皆さんこんにちは!TMPS医学館の理系担当Sora先生です。2024年度の福岡大学医学部・物理は、大問〔I〕気柱の共鳴(波動・選択式)、大問〔II〕点電荷がつくる電場と電位(電磁気・選択式)、大問〔III〕ばねと動く台上の小物体(力学・記述式)の3題構成でした。
指導統括のニックニ(新国)先生からも一言!「福岡大医学部の物理は、基礎〜標準レベルの典型問題が中心ですが、90分(2科目)の中でいかにミスなく満点近くを取り切るかが勝負です。特に大問〔I〕の『閉管・開管の節の数 $m$ の定義』や、大問〔III〕の『床から見た加速度と台から見た相対加速度の符号』など、うっかり引っかかりやすい罠を1ステップずつ完全図解していくぞ!」
⚡ 解答一覧(スピードチェック)
まずは自分の答えと照らし合わせよう!大問〔I〕 気柱に生じる音の定常波(選択番号と内容)
大問〔II〕 点電荷がつくる電場と電位(選択番号と内容)
大問〔III〕 ばねと動く台上の小物体(記述解答)
気柱に生じる音の定常波(閉管・開管の共鳴と温度変化)
大問〔I〕は「閉管・開管の気柱の共鳴」です!目標解答時間は10分。
ここで合否を分ける最大のポイントは、公式を丸暗記して当てはめるのではなく、「問題文で定義された『$m$ 個の節』がどのような波形に対応するか」を自分の手でサッと描いて確認できるかです!特に (8) では「$0\,\text{Hz}$ から」ではなく「$3.75 \times 10^2\,\text{Hz}$ からしだいに大きくした」という条件の読み飛ばしに要注意ですよ!
【問題文 〔I〕】
気柱で生じる音の定常波について、以下の文中の 内に入れるのに適当なものを解答群の中から1つ選び、その番号を解答欄に記入せよ。ただし、開口端補正は無視できるものとする。
片側が閉じた管を閉管という。開口端付近で音を鳴らすと、管の底(閉口端)では (1) が起こり、定常波の節となる。一方、開口端では (2) が起こり、定常波の腹となる。気柱の長さが $L$ の閉管に、閉口端での節を含めて $m$ 個の節をもつ定常波が生じているとき、その波長は (3) と表され、振動数は気柱内の音速 $V$ を用いて (4) と表される。いま、長さ $7.00 \times 10^{-1}\,\text{m}$ の閉管の開口付近にスピーカーを置き、音の振動数を $0\,\text{Hz}$ からしだいに大きくしたところ、$3.75 \times 10^2\,\text{Hz}$ のときに2回目の共鳴音が聞こえた。このことから、気柱内の音速は (5) $\text{m/s}$ であることがわかる。
両端が開いている管を開管という。気柱の長さが $L$ の開管に、節を $m$ 個もつ定常波が生じているとき、その波長は (6) と表され、振動数は気柱内の音速 $V$ を用いて (7) と表される。いま、気柱内の音速は (5) $\text{m/s}$ であるとする。長さ $7.00 \times 10^{-1}\,\text{m}$ の開管の管口付近に置かれたスピーカーから出る音の振動数を $3.75 \times 10^2\,\text{Hz}$ からしだいに大きくした。このとき、はじめて聞こえる共鳴音の振動数の値は (8) $\text{Hz}$ であり、また、このとき管口に最も近い節の位置は、管口から (9) $\text{m}$ のところである。
気温が高くなると音速が大きくなることが知られている。気温の高い場合に定常波を生じさせると、節の数が同じとき、気温の低い場合に比べて波長は (10) 。また、振動数は (11) 。ただし、管の長さは気温によって変化しないものとする。
📐 視覚で一発理解!閉管と開管の定常波と「節の数 $m$」の対応図
① 閉管(片側が閉じた管:底が「節」、口が「腹」)
② 開管(両端が開いた管:両端とも「腹」)
設問 (1)・(2):閉口端と開口端での音波の反射
STEP 1媒質(空気)の「動きやすさ」から反射の種類を判断する
音波は空気の振動(縦波)です。
- 管の底(閉口端):硬い壁にぶつかるため、空気の分子は壁の向こうへ動くことができません(変位が常に $0$)。このように端が固定されて動けない反射を固定端反射といい、定常波の節(ふし)になります。
- 管の口(開口端):外の広い空間につながっているため、空気の分子は最も自由に大きく振動できます。このように端が自由に動ける反射を自由端反射といい、定常波の腹(はら)になります。
設問 (3)・(4):閉管に $m$ 個の節ができるときの波長 $\lambda_m$ と振動数 $f_m$
STEP 1閉管の波形のルールから波長 $\lambda_m$ を求める
