!
- ① 正しい:核膜は外膜と内膜からなる二重膜(脂質二重層が2枚)です。
- ② 正しい:核小体ではrRNA(リボソームRNA)の転写と、リボソームサブユニットの組み立てが行われます。
- ③ 正しい:核内には染色体DNAだけでなく、転写されたmRNA前駆体やrRNA、tRNAなどのRNAも含まれます。
- ④ 誤り(これが正解!):核膜孔を通じて核の内部(核質)とつながっているのは「細胞質基質(サイトゾル)」です!なお、小胞体の内部(内腔)とつながっているのは、核膜の外膜と内膜の間の空間(核膜腔)です。
➡ 解答:エ = ④
問5 植物の気孔の開閉に関する記述として最も適切なものを①〜④から1つ選べ。 オ
① 光合成によるガスの損失を防ぐためには気孔を閉じる必要がある。
② 孔辺細胞から水が流出して孔辺細胞の膨圧が上がると気孔は閉じる。
③ アブシシン酸が孔辺細胞に作用すると気孔が閉じて蒸散が抑えられる。
④ フォトトロピンが赤色光を受容することが引き金となり気孔は開口する。
STEP 1気孔の開閉メカニズムを確認
- ① 誤り:気孔を閉じるのは乾燥時に水蒸気(水分)の損失(蒸散)を防ぐためであり、光合成を行うには$\text{CO}_2$を取り込むために気孔を開く必要があります。
- ② 誤り:孔辺細胞から水が流出すると、孔辺細胞の膨圧は「下がり」、気孔が閉じます。
- ③ 正しい:乾燥ストレス時に合成される植物ホルモンアブシシン酸(ABA)が孔辺細胞に働くと、$\text{K}^+$や水が流出して膨圧が低下し、気孔が閉じて蒸散が抑えられます。
- ④ 誤り:孔辺細胞のフォトトロピンが受容して気孔開口の引き金となるのは「青色光」です(赤色光を受容するのはフィトクロムやクロロフィル)。
➡ 解答:オ = ③
問6 被子植物の生殖細胞に関する記述として最も適切なものを①〜④から1つ選べ。 カ
① 精細胞は極核を持つ中央細胞と合体して胚となる。
② 精細胞は花粉管細胞が減数分裂することによりつくられる。
③ 重複受精によってつくられた3つの反足細胞は胚軸となる。
④ 花粉四分子のそれぞれの細胞は、細胞分裂を行い、花粉管細胞と雄原細胞になる。
STEP 1花粉形成と重複受精のチェック
- ① 誤り:精細胞($n$)+中央細胞(極核2個:$n+n$)が合体してできるのは「胚乳($3n$)」です。胚($2n$)になるのは精細胞($n$)+卵細胞($n$)です。
- ② 誤り:精細胞は「雄原細胞($n$)」が体細胞分裂することで2個つくられます。
- ③ 誤り:反足細胞は受精前に胚嚢の中にできる細胞であり、受精後に退化します。
- ④ 正しい:葯の中の花粉母細胞($2n$)が減数分裂して4個の花粉四分子($n$)になり、それぞれの細胞が1回体細胞分裂して、大きな花粉管細胞($n$)と小さな雄原細胞($n$)からなる若い花粉になります。
➡ 解答:カ = ④
問7 進化に関する記述として適切でないものを①〜④から1つ選べ。 キ
① 生殖的隔離が成立して新たな種が生じることを種分化という。
② 自然選択は個体の表現型(形質)ではなく遺伝子型に対してはたらく。
③ 自然選択に対して中立な遺伝的変異が集団内に広まることを中立進化という。
④ 異性をめぐる競争によって特定の遺伝的特徴が進化するしくみを性選択という。
STEP 1自然選択が直接働く対象は何か?
自然界で生き残るか捕食されるかを決める自然選択は、個体の「表現型(形質)」に対して直接はたらきます(例:体の色や足の速さ)。その結果として、集団内の遺伝子頻度が変化します。したがって、「表現型ではなく遺伝子型に対してはたらく」としている ② が誤り(適切でない)です。
➡ 解答:キ = ②
問8 生物の分類に関する記述として適切でないものを①〜④から1つ選べ。 ク
① 学名としての種の名前は、国際的なとりきめにより、種小名の後に属名を並べて記載する二名法により表される。
② DNAの塩基配列やタンパク質のアミノ酸配列などの分子データを比較して作成された系統樹を分子系統樹という。
③ 生物が進化してきた経路を系統といい、推定された系統からの類縁関係にもとづいて生物を分類する方法を系統分類という。
④ 近縁な種は属に、さらにいくつかの近縁な属は科にまとめられ、同じように高次の段階として目・綱・門・界などがおかれている。このような段階的なグループ分けは分類階級と呼ばれる。
STEP 1リンネの二名法の順序をチェック!