上の図①の通り、閉管では「閉口端が節、開口端が腹」となります。
・節が $m=1$ 個のとき:管の長さ $L$ の中に「節1個〜腹1個」、すなわち $\dfrac{\lambda_1}{4}$ が $1$ 個入ります。
・節が $m=2$ 個のとき:管の中に「節〜腹〜節〜腹」、すなわち $\dfrac{\lambda_2}{4}$ が $3$ 個入ります。
・節が $m$ 個のとき:増える節1個につき「半波長 $= \dfrac{\lambda_m}{4} \times 2$ 個分」が追加されるので、長さ $L$ の中に $\dfrac{\lambda_m}{4}$ が $(2m - 1)$ 個入ります。
両辺に $4$ を掛けて $(2m - 1)$ で割ると、波長 $\lambda_m$ が求まります。
STEP 2波の基本式 $V = f\lambda$ から振動数 $f_m$ を求める
気柱内の音速が $V$ なので、波の基本式 $V = f_m \lambda_m$ より、$f_m = \dfrac{V}{\lambda_m}$ です。先ほど求めた $\lambda_m$ を代入します。
設問 (5):2回目の共鳴から気柱内の音速 $V$ を求める
STEP 1「2回目の共鳴」が $m$ いくつの状態かを確認する
スピーカーの振動数を $0\,\text{Hz}$ からしだいに大きくしていくと、振動数 $f_m$ が小さい順($m = 1, 2, 3, \dots$ の順)に共鳴が起こります。
・1回目の共鳴:$m = 1$(基本振動)
・2回目の共鳴:$m = 2$(3倍振動)
STEP 2数値を代入して $V$ を計算する
問題文より、管の長さ $L = 7.00 \times 10^{-1}\,\text{m} = 0.700\,\text{m}$、$m = 2$ のときの振動数 $f_2 = 3.75 \times 10^2\,\text{Hz} = 375\,\text{Hz}$ です。
設問 (4) の式に $m = 2$ を代入すると、
これを $V$ について解き、数値を丁寧に代入して計算します。
ここで、$\dfrac{3.75}{3} = 1.25$ と先に約分すると計算が圧倒的にラクになります!
設問 (6)・(7):開管に $m$ 個の節ができるときの波長 $\lambda'_m$ と振動数 $f'_m$
STEP 1開管の波形のルールから波長 $\lambda'_m$ を求める
上の図②の通り、開管では「両端とも腹」となります。
・節が $m=1$ 個のとき:「腹〜節〜腹」なので、管の長さ $L$ に半波長 $\dfrac{\lambda'_1}{2}$ が $1$ 個入ります。
・節が $m=2$ 個のとき:「腹〜節〜腹〜節〜腹」なので、半波長 $\dfrac{\lambda'_2}{2}$ が $2$ 個入ります。
・節が $m$ 個のとき:管の長さ $L$ の中に半波長 $\dfrac{\lambda'_m}{2}$ がちょうど $m$ 個入ります!
STEP 2波の基本式 $V = f\lambda$ から振動数 $f'_m$ を求める
同様に $f'_m = \dfrac{V}{\lambda'_m}$ に代入します。
設問 (8)・(9):開管で $3.75 \times 10^2\,\text{Hz}$ から大きくしたとき初めての共鳴音と節の位置
STEP 1開管の基本振動数($m=1$)を計算してスタート値と比較する
開管の長さ $L = 7.00 \times 10^{-1}\,\text{m}$、音速 $V = 3.50 \times 10^2\,\text{m/s}$ です。
設問 (7) の式 $f'_m = \dfrac{mV}{2L}$ に、まず $m = 1$ を入れて基本振動数 $f'_1$ を計算してみましょう。
したがって、開管が共鳴する振動数は $m = 1, 2, 3, \dots$ に対して $f'_1 = 250\,\text{Hz}$ の整数倍となります。
・$m = 1$ のとき:$f'_1 = 250\,\text{Hz} = 2.50 \times 10^2\,\text{Hz}$
・$m = 2$ のとき:$f'_2 = 2 \times 250 = 500\,\text{Hz} = 5.00 \times 10^2\,\text{Hz}$
・$m = 3$ のとき:$f'_3 = 3 \times 250 = 750\,\text{Hz} = 7.50 \times 10^2\,\text{Hz}$
🔥 ニックニ先生のひっかけ注意報!
選択肢〔29〕に $2.50 \times 10^2$ があるからといって飛びついてはいけません!問題文をよく読むと「音の振動数を $3.75 \times 10^2\,\text{Hz}$ ($= 375\,\text{Hz}$)からしだいに大きくした」と書かれています。スタートが $375\,\text{Hz}$ なのだから、$250\,\text{Hz}$ はすでに通り過ぎていますね。$375\,\text{Hz}$ より大きくて最初に到達する共鳴振動数は、$m = 2$ の $500\,\text{Hz}$($= 5.00 \times 10^2\,\text{Hz}$)です!
STEP 2このとき($m=2$)の管口に最も近い節の位置を求める
$m = 2$ のときの波長 $\lambda'_2$ を設問 (6) の式から求めます。
開管では管口(開口端)が定常波の「腹」になります。定常波において「腹から隣の節までの距離」は常に四分の一波長 $\left(\dfrac{\lambda'_2}{4}\right)$ です!したがって、管口から最も近い節までの距離 $x$ は、
設問 (10)・(11):気温が高くなったときの波長と振動数の変化
STEP 1波長の式 $\lambda = \dfrac{4L}{2m-1}$ または $\dfrac{2L}{m}$ を見る
閉管でも開管でも、定常波の波長 $\lambda$ は「管の長さ $L$」と「節の数 $m$」だけで決まります(式の中に音速 $V$ は入っていません!)。
問題文より「管の長さ $L$ は気温によって変化しない」「節の数 $m$ が同じ」なので、気温が高くなって音速 $V$ が大きくなっても、波長 $\lambda$ は変わらないことがわかります。
STEP 2振動数の式 $f = \dfrac{V}{\lambda}$ を見る
波長 $\lambda$ が変わらない状態で、気温が高くなり音速 $V$ が大きくなるので、$f = \dfrac{V}{\lambda}$ より分子の $V$ が大きくなる分、振動数 $f$ は大きくなる(音が高くなる)ことがわかります。
2つの点電荷(電気双極子)がつくる電場・電位と荷電粒子の運動
大問〔II〕は「点電荷がつくる電場と電位」です!目標解答時間は15分。
受験生が一番つまずきやすいのは、「ベクトル(向きがある量:電場)」と「スカラー(向きがないただの数値:電位・位置エネルギー・仕事)」の混同です!さらに後半 (7)〜(11) では動かす小球の電気量が $-Q$(負電荷!) なので、プラスとマイナスの符号ミスが起きやすい要注意ゾーンです。図と符号確認のステップを一緒に追っていきましょう!
【問題文 〔II〕】
図のように、$x$ 軸、$y$ 軸、原点 $\text{O}$ を定め、点 $\text{A}(0, 3a)$(ただし、$a > 0$)に電気量 $+q$($q > 0$)の点電荷、点 $\text{B}(0, -3a)$ に電気量 $-q$ の点電荷を固定した。クーロンの法則の比例定数を $k$、静電気力による位置エネルギーおよび電位の基準を無限遠とし、重力の影響はないものとして、以下の文中の 内に入れるのに適当なものを対応する解答群の中から1つ選び、その番号を解答欄に記入せよ。
$\text{A}$ の点電荷が点 $\text{C}(4a, 0)$ につくる電場の強さは (1) であり、$\text{B}$ の点電荷が $\text{C}$ につくる電場の強さは (2) である。これらの2つの点電荷が $\text{C}$ につくる電場の強さは (3) であり、電場の向きは (4) である。$x$ 軸上の点 $(x_1, 0)$ における電位は (5) であり、$y$ 軸上の点 $(0, y_1)$(ただし、$-3a < y_1 < 3a$)における電位は (6) である。
電気量 $-Q$($Q > 0$)の電荷をもつ質量 $m$ の小球を $\text{O}$ においた。この小球を $\text{O}$ から点 $\text{D}(a, 0)$ までゆっくりと動かすのに必要な仕事は (7) である。また、同じ小球を $\text{O}$ から点 $\text{E}(0, a)$ までゆっくりと動かすのに必要な仕事は (8) である。この小球を $\text{E}$ においたとき、この小球の静電気力による位置エネルギーは (9) である。