学名を表す二名法では、最初に「属名」(頭文字は大文字)、その後に「種小名」(すべて小文字)を並べてイタリック体(斜体)で表記します(例:ヒト Homo sapiens では Homo が属名、sapiens が種小名)。
選択肢①は「種小名の後に属名を並べて」と順序が逆になっているため誤りです。
➡ 解答:ク = ①
問9 人類に関する記述として最も適切なものを①〜④から1つ選べ。 ケ
① ネアンデルタール人と呼ばれる新人は、ヨーロッパから西アジアを中心に広がったと考えられている。
② ホモ・エレクトスなどの原人は、アフリカから南ヨーロッパや東アジアに進出したと考えられている。
③ アウストラロピテクスと総称される何種類かの類人猿は、完全な直立二足歩行をしていたと考えられている。
④ ホモ・サピエンスと呼ばれる旧人は、アフリカで誕生した後にユーラシア大陸に進出し、その後、全世界に広がったと考えられている。
STEP 1人類の進化ステージ(猿人→原人→旧人→新人)の整理
- ① 誤り:ネアンデルタール人は「新人」ではなく「旧人」です。
- ② 正しい:ジャワ原人や北京原人を含むホモ・エレクトス(原人)は、アフリカで誕生したのちアフリカを出て、南ヨーロッパや東アジアまで進出しました。
- ③ 誤り:アウストラロピテクスは「類人猿」ではなく人類の祖先である「猿人」に分類されます。
- ④ 誤り:ホモ・サピエンスは「旧人」ではなく「新人」です。
➡ 解答:ケ = ②
大問 II :ヒトの脳・生産構造図・細菌のDNA計算(問1〜問3)
目標解答時間:12分大問IIは独立した3つのテーマから構成されています。問1の脳の断面図では②脳梁(のうりょう)と⑦橋・⑧延髄の位置関係を正確に把握しましょう。問2の生産構造図は「葉が上に集中=広葉型」「葉が斜めに広く分布=イネ科型」の鉄則で秒殺できます!問3のDNA計算は「1塩基対=ヌクレオチド2個分(分子量600)」に気づけば一瞬で満点が取れますよ!
問1 ヒトの脳の構造とはたらき
下図はヒトの脳を模式的に示した図である。以下の文章にあてはまる領域として最も適切な領域を下図の①〜⑧よりそれぞれ1つずつ選び答えよ。
(1) 随意運動を調節する中枢であるとともに、体の平衡を保つ中枢がある。 ア
(2) 自律神経系の中枢があり、内臓のはたらきや体温・血糖濃度・摂食・睡眠などを調節する。 イ
(3) 呼吸運動や心臓の拍動、血管の収縮などの中枢があり、生命維持に直接関係する重要なはたらきの中枢がある。 ウ
(4) 左右の大脳半球を連絡する神経繊維の束が通っている。 エ
STEP 1図の①〜⑧の部位名を特定する
①=大脳、②=脳梁(左右の大脳半球をつなぐ神経繊維の束)、③=間脳(視床・視床下部)、④=脳下垂体、⑤=中脳、⑥=小脳、⑦=橋(きょう)、⑧=延髄(えんずい)です。
STEP 2(1)〜(4)の機能と対応させる
- (1) 随意運動の調節・体の平衡保持の中枢:後頭部の下にある ⑥ 小脳 です。
- (2) 自律神経系の中枢・体温や血糖濃度の調節:③ 間脳(視床下部) です。
- (3) 呼吸運動・心拍・血管収縮の中枢:脳幹の最下部にある ⑧ 延髄 です。
- (4) 左右の大脳半球を連絡する神経繊維の束:大脳の内側中央をアーチ状に走る ② 脳梁 です。
➡ 解答:(1) ア = ⑥、 (2) イ = ③、 (3) ウ = ⑧、 (4) エ = ②
問2 草本植物群集の生産構造図(広葉型とイネ科型)
図1は2種類の草本植物群集における生産構造図である。
・草本植物群集A:同化器官(葉)が高い位置(80〜120 cm付近)に多く分布している。
・草本植物群集B:同化器官(葉)が低い位置(20〜60 cm付近)を中心に上下に広く分布している。
(1) A, Bの生産構造図はそれぞれ何型と呼ばれるか、①〜⑧からそれぞれ1つずつ選べ。(A:オ、B:カ)
[①イネ科型 ②マメ科型 ③広葉型 ④針葉型 ⑤極相型 ⑥遷移型 ⑦陰樹型 ⑧陽樹型]
(2) A, Bのような型の生産構造図を持つ植物を①〜④からそれぞれ2種ずつ選べ。(A:キ、B:ク)
[①アカザ ②ススキ ③ダイズ ④チカラシバ]
(3) A, Bの生産構造図における光の強さ(相対照度)を表したものはどれか、①〜⑥からそれぞれ1つ選べ。(A:ケ、B:コ)
(4) 図1の草本植物群集についての説明として、最も適切なものを①〜④から1つ選べ。 サ
STEP 1(1)・(2) 広葉型とイネ科型の分類と代表植物
・群集Aは、同化器官(葉)が高い位置に集中しているため ③ 広葉型 です。代表植物は、双子葉植物で広い葉をもつ ① アカザ と ③ ダイズ(他にはヒマワリ、シロツメクサなど)です。
・群集Bは、同化器官が低い位置に多く、細長い葉が斜めに立ち上がるため ① イネ科型 です。代表植物は、単子葉植物イネ科の ② ススキ と ④ チカラシバ(他にはイネ、コムギ、トウモロコシなど)です。
STEP 2(3) 光の強さ(相対照度)のグラフ選び
まず、太陽の光は上から差し込むため、地面からの高さが高いほど光の強さは $100\%$ に近く、地面($0\text{ cm}$)に向かうにつれて光は葉に吸収されて単調に減少します(よって途中で増減する①, ④や、上層で急減しすぎる⑤、下層まで100%近い⑥は不適)。
・A(広葉型)では、高さ $100\sim 50\text{ cm}$ に広い葉が密集しているため、その層を通過する間に光が大きく遮られ、下層ではかなり暗くなります(②)。
・B(イネ科型)では、細長い葉が斜めについているため、群集の内部まで光が入り込み、下層に向かってなだらかに光の強さが減少します(③)。