次に、この小球を $\text{E}$ から、$y$ 軸方向負の向きに速さ $v$ で打ち出した。その後、小球は点 $\text{F}(0, -2a)$ に到達したところで速度が $0$ になり、運動の向きを変えた。小球が $\text{F}$ に到達したときの静電気力による位置エネルギーは (10) であり、このことから速さ $v$ は (11) と求めることができる。
📐 視覚で一発理解!3:4:5の直角三角形と電場ベクトルの合成図
① 点 C(4a, 0) における電場の合成(問1〜4)
② 各点 D, E, F の位置と A・B からの距離(問5〜11)
設問 (1)・(2):点 $\text{A}$・点 $\text{B}$ の点電荷がそれぞれ点 $\text{C}(4a, 0)$ につくる電場の強さ
STEP 1三平方の定理から距離 $\text{AC}$、$\text{BC}$ を求める
原点 $\text{O}(0, 0)$ に対して、$\text{OA} = 3a$、$\text{OB} = 3a$、$\text{OC} = 4a$ です。
直角三角形 $\triangle\text{OAC}$ および $\triangle\text{OBC}$ は辺の比が $3:4:5$ の直角三角形なので、
STEP 2点電荷がつくる電場の公式 $E = k\dfrac{|q|}{r^2}$ に代入する
電気量の大きさはどちらも $q$、距離はどちらも $r = 5a$ なので、$\text{A}$ がつくる電場の強さ $E_{\text{A}}$ と $\text{B}$ がつくる電場の強さ $E_{\text{B}}$ はともに等しくなります。
設問 (3)・(4):点 $\text{C}(4a, 0)$ における合成電場の強さと向き
STEP 1電場の向き($+1\,\text{C}$ が受ける力の向き)を図で確認する
上の図①を見てください。
・点 $\text{A}$ の電荷は $+q$(正)なので、点 $\text{C}$ につくる電場 $\vec{E}_{\text{A}}$ は $\text{A}$ から遠ざかる向き(右下向き)です。
・点 $\text{B}$ の電荷は $-q$(負)なので、点 $\text{C}$ につくる電場 $\vec{E}_{\text{B}}$ は $\text{B}$ に引き寄せられる向き(左下向き)です。
$E_{\text{A}} = E_{\text{B}}$ で対称なので、$\vec{E}_{\text{A}}$ の右向き($x$ 軸正)成分と $\vec{E}_{\text{B}}$ の左向き($x$ 軸負)成分は互いに打ち消し合って $0$ になります!
残るのは下向き($y$ 軸方向負の向き)の成分だけです。これで先に (4) が〔4〕と確定します。
STEP 2三角比 $\cos\theta$ を使って $y$ 方向成分を足し合わせる
図①において、$\vec{E}_{\text{A}}$(および $\vec{E}_{\text{B}}$)が $y$ 軸負の向きとなす角を $\theta$ とすると、錯角・同位角より $\theta = \angle\text{OAC}$ です。
直角三角形 $\triangle\text{OAC}$ において、斜辺が $\text{AC} = 5a$、縦の辺が $\text{OA} = 3a$ なので、
よって、合成電場の強さ $E$ は、$E_{\text{A}}\cos\theta$ の $2$ 倍となります。
設問 (5)・(6):$x$ 軸上の点 $(x_1, 0)$ と $y$ 軸上の点 $(0, y_1)$ における電位
STEP 1電位はスカラー(ただの足し算)!公式 $V = k\dfrac{q}{r}$ を使う
電位には「向き」がありません。正電荷 $+q$ がつくる電位は $+k\dfrac{q}{r_{\text{A}}}$、負電荷 $-q$ がつくる電位は $-k\dfrac{q}{r_{\text{B}}}$ として、そのまま足し算するだけです!
STEP 2(5) $x$ 軸上の点 $\text{P}(x_1, 0)$ の電位 $V(x_1, 0)$
$x$ 軸上のどの点 $(x_1, 0)$ をとっても、点 $\text{A}(0, 3a)$ からの距離と点 $\text{B}(0, -3a)$ からの距離はともに $\sqrt{{x_1}^2 + (3a)^2} = \sqrt{9a^2 + {x_1}^2}$ で等しくなります。したがって、
★ 重要知識:大きさの等しい正・負の点電荷を結ぶ線分の垂直二等分線上(ここでは $x$ 軸上すべて)は、電位がどこでも $0$ の等電位面(線)になります!
STEP 3(6) $y$ 軸上の点 $\text{Q}(0, y_1)$($-3a < y_1 < 3a$)の電位 $V(0, y_1)$
$-3a < y_1 < 3a$ の範囲にあるとき、各点からの距離(必ず正の値:大きい座標 $-$ 小さい座標)は以下の通りです。
・点 $\text{A}(0, 3a)$ からの距離:$r_{\text{A}} = 3a - y_1$
・点 $\text{B}(0, -3a)$ からの距離:$r_{\text{B}} = y_1 - (-3a) = 3a + y_1$
よって、点 $(0, y_1)$ の電位 $V(0, y_1)$ は、通分して整理すると、
設問 (7)・(8)・(9):電気量 $-Q$ の小球をゆっくり動かす仕事と点 $\text{E}$ での位置エネルギー
STEP 1「ゆっくり動かすのに必要な外力の仕事 $W_{\text{外}}$」の基本公式
小球を「ゆっくり(運動エネルギーを変化させずに)」始点から終点まで動かすとき、外力がする仕事 $W_{\text{外}}$ は静電気力による位置エネルギーの変化量 $\Delta U = U_{\text{後}} - U_{\text{前}}$ に等しくなります。
ここで、電気量 $q_{\text{球}} = -Q$ の小球が電位 $V$ の点でもつ位置エネルギー $U$ は、
STEP 2(7) 原点 $\text{O}(0,0)$ から点 $\text{D}(a, 0)$ まで動かす仕事 $W_{\text{O}\to\text{D}}$
原点 $\text{O}(0,0)$ も点 $\text{D}(a,0)$ も $x$ 軸上の点なので、設問 (5) より電位はどちらも $V_{\text{O}} = 0$、$V_{\text{D}} = 0$ です。
したがって、位置エネルギーも $U_{\text{O}} = 0$、$U_{\text{D}} = 0$ となり、必要な仕事は、
STEP 3(8)・(9) 原点 $\text{O}(0,0)$ から点 $\text{E}(0, a)$ まで動かす仕事と、点 $\text{E}$ での位置エネルギー $U_{\text{E}}$
まず、点 $\text{E}(0, a)$ の電位 $V_{\text{E}}$ を求めます。設問 (6) の式で $y_1 = a$ を代入すると(または $\text{A}$ から距離 $2a$、$\text{B}$ から距離 $4a$ より)、
よって、点 $\text{E}$ に電気量 $-Q$ の小球をおいたときの位置エネルギー $U_{\text{E}}$(設問 (9) の答え)は、
また、原点 $\text{O}(0,0)$ での位置エネルギーは $U_{\text{O}} = (-Q)V_{\text{O}} = 0$ なので、$\text{O}$ から $\text{E}$ までゆっくり動かすのに必要な外力の仕事 $W_{\text{O}\to\text{E}}$(設問 (8) の答え)は、
(※物理的意味:小球は負電荷 $-Q$ なので、上にある正電荷 $+q$(点 $\text{A}$)に強い引力で引っ張られます。だから $\text{O}$ から上向きの $\text{E}$ へ行くときは、静電気力が勝手に引っ張り上げてくれるため、手で逆向き(下向き)に支えながらゆっくり移動させることになり、外力の仕事は負になります!)
設問 (10)・(11):点 $\text{F}(0, -2a)$ での位置エネルギー $U_{\text{F}}$ と打ち出しの速さ $v$
STEP 1(10) 点 $\text{F}(0, -2a)$ での電位 $V_{\text{F}}$ と位置エネルギー $U_{\text{F}}$ を求める
設問 (6) の式に $y_1 = -2a$ を代入します(または、$\text{A}(0,3a)$ からの距離 $5a$、$\text{B}(0,-3a)$ からの距離 $a$ より計算してもOKです)。
小球の電気量は $-Q$(マイナス!)なので、点 $\text{F}$ における小球の位置エネルギー $U_{\text{F}}$ は、マイナス $\times$ マイナスでプラスになります!