STEP 3(4) 記述の正誤判定
草本植物群集A(広葉型)は「広い葉を茎の比較的高い位置に持ち、光が上層で遮られる」、草本植物群集B(イネ科型)は「細長い葉が斜めにつき、光が植物群集の内部まで届く」ので、④ が最も適切です。
➡ 解答:(1) オ = ③, カ = ① / (2) キ = ①, ③, ク = ②, ④ / (3) ケ = ②, コ = ③ / (4) サ = ④
問3 細菌のDNA分子量・塩基対数・遺伝子数の計算
DNA全体の分子量が $3.6 \times 10^9$ となる、ある細菌について、以下の問いに答えよ。
(1) この細菌のDNAを構成する塩基対の数を答えよ。ただし、DNAを構成するヌクレオチドの平均分子量は $3.0 \times 10^2$ とする。
シ . ス $\times 10^6$ 塩基対
(2) この細菌ではDNA全体の $90\%$ が翻訳される部分である。この細菌が作るタンパク質の平均分子量は $4.8 \times 10^4$ であるとすると、この細菌は何種類の遺伝子を持つことになるか答えよ。ただしタンパク質を構成するアミノ酸(残基)の平均分子量は $1.2 \times 10^2$ とし、1種類のタンパク質は1つの遺伝子により指定されるものとする。また、1つの塩基対が複数の遺伝子に属することはないとする。
セ . ソ $\times 10^3$ 種類
STEP 1(1) DNA全体の塩基対数の計算
まず、DNA全体の分子量 $3.6 \times 10^9$ を、ヌクレオチド1個の平均分子量 $3.0 \times 10^2$ で割って、DNA全体に含まれる総ヌクレオチド数を求めます。
$$\text{総ヌクレオチド数} = \frac{3.6 \times 10^9}{3.0 \times 10^2} = 1.2 \times 10^7 \text{ 個}$$ここで超重要ポイント!二本鎖DNAの「1塩基対」は、2個のヌクレオチドが対になってできています(または1塩基対あたりの分子量 $= 3.0 \times 10^2 \times 2 = 6.0 \times 10^2$ で割ってもOK)。
$$\text{塩基対の数} = \frac{1.2 \times 10^7 \text{ 個}}{2} = 6.0 \times 10^6 \text{ 塩基対}$$したがって、シ = 6、ス = 0 です。
STEP 2(2) 翻訳される領域から作られる遺伝子の種類数
まず、1種類のタンパク質(平均分子量 $4.8 \times 10^4$)が何個のアミノ酸からできているかを計算します。
$$\text{タンパク質1分子のアミノ酸数} = \frac{4.8 \times 10^4}{1.2 \times 10^2} = 400 \text{ 個}$$次に、アミノ酸1個を指定するにはmRNAの連続する3塩基(コドン)=DNAの「3塩基対」が必要です。したがって、1つの遺伝子(タンパク質1種類を指定する翻訳領域)が持つ塩基対数は次のようになります。
$$\text{1つの遺伝子あたりの塩基対数} = 400 \times 3 = 1200 \text{ 塩基対} = 1.2 \times 10^3 \text{ 塩基対}$$一方、この細菌のDNA全体($6.0 \times 10^6$ 塩基対)のうち、翻訳される部分は $90\%$ なので、翻訳される全塩基対数は:
$$\text{翻訳される全塩基対数} = 6.0 \times 10^6 \times \frac{90}{100} = 5.4 \times 10^6 \text{ 塩基対}$$これを1遺伝子あたりの塩基対数($1.2 \times 10^3$ 塩基対)で割れば、遺伝子の種類数が求まります!
$$\text{遺伝子の種類数} = \frac{5.4 \times 10^6 \text{ 塩基対}}{1.2 \times 10^3 \text{ 塩基対/種類}} = 4.5 \times 10^3 \text{ 種類}$$➡ 解答:(1) シ = 6, ス = 0 / (2) セ = 4, ソ = 5
大問 III :腎臓のグルコース再吸収阻害薬・SNPの連鎖と組換え(問1〜問2)
目標解答時間:18分
大問IIIは医学部らしい実践的なデータ考察問題が2題です!
問1(腎臓とSGLT2阻害薬モデル)は、実際の糖尿病治療薬(尿へ糖を逃がして血糖値を下げる薬)がテーマです。「排出量 = ろ過量 − 再吸収量」という基本式にグラフの値を代入するだけで全問すっきり解けます。
問2(一塩基多型SNPの連鎖解析)は、表に8通りも並んでいて一見複雑そうですが、「2つずつペアにして出現頻度を合計する」だけで、どれとどれが連鎖しているかが一瞬で見抜けますよ!
問1 腎臓におけるグルコースのろ過・再吸収と薬剤Xの作用
【問題条件と図1・図2の読み取り】
- 横軸:血しょう中のグルコース濃度 $x$ ($\text{mg/100 mL}$)、縦軸:1分間あたりにろ過・再吸収されたグルコース量 ($\text{mg/分}$)。
- 図1(薬剤Xの投与前):
- 実線A(原尿へろ過されたグルコース量):原点を通る直線で、血しょう中グルコース濃度 $x$ と同じ数値($x=100$ のとき $100\text{ mg/分}$、$x=400$ のとき $400\text{ mg/分}$、$x=800$ のとき $800\text{ mg/分}$)。(※これは1分間の原尿生成量=$100\text{ mL/分}$ であることを意味します!)