STEP 2(11) 点 $\text{E}$ と点 $\text{F}$ の間でエネルギー保存則を立てて $v$ を求める
小球には保存力である静電気力しか働かないため、(運動エネルギー)$+$(静電気力による位置エネルギー)の和は一定に保たれます。
・点 $\text{E}$(打ち出し時):速さ $v$、位置エネルギー $U_{\text{E}} = -\dfrac{kQq}{4a}$
・点 $\text{F}$(折り返し点):速さ $0$、位置エネルギー $U_{\text{F}} = \dfrac{4kQq}{5a}$
よって、エネルギー保存則より、
左辺の $-\dfrac{kQq}{4a}$ を右辺に移項し、分母を $20a$ に通分して計算します。
両辺に $\dfrac{2}{m}$ を掛けてルートをとります($v > 0$)。
ばねで打ち出された小物体と、なめらかな床の上を動く台(摩擦・相対運動・仕事とエネルギー)
大問〔III〕は、医学部入試の超王道テーマ「動く台の上をすべる小物体」です!目標解答時間は20分。
この問題を完答するカギは3つあります!
① 「水平方向の右向きを正」と指定されているので、左向きの加速度や負の仕事には必ずマイナス($-$)をつけること!
② 「台の上をすべった距離 $L$」と「床に対して進んだ距離 $x_{\text{P}}, x_{\text{台}}$」を明確に区別すること!
③ 設問 (6)・(7)・(8) のエネルギーと仕事は、「運動エネルギーの変化 = された仕事」を使うと、わずか10秒で検算まで完璧に終わりますよ!
【問題文 〔III〕】
図のように、段差がつけられているなめらかで水平な床 $\text{A}$―$\text{A}'$ と $\text{B}$―$\text{B}'$ がある。床 $\text{B}$―$\text{B}'$ 上には、床の段差と同じ高さで、質量 $3m$ の直方体の台が、段差のある面 $\text{A}'$―$\text{B}$ に接して置かれている。また、床 $\text{A}$―$\text{A}'$ 上には、ばね定数 $k$ のばねがあり、その一端を $\text{A}$ の位置にある壁に固定してある。質量 $m$ の小物体 $\text{P}$ をばねに押しあてて、ばねを自然長から $d$ だけ縮めた状態で静かに放した。$\text{P}$ は、ばねが自然長に戻ったときにばねから離れ、床上をすべり、$\text{A}'$ を越えて台上に乗り移った。$\text{P}$ が台上を動き出すと同時に台も $\text{B}$―$\text{B}'$ 上を動き出し、やがて、$\text{P}$ と台は一体となって運動した。$\text{P}$ と台の上面との間の動摩擦係数を $\mu$、重力加速度の大きさを $g$、図の水平方向の右向きを正として、以下の問いに答えよ。
- (1) $\text{A}'$ での $\text{P}$ の速度はいくらか。
- 以下では、$\text{P}$ が台上に乗り移ってから台に対して静止するまでの間について考える。
- (2) 床に対する $\text{P}$ の加速度はいくらか。
- (3) 台に対する $\text{P}$ の加速度はいくらか。
- (4) 台上をすべった距離はいくらか。
- (5) $\text{P}$ が台に対して静止したときの台の速度はいくらか。
- (6) $\text{P}$ と台の上面との間の摩擦によって失われた力学的エネルギーはいくらか。
- (7) $\text{P}$ と台の上面との間の摩擦力が $\text{P}$ にした仕事はいくらか。
- (8) $\text{P}$ と台の上面との間の摩擦力が台にした仕事はいくらか。
📐 視覚で一発理解!小物体 $\text{P}$ と台に働く動摩擦力・加速度・移動距離の完全図解
① 台上に乗り移った後の力と加速度(右向き正)
② 床に対する移動距離 xP, x台 と 台上をすべった距離 L
設問 (1):$\text{A}'$ での $\text{P}$ の速度 $v_0$ はいくらか
STEP 1床 $\text{A}$―$\text{A}'$ 上で力学的エネルギー保存則を立てる
床 $\text{A}$―$\text{A}'$ はなめらか(摩擦なし)なので、ばねを自然長から $d$ だけ縮めて静かに放してから、自然長に戻って $\text{P}$ がばねから離れ、$\text{A}'$ に達するまでの間、力学的エネルギーが保存されます。
$\text{A}'$ での $\text{P}$ の速度を $v_0$(右向きなので $v_0 > 0$)とすると、