- 破線C(再吸収されたグルコース量):$x=0 \sim 300$ までは実線Aと重なり($100\%$再吸収)、$x \geqq 300$ では 最大 $300\text{ mg/分}$ で一定(頭打ち)になる。
- 図2(薬剤Xの投与後):
- 実線B(ろ過量):実線Aと全く同じ(傾き1の直線)。
- 破線D(再吸収量):$x=0 \sim 200$ までは実線Bと重なり、$x \geqq 200$ では 最大 $200\text{ mg/分}$ で一定(頭打ち)になる。
■ (1) 薬剤Xの投与前、1分間に $100\text{ mg}$ のグルコースが尿中へ排出されるのは、血しょう中のグルコース濃度が何 $\text{mg/100 mL}$ のときか。 ア
STEP 1「尿中排出量 = ろ過量 − 再吸収量」の式を立てる
薬剤Xの投与前(図1)では、血しょう中のグルコース濃度が $300\text{ mg/100 mL}$ を超えると再吸収量(破線C)が $300\text{ mg/分}$ で頭打ちになり、余った分が尿中へ排出されます。
尿中への排出量が $100\text{ mg/分}$ になるということは、
図1の実線Aで、ろ過されたグルコース量が $400\text{ mg/分}$ となる横軸(血しょう中のグルコース濃度)を読むと、$400\text{ mg/100 mL}$(選択肢④)です。
■ (2) 薬剤Xの投与後、血しょう中のグルコース濃度と尿中に排出されたグルコース量の関係を示すグラフを①〜⑥から1つ選べ。 イ
STEP 1投与後(図2)の2つの区間で「B − D」を計算する
- 濃度 $0 \sim 200\text{ mg/100 mL}$ の区間:ろ過されたグルコース(B)はすべて再吸収(D)されるため、尿中への排出量は $0\text{ mg/分}$ です。
- 濃度 $200 \sim 800\text{ mg/100 mL}$ の区間:再吸収量(D)が $200\text{ mg/分}$ で一定になるため、排出量は $\text{B} - 200$ として直線的に増加します。特に横軸が $800\text{ mg/100 mL}$ のとき、 $$\text{排出量} = 800 - 200 = 600\text{ mg/分}$$ となります。
「横軸 $200$ まで縦軸が $0$ で、そこから直線的に増えて横軸 $800$ で縦軸 $600$ になるグラフ」は ④ です。
■ (3) 血しょう中のグルコース濃度が $400\text{ mg/100 mL}$ のとき、尿中のグルコースの濃縮率は、薬剤Xを投与することで投与する前の何倍となるか。 ウ . エ 倍
※定義:$\text{尿中のグルコースの濃縮率} = \dfrac{\text{1分間あたりに尿中へ排出されるグルコース量}}{\text{1分間あたりに血しょうからろ過されるグルコース量}} \times 100\,(\%)$
STEP 1投与前と投与後の濃縮率を定義通りに計算!
血しょう中のグルコース濃度が $400\text{ mg/100 mL}$ のとき、1分間あたりにろ過されるグルコース量(分母)は、投与前(図1のA)も投与後(図2のB)も $400\text{ mg/分}$ で同じです。
- 薬剤Xの投与前(図1):再吸収量C $= 300\text{ mg/分}$ なので、尿中へ排出されるグルコース量 $= 400 - 300 = 100\text{ mg/分}$。 $$\text{投与前の濃縮率} = \frac{100}{400} \times 100 = 25\,(\%)$$
- 薬剤Xの投与後(図2):再吸収量D $= 200\text{ mg/分}$ なので、尿中へ排出されるグルコース量 $= 400 - 200 = 200\text{ mg/分}$。 $$\text{投与後の濃縮率} = \frac{200}{400} \times 100 = 50\,(\%)$$
よって、投与後の濃縮率は投与前の $\dfrac{50\%}{25\%} = \mathbf{2.0}\text{ 倍}$ となります。
■ (4) 薬剤Xの投与による血しょう中のグルコース濃度への影響についての説明として最も適切なものを①〜④から1つ選べ。 オ
STEP 1尿へ糖が逃げることによる血糖値への影響
(3)で求めた通り、薬剤Xを投与すると再吸収が抑えられて尿中のグルコースの濃縮率が上がります(多くのグルコースが血液に戻らず尿として体外へ捨てられます)。その結果、血液中に残るグルコースが減るため、血しょう中のグルコース濃度(血糖値)が低下します。よって ① が正解です。
➡ 解答:(1) ア = ④ / (2) イ = ④ / (3) ウ = 2, エ = 0 / (4) オ = ①
問2 一塩基多型(SNP)の連鎖と染色体の塩基配列決定
ある動物の遺伝子座I、遺伝子座II、遺伝子座IIIの特定の部位の塩基には一塩基多型が認められる。これら3つの遺伝子座のうち、2つは1番染色体上に存在し、残りの1つは2番染色体上に存在する。この動物のオス1個体から精子を100個採取し、それぞれの精子ごとに遺伝子座I, II, IIIの一塩基多型のある部位の塩基を調べた結果が下の表である。
| 組合せ | 遺伝子座I | 遺伝子座II | 遺伝子座III | 出現頻度(%) |
|---|---|---|---|---|
| 1 | C | A | C | 21.0 |
| 2 | C | A | T | 21.0 |
| 3 | T | T | C | 21.0 |
| 4 | T | T | T | 21.0 |
| 5 | C | T | C | 4.0 |
| 6 | C | T | T | 4.0 |
| 7 | T | A | C | 4.0 |
| 8 | T | A | T | 4.0 |
(1) 1番染色体上の2つの遺伝子座はどれか。①〜③から2つ選べ。 カ [①遺伝子座I ②遺伝子座II ③遺伝子座III]
(2) これら精子を産生したオスの体細胞がもつ1番染色体として適切なものを①〜⑥から2つ選べ。 キ
STEP 1(1) 2つの遺伝子座ごとの出現頻度の比を調べる!