両辺に $\dfrac{2}{m}$ を掛けて $v_0 > 0$ について解きます。
設問 (2)・(3):床に対する $\text{P}$ の加速度 $a_{\text{P}}$ と、台に対する $\text{P}$ の相対加速度 $a_{\text{台}\to\text{P}}$
STEP 1(2) 小物体 $\text{P}$ の運動方程式から床に対する加速度 $a_{\text{P}}$ を求める
$\text{P}$ が台の上を右向きにすべっている間、鉛直方向の力のつりあいより、$\text{P}$ が台から受ける垂直抗力の大きさ $N$ は $N = mg$ です。
$\text{P}$ は台に対して右向きに動いているため、台の上面から左向き(負の向き)に大きさ $\mu N = \mu mg$ の動摩擦力を受けます。
床に対する $\text{P}$ の加速度を $a_{\text{P}}$(右向き正)として、$\text{P}$(質量 $m$)の運動方程式を立てます。
STEP 2(3) 台の運動方程式を立てて床に対する台の加速度 $a_{\text{台}}$ を求める
作用・反作用の法則により、台(質量 $3m$)は上面で $\text{P}$ から右向き(正の向き)に大きさ $\mu mg$ の動摩擦力を受けます(床 $\text{B}$―$\text{B}'$ はなめらかなので床からの摩擦は $0$ です)。
床に対する台の加速度を $a_{\text{台}}$(右向き正)として、台(質量 $3m$)の運動方程式を立てます。
STEP 3「台に対する $\text{P}$ の加速度(相対加速度)」を計算する
「Aに対するBの物理量」は必ず (Bの量)$-$(Aの量) です!したがって、台に対する $\text{P}$ の相対加速度 $a_{\text{台}\to\text{P}}$ は、
設問 (4)・(5):台上をすべった距離 $L$ と、台に対して静止したときの台の速度 $V$
STEP 1(4) 台から見た相対運動の公式 $v^2 - {v_0}^2 = 2ax$ で一発導出!
「台上をすべった距離 $L$」とは、台から見た $\text{P}$ の移動距離(相対変位)のことです!
・乗り移った瞬間(始め):台は止まっているので、台に対する $\text{P}$ の初速度は $v_{\text{相}0} = v_0 - 0 = v_0 = d\sqrt{\dfrac{k}{m}}$
・台に対して静止した瞬間(終わり):台に対する $\text{P}$ の相対速度は $v_{\text{相}} = 0$
・台に対する $\text{P}$ の相対加速度:設問 (3) より $a_{\text{台}\to\text{P}} = -\dfrac{4}{3}\mu g$(一定)
よって、等加速度直線運動の公式 ${v_{\text{相}}}^2 - {v_{\text{相}0}}^2 = 2 a_{\text{台}\to\text{P}} L$ に代入すると、時間 $t$ を求めなくても一瞬で $L$ が出せます!
ここに設問 (1) の ${v_0}^2 = \dfrac{k}{m}d^2$ を代入して $L$ について解きます。
STEP 2(5) 水平方向の運動量保存則(または等加速度運動の式)から一体となった速度 $V$ を求める
【解法A:運動量保存則(最速!)】
$\text{P}$ が台上に乗り移った後、「$\text{P}$ と台を合わせた系」には水平方向に外力が一切働きません(動摩擦力 $\pm\mu mg$ は内力なので打ち消し合います)。
よって、水平方向の運動量が保存されます。一体となったときの共通の速度を $V$ とすると、
したがって、$V = \dfrac{1}{4}v_0$ となります!設問 (1) の $v_0 = d\sqrt{\dfrac{k}{m}}$ を代入すると、
【解法B:時間 $t_1$ を求める検算】
相対速度が $0$ になる時刻 $t_1$ は、$0 = v_0 + \left(-\dfrac{4}{3}\mu g\right)t_1$ より $t_1 = \dfrac{3v_0}{4\mu g}$。
このときの台の速度 $V$ は $V = 0 + a_{\text{台}} t_1 = \left(\dfrac{1}{3}\mu g\right) \times \dfrac{3v_0}{4\mu g} = \dfrac{1}{4}v_0 = \dfrac{d}{4}\sqrt{\dfrac{k}{m}}$。完全に一致しますね!