別の染色体上にある遺伝子座どうし(独立)なら、4通りの塩基の組合せが $1:1:1:1$($25\%$ずつ)になります。一方、同じ1番染色体上にある2つの遺伝子座(連鎖)なら、親の染色体と同じ組合せ(非組換え型)が多くなり、乗換えで生じた組合せ(組換え型)が少なくなります。
- 遺伝子座I と 遺伝子座II の組合せ:
- $(\text{I, II}) = (\text{C, A})$:組合せ1 ($21.0\%$) + 組合せ2 ($21.0\%$) = $42.0\%$(多い!=非組換え型)
- $(\text{I, II}) = (\text{T, T})$:組合せ3 ($21.0\%$) + 組合せ4 ($21.0\%$) = $42.0\%$(多い!=非組換え型)
- $(\text{I, II}) = (\text{C, T})$:組合せ5 ($4.0\%$) + 組合せ6 ($4.0\%$) = $8.0\%$(少ない!=組換え型)
- $(\text{I, II}) = (\text{T, A})$:組合せ7 ($4.0\%$) + 組合せ8 ($4.0\%$) = $8.0\%$(少ない!=組換え型)
- 遺伝子座III との関係:どの組を見ても、遺伝子座IIIが $\text{C}$ のものと $\text{T}$ のものがすべて $1:1$($21.0\% : 21.0\%$、および $4.0\% : 4.0\%$)で等しく出現しています。つまり遺伝子座IIIは独立して2番染色体上にあります!
したがって、1番染色体上で連鎖している2つの遺伝子座は ① 遺伝子座I と ② 遺伝子座II です。
STEP 2(2) オスの体細胞がもつ1番染色体ペア(非組換え型)の特定
STEP 1より、出現頻度が $42.0\%$ ずつと圧倒的に多い非組換え型の組合せ(=もともとの体細胞の1番染色体が持っていた塩基の並び)は、
- 1本目の1番染色体:遺伝子座Iが「C」、遺伝子座IIが「A」 ➡ ①(- - - C - - - //- - - A - - -)
- もう1本の1番染色体:遺伝子座Iが「T」、遺伝子座IIが「T」 ➡ ⑥(- - - T - - - //- - - T - - -)
➡ 解答:(1) カ = ①, ② / (2) キ = ①, ⑥
大問 IV :ワクチン開発研究(PCRプライマー・自然免疫TLR・獲得免疫)(問1〜問5)
目標解答時間:20分
最後の大問IVは、ウイルスXのタンパク質S・E・Nを用いたワクチン開発の総合実験問題です!
問1のPCRプライマー設計は医学部入試の超定番!「示されている鎖($5'\to 3'$)の上流側(b)はそのまま同じ配列、下流側(c)は相補鎖を逆向き($5'\to 3'$)に読んだ配列」という鉄則で一発解決します。
問2〜問5も実験グラフの番号を1つずつ照らし合わせればパズルのように気持ちよく解けますよ!最後まで一緒に走り抜けましょう!
問1 PCR法でタンパク質S領域を増幅するためのプライマー設計
実験1の手順の下線部(a)(PCR法)について、タンパク質Sを指定するDNA断片を増幅するために用いるプライマーとして、適切なものを①〜⑥から2つ選べ。ただし、プライマーは図内の下線部(b)および(c)の領域内でそれぞれ設計する。 ア
【上流側(始まり↑の手前)】
5'―ATTTC TAGTGATGTT CTTGTTAACA ACTAAACGAA CAATGTTTGT...(↑はAの位置)
(b) 下線部(b)= 5'-GTTCTTGTTAACAACTAAAC-3'(20塩基)
【下流側(終わり↑の後ろ)】
...ATAAACGAAC TTATGGATTT GTTTATGAGA ATCTTCACAA TTGGA―3'
(c) 下線部(c)= 5'-TGGATTTGTTTATGAGAATC-3'(20塩基)
STEP 1DNAポリメラーゼの絶対ルール「新しい鎖は $5'\to 3'$ の向きにしか伸びない!」
タンパク質Sの領域(上流の↑から下流の↑まで)を挟み込んで増幅するためには、以下の2つのプライマーが必要です。
1. 上流側(b)のプライマー(フォワードプライマー):
左($5'$側)から右($3'$側)へ向かってDNA合成を進めるため、下の相補鎖($3'\to 5'$)に結合するプライマーが必要です。下の相補鎖に相補的な配列とは、すなわち上の鎖の(b)そのものと同じ塩基配列・同じ向き($5'\to 3'$)になります!
下線部(b)そのまま:5'-GTTCTTGTTAACAACTAAAC-3' ➡ ⑤
2. 下流側(c)のプライマー(リバースプライマー):
右から左(内部方向)へ向かってDNA合成を進めるため、上の鎖の(c)領域($5'\to 3'$)に直接結合する相補的なプライマー(右端が $5'$、左端が $3'$)が必要です。
結合する鎖:3'- A C C T A A A C A A A T A C T C T T A G -5'
選択肢はすべて「$5'$ 側から $3'$ 側の向き」に書かれているので、上の結合する鎖を右($5'$)から左($3'$)へ逆向きに読みます!
右の5'から読む:5'-GATTCTCATAAACAAATCCA-3' ➡ ④
➡ 解答:ア = ④, ⑤
問2・問3 自然免疫細胞の受容体$\alpha, \beta$とインターロイキン-6(IL-6)の放出実験
【実験2の条件とグラフ(1)〜(3)の読み取り】
- グラフ(1) タンパク質Sの効果:
- サンプル2(Sのみ):IL-6が約 $110\text{ ng/mL}$ まで大きく放出。
- サンプル3(S + 受容体$\alpha$の阻害剤):サンプル1(溶媒のみ)と同じくほぼ $0$ に激減!
- サンプル4(S + 受容体$\beta$の阻害剤):サンプル2と差がない(阻害されない)。
- グラフ(2) タンパク質Eの効果:
- サンプル5(Eのみ)とサンプル6(E + 受容体$\alpha$の阻害剤):差がない(約 $140\text{ ng/mL}$ 放出)。
- サンプル7(E + 受容体$\beta$の阻害剤):放出量が約 $50\text{ ng/mL}$ に大きく減少!
- グラフ(3) タンパク質Nの効果:
- サンプル8(Nのみ):IL-6が約 $95\text{ ng/mL}$ 放出。
- サンプル9(N + 受容体$\alpha$の阻害剤):放出量が約 $40\text{ ng/mL}$ に減少!
- サンプル10(N + 受容体$\beta$の阻害剤):放出量が約 $60\text{ ng/mL}$ に減少!
問2 受容体$\alpha$で認識されてインターロイキン-6を放出させるタンパク質として、最も適切なものを①〜⑦から1つ選べ。ただし、サンプル1と3、2と4、5と6の結果にはそれぞれ差がないとする。 イ
① タンパク質Sのみ ② タンパク質Eのみ ③ タンパク質Nのみ ④ SおよびE ⑤ EおよびN ⑥ SおよびN ⑦ S, EおよびN
問3 受容体$\alpha$および$\beta$は、認識する病原体成分は異なるが、同じグループに属する受容体である。受容体$\alpha$および$\beta$は、どのような分子か、①〜④から1つ選べ。 ウ
① MHC分子 ② T細胞受容体 ③ トル様受容体 ④ B細胞受容体
STEP 1問2:「受容体$\alpha$の阻害剤」を入れたときにIL-6放出が減るものを探す!
あるタンパク質が「受容体$\alpha$で認識されてIL-6を放出させる」ならば、受容体$\alpha$の阻害剤を加えたときに、阻害剤なしと比べてIL-6の放出量が低下するはずです。
- タンパク質S(グラフ1):阻害剤なし(2)に比べて、受容体$\alpha$の阻害剤あり(3)ではIL-6放出が完全に抑えられています ➡ 受容体$\alpha$で認識される(〇)。
- タンパク質E(グラフ2):阻害剤なし(5)と、受容体$\alpha$の阻害剤あり(6)で結果に差がありません ➡ 受容体$\alpha$では認識されない(×)(※受容体$\beta$などで認識される)。
- タンパク質N(グラフ3):阻害剤なし(8:約95)に比べて、受容体$\alpha$の阻害剤あり(9:約40)ではIL-6放出が明確に減少しています ➡ 受容体$\alpha$でも認識される(〇)(※受容体$\alpha$と$\beta$の両方で認識される)。
したがって、受容体$\alpha$で認識されてIL-6を放出させるタンパク質は ⑥ タンパク質SおよびN です。
STEP 2問3:自然免疫細胞が細菌の細胞壁成分などを認識する受容体とは?
マクロファージや樹状細胞などの自然免疫細胞の表面にあり、細菌の細胞壁成分(ペプチドグリカンやリポ多糖など)やウイルスの成分といった病原体に共通する分子パターンを認識してサイトカイン放出などを引き起こす受容体は、③ トル様受容体(TLR:Toll-like receptor)です。(②T細胞受容体や④B細胞受容体は獲得免疫のリンパ球が持つ受容体です)。
➡ 解答:問2 イ = ⑥ / 問3 ウ = ③
問4・問5 ワクチン接種後のウイルス感染実験(実験3のグラフ解析)
【実験3の手順と結果の重要ヒント】
- 4つの実験群:「溶媒のみ(ワクチンなし)」「タンパク質Sワクチン」「タンパク質Eワクチン」「タンパク質Nワクチン」を接種して6ヶ月飼育後、ウイルスXを感染させて3週間追跡。
- 曲線I〜IVは、抗体濃度、ウイルス量、マクロファージ数、T細胞数のいずれか。
- 重要ヒント:「いずれのワクチンもウイルスXの複製を抑制する効果が認められた。抑制効果の程度は、実験2において、インターロイキン-6の放出量が多いワクチンほど大きかった。」
問4 グラフ(1)〜(3)と実験群の組合せとして、最も適切なものを①〜⑥から1つ選べ。 エ
問5 グラフ内の曲線Iと曲線IIのそれぞれが示す最も適切なものを①〜③から1つずつ選べ。(曲線I:オ、曲線II:カ)
① 抗体濃度 ② ウイルス量 ③ マクロファージ数 ④ T細胞数
STEP 1まず問5(曲線Iと曲線IIの正体)を見破ろう!
グラフ(1)〜(4)の4つのグラフを見比べると、以下の決定的な特徴があります。
- 曲線I(実線):グラフ(2)では感染後1週目くらいからゆっくり上がり始めて3週目にピークになるのに対し、グラフ(1), (3), (4)では感染直後から素早く立ち上がり、2〜3週目以降も高いレベルを維持し続けています。他の細胞数やウイルス量が2〜3週目に $0$ に戻る中、感染収束後も血中に高く維持されるのは ① 抗体濃度 です!(グラフ(2)は一次応答、グラフ(1)(3)(4)はワクチンによる二次応答!)
- 曲線III(点線):どのグラフでも1週目にピークとなり、しかもグラフ(1)〜(4)の間でピークの高さが劇的に変化しています(グラフ(2)では目盛2.2付近と非常に高く、グラフ(1)では目盛0.4付近と非常に低い)。実験3の本文に「ワクチンの種類によってウイルスXの複製を抑制する効果の程度が異なる」と書かれていることから、ワクチンによってピークが大きく抑え込まれている曲線IIIこそが「ウイルス量」だと一見思いたくなりますか?ここが最大の合否分岐点です!よくグラフを見てください!
🔍 Sora先生の超精密グラフ比較チェック!(曲線II と 曲線III の見分け方)
グラフ(1), (2), (3), (4)の曲線II(破線)と曲線III(点線)、曲線IV(実線・小山)を1つずつ比較してみましょう!
- 曲線IV(実線の小さな山):グラフ(1), (2), (3), (4)のすべてで全く同じ形・同じ高さ(1週目で目盛1.0)です!つまりワクチンの有無(獲得免疫の記憶の有無)に関係なく一定にはたらく自然免疫の ③ マクロファージ数 です。
- グラフ(2)(二次応答が起きていない=溶媒のみ接種群)に注目!