設問 (6)・(7)・(8):失われた力学的エネルギーと、摩擦力が $\text{P}$・台にした仕事
🔥 ニックニ先生の「仕事とエネルギー」黄金ルール!
(6)〜(8) は、そのまま「力 $\times$ 距離」で計算しても解けますし、「運動エネルギーの変化 = された仕事」で計算しても解けます。両方のルートを知っておくと本番で100%検算ができるので、両方見せていくぞ!また、初速度の運動エネルギーが $K_0 = \dfrac{1}{2}m{v_0}^2 = \dfrac{1}{2}kd^2$ であることを基準にすると、分数計算が劇的にスッキリします!
STEP 1(6) 摩擦によって失われた力学的エネルギー $\Delta E_{\text{失}}$
【方法1:前後の力学的エネルギーの差から求める】
・乗り移った直後(ばねを縮めた最初のエネルギーと同じ):$E_{\text{前}} = \dfrac{1}{2}m{v_0}^2 = \dfrac{1}{2}kd^2$
・一体となって速度 $V = \dfrac{1}{4}v_0$ で動いているとき(全体の質量は $m + 3m = 4m$):
したがって、摩擦によって失われた力学的エネルギー(摩擦熱になった分)$\Delta E_{\text{失}}$ は、
【方法2:動摩擦力 $\mu mg \times$ 台上をすべった距離 $L$ で検算!】
摩擦で失われるエネルギーは常に「(動摩擦力の大きさ)$\times$(こすれ合った相対距離 $L$)」に等しくなります。
$\Delta E_{\text{失}} = \mu mg L = \mu mg \times \dfrac{3kd^2}{8\mu mg} = \dfrac{3}{8}kd^2$。見事に一致!
STEP 2(7) 摩擦力が $\text{P}$ にした仕事 $W_{\text{P}}$
【方法1:$\text{P}$ 単体の「運動エネルギーの変化 = 摩擦力が $\text{P}$ にした仕事」から求める】
$\text{P}$(質量 $m$)の速度は $v_0$ から $V = \dfrac{1}{4}v_0$ に変化しました。水平方向に $\text{P}$ に働いた力は動摩擦力だけなので、
【方法2:床に対する $\text{P}$ の移動距離 $x_{\text{P}}$ から検算!】
$\text{P}$ が床に対して進んだ距離 $x_{\text{P}}$ は、平均の速さ $\dfrac{v_0 + V}{2} \times$ 時間 $t_1$ より、
$x_{\text{P}} = \dfrac{v_0 + \frac{1}{4}v_0}{2} \times \dfrac{3v_0}{4\mu g} = \dfrac{5}{8}v_0 \times \dfrac{3v_0}{4\mu g} = \dfrac{15{v_0}^2}{32\mu g} = \dfrac{15kd^2}{32\mu mg}$。
よって $W_{\text{P}} = (-\mu mg) \times x_{\text{P}} = -\dfrac{15}{32}kd^2$。完全に一致!
STEP 3(8) 摩擦力が台にした仕事 $W_{\text{台}}$
【方法1:台単体の「運動エネルギーの変化 = 摩擦力が台にした仕事」から求める】
台(質量 $3m$)の速度は $0$ から $V = \dfrac{1}{4}v_0$ に変化しました。水平方向に台に働いた力は $\text{P}$ から受ける右向きの動摩擦力だけなので、
【方法2:床に対する台の移動距離 $x_{\text{台}}$ と全体の仕事の関係から検算!】
台が床に対して進んだ距離 $x_{\text{台}}$ は $x_{\text{P}} - L = \left(\dfrac{15}{32} - \dfrac{12}{32}\right)\dfrac{kd^2}{\mu mg} = \dfrac{3kd^2}{32\mu mg}$。
よって $W_{\text{台}} = (+\mu mg) \times x_{\text{台}} = \dfrac{3}{32}kd^2$。
さらに、$W_{\text{P}} + W_{\text{台}} = -\dfrac{15}{32}kd^2 + \dfrac{3}{32}kd^2 = -\dfrac{12}{32}kd^2 = -\dfrac{3}{8}kd^2 = -(\text{失われた力学的エネルギー }\Delta E_{\text{失}})$ となっており、(6)・(7)・(8) の3問すべてが1ミリの狂いもなく整合していることが確認できます!
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