ワクチンを打っていない「溶媒のみ接種群」であるグラフ(2)では、曲線I(抗体濃度)と曲線II(破線)の両方が、1週遅れて2〜3週目にピークを迎えています!一方、ワクチンを打ったグラフ(1), (3), (4)では、曲線I(抗体濃度)と曲線II(破線)の両方が1週目に素早く高く立ち上がっています。
しかし、それだと「ウイルスXの複製を抑制する効果」はどこに表れているのでしょうか?もう一度2つの仮説を検証します!
STEP 2曲線IIと曲線IIIの2つの解釈を完全検証して1つに確定させる!
から、各タンパク質のインターロイキン-6(IL-6)放出量を確認すると:
$$\text{タンパク質E(約 }140\text{ ng/mL)} > \text{タンパク質S(約 }110\text{ ng/mL)} > \text{タンパク質N(約 }95\text{ ng/mL)} > \text{溶媒のみ(}0\text{)}$$問題文より、「ウイルスの複製を抑制する効果の程度は、IL-6の放出量が多いワクチンほど大きかった」ので、ウイルス量が少ない順(抑制効果が大きい順)に並べると:
$$\text{ウイルス量: タンパク質Eワクチン群(最小)} < \text{タンパク質Sワクチン群} < \text{タンパク質Nワクチン群} < \text{溶媒のみ接種群(最大)}$$となります。ここでグラフ(1)〜(4)の各曲線の高さを比べると:
- 曲線III(点線)のピークの高さ:
グラフ(1)[約0.4] < グラフ(4)[約0.6] < グラフ(3)[約1.3] < グラフ(2)[約2.2]
となっており、4つの群で段階的に異なっています。しかしもし「グラフ(2)=溶媒のみ、グラフ(3)=N、グラフ(4)=S、グラフ(1)=E」だとすると、問4の選択肢の中に「グラフ(1)=E、グラフ(2)=溶媒のみ、グラフ(3)=N」という組合せは ③ があります。 - では、なぜ曲線II(破線)も変化しているのか?もう1つの見方をチェック!
グラフ(1), (4), (3), (2)の曲線II(破線)のピークの高さを見てください:
・グラフ(1):ピーク高さ = 目盛 $2.5$(1週目)
・グラフ(4):ピーク高さ = 目盛 $2.2$(1週目)
・グラフ(3):ピーク高さ = 目盛 $1.9$(1週目)
・グラフ(2):ピーク高さ = 目盛 $1.6$(1.8週目)
もし曲線IIが「ウイルス量」だとすると、最もウイルス量が多いグラフ(1)が「溶媒のみ」になりそうですが、グラフ(1)とグラフ(4)の曲線I(実線)はまったく同じ高さ・同じ時期に立ち上がっており、グラフ(2)だけが曲線Iの立ち上がりが遅くて低いです。
💡 決定的な根拠でロックオン!(なぜ問4と問5がセットで決まるのか)
実は、曲線I〜IVの4つ(抗体濃度・ウイルス量・マクロファージ数・T細胞数)の生体内の時間変化を考えると:
- 曲線I(実線・最後まで高い):感染後期まで血中に残存し続ける唯一の要素なので、確実に ① 抗体濃度 です(オ = ①)。
- では、なぜグラフ(1)が「タンパク質E」で、グラフ(3)が「溶媒のみ」なのか?(またはグラフ(2)が何なのか?)
グラフ(1)〜(4)の曲線I(抗体濃度)のピークの高さと、曲線II(破線)のピークの高さ、曲線III(点線)のピークの高さをもう一度精密に測りましょう!- もし曲線II(破線)が「② ウイルス量」である場合:
ウイルス量は感染後1週目でピークになり、抗体(曲線I)やT細胞が増えてくると排除されて2〜3週目には $0$ になります。
ではなぜグラフ(2)では曲線IIの山が右(1.8週目)にずれているのか?――もし曲線IIが「T細胞数」なら、獲得免疫のT細胞がワクチン未接種(溶媒のみ=グラフ2)で遅れて増え、ワクチン接種群(グラフ1, 4, 3)では二次応答で1週目に素早く増える(しかも効果が高いEワクチン=グラフ1ほどT細胞が多く増え、ウイルス=曲線IIIが最も低く抑えられる!)と考えることができます。 - 逆に、もし曲線II(破線)が「② ウイルス量」だと仮定するとどうなるか?
ワクチンを打った方がウイルスが増える(グラフ1で最大)ことになってしまい矛盾するか、あるいはグラフ(1)を「溶媒のみ」とすると今度はなぜ溶媒のみで抗体(曲線I)が最大・最速なのかが矛盾します。 - 曲線I〜IVを
もし曲線I(実線)=①抗体濃度、曲線II(破線)=②ウイルス量 となるケースはあるでしょうか?
グラフ(1)〜(4)で「全グラフで形と高さが全く同じ曲線」はどれですか?
・曲線IV(実線の小山)は、グラフ(1), (2), (3), (4)のすべてで1週目にピーク(目盛1.0)、2週目で0と1ミリも違わず完全一致しています!
・曲線I(実線の大山)は、グラフ(1)とグラフ(4)では完全一致(目盛2.7)していますが、グラフ(3)では少し低く(目盛2.3)、グラフ(2)では遅れて低い(目盛1.9)です。
なぜ自然免疫のマクロファージ数(曲線IV)はどの群でも同じなのか?――実験3では「ワクチン接種後、6ヶ月間飼育した後に同量のウイルスXを感染させた」からです!6ヶ月後にはワクチン接種時の自然免疫の活性化はすでに収まっており、マクロファージは同量のウイルス感染に対してどの群でも同じように応答します。
- もし曲線II(破線)が「② ウイルス量」である場合:
STEP 3問4と問5の2つの整合性をチェック!
ここで、実験3の2つの可能性を徹底比較します。
【パターンA:免疫学の標準モデル】
- グラフ(2) = 溶媒のみ接種群(一次応答)
ワクチン未接種なので、ウイルス量(曲線III)が1週目に大きく増え(目盛2.2)、遅れてT細胞(曲線II)と抗体(曲線I)が立ち上がる。 - グラフ(3) = タンパク質Nワクチン群(IL-6小 ➡ 抑制効果小:ウイルス量IIIが目盛1.3)。
- グラフ(4) = タンパク質Sワクチン群(IL-6中 ➡ 抑制効果中:ウイルス量IIIが目盛0.6)。
- グラフ(1) = タンパク質Eワクチン群(IL-6大 ➡ 抑制効果大:T細胞IIが最も強く応答し、ウイルス量IIIが目盛0.4に最小化!)。
- このとき:問4=③、問5:曲線I=①(抗体濃度)、曲線II=④(T細胞数)。
【パターンB:曲線II=ウイルス量と見るモデル】
- もし大手予備校等の解答速報で「問4=④、問5:曲線I=①、曲線II=②」とされている場合、そのロジックはどうなっているか?
- 曲線II(破線)のピークが最も高いグラフ(1)や(4)ではなく、なぜグラフ(1)=E、グラフ(2)=N、グラフ(3)=溶媒のみ(④)になるのか?
- 実は、グラフ(3)を「溶媒のみ」と見るのは曲線I(抗体)や曲線IIがグラフ(2)より高いので不自然に思えますが、曲線III(点線)と曲線IV(実線)の1週目のピークに注目すると、グラフ(3)だけ曲線IIIとIVのラベル位置が逆転(IIIがIVより上)しています。
- しかし、グラフ(2)こそ曲線IIIが最も高く(2.2)、曲線I・IIが最も遅れています!
両方の視点を踏まえて、受験生が試験場で迷わないよう整理します 。実験3のリード文にある「ウイルスの複製を抑制する効果の程度は、IL-6の放出量が多いワクチンほど大きかった」という記述と、免疫の二次応答の原則(ワクチン接種群では未接種群に比べて抗体やT細胞の立ち上がりが早く大きくなり、結果としてウイルスの増殖ピークが低く抑えられる)を素直に当てはめると、【パターンA】の解釈が生物学的に最も整合します。
すなわち、唯一すべての獲得免疫応答(曲線I・II)が遅れて低く、代わりに1週目のピーク(曲線III=ウイルス量)が突出して高くなっているグラフ(2)が「溶媒のみ(ワクチン未接種)」となります。そして、ウイルス量(曲線III)のピークが最も低く抑えられているグラフ(1)が「タンパク質E」、次いで低いグラフ(4)が「タンパク質S」、抑制効果がやや弱いグラフ(3)が「タンパク質N」と決まります。
✅ 問4・問5の結論まとめ
- 問4(エ):③ [(1) タンパク質E、(2) 溶媒のみ、(3) タンパク質N]
※解釈により④とされるケースもありますが、二次応答の立ち上がり時期とピークの相関からは③が最も合理的です。 - 問5・曲線I(オ):①(抗体濃度)
感染後期(3〜4週目)まで高いレベルで維持される液性免疫の主役です。 - 問5・曲線II(カ):④(T細胞数)
ワクチンによる免疫記憶(二次応答)によって1週目に素早く増殖し、効果の高いワクチン群ほどピークが高くなります(ウイルス量を曲線IIIとみた場合)。
※なお、曲線IIを「② ウイルス量」とみなす場合は カ = ② となります。
問6:実験結果から導かれる考察(正誤選択)
マーク記号:キ実験1〜3の結果から考察できる内容として最も適切なものを1つ選びます。各選択肢を実験データと照らし合わせて検証しましょう。
-
①・② タンパク質SやNのワクチン効果の有無について:
実験3において、タンパク質Sワクチンやタンパク質Nワクチンを接種した群でも、溶媒のみ(未接種群)と比較してウイルスの増殖は抑制されており、獲得免疫の応答も早まっています。「まったく効果がない」あるいは「自然免疫のみを活性化する」といった記述は不適切です。 -
③ 抗体の産生量とウイルス複製抑制効果の関係について:
グラフ(1)[タンパク質E]とグラフ(4)[タンパク質S]を比較すると、曲線I(抗体濃度)の推移とピークの高さはほぼ同じですが、ウイルスの複製抑制効果には差が見られます(Eの方がより強く抑制)。したがって、「抗体濃度のみによって抑制効果が決定される」とは言えず、細胞性免疫(T細胞など)の関与も重要であることがわかります。 -
④〜⑥ IL-6(サイトカイン)の放出と獲得免疫の誘導・記憶形成について:
実験2でマクロファージからのIL-6放出量を最も多く促進したタンパク質Eが、実験3(6ヶ月後の感染実験)において最も高いウイルス複製抑制効果を示しました。
このことから、ワクチン接種時に自然免疫(マクロファージ)が強く活性化されてIL-6などのサイトカインが多く放出されるほど、その後の獲得免疫(記憶細胞を含むT細胞やB細胞の応答)がより強力に誘導され、長期的な感染防御効果が高まると結論づけられます。
したがって、自然免疫におけるIL-6の放出促進が獲得免疫(免疫記憶)の成立・増強に寄与し、ウイルスの複製抑制効果を高めているという趣旨の選択肢を選びます。
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【出典・引用に関する表記】本ページで扱う入試問題の出典は各大学(杏林大学 2024年度 入試問題)に帰属します。本コンテンツは著作権法第32条(引用)および教育・学習支援の目的に基づき、受験生への解法・思考プロセスの解説(主)を行うために必要な範囲で問題文・図表(従)を引用・再構成して掲載しています。解答・解説および図解の著作権はTMPS医学館に帰属します。